フォトニクスニュース 過去ログ

Photonics News & Insights — Archive

フォトニクスニュース 過去ログ

これまでに掲載した世界の光技術ニュースを月別にまとめたアーカイブです。レーザー顕微鏡、レーザー分光、量子光学をはじめ、幅広いフォトニクス領域の研究開発・産業動向を、カテゴリで絞り込んでご覧いただけます。

最終更新:2026年9月14日
2026年9月
光学素子2026年9月14日

有機ELの色を狭いまま、斜めから見ても変えない——TADF分子でポラリトン発光(独ケルン大・英セントアンドリュース大)

次世代のディスプレイには、鮮やかな色を出すために発光の波長幅が狭いことが求められます。有機EL(OLED)を微小共振器ではさむと、定在波ができて発光スペクトルを狭くできますが、こんどは見る角度によって色が変わってしまうという欠点が出ます。ケルン大学とセントアンドリュース大学のチームは、光と物質が強く結合したときに現れるポラリトンを使ってこの問題に取り組みました。ポラリトンのもとになる励起子は角度によるずれがほとんど無いため、うまく調整できれば線幅をさらに細くしながら角度依存性を抑えられます。ただし発光効率の高い熱活性化遅延蛍光(TADF)分子は振動子強度が小さく、光と強く結合させること自体が難しいという壁がありました。本研究はその条件を満たす素子構造を示し、狭帯域・角度安定・高効率を同時に満たすポラリトンOLEDを実現しています。Light: Science & Applications誌掲載。

記事を読む出典:Light: Science & Applications(ケルン大学/セントアンドリュース大学)
光学素子2026年9月10日

1/4波長板のわずかな製造ムラが、レーザーの迷光除去を1万倍に高める(独ダルムシュタット工科大ほか)

2枚の偏光子を直交させて強いレーザー光を遮る配置は、単一の量子エミッタのようなごく弱い光を見る精密実験に欠かせません。TUダルムシュタットを中心とする国際チームは、その間に1/4波長板を1枚入れたところ、通り抜けたわずかな光が丸い点ではなく中央の暗い二葉(ダンベル)状になることを見つけました。波長板を回すと模様も一緒に回ります。この形は検出器とほとんど重ならないため、迷光の抑圧は偏光子だけの約10万倍から、石英の波長板で約1000万倍、ポリマーの波長板では10億倍超まで改善しました。ビーム径を広げるほど模様が強くなったことから、原因は波長板表面の微視的な製造ムラだと結論づけています。実際の部品では偏光とビームの空間形状が結びつくことを示した結果で、微弱発光の検出や精密光学部品の欠陥評価への応用が見込まれます。Nature Communications誌掲載。

記事を読む出典:phys.org(ダルムシュタット工科大/Nature Communications)
関連論文要約:水溶性配向材料を用いた透過型多層幾何位相格子

水を溶媒とする光配向材料で、四分の一波長板と偏光格子を重ねた多層の液晶光学素子をつくる研究です。

量子光学2026年9月10日

髪の毛の200分の1の光ファイバで原子を運ぶ——GPSが使えない場所の量子慣性センサーへ(米サンディア国立研究所)

米サンディア国立研究所のJongmin Lee氏らは、極細の光ナノファイバの周りにできる光の「かさ」で原子を導き、揺さぶられても取りこぼさない原子干渉計を目指しています。直径420nmのファイバ上にセシウム原子をわずか5mWの光パワーで捕捉し、150nWの光でも原子干渉に相当する測定ができることを示しました。従来手法の4分の1から6分の1の消費電力にあたります。冷却原子を自由落下させる方式は強い振動でレーザーが原子を見失いますが、導波路で導く方式なら常に視野に留められます。あわせて、両端をシリコンの細い柱で留めて放熱させる耐熱メンブレン導波路を提案し、真空中の発熱と原子の装填効率がどちらも立つ設計に道筋をつけました。フォトニック集積回路に載るチップサイズの量子慣性センサーが目標です。AVS Quantum Science誌掲載。

記事を読む出典:phys.org(サンディア国立研究所/AVS Quantum Science)
レーザー顕微鏡2026年9月9日

1回の露光だけで超解像に——偏光のゆらぎで生きた細胞を追う(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)

超解像顕微鏡の多くは、数百〜数千枚の画像を時間方向に積み上げて分解能を稼ぎます。この方法は化学固定した標本には有効ですが、動き続ける生きた細胞では像がぼやけてしまいます。EPFLナノスケール生物学研究室のWei Guo氏らは、蛍光分子が向きに応じて偏った光を出す性質に着目し、時間ではなく空間の情報を使うSPIFFIという手法を開発しました。蛍光を4つの偏光チャンネルに分けて同時に撮り、チャンネル間を比較することで、1回の露光から分解能を最大2倍に高め、160〜170nm程度の構造を1枚で解像します。既存の時間ゆらぎ法と組み合わせた後処理では約80nmに達したとしています。ミトコンドリアや微小管の動き、細胞の融合や分裂といった、多数枚法では捉えにくい現象を超解像の動画として記録できました。既存の蛍光顕微鏡に光学系を追加して使えるとしています。Nature Methods誌掲載。

記事を読む出典:optics.org(スイス連邦工科大学ローザンヌ校/Nature Methods)
関連論文要約:向上した光子収集により生体システムの4次元蛍光ナノスコピーを可能にするMoNaLISA

多焦点と定在波の光パターンを組み合わせ、生きた細胞を45〜65nmの分解能で長時間観察する超解像顕微鏡の研究です。

レーザー顕微鏡2026年9月9日

内視鏡の先端に照明と結像を一体で「印刷」する——直径0.5mmの光学系(独シュツットガルト大学)

内視鏡で明視野観察を行うには、照明用と結像用の光路を別々に用意するのが一般的です。ただし先端を1mm以下まで細くすると微小な部品の取り回しと組み付けが難しく、それが小型化の壁になっていました。シュツットガルト大学応用光学研究所(ITO)とSCoPE研究センターを中心とするチームは、多光子リソグラフィによる光造形で、照明と結像を1つにまとめた光学系をファイババンドル内視鏡の先端に直接造形しました。前端の結像光学系と後端の回折光学素子を一体で作り込み、リング状の照明とマイクロスケール分解能の観察を約0.5mmの中に収めています。結像側は気密封止されているため、空気中だけでなく生体液中でも観察できます。造形プロセスは再現性が高く将来の量産にも向くとしており、細い管腔や小さな臓器への低侵襲な観察につながると期待されます。Light: Advanced Manufacturing誌掲載。

記事を読む出典:optics.org(シュツットガルト大学/Light: Advanced Manufacturing)
その他2026年9月9日

16波長のLEDで土の層を見分ける——発掘現場で5分の多波長イメージング(デンマーク・オーフス大ほか)

考古学の発掘では、次にスコップを入れる前に土の層が変わったかを判断しなければならず、見誤ると証拠が失われます。オーフス大とモースゴー博物館は、近赤外と近紫外を遮るフィルタを外した市販カメラの周囲に、365〜940nmの狭帯域LED15個と白色LED1個を並べた低コストなマルチスペクトルイメージング装置LEDMSIを開発しました。反射と蛍光を撮影し、主成分分析と独立成分分析で成分を分けると、木灰・焼けた粘土・骨が肉眼では見えない差として浮かび上がります。撮影から結果まで約5分で、現場でほぼその場で使えます。バルト海ボーンホルム島の遺跡での実証では、埋め土の中に肉眼では見えなかった層の変化が確認できたとしています。J. Archaeol. Sci.誌掲載。

記事を読む出典:Optics & Photonics News(オーフス大/J. Archaeol. Sci.)
関連論文要約:深層学習を統合したハイパースペクトル・ライトシート顕微鏡による極端な光子制限下での高忠実度な生体内蛍光撮像

波長ごとに分けた蛍光の像を深層学習で復元し、ごく弱い光で生きた魚をそのまま撮る顕微鏡の研究です。

光学素子2026年9月9日

赤外線を可視光に変える「スクリーン」を1000倍明るく——メタサーフェスと希土類ナノ粒子を重ねる(豪メルボルン大ほか)

赤外線が運ぶ情報を見るには、ふつう大がかりな光電子システムが要ります。イッテルビウムとエルビウムを含む希土類ナノ粒子は、弱い赤外光を足し合わせて可視光に変える(アップコンバージョン)ことができるため小型化の有力な候補ですが、赤外を「見る」のに必要な弱い励起強度では発光が足りないことが課題でした。メルボルン大学とオーストラリア国立大学(TMOS)、米ローレンス・バークレー国立研究所のチームは、この粒子を共振する誘電体メタサーフェスと一体化しました。粒子の励起帯に共振を合わせることで発光は3桁以上強まり、しかもこの共振の角度分散が平坦なため、斜めから入る光に対しても増強の効果が一様に得られます。赤外イメージングを薄いスクリーン1枚で行う方向につながる成果です。Light: Science & Applications誌掲載。

記事を読む出典:Light: Science & Applications(メルボルン大学/豪ANU TMOS/米ローレンス・バークレー国立研究所)
光学素子2026年9月8日

シリコンナノ球を1層並べるだけで、色あせない「つやのある色」を曲面に塗る(神戸大学)

孔雀の羽のように色素を使わず微細な構造で色を出す構造色は、光で退色しないという利点があります。ただし見る角度で色が変わり、保護膜を重ねると色味が崩れ、光沢も出にくいという課題がありました。神戸大学工学研究科の杉本泰氏らは、直径0.25µmほどのシリコンナノ球をシリカの殻で包み、間隔をそろえて1層だけ並べる手法を開発しました。殻が粒子を守ると同時に自己組織化を助けるため、拡散反射が減ってつやが生まれ、見る角度によらない色を大きな3次元の曲面にも塗れます。保護膜を重ねても色相はほとんど変わりませんでした。1層で十分な隠蔽力と明るさが得られるので塗膜は非常に軽く、大型旅客機なら数百kgある塗装が数百g程度になりうると試算しています。材料はシリコンとシリカで、研究チームはセンシングや光触媒など色以外の機能を重ねることも視野に入れています。Small Structures誌掲載。

記事を読む 出典:optics.org(神戸大学/Small Structures)
その他2026年9月8日

肌の色でレーザーの安全しきい値は約28%変わる——より公平な基準づくりへ(米ジョンズ・ホプキンス大)

皮膚のメラニンは光をよく吸収するため、同じレーザーを当てても肌の色によって生じる熱の量が変わります。ところが公開されている安全基準はこの違いをほとんど考慮しておらず、パルスオキシメーターのような光を使う計測にも偏りが生じることが指摘されてきました。米ジョンズ・ホプキンス大学のチームは、肌の色が明るいものから暗いものまで異なる3頭のミニブタに、波長750nmのナノ秒パルスを1発ずつ照射しました。照射前の肌の色を色彩計で測り、照射後の紅斑(赤み)を炎症の指標として記録して、半数の部位に目に見える傷害が生じるエネルギー(ED50)を求めたところ、色の濃い個体では324mJ/cm²、明るい個体では448mJ/cm²と、27.7%低い値になりました。許容照射量が信号強度や到達深さを左右する光音響イメージングのような手法では、この差が装置の設計や評価に直結します。Journal of Biomedical Optics誌掲載。

