フォトニクス最新ニュース

Photonics News & Insights

フォトニクス最新ニュース

世界の光技術に関する最新動向を、信頼できる情報源から厳選してお届けします。レーザー顕微鏡、レーザー分光、量子光学をはじめ、幅広いフォトニクス領域の研究開発・産業動向をわかりやすく解説します。

最終更新:2026年7月15日
量子光学2026年7月NEW

ガラス表面の静電気で原子を捕まえる——量子情報の保持時間が10倍に(独フンボルト大)

独フンボルト大ベルリン(Arno Rauschenbeutel、Riccardo Pennettaら)が、髪の毛の約100分の1という極細ガラスファイバーの近くに、レーザー冷却した原子を捕捉・制御する新方式を実証しました。従来のナノフォトニック系では原子を引き寄せるのに複数のレーザービームが必要でしたが、本手法はガラス表面に自然に生じる静電気的な力で原子を引き寄せ、青方離調したエバネッセント場でやさしく押し返して安定な捕捉領域を作ります。捕捉力は従来より弱いものの、原子はほとんど失われずに移送でき、光の弱い領域に留まるため擾乱が減少。その結果、捕捉時間は約2倍、量子情報の保持時間は約10倍に伸びました。量子メモリや量子通信ネットワークの簡素化・高信頼化につながる成果です(Nature Photonics 掲載)。

記事を読む 出典:phys.org(Humboldt-Universität zu Berlin/Nature Photonics)
その他2026年7月NEW

1チャンネル200Gbpsの受光素子——AIデータセンターの光受信を倍速に(韓国ETRI)

韓国電子通信研究院(ETRI)が、1チャンネルあたり200Gbps級の光信号を処理できるフォトダイオード(受光素子)を韓国で初めて開発しました。データセンターで一般的な112Gbps級に対し、最大224Gbps/チャンネルと約2倍の処理能力です。InGaAs系の素子で、70GHz以上の帯域と0.75A/W以上の高い受光感度を0.5×0.4mmのサイズで両立。チップ裏面にリン化インジウム(InP)製の凸レンズを一体形成する「裏面レンズ集積構造」により、受光効率と位置合わせのしやすさを大きく改善しました。別体の受光レンズが不要なため実装が簡素化でき、800Gbps/1.6Tbps級の光モジュールでのコスト低減も見込まれます。AIデータセンター内部の光トランシーバや5G/6G基地局への適用が期待されます(Optics Express 掲載)。

記事を読む 出典:phys.org(ETRI/Optics Express)
量子光学2026年7月NEW

目の中に見える「幻の模様」を検査に使う——量子光学の構造光で網膜の健康を測る(米バッファロー大)

米バッファロー大(Dusan Sarenacら)とウォータールー大が、偏光した光が網膜の構造で散乱するときに周辺視野へ現れる淡い蝶ネクタイ状の模様「ベームのブラシ(Boehm’s brushes)」を、はっきり見えるようにする手法を報告しました。網膜疾患があると知覚しにくくなるため健康状態の指標になり得ると考えられてきましたが、健常者でも見えにくく臨床応用は困難でした。研究チームは量子光学で発展し顕微鏡や精密計測にも使われる構造光(偏光を空間的に設計した光)を用い、網膜構造の対称性に合わせることで模様を明るく大きくし、ローブ(花弁)の数も変えられるようにしました。健常者約12名で視覚閾値を測定し、中心から離れた視野ほど検出しやすいという基準データを取得。次段階は加齢黄斑変性など網膜疾患患者での検証です(PNAS 掲載)。

記事を読む 出典:phys.org(University at Buffalo/University of Waterloo/PNAS)
光学素子2026年7月NEW

波長を変えるだけで画像を呼び出す——回折層に4,000枚以上を記録する光ストレージ(UCLA)

米UCLA(Aydogan Ozcan、Mona Jarrahiら)が、深層学習で設計した受動的な誘電体の回折層を積み重ね、そこに多数の画像を記録して光だけで読み出す「波長多重回折光ストレージ」を提案・実証しました。各画像に固有の照明波長を割り当て、ラジオの選局のように入射光の波長を変えるだけで、同じ出力視野に別々の画像が浮かび上がります。可視域のシミュレーションでは4,000枚超の独立した画像パターンを平均48dB超のピーク信号対雑音比で再構成でき、波長チャネル間の干渉も小さく抑えられました。実証機として2層の回折素子を試作し、500〜740nmの6波長で6枚の画像の記録・読み出しに成功。機械的な可動部や磁気媒体の劣化がなく、長期アーカイブや情報セキュリティ、ディスプレイ、光コンピューティングへの応用が期待されます。偏光や入射角との多重化でさらに容量を増やせます(回折光ニューラルネットワークの設計手法を応用、Advanced Photonics 掲載)。

