フォトニクス最新ニュース
世界の光技術に関する最新動向を、信頼できる情報源から厳選してお届けします。レーザー顕微鏡、レーザー分光、量子光学をはじめ、幅広いフォトニクス領域の研究開発・産業動向をわかりやすく解説します。
目に見えない赤外の弱い光を、その場で見える光に変える素子——InGaAs/InPのアバランシェ型フォトトランジスタでアンバーLEDを点け、入射赤外光の1万7千倍の明るさ・動作電圧1.4V(米ワシントン大学ほか)
暗視や医療用の赤外イメージングでは、目に見えない赤外の光を可視光に変換(アップコンバージョン)して直接のぞけるようにしたい。非線形光学結晶を使う方法は効率が低く、大きな結晶と強い励起レーザーを必要とする。赤外用の高利得受光素子で発生させた電流で可視LEDを直接駆動する方式は以前からあるが、赤外感度・高利得・低電圧を同時に満たせずにいた。米ワシントン大学・イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校・エール大学のチームは、InGaAs/InPのアバランシェ・ヘテロ接合フォトトランジスタを設計し、トランジスタの増幅作用とアバランシェ増倍の間に正のフィードバックが働く構造にした。これによりブレークダウン電圧は1.4Vまで下がり、入射強度6.4nW/cm²(夜間の自然光=夜天光に近い水準)の赤外光でアンバー色のLEDを点灯させ、入射した赤外光より1万7千倍以上明るい可視光を得ている。研究チームは、固体素子だけで構成できるため、ウェアラブルで直接のぞける暗視装置に向かう道筋になるとしている。現時点では単素子での実証で、画素アレイ化は今後の課題としている。
「あとで測った記録」を使って過去の光の量子状態を測り直す——量子状態スムージングを光共振器で初めて実証し、純度で10.3%・スクイージングで7.6%ぶん真の状態に近づける(理化学研究所/東京大学ほか)
雑音を含む観測記録から過去のある時刻の状態を推定するとき、その時刻より後に取れた記録も使う処理を「スムージング」と呼び、古典的な信号処理では広く使われている。ところが量子の世界では測定そのものが状態を変えてしまうため、古典の計算式をそのまま当てると不確定性原理に反する「物理的に解釈できない状態」が出てしまう。この矛盾を避ける手法が2015年に理論提案されていたが、実験で確かめる基準をどう用意するかが難しく、実証例がなかった。理化学研究所量子コンピュータ研究センターと東京大学、豪グリフィス大学などのチームは、光共振器に閉じ込めたスクイーズド光を対象に、共振器から出る光を二手に分けて2台の検出器(AliceとBob)で測る実験系を組み、「推定する側には見えない情報を別の観測者が測っている」という理論上の設定を再現した。装置の損失や検出効率を反映したモデルで解析すると、推定時刻までの記録しか使わない従来のフィルタリングより、真の状態に近い推定が得られた。改善が最大となる測定条件では、真の状態との差が純度で10.3±1.6%、スクイージングで7.6±2.6%縮まった。研究チームは、測定記録を保存して後から処理する量子計算や量子センサーの状態評価・校正に使えると述べている。今回の対象は線形ガウス量子系に限った原理実証で、非ガウス状態への拡張は今後の課題としている。
重なり合った別々の光源の光を、チップが自分で解いて出口ごとに振り分ける——シリコン光回路の自己構成型干渉計で部分コヒーレント光を成分ごとに物理的に分離(米スタンフォード大学ほか)
干渉を乱す厄介者として扱われがちな部分コヒーレント光も、その相関を設計できればイメージングや光情報処理に使える。ただし従来はトモグラフィーと数値再構成で「調べる」だけで、未知の光を互いに干渉しない成分(コヒーレンスモード)に実際に分けることはできなかった。米スタンフォード大学、オーストリア科学技術研究所、グラーツ大学、イタリア・ミラノ工科大学などのチームは、シリコンフォトニクスの回路に多段の自己構成型干渉計を組み、その場での勾配法による最適化でコヒーレンシー行列の固有ベクトルと固有値を求める方式を実証した。状態を壊さずに測りながら、最適化が終わった時点で光が成分ごとに別の出口へ分かれている点が特徴で、強度分布が重なっていても空間的に直交する成分を分離できる。実験では独立な2台のレーザーからの重なった光を9入力でサンプリングし、強い2つのコヒーレンスモードを分離、ランク3の条件でも動作を確認した。必要な部品数は行列のランクに比例して増えるだけで済むという。研究チームは、光通信の多重分離や散乱環境でのイメージング、光コンピューティングの前処理に向くとしており、現時点ではチップ上での原理実証の段階である。