記事を読む 出典:optics.org(Johns Hopkins University/Journal of Biomedical Optics)
レーザー顕微鏡2026年9月7日

ナノ粒子を「周波数ミキサー」にして、励起光の漏れを消した蛍光イメージング(スウェーデン王立工科大学KTHほか)

希土類を含むアップコンバージョンナノ粒子は励起光より短い波長で光るため、生体の自家蛍光に邪魔されにくいという利点があります。一方で発光そのものが弱く、励起光の残りが背景として残る問題がありました。スウェーデン王立工科大学(KTH)と中国・華南師範大学などのチームは、この粒子が強度を変調した励起光に対して「周波数ミキサー」のように振る舞うことを見いだしました。複数の基本周波数で励起光を変調すると、発光にはそれらの差にあたる「うなり周波数」の成分が新たに現れます。この成分は一般的なカメラのフレームレートでも読み取れ、室内光や励起光の漏れには含まれないため、そこだけを取り出せば背景のない画像が得られます。粒子の設計によって現れる成分を調整することもでき、生体イメージングやバイオセンシングでの信号対背景比を大きく改善できるとしています。Light: Science & Applications誌掲載。

記事を読む 出典:Light: Science & Applications(KTH Royal Institute of Technology)
関連論文要約:ヘプタメチンシアニン色素増感剤(IR806)とランタニドアップコンバージョンナノ粒子の相互作用

785nmのレーザーで励起した色素とアップコンバージョンナノ粒子のあいだで、エネルギーがどう受け渡されるかを調べた研究です。

光学素子2026年9月7日

多重量子井戸メタサーフェスを一体設計し、光の波長変換を約1000倍に(米ハーバード大ほか)

レーザーの色(波長)を別の色に変える非線形周波数変換は、通信や精密時計、量子技術に欠かせない働きですが、これまではニオブ酸リチウムやヒ化ガリウムといった結晶がもともと持つ性質にほぼ縛られてきました。米ハーバード大学SEASのCapasso教授らは、ヒ化ガリウムとヒ化アルミニウムガリウムを極薄で積み重ねた多重量子井戸と、その表面に並べたナノ柱(メタサーフェス)を、別々にではなく一体で設計しました。層の厚さで電子のエネルギー準位を作り込み、ナノ柱で電磁場の向きと集中度をそろえることで、加工していないウェハに比べて実効的な非線形変換を約1000倍に高め、光ファイバー通信で使う近赤外域でも従来の報告を上回りました。標準的な化合物半導体プロセスで作れるため、チップサイズの波長変換器や、もつれ光子対の光源への展開が見込まれます。米テキサス大オースティン校、カリフォルニア大アーバイン校との共同研究。Nature Nanotechnology誌掲載。

記事を読む 出典:optics.org(Harvard SEAS/Nature Nanotechnology)
関連論文要約:AgGaS₂結晶における波長可変中赤外自発パラメトリック下方変換の特性評価

非線形結晶の角度を調整して、中赤外の波長を連続的に変えられる光子対をつくる研究です。

その他2026年9月7日

電圧で原子振動の「利き手」を反転させ、切っても保つ——強誘電体のカイラルフォノン(スイスPSIほか)

結晶の中で原子が集団で揺れる振動をフォノンと呼び、その揺れが回転する成分を持つと右回り・左回りという「利き手」が生まれます(カイラルフォノン)。スイスのパウル・シェラー研究所(PSI)のグループは、台湾の共同研究者が作製した厚さ40nmのチタン酸バリウム薄膜に微小な電極を付け、電気分極を反転させるとフォノンの利き手も一緒に反転することを示しました。切り替えは室温で3Vという低い電圧で起こり、しかも電界を取り去ったあとも状態が保たれます。利き手の読み出しには、欧州放射光施設ESRFの円偏光X線を用いた共鳴非弾性X線散乱を使い、光と格子のあいだで角運動量がやり取りされる様子から判定しました。フォノンが持つ角運動量を電気で制御できることになり、磁性状態の操作や、振動を使う情報技術への道が開けます。Nature Materials誌掲載。

記事を読む 出典:Paul Scherrer Institute PSI(Nature Materials)
レーザー分光2026年9月7日

チップ上の光コムを48時間以上止めずに回す——3つのパラメータを同時に固定(中国国防科技大学)

微小共振器の中に光のソリトンを閉じ込めてつくる「マイクロコム」は、繰り返し周波数を電子回路で直接測れる26.5GHz以下まで下げられると、持ち運べる精密計測の光源になります。ただし共振器内部の雑音や温度・振動といった外乱に弱く、ソリトンがすぐ崩れてしまうことが実用化の壁でした。国防科技大学のチームは、励起レーザーの周波数・共振器の共振点・繰り返し周波数という3つの基本パラメータを同時に能動制御する「マルチモーダル・ロッキング」を提案し、理論と実験の両方で確かめました。FSR 24.96GHzの窒化シリコン微小共振器に実装したところ、48時間を超えて崩れずに動作し、環境の変動に対しても高い耐性を示しています。周波数コムを実験室の外へ持ち出す計測に近づく成果です。Light: Science & Applications誌掲載。

記事を読む出典:Light: Science & Applications(国防科技大学)
レーザー顕微鏡2026年9月4日

電圧で焦点を2つに切り替えるメタレンズ——眼の血管を深さ1.2mmまで撮る(韓国POSTECH)

光音響イメージングは、光を吸収した組織から出る超音波をとらえて立体的に撮る手法です。光学分解能を持たせると横方向は数µmまで見えますが、ピントの合う深さの範囲が狭いという弱点があり、ベッセルビームなどで広げるとサイドローブが増えて信号対雑音比が下がってしまいます。韓国・浦項工科大学校(POSTECH)などのチームは、窒化シリコンのナノ構造でできたメタレンズに電圧をかけ、可動部なしで2つの回折限界の焦点を切り替える顕微鏡を作りました。切り替え電圧は0.87Vと1.03V、応答時間は250msで、横分解能3.7µmを保ったまま深さ方向1.2mmをカバーします。角膜を薬品で傷つけたラットの眼で、新生血管が広がる様子を眼球の深さ全域にわたって追跡できました。Light: Science & Applications誌掲載。

記事を読む 出典:Light: Science & Applications(浦項工科大学校POSTECH)
関連論文要約:特定の生体構造を撮像するための超低コスト光音響法

1064nmのパルスレーザーを使い、血管など特定の生体構造だけを安価な装置で光音響撮像する研究です。

光学素子2026年9月4日

枝分かれナノワイヤの「枝」だけを光らせて光取り出し効率を上げるLED(瑞ルンド大)

一般的なLEDでは、内部で作られた光の多くが材料と空気の境界で跳ね返されて外に出られず、追加の表面加工なしで取り出せるのは4%程度にとどまります。スウェーデン・ルンド大学のグループは、中心のナノワイヤから細い枝が横に伸びた構造をつくり、電流を注入する中心部は光らないように設計して、光の波長より細い枝の部分だけが発光するようにしました。枝が十分に細ければ光が内部に閉じ込められにくいため、原理的には高い取り出し効率が見込めます。実験では、発光が枝で起きており中心部の光の再吸収によるものではないことを確認しました。実用のLEDに追いつくには表面欠陥による損失を減らす必要がありますが、材料の使用量を減らせるため、長期的には製造コストの低減にもつながると見ています。Nano Research掲載。

記事を読む 出典:Lund University(スウェーデン・ルンド大学/Nano Research)
その他2026年9月4日

紫外線を当てた面だけきれいに剥がせる接着剤——365nmで剥がし、254nmで貼り直す(大阪大学)

電子機器や自動車では接着が欠かせない一方で、しっかり接着したままだと修理やリサイクルのときに部材をきれいに分けられないという問題があります。大阪大学の高島義徳教授らのチームは、接着層そのものを壊すのではなく「界面だけ」を光で切り替える接着剤をつくりました。スチルベンとトリアセチル化β-シクロデキストリンのあいだにできる可逆的なホスト-ゲスト架橋を設計し、波長365nmの紫外線(UV-A)を当てるとスチルベンが光異性化して照射面近くの結合が弱まり、剥離強度が約45%下がって糊残りの見えない剥離ができます。254nm(UV-C)を当てると結合が戻り、加熱すれば貼り直せます。PETとガラス、炭素繊維強化プラスチック、ナイロン66、アルミの組み合わせでも同じ切り替えが働き、15回の剥離サイクルを通して性能を保ちました。Matter & Light誌掲載。

記事を読む出典:ResOU(大阪大学/Matter & Light)
レーザー分光2026年9月3日

放射線が当たった瞬間の半導体をレーザーでのぞく——電荷は濃い塊で生まれていた(米SLAC・スタンフォード大)

放射線は直接測れないため、シンチレータが光る現象などの二次信号で検出しますが、強い信号は遅く、速い信号は弱いという二律背反がありました。米SLAC国立加速器研究所とスタンフォード大学のグループは、MeV超高速電子回折装置で半導体に高エネルギー電子を打ち込み、同期した超短パルスレーザーで直後の光学応答を調べる時間分解分光を行いました。II-VI族半導体で予想より強い超高速の信号が現れただけでなく、生じた電子と正孔が試料全体に均一に散らばるのではなく、局所的に密な塊として現れることが分かりました。この密な塊がバンドギャップを大きくずらし、本来なら通さない波長の光を透過させます。PET検査のような医療画像や放射線センサーを高速化する手がかりになると期待されます。Nature Photonics掲載。

記事を読む 出典:SLAC National Accelerator Laboratory(米SLAC国立加速器研究所/Nature Photonics)
光学素子2026年9月3日

曲げても向こうが透けても動くシリコンフォトニクス回路——300mmウェハで一括製造(米MIT)

シリコンフォトニクスは、電気の代わりに光で信号を運ぶ半導体チップです。従来は硬く不透明なシリコン基板の上に作られていました。米MITとNY Createsのグループは、まず通常のシリコンウェハ上に光の通り道である導波路を作り、上から仮のウェハを貼って反転させ、元のシリコン基板を削り落としてから透明な樹脂フィルムに貼り替える工程を開発しました。得られるのは厚さ数マイクロメートルの、曲げられて向こう側が透けて見える300mmウェハです。小さなねじほどの太さの円筒に数千回巻き付けても性能が落ちず、目の前に置いても像がほとんど歪まないことを確認しています。体に沿う健康モニターや、パイロットのバイザーのように湾曲した拡張現実ディスプレイへの応用が見込まれます。Optica誌掲載。

記事を読む 出典:MIT News(Massachusetts Institute of Technology/Optica)
関連論文要約:3D拡張現実用メガネのための導波路ホログラフィー

導波路とホログラフィー表示を組み合わせ、拡張現実用メガネで奥行きのある像を映す研究です。

光学素子2026年9月3日

1mmの鏡が向きと形を同時に変え、光を3次元で操る——MEMSマイクロミラーで顕微鏡やARを小型化(米ペンシルベニア州立大)

