Stoilova, A., Dimov, D., Trifonova, Y., Mateev, G., Lilova, V., Nazarova, D., Nedelchev, L. “Effect of InP/ZnS quantum dots aggregation on the kinetics of birefringence recorded in thin azopolymer composite films.” Phys. Scr. 99 (2024) 095988. https://doi.org/10.1088/1402-4896/ad6d09
光情報記録に用いられる光応答性材料として、アゾベンゼンを含む色素や高分子が近年盛んに研究されている。アゾベンゼンは直線偏光照射によってトランス-シス-トランス異性化を繰り返す分子であり、これにより複屈折(Δn)と呼ばれる光学的異方性が誘起される。この複屈折は非破壊的に読み出せ、高空間分解能での制御および円偏光による消去も可能であるため、光記録媒体として優れた特性を持つ。複屈折値をさらに高める手法として、金属や酸化物ナノ粒子をアゾポリマー中に添加する複合材料化が各研究グループによって試みられてきた。一方、量子ドット(QD)とは数ナノメートルサイズの半導体ナノ結晶であり、サイズに応じて電子・光学特性を調整できること、またフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)における電子供与体・受容体として機能できることから、アゾポリマーへの添加材料として魅力的な候補である。
しかし、アゾポリマーにQDを複合化した研究はきわめて少なく、これまで報告されているのはカドミウム含有QDを用いた系に限られている。カドミウムは重金属であり環境負荷が高いことが問題であった。また、QDは膜形成過程においてコロイド安定性が低く、凝集体を形成しやすいという課題があり、これがQDの望ましい物性を損なうとして否定的に捉えられてきた。最も汎用的なアゾポリマー基材であるPAZOにQDを複合化した薄膜材料はこれまで報告がなく、InP/ZnSのような環境に優しい重金属フリーQDを用いた偏光選択的光記録への応用も未開拓であった。
そこで、本研究ではPAZOポリマーにInP/ZnS量子ドットを1、2、10 wt%の3段階の濃度で添加した複合薄膜を作製し、量子ドットの凝集現象が複屈折特性に与える影響を詳細に調べることで、上記の課題を克服した。Cobolt社製Zouk™レーザー(355 nm、単一周波数DPSS方式)を記録用励起光源として用い、量子ドット凝集が生じた膜領域に複屈折を誘起した。その結果、2 wt%以下の量子ドット添加試料ではΔnmaxがドープなし膜より高い値を示し(444 nm励起時の最大値:Δnmax = 0.094)、10 wt%試料では逆に低下した。蛍光スペクトル解析から、凝集した量子ドットからPAZOへの局所的エネルギー移動が生じており、これがアゾベンゼン分子の異性化を促進することでΔnmaxの向上に寄与していると示唆された。
※本要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。
励起光源に使用された355nmレーザー
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