Herrmann, P., Klimmer, S., Lettau, T., Monfared, M., Staude, I., Paradisanos, I., Peschel, U., Soavi, G. “Nonlinear All-Optical Coherent Generation and Read-Out of Valleys in Atomically Thin Semiconductors.” Small 2023, 19, 2301126. https://doi.org/10.1002/smll.202301126
従来の電子素子が速度や寸法の面で性能限界に近づく中、高速かつ低消費電力の情報処理手法として全光学的操作が注目されている。特に、遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)と呼ばれる原子層半導体は、ブリルアンゾーンのK点とK’点にエネルギー的に縮退しつつ非等価な二つの谷(バレー)を有し、円偏光によって選択的に励起できることから、バレートロニクスと呼ばれる二値情報処理の基盤として研究が進められている。TMD単層膜における第二高調波発生(SHG)は、谷偏極の超高速かつ非破壊的な検出手段として有望であり、光シュタルク効果によるコヒーレントな谷偏極生成は、実励起子集団を必要とせず超高速動作が可能である。
しかし、偏光分解発光法による谷偏極の検出は、バレーおよびスピン寿命よりも遥かに長い時間スケールで平均化された発光を測定するため、超高速な谷偏極状態の時間変化を正確に捉えることができず、さらに電子正孔対の再結合後にしか測定できない破壊的手法であるという問題があった。加えて、室温においては、フォノン散乱や長距離電子正孔交換相互作用により谷偏極度が大幅に低下するという課題もあった。
そこで、本研究ではWSe₂単層膜において、光学バンドギャップの半分のエネルギーに調整した約150フェムト秒の楕円偏光超短パルス一つで、光シュタルク効果による谷偏極の生成(書込み)とSHG偏光回転による検出(読出し)を室温で同時に実現した。基本波長1500 nm(1s励起子共鳴)において最大18.8%の谷誘起非線形感受率比を観測し、これは非共鳴条件より一桁以上大きい値である。SHG回転角の入力強度に対する線形依存性から、谷偏極の生成機構が二光子吸収ではなくコヒーレントな光シュタルク効果であることを実験とTDDFT計算の双方で実証した。なお、単層領域の同定にはCobolt社製532 nmレーザー(Cobolt 08-DPL)を用い、顕微発光分光法により単層領域の確認を行った。
※この要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。
単層領域の同定に使用された532nmレーザー
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