固体の表面にはりつく「界面の水」だけを、大量のバルクの水から切り分けて測る——液層の厚みを約12〜384nmで変えながら軟X線吸収スペクトルを多変量解析(豊橋技術科学大学/東京科学大学/分子科学研究所)
固体の表面や生体膜のすぐ近くにある水(界面水)は、バルクの水とは違う構造と動きを示し、吸着や分子認識、水中での化学反応に関わる。バイオセンサーや体内に埋める医療機器では、この界面水の状態が性能を左右する。酸素K殻のX線吸収分光は水の水素結合の様子に敏感だが、測定量の大部分をバルクの水が占めるため、界面水の弱い寄与が埋もれてしまうという問題があった。豊橋技術科学大学・東京科学大学・分子科学研究所のチームは、分子科学研究所のUVSOR-III放射光施設の軟X線ビームラインで、厚さ100nmの窒化シリコン膜で液層をはさんだ透過型のセルを使い、周囲のヘリウム圧で液層の厚みを約11.7〜384.0nmまで変えながらスペクトルを27〜30点取得した。厚みを変えるとバルク水の寄与だけが増え、界面側はほぼ一定にとどまるという違いを手がかりに、多変量曲線分解(MCR-ALS)でバルク水と界面水の2成分に分離している。得られた界面水のスペクトルは、SiO₂/Si₃N₄表面では537eVと541eV付近に明確な構造を示し、リン脂質二重膜(DOPC)上では幅の広い形になった。研究チームは、前者は表面のOH基に強く束縛された水和層、後者はより多様な水素結合環境を反映したものと見ており、埋もれた固液界面や膜と水の界面の電子状態を測る一般的な手法になりうるとしている。測定は放射光施設が前提である。
1種類の発光材料だけで白く光るLEDをつくる——ユウロピウムを含むペロブスカイトのナノ結晶で演色性CRI 85.7・外部量子効率8.3%、256×256の駆動回路に載せて動画を表示(中国・華中科技大学ほか)
ペロブスカイトのLEDは赤・緑・青で効率が揃わず、画素ごとに塗り分ける微細加工にも載りにくいため、フルカラーの表示装置にしにくいという課題があった。中国・華中科技大学の武漢光電国家研究センターなどの研究チームは、白い光を1種類の発光材料だけで出し、色はカラーフィルターで分ける組み合わせを試した。ヨウ化セシウムユウロピウム(CsEuI₃)のペロブスカイトナノ結晶の表面にmCPという分子を配位させると、結晶内部のEu²⁺による青色の発光が保たれたまま、表面側で長波長の発光が加わり、合わせて白色になる。演色性の指標CRIは85.7、色度座標は(0.33, 0.34)、外部量子効率は最大8.3%、輝度は最大8,941cd/m²だった。研究チームはこの材料を256×256のアクティブマトリクス駆動チップの上に直接つくり込み、動画とNTSC比124%の色域のフルカラー画像を表示している。表面の配位子を選ぶことが、希土類を使う発光材料で発光スペクトルと電気的な励起の両方を扱う手がかりになるとしている。
胸のCT画像から「光がどこまで届くか」を計算して、肺に当てる光の量を患者ごとに決める(ブラジル・サンパウロ大学ほか)