レーザーを狙った場所に集めるには、光を左右に振るだけでなく奥行き方向の焦点も動かす必要があり、ふつうは別々の部品が要ります。米ペンシルベニア州立大のグループは、窒化アルミニウムの圧電薄膜を使った直径約1mmのMEMSマイクロミラーで、2方向の傾きに加えて鏡面の反り(平らから椀状まで)を変えられるようにしました。マイクロ秒で焦点位置を切り替えられ、実際に走査パターンの焦点を63mm動かして再び鮮明に結ばせています。半導体の標準工程で作れるため、頭に載せる小型顕微鏡やARグラス、レーザー微細加工の小型化・高速化につながります。Microsystems & Nanoengineering誌掲載。

記事を読む 出典:optics.org(Penn State University/Microsystems & Nanoengineering)
関連論文要約:多色多焦点3D顕微鏡における空間光変調器のその場最適化の使用

空間光変調器の位相をその場で調整し、複数の色と深さを同時に三次元撮像する顕微鏡の研究です。

量子光学2026年9月3日

原子と光子でつくる「スピングラス」がAIの連想記憶を増やす——ボース=アインシュタイン凝縮を光共振器に並べて(米スタンフォード大)

連想記憶は、断片的な手がかりから記憶の全体を思い出す仕組みで、1982年のホップフィールド模型が知られています。ただし記憶を詰め込みすぎると「スピングラス」と呼ばれる乱れた状態に落ち、正しく思い出せなくなります。米スタンフォード大のグループは、2枚の凹面鏡でつくる光共振器の中に、1万個以上の原子が集まったボース=アインシュタイン凝縮を光ピンセットで並べ、鏡の間を何千回も往復する光子を介して原子どうしを結びました。最大20スピンのこの量子光学的スピングラスは、同じ規模のホップフィールド網より最大7倍多くの記憶を保持・想起でき、結合が変化する短期可塑性も示しました。Science誌掲載。

記事を読む 出典:phys.org(Stanford University/Science)
関連論文要約:単一光微小共振器における再構成可能な共鳴トラッピング

(らせん状に巻いた微小管の共振器で、特定の波長の光だけを強く閉じ込める条件を調べた研究です。)

レーザー分光2026年9月2日

らせん形の金ナノ構造で分子の「利き手」を超高感度に見分ける——円偏光を使う非線形キラル分光(米オハイオ大・中国武漢大ほか)

薬の分子には右手と左手のように鏡像の関係にある型(エナンチオマー)があり、片方だけが効いて、もう片方は無効だったり有害だったりします。ところが従来の円二色性などの測定は信号が弱く、微量の判別が難しいのが課題でした。オハイオ大学・武漢大学・イタリア技術研究所のグループは、らせん形の金プラズモン構造で電場と「超キラル」な近接場をともに強め、円偏光による第二高調波発生を利用する方法を示しました。信号がプラズモン増強の2乗で効くため感度が大きく上がり、吸着したウシ血清アルブミンを約11ピコモルまで検出できたとしています。左巻き・右巻きの構造がそれぞれ対応する分子とよく反応するため、分離操作なしに混合物中の比率も測れます。Science Advances誌掲載。

記事を読む 出典:phys.org(Ohio University/Science Advances)
関連論文要約:密なナノヘリックス配列:非キラル分子のラマン散乱により明らかになったキラルメタ表面における近接場増強

らせん状ナノ構造でつくったキラルなメタ表面の近接場を、ラマン散乱の円偏光応答から可視化した研究です。

レーザー顕微鏡2026年9月2日

直径0.55mmのプローブで脳の血管の中を360度撮る——先端に圧電モーターを載せたOCT(中国・南京大ほか)

脳の細い血管の内側を治療中に見るための、極細のOCTプローブが作られました。南京大学医学部と南京航空航天大学のグループは、直径0.55mm・長さ4mmの中に圧電素子で回るレンズを収め、カテーテルの先端そのものでレンズだけを回して360度の断面像を得る方式を採りました。従来の血管内OCTは体の外のモーターで長いカテーテルごとひねるため、曲がりくねった脳の血管では回転むらによる像の歪みが出やすいという弱点がありました。試験ではモクレンの葉の葉脈、脳動脈モデルに置いたステント、ブタの血管、さらにヒトの動脈硬化プラークを撮影し、脂質に富む部分や線維化した部分が病理所見と一致することを確認しています。Biomedical Optics Express誌掲載。

記事を読む 出典:optics.org(Nanjing University/Biomedical Optics Express)
関連論文要約:マルチモード光ファイバの透過行列:インライン型と離軸型ホログラフィの比較

細いマルチモードファイバを通った光の伝わり方を測り、先端から像を送り出す二つの方式を比べた研究です。

レーザー顕微鏡2026年9月2日

血液中の免疫細胞を染めずに「働いているか休んでいるか」で見分ける——蛍光寿命イメージングで代謝を可視化(米モーグリッジ研究所)

血液から簡単に取り出せる末梢血単核球(PBMC)は、その多くが免疫細胞です。米モーグリッジ研究所のグループは、細胞が本来もつ補酵素NAD(P)HとFADの自家蛍光を二光子励起(それぞれ750nmと890nm)で光らせ、その明るさと蛍光寿命から代謝の状態を読み取る手法(光学的代謝イメージング、OMI)をPBMCに適用しました。染色も細胞の破壊も要らず、1個ずつの細胞について活性化しているか静止しているかを判別できます。試料全体を平均する測定では見えない細胞ごとのばらつきをとらえられる点が特徴で、血液がんや自己免疫疾患の診断、CAR-T細胞療法の効きめの確認への応用が期待されます。Biophotonics Discovery誌掲載。

記事を読む 出典:optics.org(Morgridge Institute for Research/Biophotonics Discovery)
関連論文要約:直接的な寿命地図再構成を用いたRATS法によるナノ秒圧縮蛍光寿命顕微鏡イメージング

光源の高速変調と再構成法の工夫で、蛍光寿命の分布を短時間で画像化する顕微鏡の研究です。

光学素子2026年9月2日

光を閉じ込めたメタサーフェスが、磁石なしでナノスケールの磁場をつくる(米コーネル大)

磁場をつくるには普通は磁石やコイルが要りますが、光そのものから静的な磁場を生み出す方法が示されました。コーネル大学のグループは、中赤外光を閉じ込めるゲルマニウムのナノ構造アレイに、光が中に入っている状態で強い近赤外パルスを重ねて当てました。近赤外光が自由電子と正孔を一気に生み、屈折率が急に変わる「時間界面」がつくられます。このとき閉じ込められていた光のエネルギーの一部が、周波数ゼロの静的な成分——電子の周回電流が支える局所的な磁化——に移り変わりました。磁場は強度の高い場所に約300フェムト秒(中赤外光およそ20周期分)とどまり、金属でない表面ならどんな材料でも成り立つとしています。Advanced Science誌掲載。

記事を読む 出典:phys.org(Cornell University/Advanced Science)
関連論文要約:ダイヤモンド量子センサを用いた大規模並列ナノスケール磁力計測

ダイヤモンドの窒素空孔中心を数百個まとめて読み出し、ナノスケールの磁場を並列に測る研究です。

レーザー分光2026年9月1日

光が電気に変わる最初の400フェムト秒を「撮影」——励起子の広がりが縮む様子を実測(墺グラーツ大ほか)

太陽電池や光合成では、光を吸った材料の中で電子と正孔が対になった「励起子」がまず生まれます。長く知られた存在ですが、その内部構造が実験で見えたことはありませんでした。オーストリア・グラーツ大学、独マールブルク大学、ユーリヒ研究センターのグループは、有機半導体(6T分子の薄膜)に短い光パルスを当てて励起子を作り、続く高エネルギー紫外パルスで電子を叩き出す光電子分光を使い、遅延時間を変えながら測定しました。その結果、生まれた直後の励起子は分子3個ぶんほどに広がり、最初の400フェムト秒で約25%縮むことが分かりました。Physical Review X誌掲載。

記事を読む 出典:phys.org(University of Graz/Physical Review X)
関連論文要約:閉じ込め水中における励起子–陽子衝突の捕捉

(カーボンナノチューブに閉じ込めた水の中で、励起子と陽子の衝突を561nmレーザーの発光計測から1個ずつ捉えた研究です。)

量子光学2026年9月1日

中性原子の量子コンピューターから光子を10チャンネル同時に取り出す(阪大・NICT・浜松ホトニクス)

量子コンピューターを大規模化する道筋のひとつが、複数の装置を光でつないで1つの計算機として動かす方式です。ただし中性原子を並べた装置では、原子1個ずつから出る微弱な光子を混ざらないように取り出すのが難しく、これまでは数チャンネルにとどまっていました。大阪大学・情報通信研究機構(NICT)・浜松ホトニクスのグループは、32チャンネルの集積導波路アレイを使い、マイクロメートル間隔で並ぶ10個の原子から出た光子を並列に光ファイバへ導き、超伝導ナノストリップ光子検出器で同時に検出しました。チャンネル間の混信はほとんど無く、量子的な相関も確認され、約100チャンネルまで拡張できる見通しとしています。Optica誌掲載。

記事を読む 出典:NICT(大阪大学/NICT/浜松ホトニクス、Optica)
関連論文要約:広帯域フォトニック結晶反射器を集積した炭化ケイ素中の色中心による効率的な読み出し

炭化ケイ素の中の発光中心から出る光子を、集積した反射鏡で効率よく集める素子の研究です。

量子光学2026年9月1日

量子コンピュータ同士を光でつなぐ、10チャンネル多重の量子光インターフェース(大阪大学・NICT・浜松ホトニクス)

中性原子方式の量子コンピュータは1万個規模の原子を並べられますが、誤り耐性のある汎用機には100万量子ビット以上が必要とされ、複数台を光でつないで大規模化する道筋が有力視されています。これには多数の量子ビットを並列に接続する多重量子光インターフェースが要ります。従来は並列に並べた光ファイバに頼っていたためチャンネル数が数本にとどまり、集積密度の低さから中性原子方式への適用も難しいという課題がありました。大阪大学量子情報・量子生物学研究センターの山本俊氏らは、情報通信研究機構(NICT)、浜松ホトニクスと共同で、32チャンネル集積導波路アレイのうち10チャンネルを使い、マイクロメートル間隔で並ぶ10個の原子からの光子を並列に取り込んで伝送・検出することに成功しました。チャンネル間の干渉はごくわずかで、原子の量子状態と放出光子の偏光との相関も確認しています。検出には超伝導ナノストリップ光子検出器を用い、約100チャンネルまで拡張できると見込んでいます。Optica誌掲載。

記事を読む出典:ResOU 大阪大学(大阪大学・NICT・浜松ホトニクス/Optica)
2026年8月
光学素子2026年8月21日

可視と近赤外を1枚のチップで同時に撮る手術用カメラ——画素ごとに干渉フィルタを載せた受光素子(米イリノイ大)

がんの手術では、蛍光色素で光らせた病変を近赤外で見ながら、同時に術野を可視光で確認したい場面があります。従来はカメラを2台使うか感度を犠牲にしていました。米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校などのグループは、裏面照射型のCMOSセンサーの画素上に赤・緑・青・近赤外の干渉フィルタを2×2で並べ、明るい反射光と弱い蛍光を同時に扱えるよう二種類のゲインで読み出す単一チップのカメラを作りました。読み出し雑音2.25電子、ダイナミックレンジ90dB超で、手術室の照明下でもインドシアニングリーンを約500ピコモルで検出。肺がん20例・乳がん35例の臨床評価も報告しています。Light: Science & Applications誌掲載。

