Kirsch, M., Lehn, R., Paech, S., Andrieu-Brunsen, A. “Automated Plasmon-Selective Laser Writing in Mesoporous Thin Films Through Decoupling of the Initiator Absorption and Plasmon Wavelength.” Small Science 2026. https://doi.org/10.1002/smsc.202500435
ナノ細孔(メソポーラス)材料は、細孔内での分子の吸着や大きさによる選別、方向性のある輸送を担い、分子センシング・分離・触媒・エネルギー変換など各種の技術を支えることから、近年盛んに研究が進められている。こうした材料の性能は、狙った位置に機能性の高分子(ポリマー)を配置できるかに大きく依存する。ナノスケールで局所的にポリマーを形成する有力な手段として、金属ナノ粒子中の自由電子が光で集団振動し粒子のごく近傍に強い光の場を生む「局在表面プラズモン」を光源に用いる方法がある。これを、焦点を絞ったレーザーで光反応性の前駆体を露光し微細な模様を自動で描く直接レーザー描画と組み合わせれば、細孔内へのポリマー配置を精密に制御できると期待される。
しかし、従来のプラズモン誘起重合では、重合を起こす開始剤とプラズモンの吸収波長が重なるため、レーザーの遠方場が開始剤を直接励起し、細孔全体で無選択に重合が進む問題がある。近接場のみに限った選択的な重合は、ごく狭いエネルギー閾値以下でしか成立せず、応用範囲が限られていた。
そこで、本研究では開始剤の吸収波長(446 nm)と金ナノ球のプラズモン吸収(極大545〜552 nm)を分離することによって、遠方場による開始剤の直接励起を抑え、エネルギー閾値に依存しないプラズモン選択的な重合を実現した。金ナノ球をシリカ薄膜の所定の深さに埋め込み、561 nmで走査するとプラズモン近接場のみで重合が始まり、64.8 kJ cm⁻² の高照射まで選択性が保たれた。重合は非放射的な過程(ホットエレクトロン生成やプラズモン加熱)が担うことも示された。このレーザー描画には、Nikon Eclipse Ti2-E 顕微鏡の N-STORM モジュールに接続した Cobolt 社製の 561 nm 連続波レーザー(Cobolt 06-DPL)を用い、x/y 座標を自動走査してポリマーの模様を描く光源として使用した。
※本記事は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)を、独自の構成で再構成した日本語要約です。
【用語解説】
- 局在表面プラズモン(LSP):金属ナノ粒子中の自由電子が入射光と共鳴して集団で振動する現象。粒子のごく近傍に増強された光の場(近接場)を生み、ナノスケールの光源として働く。
- メソポーラスシリカ:直径2〜50 nm 程度の規則的なナノ細孔を多数もつ二酸化ケイ素の多孔質材料。大きな表面積と、細孔による分子の空間的な閉じ込め効果をもつ。
- イニファーター(iniferter):開始剤・連鎖移動剤・停止剤の三つの役割を兼ねる化合物。光照射で可逆的にラジカルを生じ、鎖長のそろった制御重合(RAFT 重合)を可能にする。
プラズモン選択的レーザー描画に使用された561 nmレーザー

