ホフマン分解によるアミノ基終端が高めた蛍光ナノダイヤモンドのNV中心の電荷安定性

Jegenyes, N., Verkhovlyuk, V., Czene, S., Csáki, A., Kollarics, S., Krafcsik, O., Czigány, Z., Beke, D., Gali, A. “Materials and Spin Characteristics of Nanodiamonds Partially Covered with Amino Groups and Embedded with Nitrogen-Vacancy Color Centers.” ACS Omega 2026, 11, 53440–53451. https://doi.org/10.1021/acsomega.6c06903

背景

 ダイヤモンド中の窒素空孔中心(NV中心)は、室温でも光でスピンを初期化・読み出しでき、磁場や温度をナノ領域で測れるため、量子センサーとして研究が進む。細胞などに導入して使うには、NV中心を含む微粒子である蛍光ナノダイヤモンドの表面を化学修飾して生体分子を結合させる必要があり、結合反応が容易なアミノ基による終端が期待されている。

従来の問題点

 しかし、ナノ粒子中のNV中心は表面のごく近くにあるため、表面のバンド湾曲や電荷の捕獲準位、不対電子をもつ欠陥が、センシングに使えるNV(−)を発光の弱いNV(0)へ移してしまう。アミノ終端は通常プラズマ法で行われ、専用装置と厳密な条件管理を要する。加えて、同一の表面処理をそろえた広い粒径範囲でゼロ磁場分裂のDとEを系統的に測った例はなかった。

結果

 そこで本研究では、湿式化学反応であるホフマン分解でアミノ基を導入し、10〜140 nmの粒子を赤外分光、発光、電子スピン共鳴、光検出磁気共鳴で横断的に評価することで解決した。Eは粒径の増大とともに約8 MHzから約5 MHzへ単調に減少し、Dは30 nm以下でのみ本来の値からずれた。これにより、小粒径では静的なひずみが、大粒径では周囲の欠陥がつくる電場のゆらぎが支配的だと切り分けられた。さらに140 nmのアミノ終端粒子ではNV(−)の割合が約0.8に達し、励起光強度に依存しなくなった。電子スピン共鳴からは、粉砕でできた表面ダングリングボンドが減っており、新たな欠陥の導入ではなく表面欠陥の低減が原因だと分かった。用いたのはAdámas Nanotechnologies社製の蛍光ナノダイヤモンドで、高温高圧法ダイヤモンドを粉砕し、電子線照射とアニールでNV中心を生成して酸素終端した10〜140 nmの粒子を共通試料として使用した。

※本記事は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)を、独自の構成で再構成した日本語要約です。

【用語解説】

  • ゼロ磁場分裂(ZFS):磁場をかけない状態でもスピンの準位が分かれる現象。NV中心では対称軸方向の分裂の大きさをD、対称性の崩れによる分裂をEと呼び、ひずみや電場の指標になる。
  • ホフマン分解:カルボキシル基などを経由してアミド窒素を炭素から外し、アミノ基へ変換する古典的な有機反応。高温プラズマを使わないため、粒子の黒鉛化や凝集を避けられる。
  • ダングリングボンド:結合相手を失った原子の手。粉砕でできた表面に多く残り、不対電子をもつため光で電荷をやり取りし、近くのNV中心の電荷状態を不安定にする。