記事を読む 出典:Light: Science & Applications(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校)
関連論文要約:分散素子を組み込んだ画像走査顕微鏡による多色同時の高分解能撮像

分散素子を組み込んだ画像走査顕微鏡で、複数の蛍光色を一度に高分解能で撮り分ける研究です。

レーザー顕微鏡2026年8月27日

染めずに卵巣がんの組織を見分ける——二光子自家蛍光像の無標識イメージングを深層学習で補正(中国・上海交通大)

病理診断では通常、組織を薄く切って染色しますが、時間と手間がかかります。二光子自家蛍光顕微鏡は細胞が本来もつNADHの蛍光を見るため染色が要りませんが、信号が弱く画像が荒れやすいのが課題でした。中国・上海交通大学などのグループは、励起波長860nm・検出495〜540nmで撮った画像に対し、装置固有のノイズ特性を組み込んだ深層学習の枠組みを作り、ノイズ除去と細胞核の切り出しを同時に行いました。1枚撮りの厳しい条件でも核の抽出精度(Dice係数)は約0.80に達し、得られた核の形の指標は従来のHE染色による病理と0.93〜0.96の相関を示しました。Light: Science & Applications誌掲載。

記事を読む 出典:Light: Science & Applications(上海交通大学)
関連論文要約:三次高調波発生顕微鏡によるヒト脳組織のミエリン病理の動的観察

染色せずに三次高調波発生だけで、ヒト脳組織のミエリンの変化を観察する顕微鏡の研究です。

量子光学2026年8月30日

キセノンを詰めた中空コアファイバで波長を変える——位相をほぼ保ったまま量子装置どうしをつなぐ(米UCLAほか)

量子メモリーやイオントラップは紫外や可視で動く一方、長距離の光ファイバ通信は通信波長帯が効率的です。両者をつなぐには波長を変換する必要がありますが、その際に光の位相が乱れると量子情報が失われてしまいます。米UCLA・SLAC国立加速器研究所・ロチェスター大学・オタワ大学のグループは、キセノンガスを封じた中空コアの毛細管ファイバ内で四光波混合による変換を計算機実験し、位相がどれだけ忠実に移るかを調べました。1550nmから516nmへの変換では入出力の位相の相関が0.95、条件によっては0.99を超え、変換効率は約10.8%でした。効率を上げるほど位相がひずむという兼ね合いも示されています。Advanced Photonics Nexus誌掲載。

記事を読む 出典:phys.org(UCLA/SLAC/ロチェスター大/オタワ大、Advanced Photonics Nexus)
関連論文要約:ハイブリッド光チップ上のチェレンコフ位相整合を利用した堅牢かつ広帯域な紫外レーザー

窒化シリコン導波路にBBO結晶を貼り合わせ、波長204〜319nmの紫外光を広い範囲で生み出す研究です。

レーザー顕微鏡2026年8月31日

「ナノの光」が変わる瞬間をフェムト秒で撮る——ポラリトンを光で操って可視化(分子科学研究所・大阪公立大ほか)

光と物質が強く結びついた波であるハイパボリック・フォノンポラリトンは、赤外光を波長よりずっと小さな領域に閉じ込められるため、極小の光デバイスの候補として注目されています。ただし波長が周波数で大きく変わるため、広帯域のフェムト秒パルスで励起すると干渉縞が重なって像がぼやけてしまいます。分子科学研究所と大阪公立大学などのグループは、探針から散乱した赤外光を回折格子で分光してから検出する方式にし、約150フェムト秒の時間分解能を保ったまま約10cm⁻¹の波長選択性とナノメートルの空間分解能を両立しました。二硫化タングステンと六方晶窒化ホウ素を重ねた試料では、可視光で電子を励起するとポラリトンの振幅が変わり、タングステン層が厚い場合には波長そのものも変化する様子をとらえています。Nano Letters誌掲載。

記事を読む 出典:分子科学研究所(IMS/Nano Letters)
関連論文要約:六方晶窒化ホウ素における硼素空孔スピン欠陥の中間励起状態緩和動力学

(六方晶窒化ホウ素の中の空孔欠陥が、光を吸ってから元の状態に戻るまでの時間を473nmレーザーで直接測った研究です。)

量子光学2026年8月31日

ファインマンの「経路積分」を単一光子で直接検証——約142万通りの経路を測る(中国・華南師範大)

量子力学の基礎にある経路積分は、1948年にファインマンが提唱した考え方で、粒子は1本の道を通るのではなく、考えうるすべての経路が寄与して結果が決まる、というものです。約80年間、計算の前提として使われてきましたが、実験で直接確かめられてはいませんでした。中国・華南師範大学のグループは、鏡・レンズ・結晶で組んだ光学系に単一光子を通し、経路ごとの確率振幅を1,419,857通り分再構成しました。その結果、どの経路も寄与の大きさは等しく、違いは古典軌道で決まる位相だけであるという仮定が、予測どおりに再現されました。Science Advances誌掲載。

記事を読む 出典:phys.org(South China Normal University/Science Advances)
関連論文要約:プログラム可能な線形フォトニック回路におけるフォック状態量子光のコヒーレント吸収の模擬

単一光子レベルの光を組み替え可能な光回路に通し、量子的な吸収のふるまいを再現した研究です。

光学素子2026年8月28日

台所のアルミホイルをレーザーで数秒加工——安価なテラヘルツ用偏光子を自作(豪ANU/TMOS)

テラヘルツ光を扱う実験に必要なワイヤーグリッド偏光子は1個数千ドルと高価です。オーストラリアのTMOS(豪州研究会議 変換的メタ光学システム拠点)の研究チームは、市販のアルミホイルにナノ秒レーザーで精密なパルスを当て、クリーンルームや専用の加工設備を使わずに、わずか15秒で自立式の金属グリッド偏光子を切り出すことに成功しました。エネルギーが強すぎると微細な配線が変形し、弱すぎると箔が切れないため、最適な条件を数か月かけて探ったといいます。現在はタングステンや銅など、より丈夫な材料での実証も進めています。Optics and Laser Technology誌掲載。

記事を読む 出典:optics.org(ANU/TMOS)
量子光学2026年8月28日

ダイヤモンドのNVセンターを使う固体時計、2つの信号を組み合わせて温度ドリフトを約1桁低減(米独チーム)

ダイヤモンド中のNVセンターは、電子スピンの基底状態分裂(2.87GHz)が安定した時計遷移になりますが、温度でその値が大きく動くことが弱点でした。米国とドイツの研究チームは、これに加えて窒素14原子核の四重極分裂(約4.94MHz)も同時に測り、2つの信号を組み合わせる方式を実証しました。475ガウスの磁場中でレーザー光ポンピングと蛍光読み出しを行い、室温・積分時間1000秒で温度に起因する長期ドリフトをおよそ1桁小さくしています。10日間の連続運転では、周波数の不安定さが200秒平均で5×10⁻⁹以下に収まりました。Physical Review Applied誌掲載。

記事を読む 出典:phys.org(Physical Review Applied)
関連論文要約:単結晶ダイヤモンドプレートの分光法とプロトンビームによるNVセンターの作成

ダイヤモンドにプロトンを当てて焼き、NVセンターを高い濃度でつくり分光評価した研究です。

その他2026年8月27日

紫色でも涼しい布——金属有機構造体で色と放射冷却を両立(豪アデレード大ほか)

太陽光を反射しつつ体の熱を中赤外で逃がす「放射冷却」の衣料は、これまでほぼ白一色に限られていました。オーストラリア・アデレード大学と中国の研究チームは、可視域の500〜600nmだけを吸収して近赤外をよく反射する紫色の金属有機構造体ZIF-67を、酸化亜鉛ナノ粒子とともに一段階の電界紡糸でポリウレタン繊維に組み込みました。中赤外放射率96.4%、太陽光反射率87.6%を達成し、屋外試験では市販の白い綿より4.2℃、紫の綿より6.2℃低い温度を保っています。色を選べる冷却衣料への道を開く成果です。Small誌掲載。

記事を読む 出典:Optica OPN(Adelaide University/Small)
関連論文要約:二次元共役金属有機構造体合成中のその場品質管理のためのラマンマーカーバンド

金属有機構造体ができていく過程を、ラマン散乱の目印となるピークで追跡した研究です。

量子光学2026年8月26日

1個の原子蒸気セルからスクイーズド光を多数同時に——大規模アレイ化と同期(中国・復旦大ほか)

量子雑音を抑えたスクイーズド光は量子情報技術の基本要素ですが、多数のビームをまとめて作ることが難しい課題でした。復旦大学などの研究チームは、1個の原子蒸気セルの中で原子コヒーレンスを利用した非線形光学過程を使い、偏光スクイーズド光の大きな空間アレイを実験的に作り出しました。各チャンネルが独立の発生器ではなく、入射ビーム全体が作る共通の基底状態コヒーレンスに支配され、原子の熱運動でならされるため、チャンネル間でスクイーズの度合いがそろって同期します。Light: Science & Applications誌掲載。

記事を読む 出典:Light: Science & Applications(Fudan University)
光学素子2026年8月18日

「周期的でない」準周期フォトニック結晶で波長を選べる面発光レーザーへ(米イリノイ大学)

これまでの面発光型フォトニック結晶レーザー(PCSEL)は、決まったパターンが一面に繰り返す構造に頼っていたため、素子ごとに設計をゼロから作り直す必要がありました。イリノイ大学の研究チームは、二酸化ケイ素の層をエッチングしてから半導体でその上を覆う「埋め込み誘電体」構造を使い、周期性を意図的に崩した準周期パターンで室温発振に成功しました。同じ基板上で異なる構造を組み合わせられるため、より柔軟で信頼性の高いレーザー設計につながるとしています。次の目標は電流注入で動く実用的な素子の実証です。Applied Physics Letters誌掲載。

記事を読む 出典:optics.org(University of Illinois Urbana-Champaign)
光学素子2026年8月27日

大気を270m通過しても壊れない「光の結び目」——トポロジカルな光渦で屋外光通信を実証(南ア Wits大学・仏ボルドー大学)

大気の揺らぎで光ビームの振幅や位相、偏光構造が乱される自由空間光通信では、従来は可変形鏡などの補償光学で波面の歪みを逐一補正してきました。Wits大学とボルドー大学の共同チームは、偏光ベクトルがポアンカレ球を整数回だけ包み込む「光学スキルミオン」という構造化光を使い、ヨハネスブルグの2棟の建物間270mの屋外リンクを補正なしで伝送する実験を行いました。受信した光の強度分布は乱れたスペックル模様に崩れていたものの、トポロジカルな数(巻き数)はほぼすべての条件で98%以上の忠実度で保たれ、最も乱流が強い正午でも86%を維持したといいます。変調速度や通信容量の実証はこれからの課題です。

記事を読む 出典:arXiv/Science Advances(University of the Witwatersrand・Université de Bordeaux)
レーザー分光2026年8月27日

