フォトニクスニュース 過去ログ
これまでに掲載した世界の光技術ニュースを月別にまとめたアーカイブです。レーザー顕微鏡、レーザー分光、量子光学をはじめ、幅広いフォトニクス領域の研究開発・産業動向を、カテゴリで絞り込んでご覧いただけます。
2色の赤外レーザーで分子の「かたち」を制御——隠れた指紋を暴く(フリッツ・ハーバー研究所)
ドイツ・フリッツ・ハーバー研究所の研究チームが、高度に同期させた2本の赤外(IR)レーザーを使い、分子が異なる立体構造(配座)へ切り替わる様子を制御できることを示しました。極低温のヘリウム液滴中の分子に波長の異なる2つのレーザーを当て、赤外分光で通常は見えない構造の「指紋」を引き出します。分子が化学反応の途中でどのように組み替わるかを観察する新しい窓口となり、反応を支配する微視的プロセスの基礎的理解につながります(Fritz Haber Institute)。
冷却不要で「置くだけ」の単一光子源——19インチラックに集積、室温動作(韓国KRISS)
韓国標準科学研究院(KRISS)が、極低温冷却を必要とせず室温で動作する単一光子源を、19インチラックに収まる小型装置として開発しました。電源を入れればすぐ使える「プラグ&プレイ」設計で、量子光源技術を実験室の外の実地利用へと近づけます。光子を1個ずつ生成する単一光子源は、量子通信・量子計算・量子センシングの出発点となる要素です。決定論的な空間マッピング技術で光子の位置を精密に定め、扱いやすさと安定性を両立しました(Laser & Photonics Reviews 掲載)。
自宅で測る「肌の水分量」——近赤外の拡散反射で皮膚の奥まで(中国医学科学院/カーディフ大)
中国医学科学院・北京協和医学院とカーディフ大などのチームが、皮膚の水分量を手軽に測る小型の近赤外センサーを開発しました。アトピー性皮膚炎(AD)では水分保持が症状の鍵ですが、従来法は表面止まりで、皮膚病変や環境ノイズに弱く携帯測定が困難でした。そこで皮膚の各層から戻る光を解析する拡散反射分光を採用。910nmと970nmの2波長と専用プローブ形状で、表面ではなく皮下の水分変化を捉えます。温度で変わる皮膚の光学特性を補正する「温度対応アルゴリズム」を組み合わせ、光強度のゆらぎや熱ドリフトに強くしました。新指標「光学水和指数(OHI)」でAD患者と健常者を高精度に判別し、保湿剤塗布後の短時間の変化も追跡。在宅での非侵襲モニタリングに道を開きます(APL Photonics 掲載)。
ハイドロゲル光ファイバで乳がんを内側から撮像——太さ0.1mm級の柔らかいファイバ(ハルビン工程大)
中国・ハルビン工程大の張宇(Yu Zhang)らが、生体適合性の高いハイドロゲル製マルチモード光ファイバ(HMMF)を開発しました。太さ約120〜200µmと細く、数百µm幅しかない乳管など体内の狭い空間にも入り込めます。クモの糸の紡糸に着想を得た延伸紡糸法で作り、水分を保って数日の安定性を確保、980nmで1.05dB/cmと低損失。ファイバ先端から光を送って組織のスペックル像を取得し、二段階のマルチモードファイバイメージングと深層学習で、正常・浸潤がん・乳管がんを93.97%の精度で分類しました。従来の硬いファイバより低侵襲で、乳がんの早期発見や体内センシング・手術ナビへの応用が期待されます(Optics Express 掲載)。
散乱をむしろ味方に——「回折光ニューラルネットワーク」で濁った媒質越しに像を復元(UCLA)
米UCLA(Aydogan Ozcanら)が、生体組織のように光を散らす「濁った(散乱)媒質」の内部に、学習させた受動的な回折光ニューラルネットワークの層を層状に埋め込むことで、未知の散乱体の向こう側にある物体の像を光だけで復元する新方式を実証しました。散乱体の中に最適化した回折層を分散配置することで、光の伝搬そのものを情報復元プロセスの一部として使えます。可視光での実験でも像の復元に成功し、バイオメディカルイメージング、リモートセンシング、光通信への応用が期待されます(Laser & Photonics Reviews 掲載)。
