Konrad, P., Kianinia, M., Spencer, L., Sperlich, A., Hein, L., Steinicke, S., Aharonovich, I., Dyakonov, V. “Intermediate excited state relaxation dynamics of boron vacancy spin defects in hexagonal boron nitride.” Sci. Adv. 12, eaea0109 (2026). https://doi.org/10.1126/sciadv.aea0109
光学的に読み出し可能な固体中のスピン欠陥は、量子計算や原子スケールの計測への応用が期待されており、近年急速に研究が進められている。ダイヤモンド中の窒素空孔中心や炭化ケイ素中の欠陥など、室温で動作するスピン欠陥が実現されてきた。二次元ファンデルワールス材料である六方晶窒化ホウ素(hBN)は、6 eVの広い禁制帯幅を持ち、電気絶縁性に優れるとともに、室温単一光子源やスピン担持欠陥の母材として有望である。特に負に帯電した硼素空孔(V_B⁻)は基底状態がスピン三重項であり、三次元母材と比較して、スピン欠陥の位置を原子精度で薄層内に特定できるため、検出対象との距離を大幅に短縮できるという決定的な利点を有する。温度、圧力、核スピン、磁場の計測への応用が既に実証されている。
しかし、V_B⁻の光励起サイクルにおいて、励起三重項状態から基底状態への非放射緩和経路、とりわけ準安定な中間状態(IS)を経由する項間交差の速度定数は直接測定されておらず、大部分が仮説的な段階にとどまっていた。従来の研究では、時間分解蛍光データを五準位速度モデルにフィッティングすることでIS寿命を推定していたが、多数の未知パラメータに依存するため、実験的な検証が不可欠であった。
そこで、本研究ではCobolt社製473 nm半導体レーザー(Cobolt 06-MLD、出力300 mW、立ち上がり時間2.5 ns未満)を共焦点顕微鏡の励起光源として用い、高速変調と時間相関単一光子計数を組み合わせることで、ISから基底状態への緩和時間を直接測定した。室温におけるIS寿命として24.0(3) nsを得、低温では約2倍に増大することを明らかにした。さらに、パルスODMR測定において、レーザー消灯後にISの枯渇を待つ150 nsの待機時間を導入することで、ラビ振動の振幅が増大し、πパルスによるスピン反転の有効性が約26%向上した。この知見により、V_B⁻を用いた量子センサの感度を大幅に最適化できることが示された。
※この要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。
伝導率測定に使用された473nmレーザー

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