中赤外の波長を電圧で広く変える光チップ——2.7〜3.4µmをカバーする集積型パラメトリック発振器(米スタンフォード大)

薄膜ニオブ酸リチウムの上に光パラメトリック発振器を集積し、波長が固定された近赤外のポンプ光から、赤外分光に使える2.7〜3.4マイクロメートルの中赤外光をつくり出しました。電圧で発振波長を連続的に変えることができ、周波数にして22テラヘルツの幅、出力はミリワット級とされています。この波長域は多くの分子の吸収が集まる一方で、小型で扱いやすい光源が乏しい領域でした。環境計測や化学・生体センシングに向けた、波長可変な中赤外光源を集積フォトニクスで実現する道筋として示されています。

記事を読む 出典:Nature Photonics(Stanford University)
量子光学2026年8月27日

光の「マグヌス効果」を初めて観測——集光レーザーが最も強く効く位置が横にずれる(スイスPSI)

単一のカルシウムイオンをイオントラップに閉じ込め、強く絞ったレーザー光との相互作用が最も強くなる位置を調べたところ、ビームの中心ではなく数百ナノメートル横にずれていることが確認されました。回転を与えたボールの軌道が曲がるマグヌス効果の光版にあたり、理論的な予測はありましたが、実験で直接とらえたのは初めてとされています。ずれの大きさは集光の強さによらず波長だけで決まるという性質も示されました。レーザーで量子ビットを操作する量子コンピュータでは、この横ずれが制御の誤差につながる可能性がある一方、量子ビット同士を結合させる手段として使える可能性も指摘されています。

記事を読む 出典:phys.org(Paul Scherrer Institute/Physical Review Letters)
量子光学2026年8月27日

光子の気体が凝縮する直前のふるまいを初めて測定(独ボン大ほか)

色素溶液を満たした微小な光共振器に光子を閉じ込め、ボース=アインシュタイン凝縮が始まる直前の空間的な相関を測定しました。片方の鏡をレーザー加工でナノメートル精度に構造化して箱状のポテンシャルを作り、放出された光の角度分布をカメラで記録してフーリエ変換により相関を求めています。相転移の近くで相関の及ぶ距離が急激に伸びる度合い(臨界指数)が得られ、光子の気体がボース気体と同じ普遍性クラスに属することを実験的に示したとしています。平衡から離れた系の基礎研究に手がかりを与える結果と位置づけられています。

記事を読む 出典:phys.org(University of Bonn/Science Advances)
関連論文要約:液晶トロンをマイクロキャビティに埋め込んだ基底状態軌道角運動量レーザー発振

液晶を封じた微小共振器から、軌道角運動量をもつ光を基底状態で発振させる研究です。

レーザー分光2026年8月27日

18アト秒の孤立した光パルスを生成——これまでで最短の実測(米カンザス州立大)

高出力のYbレーザーを土台にした装置で、18アト秒(1アト秒は100京分の1秒)の孤立した光パルスを発生させ、その長さを実際に測定したと報告されました。実験的に測定された光パルスとしては最短とされます。より短く明るいパルスは、原子・分子・物質の中で電子が動く速さを追うための時間分解能を高めるため、超高速科学では長く目標とされてきました。

記事を読む 出典:Laser Focus World(Kansas State University)
レーザー顕微鏡2026年8月26日

ヘルペスウイルスが神経細胞の代謝を変える過程を、染めずに10日間追跡(米タフツ大)

2光子励起蛍光と蛍光寿命イメージング(FLIM)を組み合わせ、立体的に培養したヒト神経組織が単純ヘルペスウイルス(HSV-1)に感染したあとの代謝変化を10日間にわたって撮影しました。細胞のエネルギー産生に関わる補酵素の自家蛍光を使うため色素で染める必要がなく、同じ生きた組織を繰り返し観察できます。感染から1日で代謝が異常に活発になり、7〜10日目には酸化ストレスの兆候が現れるなど、目立った細胞損傷より前に代謝が変わる様子が捉えられました。

記事を読む 出典:optics.org(Tufts University/Neurophotonics)
関連論文要約:発光寿命計測を統合した選択平面照明顕微鏡による三次元細胞培養内の酸素の可視化

発光が続く時間を画像にして、立体的に培養した細胞の内部の酸素分圧を可視化する顕微鏡の研究です。

レーザー分光2026年8月26日

分子1個が光子1個を吸うときのわずかな反跳を測る(オーストリア・インスブルック大)

分子を1個だけ調べようとすると吸収の信号が小さすぎて雑音に埋もれてしまいます。インスブルック大のチームは、イオントラップに分子イオンと原子イオンを並べて閉じ込め、分子が光子を1個吸ったときに生じるごくわずかな反跳を、原子イオンとの量子もつれを介して読み出す手法を実証しました。分子内の振動状態の変化を量子論理操作で検出する仕組みで、単一分子の振動スペクトル取得につながる手法として位置づけられています。

記事を読む 出典:phys.org(University of Innsbruck)
光学素子2026年8月26日

シリコンで短波長赤外を捉える——不純物を過剰に導入したフォトダイオード(スペイン・マドリード・コンプルテンセ大)

シリコンはバンドギャップが広く短波長赤外(SWIR)の光子を吸収できないため、この波長域の検出には高価な化合物半導体が使われてきました。研究チームは、シリコンに不純物を通常よりはるかに高い濃度で導入する「ハイパードーピング」により、SWIR光を効率よく吸収するフォトダイオードを作製したと報告しています。既存のシリコン製造プロセスと両立する点が特徴で、夜間撮像・医用イメージング・環境モニタリング・産業検査などへの応用が想定されています。成果はPhysical Review Applied誌に掲載されました。

記事を読む 出典:phys.org(Complutense University of Madrid)
その他2026年8月26日

MRIで見ながら光ファイバで焼く「レーザー間質温熱療法」、脳腫瘍の治療成績を解析(米ワシントン大医学部)

レーザー間質温熱療法(LITT)は、細い光ファイバを腫瘍に刺し、MRIで温度を確認しながらレーザーの熱で異常な組織や壊死組織を焼灼する低侵襲手術です。ワシントン大医学部は、原発性および転移性の脳腫瘍を対象にLITTが臨床成績に与える影響を解析し、Journal of Clinical Oncology誌に報告しました。腫瘍の焼灼そのものに加え、処置に伴って血液脳関門が一時的に緩むといった、切除以外の治療的な効果も検討されています。

記事を読む 出典:optics.org(WashU Medicine)
量子光学2026年8月25日

量子光を出す材料を計算で高速に絞り込む——発光効率の予測手法(大阪大学)

結晶中の原子スケールの欠陥「カラーセンター」は単一光子源や量子センサーの有力候補ですが、候補材料が膨大なうえ、どれが効率よく光るかを見極めるには重い計算が必要でした。大阪大学の研究チームは、光を出す過程と、結晶の振動にエネルギーが逃げて光らない過程の両方を統一的に扱う第一原理の枠組みを構築し、この非放射損失を簡略化した理論式で評価できるようにしました。炭化ケイ素(SiC)中の不純物と空孔の対について結合エネルギーを事前スクリーニングする例を示し、有望な候補を短時間で絞り込めることを実証しています。npj Computational Materials掲載。

記事を読む 出典:phys.org(University of Osaka)
関連論文要約:単結晶ダイヤモンドプレートの分光法とプロトンビームによるNVセンターの作成

陽子ビームを当ててダイヤモンド中にNVセンターを作り、その発光のようすを分光で調べた研究です。

光学素子2026年8月25日

キセノンを詰めた中空コアファイバで、位相を保ったまま光の波長を変換(米UCLA・SLACほか)

量子メモリやイオントラップは紫外・可視の光で動く一方、長距離伝送は通信波長帯が有利で、両者をつなぐ波長変換が必要です。UCLA・SLAC・ロチェスター大・オタワ大の研究チームは、キセノンガスを封入した中空コアファイバ中の四光波混合を計算機上で解析し、1030nmから343nm、1550nmから308nm、1550nmから516nmへの変換で、入力と出力の位相の相関が0.95、条件が良ければ0.99を超えうることを示しました。変換効率は最大28%に達する一方、パルスエネルギーを上げると非線形効果で位相がひずむため、効率と可干渉性の両立が課題だと述べています。Advanced Photonics Nexus掲載。

記事を読む 出典:optics.org(UCLA/SLAC/Rochester/Ottawa)
量子光学2026年8月24日

日本初のフルスタック中性原子量子コンピュータ「春海」が稼働(分子科学研究所)

原子1個ずつを量子ビットとして使う中性原子方式は、室温で動作して冷凍機が要らないこと、光ピンセットで原子を動かして任意の量子ビット間にもつれを作れることなどが利点です。分子科学研究所の大森賢治教授らのチームは、ソフトウェアから量子演算装置までを自前で統合したフルスタック機「春海」を約50量子ビット規模で稼働させました。国内初となる本機により、これまで理論やシミュレーションが中心だった誤り訂正の研究を実機で進められるようになります。内閣府/JSTムーンショット型研究開発事業 目標6の成果。

記事を読む 出典:ims.ac.jp(分子科学研究所)
量子光学2026年8月24日

「量子灯台」で大気中を光子が渡る——全米最長の量子ネットワークに無線区間(米ブルックヘブン国立研)

ブルックヘブン国立研究所の7階建て建物の屋上に、量子情報を載せた光子を送受信する「量子灯台」が設けられました。同研究所とストーニーブルック大、イェール大を結ぶ全米最長の量子ネットワークに、光ファイバではなく大気中を光が伝わる自由空間光通信(FSO)の区間を加えるものです。有線の通信網が無線や衛星へ広がったのと同じ役割を量子ネットワークで果たすと位置づけられ、望遠鏡技術を応用した専用ミラーが光子の送受信を担います。

記事を読む 出典:phys.org(Brookhaven National Laboratory)
光学素子2026年8月24日

画像処理なしで「角」を見つけるメタサーフェス——低消費電力の動体追跡へ(香港城市大/南京大)

ハチなどの動物は図形の「角」を素早く捉えて世界を認識しています。香港城市大の蔡定平教授らは南京大と共同で、方位角ヒルベルト変換を行うメタサーフェスを用いて、光学的に角検出を行う手法を開発しました。デジタルの画像処理を経ずに光が素子を通る段階で特徴抽出が終わるため、高速かつ低消費電力の光情報処理が可能になり、動体追跡への応用が示されています。特定の用途に限らない汎用的な枠組みとして設計されている点も特徴です。Science Advances掲載。

記事を読む 出典:phys.org(City University of Hong Kong)
光学素子2026年8月24日

水素を重水素に置き換えて低損失に——チップ上で赤外パルスを広帯域光へ(シンガポールA*STAR)

レーザーは色が純粋なことが強みですが、分光やイメージングの用途では逆に「一度に広い波長域を含む光」が求められます。これを担うのがスーパーコンティニウム光です。A*STAR微小電子研究所のシリコンフォトニクス部門は、窒化シリコン導波路の水素をより重い同位体である重水素に置き換えることで損失を下げ、8インチウェハ上に低温プロセスで作製しました。赤外レーザーパルスを可視の赤から深赤外まで1オクターブにわたって広げる動作を確認し、CMOS互換プロセスでの量産にも道を開いています。Optics Express掲載。