体の外から光を当てて肺の感染や炎症を治療しようとすると、光は皮膚・脂肪・筋肉・骨を通る間に吸収と散乱を受けるため、同じ強さを当てても肺に届く量は人によって変わってしまう。ブラジル・サンパウロ大学サンカルロス物理学研究所などの研究チームは、CT画像から12種類の組織と構造を見分けて三次元の胸を組み立て、組織ごとの光学特性を与えたうえで、数百万個の光子がどこで散乱し吸収されるかをモンテカルロ法で追う計算を行った。この「デジタルツイン」から、照射時間に応じて肺のどの部分に光がどれだけ届くかを三次元の地図として出せる。肺に病気のない1人と、部分的な細菌性肺炎・広がった細菌性肺炎・新型コロナウイルスによる肺炎の患者3人のCTで試すと、正常に空気が入る領域は91%から58.9%・54.1%・69.9%へ減っており、組織が詰まることで光の通り方も変わっていた。別の2人では実際に光の分布を測り、計算と比べている。研究チームは、光線力学療法で薬を働かせるのに足りる光が届いているかを患者ごとに見積もる使い方を挙げており、今後は臨床での検証と、照射しながら線量を測ることを進めるとしている。
可視光で撮った画像から赤外の画像を推し量る——受光素子そのものの応答を計算に組み込んでずれを抑える(中国科学院大学杭州高等研究院ほか)
可視光の画像から赤外の画像を言い当てる計算は、答えが1つに決まらない。同じ可視画像に対して、ありえる赤外画像がいくつもあるためだ。中国科学院大学杭州高等研究院などの研究チームは、PdSe₂/h-BN/WSe₂を重ねたファンデルワールス材料のトンネル型受光素子を実際につくり、波長・光のパワー・ソース-ドレイン電圧・ゲート電圧で決まるその素子の応答を校正し、微分できる「応答の層」として計算の中に組み込んだ。画像の見た目だけを合わせるのではなく、予測した赤外画像をその素子に当てたときに出るはずの信号の大きさと符号まで拘束として使ったところ、可視から赤外への変換でピーク信号対雑音比26.58dB・構造類似度0.89を得た。64通りのマスクを使い、波長1310nmで光を当て直したときの応答の一致も確かめている。赤外の画像を得るには専用の受光素子を面状に並べるのが一般的だが、研究チームは、可視の画像と素子1個の実測応答から赤外の情報を補う枠組みとして、試した条件の範囲では画像の復元と応答の整合性を同時に扱えたとしている。
2種類の二次元材料だけで、単一光子の発生から導波までをチップ上に収める——WSe₂にひずみを与えて光らせ、WS₂の導波路へ通す(デンマーク工科大学)
光を使った量子情報の装置を大きくしていくには、光子を1個ずつ出す光源と、それを運ぶ光導波路と、検出器を1枚のチップに載せたい。デンマーク工科大学の研究チームは、2層のWSe₂に局所的なひずみを与えて単一光子の発光体をつくり、それをWS₂でできた多モードの導波路と格子結合器につないだ。発光は明るく偏光がそろっており、導波路へ効率よく入る。離散的な準位を狙って励起したとき、導波路を通った光子の純度はg(2)(0)=0.003(+0.030/−0.003)、複数の出口で相関を取った場合は0.076±0.023だった。連続光で励起したときの取り出し計数率は1つの出口で毎秒約35万7千カウント、導波路に結合している分を見積もると毎秒1.68×106カウントになる。研究チームは、光源と導波路を同じファンデルワールス材料系で揃えられる点を挙げ、集積量子フォトニクスを広げる一歩としている。
シリコンの中の発光欠陥「W中心」を円形ブラッグ格子の真ん中に置く——波長1217nmで毎秒129万カウント、単一光子の純度93%(仏CEA-LETI/グルノーブル・アルプ大学)
シリコンは光回路を量産できる数少ない材料だが、そこに載せる近赤外の単一光子源の性能が足りないことが課題だった。仏CEA-LETIとグルノーブル・アルプ大学などの研究チームは、シリコン中の発光欠陥である色中心「W中心」を1個だけ、円形のブラッグ格子でできた微小共振器の中心へナノメートルの精度で配置した。共振器がW中心のゼロフォノン線(波長1217nm)を強め、連続光で励起したときの飽和計数率は毎秒1.29×106カウント、光子が1個ずつ出ていることを示すアンチバンチングはg(2)(0)=0.06±0.02だった。パルス励起では純度93±2%の単一光子が得られている。飽和に近づくと再励起によって純度が落ちることも分かり、励起の仕方を選べば抑えられるとしている。研究チームは、既存のシリコンフォトニクスの製造工程に乗せられる光源として、量子通信や光量子計算の部品に近づく成果だとしている。