光だけで動く内視鏡先端カメラ——世界初のチップオンチップFLIMマイクロカメラ(Tyndall)
アイルランドのTyndall National Instituteが、電池も配線も使わず「光」だけで駆動する超小型の生体内デバイスで2つの世界初を達成しました。外径わずか4mmの内視鏡スケールで、先端のカメラチップは光ファイバで送った光を多分割の太陽電池で受けて発電し、完全に光給電で動作します。さらに世界初となる内視鏡スケールの蛍光寿命イメージング(FLIM)マイクロカメラを実現し、30µm以下の微細構造を分解します(Optics Letters 掲載)。
特別な素材なしで光を「ねじる」——自由空間で生まれるキラル光(英UEA/南ア Wits)
英イーストアングリア大(UEA)と南アフリカ・ヴィットヴァーテルスラント大(Wits)が、特別な材料やメタサーフェス、強い集光を使わずに光のキラリティ(ねじれ)とスピン角運動量を生成・制御する新手法を示しました。偏光が場所ごとに変化する構造化ビームを自由空間で伝搬させると、最初は円偏光成分が無くてもスピンが局所的に立ち上がり、領域ごとに分離します。鍵は伝搬しても保たれるビームの「トポロジー」で、パンチャラトナム位相指数が制御の指標になります。軌道角運動量(OAM)は整数で何通りにもねじれるため、情報符号化の「文字数」を大きく増やせます。生体・医薬品のキラルセンシングや、古典・量子通信への応用が期待されます(Light: Science & Applications 掲載)。
小さな金属部品をミクロン精度で3D計測——「二光子デュアルコムLiDAR」(英ヘリオット・ワット大)
英ヘリオット・ワット大のDerryck Reidらが、精密測定機器メーカーRenishawとの共同で、対象までの距離を非接触でミクロン精度計測できる新方式のLiDARを開発しました。2台のモード同期レーザーが作るデュアルコム(光周波数コム)測距に、二光子吸収を使った完全電子式の検出を組み合わせ、40cm先のアルミ加工部品を9〜38ミクロンの精度で点群化。製造現場の非接触検査・品質管理への応用が期待されます(Optics Letters 掲載)。
「メタサーフェス」で太陽の磁場を一発撮影——実用装置への初応用(UCサンディエゴ/BAE)
米UCサンディエゴのNoah Rubinらが、極薄の平面光学素子「メタサーフェス」を実用の科学観測装置に初めて組み込みました。太陽撮像メタサーフェス偏光計「SIMPol」は偏光を回折次数へ空間的に振り分け、可動部なしに複数の偏光画像を同時取得します。Dunn太陽望遠鏡で黒点の磁場を定量マッピングし、NASAの最新宇宙ミッションに匹敵する結果を得ました(Science Advances 掲載)。
短寿命の稀少同位体を「飛行中」にレーザー分光——韓国初、原子核構造研究へ(IBS IRIS)
韓国・基礎科学研究院IRISを中心とする共同チームが、稀少同位体ビームを用いた韓国初のレーザー分光実験に成功。イオン・原子ビームとレーザーを一直線に重ねるコリニアレーザー分光装置「CLaSsy」で、秒速約40万mで飛行する短寿命核の電子構造を崩壊前に測定しました(Journal of Instrumentation掲載)。
「数ピコメートルの鏡のズレ」が系外惑星の直接撮像を左右(米研究)
米国の研究チーム(Sanchez-Soriaら)が、分割鏡(セグメント鏡)を持つ将来の大型宇宙望遠鏡で系外惑星を直接撮像する際、鏡セグメント間のごくわずかな位置ずれ(波面ドリフト)が画像処理性能をどれだけ損なうかをシミュレーションで評価しました。コロナグラフと、RDI・ADI・CDIという3種の差分画像処理を比較したところ、地球型や金星型の惑星を検出するには「10分あたり2ピコメートル未満」というセグメント整列の安定性が必要だと判明。大規模な光学的ゆがみよりも、セグメント間の微小なズレの方がはるかに悪影響が大きいことを示しました。次世代宇宙望遠鏡の設計指針となる成果です(Journal of Astronomical Telescopes, Instruments, and Systems 掲載)。