記事を読む 出典:phys.org(A*STAR IME)
量子光学2026年8月24日

極細ワイヤの限界を超える——線幅を約100倍にした超伝導単一光子検出器(米NIST)

単一の光子を1個ずつ数えられる超伝導ナノワイヤ単一光子検出器(SNSPD)は、量子通信や深部組織イメージング、暗黒物質探索などで使われ、NISTの素子は入射光子の98%を検出できるところまで来ています。一方でナノメートル級の微細加工が欠かせず、ワイヤの端に生じる加工欠陥が流せる電流を制限して性能の頭打ちを招いていました。研究チームは発想を変え、超伝導ワイヤの幅を0.1mm(従来の約100倍)まで太くした素子でも単一光子を検出できることを示しました。特殊な微細加工に頼らずに済むため、作りやすさと性能の両立が期待されます。Optica掲載。

記事を読む 出典:phys.org(NIST)
レーザー顕微鏡2026年8月20日

てんかん発作が脳を伝わる様子を毎秒4ボリュームで立体撮影(米ジョージア大)

発作は数秒で脳を駆け抜ける激しい電気活動のため、その伝わり方を三次元で追うのは困難でした。ジョージア大の研究チームは、ライトシート顕微鏡の連続走査に補償光学の設定を同期させる方式を考案し、可変焦点レンズが広い体積を撮る際に生じる収差を補正しながら毎秒4ボリュームの撮影を実現しました(従来比約7倍の速度)。ゼブラフィッシュ幼生では、発作が脳の後方で始まって視覚情報を扱う中脳へ広がり、約15秒でピークに達して前方へ収束していく様子が捉えられています。Biomedical Optics Express掲載。

記事を読む 出典:optica-opn.org(University of Georgia)
関連論文要約:Thy1-GFP導入遺伝子を用いた透明化ラット全脳のライトシート顕微鏡観察

ライトシート顕微鏡で、透明化したラットの脳全体を蛍光タンパク質を目印に立体観察した研究です。

光学素子2026年8月21日

アルミ箔をレーザーで切り出して高価なテラヘルツ用偏光子を置き換える——基板なしの自立ワイヤグリッドを最短15秒で(豪ANU/TMOS)

テラヘルツ帯の実験に欠かせないワイヤグリッド偏光子は、1個あたり数千ドルと高価なうえ、クリーンルームでのリソグラフィか、細いタングステン線を1本ずつ巻く古典的な方法で作られてきました。豪州国立大学(ANU)のTMOSのチームは、市販のアルミ箔にナノ秒レーザーのパルスを精密に制御して照射し、支持基板を持たない自立した金属グリッドを最短15秒で切り出すことに成功しました。エネルギーが強すぎると微細な線が座屈し、弱すぎると箔が切れないため、加工条件の見極めが鍵になったとしています。大面積の素子も1〜2分で作製でき、偏光制御素子の低コスト化につながる可能性があります。アルミ箔は実用強度に乏しいため、現在はタングステンや銅など耐久性のある材料への展開を進めています。Optics & Laser Technology掲載。

記事を読む 出典:phys.org(ARC Centre of Excellence for Transformative Meta-Optical Systems/Optics & Laser Technology)
光学素子2026年8月21日

米粒サイズのチップで「光の虹」を作りミリ波を多波長同時に生成——6G通信と精密な時刻同期へ(英ラフバラ大)

ミリ波は広い帯域を使えるため次世代通信で注目されていますが、必要な精度と安定性で発生させることが課題でした。ラフバラ大学らの国際チームは、チップ上のマイクロ共振器と長い光ファイバのループを組み合わせ、レーザー光が両者を循環し続ける構成にすることで、等間隔に並んだ光の周波数コム(マイクロコム)を安定に発生させました。装置の横で人が跳びはねても状態が崩れないほど頑健で、各周波数の強弱も制御できます。得られたコムを専用アンテナでミリ波に変換したところ、コム側の精度と安定性がミリ波側にも受け継がれることを確認しました。光共振器を用いた本方式は、6Gの大容量通信のほか、レーダー・分光・天文観測、さらに量子技術が求める精密な時刻同期への応用が視野に入ります。Nature Communications掲載。

記事を読む 出典:phys.org(Loughborough University/Nature Communications)
光学素子2026年8月20日

気体そのものをレンズにして極端紫外の強い光を整形——ビームの向きと波長分布を同時に操る(独マックス・プランク核物理学研究所)

極端紫外(XUV)やX線の光は、ガラスなど通常のレンズやプリズムに強く吸収されてしまうため、可視光のように自在に曲げたり分けたりする部品がほとんどありません。MPIKらの国際チームは、ヘリウムガスを詰めたセルに自由電子レーザー(DESYのFLASH)の強いXUVパルス(光子エネルギー21.2 eV、ヘリウムの1s–2p遷移に対応)を集光。強い光が原子の準位間で電子を高速に行き来させる「ラビ振動」を起こし、ビーム中心ほど強度が高いことから屈折率に半径方向の分布が生じ、ガスの塊が時間とともに変化するレンズやプリズムとして働くことを示しました。共鳴付近の光ほど外側へ大きく曲げられ、スペクトルは共鳴の上下に二つの山を持つ形へと変化します。アト秒領域の短波長パルスの形と色を制御する手段として、化学反応の制御や高分解能分光への応用が期待されます。Science Advances掲載。

記事を読む 出典:phys.org(Max-Planck-Institut für Kernphysik/Science Advances)
その他2026年8月20日

色のついた光の「明るさ」は測定値とずれる——約100年続く測光の基準を見直す提案(独ギーセン大)

照明やディスプレイの明るさは、人の目の感度曲線で重み付けした測光の考え方(SI単位のカンデラ)で表されます。ギーセン大を中心とする国際チームは、観察者に144色の色票を明るい順に並べてもらう手法で大規模にデータを取得し、色の明るさの見え方を調べました。その結果、赤・緑・青の重み付き成分のうち「最大の一つ」だけを取るという単純な規則が判断の95%以上を説明し、輝度やCAM16などの既存モデルを上回りました。とくに彩度の高い色や青色成分は、測光値が示すより明るく見えるといいます。脳波計測でも、速い明滅では従来の輝度に、ゆっくりした変化では新しい規則に応答が従いました。ランプの表示や画面の校正、屋内外の照明設計に影響しうる結果です。PNAS掲載。

記事を読む 出典:phys.org(Justus Liebig University Giessen/PNAS)
光学素子2026年8月19日

3Dプリントしたセラミック導波路で高出力レーザーへ——ガラスファイバの10倍の出力を視野(米ローレンス・リバモア国立研究所)

高出力のファイバレーザーは、光を閉じ込めて増幅する石英ガラス製の導波路(コアとクラッド)が心臓部ですが、熱の逃げにくさや不安定性が出力の壁になっていました。LLNLは、イッテルビウム添加YAG(Yb:YAG)のナノ粒子ペーストを押し出して立体形状を描く「ダイレクトインク・ライティング」により、コアと無添加クラッドを一体で成形した全セラミック導波路を作製。乾燥・焼結・熱間等方加圧で緻密化し、これまで短く品質も安定しなかったセラミック導波路の課題を改善しました。放熱性と耐熱性に優れる結晶セラミックにより、ガラスファイバ比で約10倍の出力が狙えるとしています。Optics Letters掲載。

記事を読む 出典:phys.org(Lawrence Livermore National Laboratory/Optics Letters)
レーザー分光2026年8月19日

光でDNA断片の長さを測る——振動分光と深層学習でゲノム解析を簡便に(英サウサンプトン大/英がん研究所)

血液中に出てくる腫瘍由来DNA(ctDNA)は健常な細胞由来のものより短く、断片の長さががんの進行や治療反応を測る指標として注目されています。ただし従来の電気泳動やシーケンス解析は装置が高価で、試料を消費してしまうという課題がありました。サウサンプトン大の光電子研究センターらは、ATR-FTIRによる赤外分光とラマン分光で得た振動スペクトルを1次元の畳み込みニューラルネットワークで解析し、標識を付けずに断片長の分布を推定できることを示しました。DNAメチル化の測定にも応用しています。ACS Measurement Science Au掲載。

記事を読む 出典:optics.org(University of Southampton ORC/ACS Measurement Science Au)
関連論文要約:ラマン分光へのグラフニューラルネットワーク適用による分類性能と解釈性の向上

ラマンスペクトルをグラフニューラルネットワークで解析し、分類の精度と判断根拠の見やすさを高めた研究です。

その他2026年8月19日

氷河に光ファイバを1本敷いて内部の亀裂を可視化——想定より多いクレバスを検出(スイス連邦工科大チューリッヒ校)

氷河の内部でクレバス(氷の裂け目)が開くと微小な地震が起こり、地震計でその位置を推定できます。しかし多数の地震計を氷河上に設置するのは高コストで、空間分解能も不足しがちでした。ETHチューリッヒらは、ゴルナー氷河の表面に光ファイバケーブルを1本敷設し、ファイバ自体を連続したひずみセンサーとして使う分布型音響センシング(DAS)で微小地震を観測。従来より高い空間分解能で、氷の内部に想定を上回る数のクレバスがあることを明らかにしました。融雪水が入り込んで崩落を早める恐れがあり、氷河の安定性評価につながります。Science Advances掲載。

記事を読む 出典:optics.org(ETH Zurich/WSL/University of Oxford/Science Advances)
量子光学2026年8月18日

ダイヤモンド量子センサーで交流・直流の電流校正を1つの装置に——電流比較器を大幅小型化(産総研・東京科学大・QST)

発電所や送配電設備の電流計測機器の校正を支える「電流比較器」は、交流用と直流用で測定原理も装置も別々でした。産総研らはダイヤモンド中のNVセンターを磁気センサーとして磁束の釣り合いを読み取る方式を開発し、同じ装置構成のまま交流・直流とも約5×10⁻⁸ A/Aの再現性を実証。国家標準に求められる水準を大きく上回ります。検出コイルが不要になったことで中心部のサイズは3分の1以下・質量は10分の1以下になり、交流と直流が混在する次世代電力網での校正の共通化・効率化が期待されます。

記事を読む 出典:産総研プレスリリース(東京科学大・QST/Scientific Reports)
関連論文要約:マグノンスピントロニクスに向けた色中心磁気測定による等周波数スピン波イメージング

ダイヤモンドなどの色中心を磁気センサーとして使い、スピン波の分布を光で画像化する研究です。

量子光学2026年8月18日

量子メモリ間の「もつれ」を420kmまで延伸——従来記録の4倍超(中国科学技術大)

離れた量子メモリ同士を光子で結ぶ技術は、将来の「量子インターネット」の基盤です。中国科学技術大の研究チームは、光ファイバ420kmを隔てた2つの量子メモリの間に量子もつれを生成することに成功し、Physical Review Lettersに報告しました。ファイバ中ではガラスによる光子の損失が壁となり、量子メモリ間のもつれはこれまで約100kmが限界でしたが、これを4倍以上更新。都市間スケールの量子中継網に近づく成果です。