記事を読む 出典:phys.org(UCLA/Advanced Photonics)
その他2026年7月

CO2レーザー溶接で「密閉ガラス容器」を自動製造——危険廃棄物の長期保管に(独LZH)

ドイツのレーザーセンター・ハノーバー(LZH)が、CO2レーザーで厚肉ガラス容器を溶接密閉する新製法を「LasGlaReLa」プロジェクトで開発しました。電気自動車の普及で増える電池材料や化学産業廃棄物は、環境保護・安全な取扱い・長期の構造健全性を同時に満たす「カテゴリーIV処分場」向け容器が必要です。化学的に極めて不活性なガラスは残留物と反応せず、将来の回収・リサイクルにも適します。従来の熱ガス法は入熱が制御しにくく残留応力が大きい上、自動化も難しいのが課題でした。研究チームは波長10.6µmのCO2レーザー1台で2つの接合部材を同時に加熱し、5mm厚の板ガラスを全厚にわたり微小空隙のない連続溶接。入熱後も機械的強度が保たれ(2週間保管後の応力試験で確認)、フタが重力で自然に沈み込むためクランプ治具が不要という独自方式です。高速で自動化に適します(Journal of Laser Applications 掲載)。

記事を読む 出典:optics.org(Laser Zentrum Hannover/Journal of Laser Applications)
その他2026年7月

レーザーの「指紋」で機器を本人確認——パスワード不要、AIが瞬時に認証(サウジKAUST)

サウジアラビアのKAUST(Yating Wan助教ら)が、極小のレーザー素子が発する固有の光パターンを機器ごとの“指紋”として使い、パスワードやセキュリティキーなしで機器の正当性を確認できる認証技術を開発しました。カオス的に振る舞う微小レーザー(VCSEL)は、同じ素子でも複製が極めて難しい複雑な光信号を生み、その統計的な特徴をAIがほぼ瞬時に照合します。実験では極めて高速かつ低消費電力で認証応答を生成でき、数百万台の機器・サーバー・センサーが安全に通信する必要があるクラウド、AI基盤、IoTネットワークへの応用が期待されます。光技術(フォトニクス)とAIを組み合わせ、大規模ネットワーク時代のデジタルセキュリティに新たな選択肢を示す成果です(Nature Electronics 掲載)。

記事を読む 出典:Mirage News(KAUST/Nature Electronics)
レーザー顕微鏡2026年7月

ハイドロゲル光ファイバで乳がんを内側から撮像——太さ0.1mm級の柔らかいファイバ(ハルビン工程大)

中国・ハルビン工程大の張宇(Yu Zhang)らが、生体適合性の高いハイドロゲル製マルチモード光ファイバ(HMMF)を開発しました。太さ約120〜200µmと細く、数百µm幅しかない乳管など体内の狭い空間にも入り込めます。クモの糸の紡糸に着想を得た延伸紡糸法で作り、水分を保って数日の安定性を確保、980nmで1.05dB/cmと低損失。ファイバ先端から光を送って組織のスペックル像を取得し、二段階のマルチモードファイバイメージングと深層学習で、正常・浸潤がん・乳管がんを93.97%の精度で分類しました。従来の硬いファイバより低侵襲で、乳がんの早期発見や体内センシング・手術ナビへの応用が期待されます(Optics Express 掲載)。

記事を読む 出典:optics.org(Harbin Engineering University/Optics Express)
レーザー分光2026年7月

自宅で測る「肌の水分量」——近赤外の拡散反射で皮膚の奥まで(中国医学科学院/カーディフ大)

中国医学科学院・北京協和医学院とカーディフ大などのチームが、皮膚の水分量を手軽に測る小型の近赤外センサーを開発しました。アトピー性皮膚炎(AD)では水分保持が症状の鍵ですが、従来法は表面止まりで、皮膚病変や環境ノイズに弱く携帯測定が困難でした。そこで皮膚の各層から戻る光を解析する拡散反射分光を採用。910nmと970nmの2波長と専用プローブ形状で、表面ではなく皮下の水分変化を捉えます。温度で変わる皮膚の光学特性を補正する「温度対応アルゴリズム」を組み合わせ、光強度のゆらぎや熱ドリフトに強くしました。新指標「光学水和指数(OHI)」でAD患者と健常者を高精度に判別し、保湿剤塗布後の短時間の変化も追跡。在宅での非侵襲モニタリングに道を開きます(APL Photonics 掲載)。

記事を読む 出典:optics.org(Chinese Academy of Medical Sciences/Cardiff University/APL Photonics)
量子光学2026年7月

量子もつれで衛星⇄地上の「時刻」を守る——妨害を即座に検知するもつれ光源(豪CSIRO)