液晶マイクロ共振器で離れたレーザーを同期、室温で「スーパーモード」発振
英サウサンプトン大・ワルシャワ大などの欧州チームが、液晶と有機色素を封入した微小な光共振器の中で、数十マイクロメートル離れた複数の微小レーザー発光点を自発的に位相同期させ、空間的に広がった単一のコヒーレント光「スーパーモード」として発振させることに成功。従来は極低温・強結合領域でしか観測されなかった現象を、室温・弱結合の簡素な材料系で実現しました。電圧で液晶分子の向きを変えると発光点間の結合のオン/オフや強度、出射方向・偏光まで動的に制御でき、光コンピューティングやニューラルネットワーク、再構成可能な集積光回路への応用が期待されます(Nature Communications 掲載)。
レーザーで光学部品に「位置合わせ」を作り込み、フォトニクス製造を低コスト化(英ヘリオット・ワット大)
英ヘリオット・ワット大発のFreeForm Photonicsが、光学ガラス部品そのものにレーザーで受動的な位置合わせ構造を直接作り込む製造法を実用化へ。フォトニクス製造コストの半分以上を占めてきた手作業のアライメント調整を不要にし、サブミクロン精度で高速・安価な組立を可能にします。量子コンピュータや次世代医療診断、光通信インフラなど、これまで手作業で組み立てられてきた光部品の量産化に道を開く成果で、スコットランド・エンタープライズの支援のもと事業化が進められています。
メラニンを正確に測る——ラマン分光の信号ゆがみを補正(ICFO)
スペイン・ICFO(光科学研究所)のチームが、生体に多く含まれるメラニン色素をラマン分光で正確に分析するための補正法を開発。強い蛍光バックグラウンドや、レイリー光除去フィルターに由来する波打ち(リップル)といった信号のゆがみを取り除き、色(色素量)の異なる試料どうしを正しく比較できるようにしました。皮膚や腫瘍など、メラニンが関わる組織の非侵襲診断への応用が期待されます(Journal of Physical Chemistry Letters 掲載)。
円偏光レーザーで核融合実験の後方散乱を低減、光学素子の損傷を抑制(米LLNL)
米ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)が、国立点火施設(NIF)の慣性閉じ込め核融合で使う192本のレーザーについて、光の偏光状態が「交差ビームエネルギー移行(CBET)」に与える影響をシミュレーションで解析。直線偏光ではなく円偏光を用いると、同じ円錐に入るビーム間のばらつきが減り、後方散乱(バックスキャッター)が抑えられて光学素子の損傷を低減できることを示しました。より高出力での運転や、将来のレーザー核融合施設の設計につながる成果です(Physics of Plasmas 掲載)。
室温の光共振器で世界最高クラスのレーザー周波数安定度を達成(英NPL)
英国立物理学研究所(NPL)が、室温で動作する全長68cmの光学リファレンス共振器を用い、レーザーの相対周波数不安定度4×10⁻¹⁷を達成。これまで同等の性能は複雑な極低温装置でしか実現できておらず、室温で到達したのは初めてとされます。レーザー線幅は12mHzに達しました。超安定レーザーは光格子時計(次世代の光原子時計)の中核技術であり、高精度な時刻・周波数標準やナビゲーション、基礎物理の検証を支える成果です(Optica 掲載)。
「超放射」でDLCZの壁を破る単一光子源、量子中継器の効率を改善(ウォータールー大IQC)