強い光でグラフェンの電子がバンドギャップを飛び越える瞬間をコマ送りで撮る——飛び移る確率は最大100%(独ユーリヒ研究センター/レーゲンスブルク大学/マールブルク大学)
電圧ではなく光の振動そのもので電子を動かす素子をつくるには、電子がエネルギーの切れ目(バンドギャップ)を飛び越える瞬間を見る必要がある。独ユーリヒ研究センターとレーゲンスブルク大学、マールブルク大学の研究チームは、強い赤外光のパルスと光電子分光の運動量顕微鏡を組み合わせ、グラフェンの中で電子がエネルギー地形のどこをどう動いているかを、光の1周期より短い時間刻みで地図として記録した。試料にはユーリヒで作った高純度の「ねじれ」グラフェンを使っている。その結果、電子がギャップに近づく速さが十分であれば、ランダウ・ツェナー遷移の確率が最大100%に達することが分かった。空間的な壁をすり抜ける通常のトンネル効果とは起こり方が異なるという。研究チームは、この方法は他の量子材料にも使え、光で電子を制御するときに何が妨げになるかを見極める道具になるとしている。
可視光の量子光回路を、CMOSの製造ラインでつくる低閉じ込め窒化シリコン導波路で組む——780nmで伝搬損失2.6dB/m、位相シフタ1段あたり0.63dB(米アリゾナ大学ウィアント光科学カレッジ/サンディア国立研究所/コロラド大学ボルダー校)
光量子計算を大きくしていくには、損失が小さく、速く・低消費電力で・ヒステリシスなく経路を切り替えられる光回路が要る。単一光子源や量子メモリの多くは可視から近赤外の短い波長で動くが、この波長域では低損失と可変性の両立が難しく、熱で屈折率を変える方式は静的な電力を食って隣の導波路まで温めてしまう。研究チームは、CMOSのファウンドリで製造できる低閉じ込めの窒化シリコン導波路に、圧電で導波路をわずかに伸び縮みさせる光機械的な位相シフタを組み合わせた。波長780nmでの伝搬損失は2.6dB/m、変調帯域はメガヘルツ級、半波長分の位相を振るのに必要な電圧と長さの積は2.8V·m、ヒステリシスはほぼ無い。位相シフタ1段あたり0.63dBの損失で可変マッハツェンダー干渉計を動かし、段数を重ねても使える可視光の光量子計算回路の土台を示した。研究チームは、鉛系の圧電材料を使う従来方式と違って既存の半導体製造ラインに載る点を強調している。
紫外の光を薄膜タンタル酸リチウムの回路上で40GHz超で変調する——長さ200µmの電極で変調効率VπL 85mV·cm(ベルギー・ゲント大学/imec)
ベルギーのゲント大学とimecの研究チームは、タンタル酸リチウムの薄膜を使った紫外用の電気光学変調器を集積光回路の上に作り、実測で3dB帯域40GHz超を確認したと報告した。イオントラップ型の量子コンピューターや持ち運べる光原子時計、太陽光の影響を受けにくい紫外通信では、紫外の光を高速に変調する必要がある。ところが可視・赤外では集積化が進んだ一方、紫外の高速変調は今もバルクの結晶を使った装置に頼っており、挿入損失の小ささと小型化と変調効率を同時に満たす集積部品がなかった。チームは紫外域でも透明度が保たれるタンタル酸リチウムの薄膜を選び、電極の長さを200µmに抑えた集中定数型の構造にして、電気から光へ、光から電気へ戻したときの3dB帯域が40GHzを超えること、電気のみの帯域は67GHz以上あること、半波長分の位相を振るのに必要な電圧と電極長の積(VπL)が85mV·cmであることを測定した。研究チームは、この材料がウエハー単位の製造工程に乗せられる点を強調しており、紫外を扱う量子・通信システムを集積化する土台になるとしている。装置として使うには、レーザー光源や検出器との一体化が次の課題になる。
イメージセンサーの色フィルターで光を捨てるのをやめる——4本の樹脂ナノピラーで赤・緑・青を振り分け、露光時間3分の1で同じ色再現(シンガポール工科デザイン大学ほか)