記事を読む 出典:phys.org(USTC/Physical Review Letters)
量子光学2026年8月18日

増やすのではなく「不要な光を抑える」——フォトニック結晶で単一光子源を改良(独ミュンヘン工科大)

量子通信に欠かせない単一光子源では、共振器で目的の周波数の発光を増幅する方式が主流ですが、狭い周波数範囲でしか働かず、光源ごとに精密な調整が必要でした。ミュンヘン工科大とミュンヘン量子科学技術センター(MCQST)は逆の発想で、フォトニック結晶により不要な周波数の発光を選択的に抑え込む手法を開発。共振器のような精密チューニングに頼らずに単一光子の質を高められる道を示しました。

記事を読む 出典:phys.org(Technical University of Munich/MCQST)
関連論文要約:広帯域フォトニック結晶反射器を集積した炭化ケイ素中の色中心による効率的な読み出し

フォトニック結晶の反射器を組み込み、炭化ケイ素中の色中心が放つ光を効率よく取り出す研究です。

レーザー顕微鏡2026年8月18日

脳腫瘍の境界を約30分で3D病理画像に——透明化×誘導ラマン散乱×AIの「ULTRA」(中国・復旦大)

手術中にがんの取り残しを防ぐには腫瘍境界の迅速な判定が重要ですが、従来の病理検査は切片作製と染色に時間がかかります。復旦大のチームは、組織の急速透明化、無染色で分子振動を捉える誘導ラマン散乱(SRS)顕微鏡、AIによる仮想染色を組み合わせた「ULTRA」を開発し、約30分でH&E染色に近い3D組織像を得る手法をCell誌に発表。神経膠腫(グリオーマ)の浸潤範囲の判定を助け、術中の意思決定に組織レベルの情報を提供することが期待されます。

記事を読む 出典:optics.org(Fudan University/Cell)
レーザー分光2026年8月18日

毎秒20万発の超短パルスで「光の波の位置」を数時間安定に保つ(独オルデンブルク大・瑞ルンド大)

光の電場の山と谷のタイミングまで制御できれば、物質中の電子1個の動きを狙って操る実験が可能になります。オルデンブルク大のアト秒顕微鏡グループは、毎秒20万個の赤外超短パルスを発生しながら、パルス内での光波の位置が数時間にわたり安定に保たれるレーザーシステムを開発し、Applied Physics Bに発表しました。ノーベル賞受賞者アンヌ・ルイリエ率いるルンド大チームと詳細な特性評価を行い、高繰り返しの電子動力学計測に道を開きます。

記事を読む 出典:phys.org(University of Oldenburg/Applied Physics B)
光学素子2026年8月13日

磁石を使わない広帯域の集積光アイソレータ——波長の違う複数レーザーを1チップで保護(米NIST)

光集積回路のレーザーは戻り光で動作が乱れるため、一方向にだけ光を通すアイソレータが必要ですが、高性能なものは今もチップ外の大きな部品でした。米国標準技術研究所(NIST)などのチームは、磁性材料を使わず、4本の並列導波路に高周波の電気光学変調をかけて「回転する打ち消し合いの干渉」を作る進行波型アイソレータを、既存のファウンドリで作れる部品だけで実証しました。原理的に広い波長域で働くため、可視から近赤外まで波長の異なる複数のレーザーを同じ構成で保護できます。Nature Photonics誌掲載。

記事を読む 出典:Nature Photonics(NIST)
レーザー顕微鏡2026年8月6日

直径0.5mmの内視鏡に照明と顕微イメージングを1本で——3Dプリント微小光学(独シュトゥットガルト大)

光ファイバ束の先端に微細な光学系を光造形で直接つくり、照明用の光路と顕微イメージング用の光路を1本のファイバの中に同居させました。直径は約500マイクロメートルで、内視鏡を曲げても像が崩れにくく、毎秒数コマの撮影ができ、空気中と液浸の双方で動作が確認されています。従来は照明と結像で別々のチャンネルを組み合わせる必要があり、細径化の妨げになっていました。体内の細い管腔部を低侵襲に観察する内視顕微鏡の基盤技術として提案されています。

記事を読む 出典:Light: Advanced Manufacturing(University of Stuttgart)
その他2026年8月6日

「光で解ける形」に問題を書き換える——大規模な組合せ最適化を光コンピュータへ(阪大)

交通網の計画やデータ分類など、社会の多くの課題は膨大な選択肢から最良解を探す最適化問題に帰着します。阪大の研究チームは、要素間の距離など空間的な関係で決まる幅広い問題に共通する数学的構造を見いだし、レーザー光の空間パターンで多数の変数を並列に表す方式などの光コンピューティングで扱いやすい「畳み込み形式」へ変換する枠組みをCommunications Physicsに発表。高速フーリエ変換による高速化も可能で、施設配置やデータクラスタリングの問題で有効性を確認しました。

記事を読む 出典:阪大 ResOU(Communications Physics)
光学素子2026年8月17日

光でシャッターを切って濃霧や深部組織を透かして見る——近赤外を可視光に変える薄膜ゲート(米ロチェスター大)

近赤外光は可視光より組織や霧の奥まで届きますが、深部では散乱に負けて像がぼやけ、検出にも高価な材料の素子が要ります。ロチェスター大のRobert Boyd研究室は、酸化インジウムスズ(ITO)の薄膜に超短パルスを当てて約1ピコ秒だけ「開く」時間ゲーティングを用い、まっすぐ届いた光だけを選んで可視光へ変換する方式を実証しました。安価なシリコン検出器で受けられるため、医用イメージングや自動運転のセンシングの低コスト化につながります。

記事を読む 出典:phys.org(University of Rochester/Nature Communications)
量子光学2026年8月17日

光子を3つ同時に干渉させて「光子の品質検査」を高精度化(オランダ・トゥエンテ大)

量子技術では光子どうしがどれだけ「そっくり」かが性能を決めるため、1987年以来ホン・オウ・マンデル干渉(2光子をビームスプリッタで出会わせる方法)で品質を測ってきました。トゥエンテ大のグループは2つではなく3つの単一光子を同時に干渉させることで、1回の測定から引き出せる情報量を増やし、従来法を雑音のない理想条件で行った場合よりも高い精度を得たとPhysical Review Lettersに報告しました。

記事を読む 出典:phys.org(University of Twente/Physical Review Letters)
その他2026年8月17日

重なった2つの試料を1回のスキャンで撮り分けるX線イメージング(豪モナシュ大)

X線のマルチモーダルイメージングは吸収に加えて位相や暗視野の情報も得られますが、扱えるのは一度に1試料でした。モナシュ大のMarie-Christine Zdora博士らは、重なり合った2つの物体の情報を1回の走査で分離・再構成する「dual-sample multimodal imaging(DSI)」をOpticaに発表しました。追加のスキャンが要らないため、微小電子部品の検査や材料科学、ライフサイエンスなど、検査速度が重要な現場での効率向上が見込まれます。

記事を読む 出典:phys.org(Monash University/Optica)
光学素子2026年8月15日

模様を繰り返さないフォトニック結晶レーザー——設計の自由度を広げて波長を選べる半導体レーザーへ(米イリノイ大アーバナ・シャンペーン校)

フォトニック結晶面発光レーザー(PCSEL)は、同じ微細模様を面内で繰り返して光を閉じ込め、面から真上にビームを出す半導体レーザーです。この繰り返しが前提だったため作れる模様の自由度が乏しいという課題がありましたが、研究チームは模様が繰り返さないフォトニック準結晶を用いた素子(QPCSEL)を、誘電体を埋め込む独自プロセスで試作しました。設計の幅が広がることで、発振波長を選びやすく信頼性の高い半導体レーザーにつながると期待されます。

記事を読む 出典:phys.org(University of Illinois Urbana-Champaign/Applied Physics Letters)
その他2026年8月14日

分子を「風車」のように並べて光のねじれ方向を決める(韓国KAIST・忠南大ほか/理研)

右回り・左回りに回転しながら進む円偏光は、回転方向ごとに別の情報を運べるため、次世代ディスプレイや光通信、セキュリティ用途の光源として注目されています。KAISTの尹東基教授らのグループは、理化学研究所や忠南大学校・亜洲大学校・延世大学校と共同で、それ自体は左右対称な分子を微小な「風車」状に空間配置することで、狙った回転方向の円偏光を得るプラットフォーム技術を開発しました。特殊な材料を新たに合成しなくてよい点が実用上の利点です。

記事を読む 出典:phys.org(KAIST/理化学研究所ほか/Nature Communications)
光学素子2026年8月13日

バラバラに見える材料でも散乱の向きを設計する——「非エルミート統計結晶学」(韓国ソウル大/ソウル市立大)

光の散乱の制御は、レンズの反射防止コートやディスプレイの拡散板、車載LiDAR、光通信部品の性能を左右します。従来は原子や微細構造が規則正しく並ぶ結晶構造が主な手段でしたが、ソウル大学校のSunkyu Yu・Namkyoo Park両教授らは、屈折だけでなく吸収と増幅も含めて扱う理論「非エルミート統計結晶学」を提案しました。近くでは不規則に見えて広い範囲では均質なハイパーユニフォーム構造に着目し、特定方向の散乱を抑えつつ別方向では強めるという設計指針を示しています。

記事を読む 出典:phys.org(Seoul National University/University of Seoul/Advanced Science)
光学素子2026年8月13日

ガラスを「平たく」引くだけで圧力感度1000倍——リボン状の扁平光ファイバをセンサーそのものにする(スウェーデン王立工科大学KTH/英サウサンプトン大学)

光ファイバは通常、断面が円形で光を運ぶ役割に徹する。KTHとサウサンプトン大の共同研究は、円形ファイバを後から潰すのではなく、最初から高アスペクト比のリボン状(扁平)に線引きし、レーザー加工で内部に空気孔や金属充填の微細構造を作り込む手法を開発した。試験では標準的な円形ファイバに比べ圧力感度が最大1000倍に達し、内部にスズ合金を充填した版では温度感度も向上した。既存の光学系との接続互換を保ったまま光ファイバセンサの感度を大きく引き上げられるため、複合材料や電池セル内部のひずみ・圧力・温度の監視への応用が見込まれる。成果は Nature Communications に掲載。

記事を読む出典:optics.org(KTH/サウサンプトン大学/Nature Communications)
レーザー分光2026年8月11日

電極を付けずに「鏡像の材料」の違いを光で測る(イスラエル・ヘブライ大)

右手と左手のように鏡像の関係にある「キラル」な材料は、円偏光の回転方向によって応答が変わります。ヘブライ大学のグループは、キラルな2次元ペロブスカイトに光を当てたときに生じる電荷の分離を非接触で捉える手法を開発しました。従来のように金属電極を付けて素子に仕立てる必要がないため、電極や配線の影響を受けずに材料本来の電子的な性質を短時間で評価できます。円偏光と電荷・スピンを組み合わせた素子の材料探索に役立つと見込まれます。

記事を読む 出典:phys.org(The Hebrew University of Jerusalem/Small)
その他2026年8月11日

「教科書の限界」を超えたX線発生——ヘリウムの2電子が同時に光を放ち、高次高調波のカットオフを突破(オーストリア・ウィーン工科大学/米カリフォルニア大学サンディエゴ校)