カナダ・ウォータールー大の量子コンピューティング研究所(IQC)のチームが、原子集団のスピン波から光子を取り出す読み出しを「超放射」で駆動する新方式の単一光子源を実証し、量子中継器の25年来の標準である DLCZ プロトコルを上回る読み出し効率と量子相関を達成しました。超放射は発光強度が原子数の2乗で強まるため、複雑な共振器を使わずに効率を高められます。長距離の量子鍵配送や将来の量子インターネットに向けた前進で、SPIE「Photonics for Quantum 2026」(6月、ウォータールー)で発表されました。
「未開封のまま」有毒メタノールを検出するレーザー分光(セント・アンドルーズ大)
英セント・アンドルーズ大とオーストラリア・アデレード大のチームが、瓶を開けずに酒類中の有毒なメタノールを検出できる新しいラマン分光法を開発。レーザー光をリング状に整形し波長を微調整することで、瓶のガラスや主成分のエタノールからの信号を抑え、メタノール由来の信号だけを取り出します。緑・茶・青など着色ガラスの瓶でも、無色のジンやウォッカから着色したウイスキーまで対応し、検出下限0.2%(人体の安全限界の約1/10)を達成。偽造酒対策のほか、医薬品・化粧品などの非破壊検査への応用も期待されます(Journal of Physics: Photonics 掲載)。
室温・液晶マイクロ共振器で複数のレーザー点を同期、単一の「スーパーレーザー」に
英サウサンプトン大・ワルシャワ大らの国際チームが、液晶と有機色素を封入した微小な光共振器の中で、空間的に離れた複数の微小レーザー発光点を自発的に位相同期させ、全体が一つの広がったコヒーレント光源(スーパーモード)として振る舞う新方式を実証。従来は極低温・強結合領域でしか見られなかった集団的な振る舞いを、室温・弱結合の簡素な系で実現しました。電圧で液晶分子の向きを変えると発光点同士の結合のオン・オフや強度を制御でき、再構成可能なフォトニクス回路や光コンピューティングへの応用が期待されます(Nature Communications 掲載)。
「偏光まで測る」コヒーレントLiDARで距離・速度・材質を一度に取得
カナダ・トロント大とCiena社が、通信用のコヒーレント光モデムを送受信器に流用し、各走査点1回の計測で距離・速度に加えて表面の材質(偏光情報)まで同時に取得する新方式のLiDARを開発。直交2偏光を毎秒数百億回ランダム変調し、偏光の変化から距離・速度・材質を復元します。アイセーフ強度でミリ精度の測距を実現し、金属とプラスチックや本物と造花の判別、霧・雨など視界不良下での散乱透視も実証。ロボティクスや自動運転、リモートセンシングへの応用が期待されます(Optica 掲載)。
ノイズに強い新種のもつれで次世代量子センサーを高精度化(JQI/JILA)
米JQI・JILAらの理論チームが、2つの原子集団を光共振器越しの光子のやり取りで結び付け、両センサーに共通するノイズには鈍感で「差分の信号」には鋭敏な新種のもつれ状態(リープ・マティス状態)を提案。デコヒーレンスフリー部分空間を使い、レーザー周波数の揺らぎなど現行の光格子時計を悩ませる共通ノイズを打ち消します。系を大きくするほど短時間で準備でき、実用的な量子センサーの規模拡大に向く点が特長です(Physical Review X 掲載)。
離れた3つの原子量子ビットを光で結ぶ「GHZ状態」を分散生成(Duke/IonQ)
米デューク大量子センターとIonQが、約2m離して置いた3モジュール内の単一バリウムイオンを、放出された単一光子の干渉を介して結び付け、3者間のもつれ「GHZ状態」をネットワーク越しに分散生成することに成功。局所2量子ビットゲートや事後選択を使わずに忠実度84〜88%を達成し、Merminの不等式を27σ破って検出ループホールも閉じました。単一の真空槽に頼らず光接続で量子処理ノードをつなぐ、モジュール型量子計算への道を示す成果です(arXiv公開)。
光音響イメージングで生体組織内のマイクロプラスチックを初めて可視化
