Wojewoda, O., Hrtoň, M., Dhankhar, M., Krčma, J., Davídková, K., Klíma, J., Holobrádek, J., Ligmajer, F., Šikola, T., Urbánek, M. “Phase-resolved optical characterization of nanoscale spin waves.” Appl. Phys. Lett. 122, 202405 (2023). https://doi.org/10.1063/5.0151338
背景
スピン波およびその量子的な対応物であるマグノンは、次世代の情報処理技術の有力な候補として注目されている 。スピン波とは、磁性体中の電子スピンが集団的に歳差運動しながら波として伝播する現象であり、これを利用した波動演算装置の提案が数多くなされている 。特に、系の規模をナノ規模に縮小することで、スピン波の伝播速度が向上し、信号の遅延時間が最小化されるため、高速な動作が可能となる 。また、波長が材料の交換長に近づくナノ規模の磁性系では、スピン波と磁気構造の相互作用といった新しい物理現象の発現が期待できる 。
従来の問題点
しかし、光を用いた計測手法であるブリュアン光散乱顕微鏡は、光の回折限界によって、自由空間における光の波長の半分より短い波長を持つスピン波を検出することが困難であるという問題点がある 。現在、ナノ規模のスピン波を直接観察する主な手段は放射光施設を用いたX線顕微鏡に限られており、実験には多大な時間と資源を必要とする 。光磁気学の分野において、回折限界を超えてナノ規模のスピン波を測定できる光学的手法の開発は、重要な課題の一つとなっている 。
解決方法と結果
そこで、本研究では磁性合金であるパーマロイ薄膜上に誘電体ナノ共振器であるシリコン円盤の配列を形成し、ミー共鳴を利用して光を回折限界以下の微小領域に集中させる手法によって、この課題を解決した 。具体的には、Cobolt社製の波長532 nmの単一モードレーザーをブリュアン光散乱計測の光源として使用し、スピン波によって散乱された光の周波数変化を干渉計で分析した 。シリコン円盤によって形成された強電場領域が、光と短波長スピン波の相互作用を増強する媒介となり、光学的な位相分解測定が可能となった 。実験の結果、波長204 nmのスピン波の位相を6 nmの精度で測定することに成功し、理論値とも一致することを示した 。

※本要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。
論文で使用されたCoboltのレーザー
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