シンガポール工科デザイン大学(SUTD)を中心とするシンガポール・中国・日本の研究チームは、イメージセンサーのベイヤー配列の色フィルターに代えて、光を吸収せずに行き先へ振り分ける「カラールーター」を低屈折率の樹脂で作ったと報告した。ベイヤー配列は赤・緑・青のうち1色だけを通して残りを吸収するため、入ってきた光の3割程度しか使えず、暗い場所では露光時間が伸びてノイズや被写体ぶれが増える。従来のカラールーターは酸化チタンや窒化ガリウムのような屈折率の高い材料を前提にしており、多段の微細加工が必要だった。チームは二光子重合による3次元のナノ加工で、1組あたり4本の円柱状ナノピラーを高さと太さを変えて並べ、4本が散らした光の干渉で色ごとに進む先が決まる設計にした。粒子群最適化で形状を探索し、シミュレーションでは可視域の振り分け効率が約90%、1mm角に25万組を並べた実物では約70%で、従来のフィルターの2〜3割台を上回った。露光時間を3分の1にしても色再現は改善したという。研究チームは、ピラーが平らな土台の上に立つだけで覆いかぶさる構造がないため量産の型取りに向くとしており、次はイメージセンサーに直接載せて実際の露光時間やノイズでの効き方を確かめる段階だとしている。
がん細胞の塊を透明にして、細胞1個ずつの形から薬の効き方を見分ける——抗がん剤52種で検証(スウェーデン・ウプサラ大学)
ウプサラ大学の研究チームは、創薬で広く使われている画像解析法「Cell Painting」を、立体的に育てたがん細胞の塊(スフェロイド)の内部にある細胞1個ずつに適用できるようにしたと報告した。Cell Paintingは複数の蛍光色素と撮像チャンネルを組み合わせて細胞の各部を描き分け、大きさや形、明るさの違いから多数の形態的な特徴を数値化する手法だが、これまでは平面培養が対象だった。細胞が数層以上重なると光が散乱して奥が見えないためで、立体試料では塊全体を1枚の画像にまとめて平均してしまうことが多かった。チームは均一な大きさのスフェロイドをマイクロプレートで育て、フルクトースとグリセリンの水溶液で透明化してから、スピニングディスク共焦点で光学切片を撮った。塊の向きを撮像前に自動判定して位置ずれを補正する検出アルゴリズムも組み込んでいる。この方法で抗がん剤52種を試したところ、平面培養ではほとんど区別できなかった5-フルオロウラシルとオラパリブの作用が、立体試料では明確に分かれた。違いが見えたのは塊全体ではなく細胞ごとに見たときで、5-フルオロウラシルはDNA損傷が少ない一方で細胞分裂を止める働きが強いことも分かったという。研究チームはアストラゼネカの研究者と共同で、開発した研究室の外でも同じ手順が回ることを確かめている。次は肝細胞のように平面培養では再現しにくい立体モデルへ広げる予定としている。
シリコンにらせん状のばねを刻んで曲げられるようにする——引っ張る量でテラヘルツ波の実効屈折率を6〜8%動かす(大阪産業技術研究所/大阪大学/東北大学)
大阪産業技術研究所(ORIST)と大阪大学、東北大学の研究チームは、シリコンにらせん状のばねを刻むことで曲げ・伸ばしができるようにし、変形の量でテラヘルツ波に対する実効屈折率を変えられる材料を作ったと報告した。テラヘルツ波はマイクロ波と光の間の周波数帯にあり、材料検査や次世代の無線通信での利用が期待されている。シリコンはこの帯域で損失の小さい光学部品の材料になるが、作った部品は硬く、衝撃で割れやすい。チームはMEMSの微細加工で厚さ200µmのシリコンウエハーに幅10µmのらせん状の溝を貫通させ、腕の幅が約10µmのばね構造を200µm間隔で並べた。樹脂や金属の裏打ちがいらない自立構造で、シリコンと空気の体積比と並び方で決まる実効屈折率は、引っ張ると空気の割合が増えて下がる。テラヘルツ時間領域分光で測ると、12.6%伸ばしたときに実効屈折率は引っ張り方向に垂直な偏光で約6%、平行な偏光で約8%下がり、2つの偏光の差=複屈折も変形で調整できることが示された。研究チームは、機械的な変形がテラヘルツのシリコンフォトニクスにとって新しい調整手段になるとし、MEMS技術を使った可変のテラヘルツ集積回路につながるとしている。現時点では屈折率の変化幅が数%にとどまり、素子として使うには構造の作り込みが要る。
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