英UCL・キングストン大・バーミンガム大(Stephen Patrickら)が、組織にレーザーパルスを当て、マイクロプラスチック特有の光吸収で生じる微弱な超音波を検出する「光音響イメージング」により、生きたマウス体内深部のマイクロプラスチックを非侵襲・高分解能で初めて地図化。ポリプロピレンやポリエチレンの粒子を、化学標識なしで数か月にわたり追跡できました。信号量が蓄積量に比例するため、日常的な曝露と健康影響を結びつける研究への応用が期待されます(Advanced Science 掲載)。
世界最高クラス「2.0kW」のレーザーダイオードバーを開発(浜松ホトニクス)
浜松ホトニクスが、NEDO委託事業として単一バーで世界最高クラスとなる連続2.0kW出力の半導体レーザー(LD)バーを開発。LDバーは多数の発光部を一列に並べた素子で、高出力・高エネルギーの固体レーザー励起に多数使われるため、1バーあたりの高出力化が強く求められていました。成果は国際半導体レーザー会議(ISLC 2026・フィンランド/タンペレ、6月14〜17日)で発表。レーザー加工や核融合用レーザーの励起源の小型化・低コスト化につながると期待されます。
「畳み込み分光器」で約$10・センチ角の高精度分光チップ
英ケンブリッジ大とGlitterinTechが、畳み込み定理を光の領域で直接実行する新方式の「畳み込み分光器(ConvSpec)」を開発。アンバランスMZIやマイクロリング共振器を縦続接続し、位相を比例制御して分光応答をずらすことで、約10ドル・センチ角ながら据置型を上回る精度を実現しました。窒化ケイ素フォトニクス上に集積し近赤外(1200〜1700nm)で動作。プラスチックや医薬品の判別、非侵襲の血糖・血中乳酸モニタリングなどを実証しています(Nature Photonics 掲載)。
安価な「ハイブリッド固液レンズ」で大型組織を高解像3Dイメージング
米コロンビア大(Raju Tomerら)が、曲率のある固体レンズと屈折率を精密に合わせた液浸液を一体化し、単一の光学系として働かせる「ハイブリッド固液光学(HySIL)」を開発。安価な空気対物レンズで、各種の組織透明化法に対応しつつセンチメートル大の組織をサブミクロン分解能・収差なく撮像できます。ライトシート顕微鏡に統合し、マウス全脳やヒトがん生検の3D病理などへの応用を示しました(Nature Biotechnology 掲載)。
光を「映す」と「読む」を同時にこなす新型ピクセル(ETHチューリッヒ)
スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH)のDavid Norrisらが、光を出して画像を映すだけでなく、入ってくる光を解析して撮影もできる新型ピクセル「フーリエピクセル」を開発しました。ナノメートル精度で彫り込んだ表面で光を干渉させ、明暗(強度)に加えて位相や偏光まで制御・解析できます。従来のピクセルは「表示」か「撮像」のどちらかしかできませんでしたが、両方を1画素で兼ねられるため、将来はカメラとディスプレイを一体化した双方向デバイスへの応用が期待されます(Nature、6月24日掲載)。
世界初の「核時計」が稼働——原子核の振動で時を刻む(欧州・中国)
欧州(ウィーン工科大ら)と中国(清華大ら)の2チームが、原子核のエネルギー準位の遷移で時を刻む世界初の「核時計(nuclear clock)」をそれぞれ実証しました。現在の光原子時計が電子のエネルギー準位を使うのに対し、核時計はトリウム229の原子核を紫外レーザーでわずかに励起し、その「振動」を基準にします。両チームはレーザー光の吸収信号を監視して周波数を核遷移にロックし、時計の刻みが時間とともにずれないようにしました。原子核は外乱に強く結晶中で保護されるため、より頑健で可搬性が高く、将来はより高精度な時計や、核内部の力を探る新たな手段になると期待されます(arXivに6月公開、Natureが報道)。