オーストラリアのCSIROが、衛星測位・時刻配信(GNSS)信号への妨害やなりすましに対抗するため、持ち運び可能で高フラックスな量子もつれ光子源「Quantum Light Source」を開発し、国防科学技術グループ(DSTG)へ2台納入しました。シンプルなガラスキューブで、反対方向に進む光子対を量子もつれ状態にします。片方を地上に残し、もう片方を数百km上空の衛星へ送っても相関が保たれ、安全な通信リンクを張れます。量子もつれは干渉に極めて敏感で、第三者が信号を傍受・改ざんすると量子状態が変化するため妨害を即座に検知でき、別チャンネルへ切り替えられます(もつれ配送)。防衛用途に限らず、通信網・電力網・金融など民生インフラの高信頼な時刻同期にも波及する成果です(CSIRO)。

記事を読む出典:phys.org(CSIRO)
光学素子2026年7月

極薄「回折レンズ」が光を針状に集束——OCTの撮像深さを9倍に(中山大学)

中国・中山大学のHaowen Liangらが、厚さわずか約7µmの多層回折レンズで光を細く長い「光ニードル(optical needle)」に集束させ、光コヒーレンストモグラフィー(OCT)の撮像深さを従来比で約9倍に高めました。数百万個の微細な階段状構造で複数の光学機能を1枚に集約し、800〜900nmの広帯域光を横幅2.4µm・焦点深度2,640µm(深さ対幅比1,100:1)の針状ビームに整えます。従来の対物レンズを置き換えるだけで、組織の表面の微細構造と深部を同時に高解像度で捉えられます。眼科診断の早期化や、将来はスマートフォンのカメラなど小型・低コストな撮像系への応用が期待されます(Optics Letters 掲載)。

記事を読む出典:phys.org(Optica/Sun Yat-sen University/Optics Letters)
レーザー顕微鏡2026年7月

電子を「アト秒」で動かして観る——超高速STMが量子力学の時空間限界に到達(レーゲンスブルク大/MPI)

独レーゲンスブルク大(J. Repp、R. Huberら)とハンブルクのマックス・プランク研究所(A. Rubioら)が、新開発のレーザー系を用いた超高速走査トンネル顕微鏡(STM)で、電子の位置と時間発展を同時に任意の精度では決められない「時空間限界」を初めて観測しました。金属探針から銀表面へ数原子径だけ離れた距離を、2つの光パルスの時間差を変えながら電子を移動させ、トンネル過程をアト秒(10⁻¹⁸秒)の時間分解能で捉えました。電子を狭い時空間に閉じ込めると波束が空間的に広がる、という関係も直接測定。将来はCMOSの数十万倍速い電子制御や、化学結合を狙って切る・変える反応制御への応用が見込まれます(Nature Photonics 掲載)。

記事を読む出典:phys.org(University of Regensburg/Max Planck Institute/Nature Photonics)
量子光学2026年7月

2,000個の原子を光ピンセットで整列——量子コンピュータ向けレーザー光学系(フラウンホーファーILT)

ドイツのフラウンホーファーILT(アーヘン)が、シュツットガルト大学第5物理学研究所で建設中の量子コンピュータ向けに、2,000個のリュードベリ原子をサブミクロン精度で配置する高度なレーザー光学系を開発しました。20行×100列に個別制御できる2,000本のレーザー焦点を、超小型の真空チャンバー内へ投影。それぞれが光ピンセットとして働き、原子どうしが相互作用するのに必要な3.5µmの間隔で捕捉・保持します。量子論理演算はこの原子配列上で進み、多数の量子ビットを密に集積できます。実用的な量子コンピュータのスケールアップに向けた基盤技術です(Fraunhofer ILT/シュツットガルト大学)。

記事を読む 出典:phys.org(Fraunhofer ILT/University of Stuttgart)
レーザー分光2026年6月

持ち運べる「紫外デュアルコム分光計」で大気汚染物質を実時間で指紋分析(オーストリア・グラーツ工科大)

オーストリア・グラーツ工科大(TU Graz)のBirgitta Bernhardtらが、世界初の広帯域紫外(UV)デュアルコム分光計を小型・モバイル化し、大気汚染ガスを実時間で高精度に「指紋」分析できることを示しました。わずかに繰り返し周波数の異なる2台の周波数コムの干渉を使い、高い光周波数を扱いやすい無線周波数帯へ変換します。分解能1GHz・帯域12THz・1秒以下の取得時間で、最大2.5km先の分子の吸収スペクトルを捉えます。UV領域は分子の電子遷移を励起でき大気の光化学反応に直結する重要領域ですが、コム光源が乏しく未開拓でした。本装置はホルムアルデヒドの微細な吸収線を多数新たに観測し、1960年代以来教科書に載る回転定数の誤りを最大15%修正。複雑な電子安定化装置が不要で、大気計測・バイオセンシング・呼気診断への応用が期待されます(PhotoniX 掲載)。

記事を読む 出典:Laser Focus World(TU Graz/PhotoniX)

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