de Andrade Neto, N. F., da Silva, J. M. P., da Cunha, J. M. S., Teodoro, M. D., Correa, M. A., Bomio, M. R. D., da Motta, F. V. “EDTA-Assisted Sonochemical Synthesis of Polymorphic Bismuth Ferrites: Structural and Photocatalytic Characterization.” ACS Omega 2025, 10, 40364–40378. https://doi.org/10.1021/acsomega.5c05699
太陽光を有効に利用した環境浄化技術への需要が高まっていることから、可視光に応答する光触媒材料の研究が近年活発に進められている。ビスマスフェライト(BFO)は、強誘電性・磁性・光触媒特性を併せ持つ半導体であり、有望な候補材料として注目されている。BFOは、菱面体晶のBiFeO₃、立方晶のBi₂₅FeO₄₀、斜方晶のBi₂Fe₄O₉という複数の結晶相を取りうる多形物質である。なかでもBiFeO₃相は、室温で自発分極と反強磁性秩序を示すマルチフェロイック材料であり、約2.1〜2.2 eVという狭い禁制帯幅をもつため可視光を強く吸収できる。また伝導帯・価電子帯の位置が水の酸化還元電位と整合しており、光電気化学的な水分解の光電極としても期待されている。合成段階で用いられるEDTAは、金属イオンと安定な錯体を形成して反応性を制御するキレート剤であり、核生成と粒子成長の速度を調整する役割をもつ。
しかし、BFOは電気伝導率が低く、光励起で生じた電子・正孔対の再結合速度が高く、さらに相が不安定であるという問題点があり、実用的な光触媒応用が妨げられてきた。とりわけ純粋なBiFeO₃相を二次相なしで得ることは、この相が準安定であるために困難であり、鉄過剰のBi₂Fe₄O₉相やビスマス過剰のBi₂₅FeO₄₀相が副生しやすい。
そこで本研究では、鉄硝酸塩に対するEDTA量を0〜100 mol%まで変化させた超音波化学合成を行うことで相制御を達成した。EDTA量33.33%の試料のみが単相のBiFeO₃となり、それ以上の濃度ではBi₂Fe₄O₉相の形成が促進された。全試料の禁制帯幅は2.25〜2.28 eVでほぼ一定であった。多相試料はヘテロ接合により電子・正孔の再結合が抑制され、中性pHでメチレンブルーをより多く分解した(100EDTAで約46%)。一方、単相の33EDTA試料は中性では低活性(約32%)であったが、pH 3では粒子表面が正に帯電して吸着の影響が抑えられ、120分で完全分解を達成した。なお、Cobolt社製レーザー発振器(波長355 nm)は、試料のフォトルミネッセンス測定において励起光源として使用され、電子・正孔対の再結合挙動の評価に用いられた。
【用語解説】
EDTA(キレート剤):EDTAはエチレンジアミン四酢酸の略称で、一つの分子が複数の場所で金属イオンを挟み込み、安定な錯体(キレート錯体)を形成する物質である。このように金属イオンを挟み込む物質をキレート剤と呼ぶ。EDTAは洗剤や食品の品質保持剤などにも広く使われる身近な物質であり、本研究では溶液中の金属イオンの反応性を抑え、目的の結晶相の生成を制御する目的で用いられている。
※本要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。
励起光源に使用された355nmレーザー
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