極薄半導体で「もつれ光子」を高効率生成、忠実度99%超(ウィーン大ら)
ウィーン大学のBenjamin Braunらが、伊ラクイラ大・米コロンビア大と共同で、原子数層の極薄半導体「遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)」を周期的に分極反転させ、もつれ光子対を高効率に生成する手法を実証しました。自発パラメトリック下方変換(SPDC)では通常、嵩高い非線形結晶と複雑な光学系で位相整合を取る必要がありますが、TMDの非線形性を周期的に反転させて「擬似位相整合」を実現し、コヒーレンス長の制約を超えて変換効率を高めました。偏光もつれの忠実度は99%超を維持。ナノフォトニクス上に集積できる量子光源として、量子鍵配送や量子センサーへの応用が期待されます(arXiv公開)。
光量子プロセッサをGPUスパコンに直結、低遅延統合を実証(Quandela/NVIDIA)
仏Quandelaが、自社の光(フォトニック)量子プロセッサ(QPU)とNVIDIAのGPUインフラを、低遅延インターフェース「NVQLink」とFPGAベースの量子制御装置を介して直結する経路を実証しました。従来クラウドAPIやジョブキュー経由だった量子計算を、GPUと並ぶ「アクセラレータ」としてHPC環境の内側に同居させる新しい実行モデルを示すものです。光回路は推論中も同じ構成を保てるため、単一光子を用いる光量子計算は量子機械学習(量子リザバー計算や量子特徴マップなど)に好適。量子コンピュータをスパコンに組み込む一歩で、独・ハンブルクのISC High Performance 2026で発表されました。
レーザーで試料を非接触回転、繊細な細胞を高精細3D撮像(KIT)
独カールスルーエ工科大(KIT、Moritz Kreysing/Fan Nanら)が、レーザーで液中に微小な温度差を作り、生じる緩やかな流れで浮遊する細胞などの試料を3次元すべての方向に非接触で回転させる手法を開発。ピペットや針といった微小工具を使わず試料を傷めずに様々な角度から撮像でき、複数視点の像を統合してより高精細な3次元像を得られます。基礎医学研究のほか、非接触の微小操作・微小ロボティクスや超精密加工への応用も期待されます(Light: Science & Applications 掲載)。
量子ドット単一光子源で120kmの量子鍵配送
独中の国際チームが、テレコム帯の半導体量子ドットが放つオンデマンド単一光子と時間ビン符号化を用い、120km超の光ファイバーで安定した量子鍵配送(QKD)を実証。6時間以上の連続運転を実現し、固体単一光子源を使う実用的な量子通信網への一歩となりました(Light: Science & Applications 掲載)。
超広視野・深部対応の2光子顕微鏡「ULTRA」で脳を多階層イメージング
研究チームが、50mm²を超える超広視野で単一細胞分解能を保つ最先端の2光子顕微鏡「ULTRA」を開発。補償光学を組み込み、表層から深さ900μmまで、横方向7mm超・体積45.24mm³にわたってマウス脳の構造と神経活動を生きたまま可視化しました。広く離れた複数の脳領域を高分解能で同時に観察でき、大規模な神経回路の包括的な解析に向けた強力なツールとなります(Light: Science & Applications 掲載)。
AIで超解像SIMをリアルタイム化「UBSIM」
米UCサンディエゴ校が、構造化照明顕微鏡(SIM)の画像再構成にAI(アルゴリズム・アンローリング)を組み込んだ「UBSIM」を開発。物理モデルに基づくため偽構造(ハルシネーション)を抑えつつ、生細胞を最大50フレーム/秒の超解像動画で観察できます(Nature Communications 掲載)。
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