強いレーザー光を原子に当てると、いったん引きはがされた電子が戻る際にX線領域の超高周波パルスが生じる(高次高調波発生)。この過程には理論上のエネルギー上限「カットオフ」があるとされてきたが、両大学の共同実験はヘリウム原子を使い、2個の電子が同時にエネルギーを放出する経路を利用して従来の上限を大きく上回るX線の発生を確認した。成果は Nature Photonics に掲載。より短波長・高エネルギーな実験室サイズのX線源につながる可能性がある。

記事を読む出典:phys.org(ウィーン工科大学/Nature Photonics)
レーザー分光2026年8月11日

光で「電子の結晶」の内側を覗く——ウィグナー結晶の集団運動を反射光から読み取る(スイス・バーゼル大学/独ミュンヘン工科大学)

電子同士の反発だけで規則正しく並ぶ「ウィグナー結晶」は、内部でどのように動き、外からの刺激にどう応じるかを調べる手段が乏しかった。研究チームは単層のセレン化タングステンを絶対零度近くまで冷却し、光を当てて反射光を測定。光で生じた励起子と規則配列した電子が結びついた準粒子「ウィグナー結晶ポラロン」が高感度なプローブとして働き、これまで届かなかった集団運動の情報が得られた。Nature Physics に掲載。

記事を読む出典:phys.org(バーゼル大学/Nature Physics)
レーザー分光2026年8月11日

皮膚を通る光で心の状態を測る——血流と代謝の光計測でストレス・不安の兆候を捉えるウェアラブル(英アストン大学)

英アストン大学のEdik Rafailovらは、皮膚に当てた光から「微小循環」と「組織代謝」を同時に読み取り、ストレス関連の状態を客観的に評価しようという装着型デバイスを実証しました。用いたのは2つの光計測です。ひとつはレーザードップラー血流計で、850nmの微弱なレーザー光が動いている赤血球に散乱されて受ける周波数変化から血流を測ります。もうひとつは365nm励起の蛍光分光で、補酵素NADHの自家蛍光強度を組織の代謝状態の指標とします。18〜94歳・19か国の成人132名を対象に、標準的な21項目の質問票による評価と突き合わせたところ、2つの光信号とアンサンブル学習の組み合わせで、ストレス症状のある人とない人を「中程度の精度」で区別できました。研究チームは質問票を置き換えるものではなく補完するものと位置づけており、うつや不安の診断に使えるものではない、より大規模な臨床検証が必要だと明言しています(Communications Medicine 掲載、2026年8月11日)。

記事を読む出典:optics.org(アストン大学/Communications Medicine)
光学素子2026年8月10日

「うそをつく鏡」——映したものを別の絵にすり替える回折ミラー(米カリフォルニア大学ロサンゼルス校)

鏡は普通、前に置いたものをそのまま映します。UCLAのAydogan Ozcanらは、反射鏡と、深層学習で位相分布を最適化した回折光ニューラルネットワーク型の構造化サーフェスを組み合わせ、入力画像が持つ情報を隠して、あらかじめ決めておいた「ありふれた別の絵」に置き換えて出力する「うそをつく鏡(lying mirror)」を実証しました。変換はコンピュータによる画像加工ではなく、光の回折と受動的な光—物質相互作用だけで行われるため、いったん回折面を作製してしまえば計算処理は不要です。学習に使っていない別種の画像群を入れても同じダミー画像に変換でき、汎化することを確認しました。セキュリティや防衛、監視対策、エンタテインメントなどの用途を想定しています(Nature Communications 掲載、2026年8月10日)。

記事を読む出典:phys.org(カリフォルニア大学ロサンゼルス校/Nature Communications)
その他2026年8月8日

焦点そのものを光速で走らせて電子を加速——「フライングフォーカス」でレーザープラズマ加速器の壁を破る(米ロチェスター大レーザーエネルギー研究所)

レーザープラズマ加速器は、超短パルスの高強度レーザーをガスに集光してプラズマの粗密波(航跡場)をつくり、その波に電子を乗せて加速します。電界は従来の高周波加速器の数千倍に達しますが、光がプラズマ中でわずかに遅くなるため、光速近くまで加速された電子がやがて波を追い越し、それ以上エネルギーを得られなくなる「デフェージング」が到達エネルギーを縛っていました。ロチェスター大レーザーエネルギー研究所のCharlie Arrowsmithらは、焦点距離が半径によって変わる「アキシパラボラ」という特殊な反射鏡を自前で製作し、ピーク強度の位置が光速に近い速さで前方へ掃引されるパルス(フライングフォーカス)をつくることで、レーザー航跡場加速のデフェージングを解消しました。水素とアルゴンの混合ガスを使い、プラズマ密度が4.5〜5.4×1018 cm-3という狭い範囲にあるときにのみ効果が現れ、電子は396±14 MeVに到達。同じ条件で従来方式が到達する計算値185 MeVの2倍を超えました(Nature Physics 掲載、2026年8月8日)。

記事を読む 出典:phys.org(University of Rochester Laboratory for Laser Energetics/Nature Physics)
量子光学2026年8月7日

用途に応じて姿を変える光量子コンピュータ「Clavina」——線形光学と非線形モジュールを1台に同居(英インペリアル・カレッジ・ロンドン)

光子は量子情報の担い手として優れる一方、光同士がほとんど相互作用しないため、あらゆる計算をこなせる汎用機をつくるのが難しいという壁がありました。インペリアル・カレッジ・ロンドンのShang Yu、Raj Patelらは、現代のCPUが用途別のユニットを組み合わせるのにならい、中央の制御部がプログラム可能な線形光学ネットワークと専用の非線形モジュールの間で情報を振り分ける光量子コンピュータのアーキテクチャ「Clavina」を実証しました。時間ビンに符号化した光子を高速な電気光学変調器で切り替えることで、ハードウェアを作り直さずにモジュールを入れ替えるだけで異なる計算に対応できます。実証として、強く相互作用する多体系を扱うボース=ハバード模型のシミュレーションと、誤り訂正の資源として重要なGKP(Gottesman-Kitaev-Preskill)状態の生成を行いました。従来の光方式ではGKP状態は確率的にしか作れませんでしたが、はるかに安定して生成できたとしています(Nature Photonics 掲載、2026年8月7日)。

記事を読む 出典:phys.org(Imperial College London/Queen Mary University of London/Nature Photonics)
レーザー分光2026年8月7日

数十億個しかない原子を光で測る——フェルミウム255の核の形をレーザー分光で決定(独マインツ大学/GSI・FAIR/スウェーデン・ヨーテボリ大学)

人工元素フェルミウム(陽子100個)は自然界に存在せず、実験に使えるのはごくわずかな原子だけです。マインツ・ヨハネス・グーテンベルク大学、GSI/FAIRヘルムホルツ研究所マインツ、ヨーテボリ大学を中心とする18機関の国際チームは、オークリッジ国立研究所とラウエ・ランジュバン研究所での数か月に及ぶ中性子照射でアインスタイニウム255を用意し、その崩壊で生じるフェルミウム255を約1000℃で蒸発させ、自作のTi:サファイアレーザーで共鳴イオン化しながら高分解能レーザー分光を行いました。電子準位の超微細構造を初めて分離して観測し、原子理論計算と組み合わせることで、この原子核がラグビーボール状に強く変形していることを決定。従来の文献値にあった非物理的な磁気双極子モーメントも修正しました。レーザー技術面ではHÜBNER Photonicsも参画しています。超重元素の安定性を予測する核模型の検証につながる成果です(Physical Review Letters 掲載、2026年8月7日発表)。

記事を読む出典:EurekAlert!(ヨハネス・グーテンベルク大学マインツ/GSI・FAIR/HÜBNER Photonics/Physical Review Letters)
レーザー分光2026年8月6日

蛍光色素なしで細胞小器官を見分ける——ラマン分光と機械学習を組み合わせた「ラマノミクス」(米バッファロー大)

生きた細胞の中を見るには蛍光色素で標識するのが一般的ですが、色素は細胞そのものの振る舞いを変えてしまい、一度に見られる構造の数も限られます。ニューヨーク州立大バッファロー校のParas N. Prasadらは、色素を使わずに細胞の生化学組成を測る同大発の技術「ラマノミクス」に機械学習を組み合わせ、ラマンスペクトルの違いだけで細胞小器官を識別できることを示しました。まず蛍光標識で位置が分かっている状態で4種類の小器官のスペクトルを集めて教師データとし、複数の機械学習モデルを学習させたところ、ニューラルネットワークが最も良く、約90%の精度でどの小器官から得た信号かを判定できたということです。色素の準備が不要になることで手順が簡素になり、標識由来のアーティファクトが減って測定の信頼性も上がるとしています。病気の指標となる分子の探索や創薬、個別化医療への応用が期待されます(ACS Omega 掲載)。

記事を読む 出典:phys.org(University at Buffalo/ACS Omega)
光学素子2026年8月6日

鏡も発光層も「塗って」つくる固体ポラリトンレーザー——全工程スピンコートで強結合領域へ(フィンランド・トゥルク大)

固体レーザーの微小共振器は、真空蒸着など手間とエネルギーのかかる工程でつくられるのが普通です。トゥルク大のKonstantinos Daskalakisらは、光を閉じ込める両側の鏡と有機発光層のすべてを溶液からのスピンコートだけで成膜し、完全な溶液プロセスによる固体レーザー微小共振器を実現しました。膜の光学的な質が十分に高かったため、光と分子が強く結びついてポラリトンという混成状態をつくる強結合領域に到達し、ポラリトンレーザーとして動作します。さらに強く励起すると、発光が励起した場所の中心から外へ再分配されてリング状のパターンが現れ、共振器の光学設計によってその強さを制御できることも分かりました。ポラリトン同士の相互作用が肉眼で分かる形で現れた例で、簡便な作製法と合わせて非線形なポラリトン物理を調べる実験台になるとしています(Nature Communications 掲載)。

記事を読む 出典:phys.org(University of Turku/Nature Communications)
レーザー顕微鏡2026年8月6日

もつれ光子を同じレンズに3回通して分解能4倍——量子もつれ顕微鏡の改良(米カリフォルニア工科大)

米カリフォルニア工科大のLihong Wangらが、2023年に自ら実証した「一致計数による量子顕微鏡(QMC)」を改良し、通常の光学顕微鏡に対して分解能を4倍に高めました。量子力学では粒子の波長は運動量に反比例するため、量子もつれ光子対の一方は、実質的に元の光の半分の波長で結像するようにふるまいます。顕微鏡の分解能は波長が短いほど上がるので、これだけで2倍の改善になります。今回は、観察対象を通す信号光子はこれまでどおり1回だけ通し、対になるアイドラー光子のほうを同じレンズ対に3回通してから検出器へ導く構成にしました。これは磁場の印加と、光の偏光を制御する特殊なビームスプリッタを組み合わせて実現しています。装置構成と実験による検証は Science Advances に掲載されました(2026年8月6日)。

記事を読む 出典:phys.org(California Institute of Technology/Science Advances)
量子光学2026年8月6日

レーザーではなく「太陽光」から量子もつれ光子をつくる(カナダ・オタワ大/独マックスプランク光科学研究所)

量子もつれ光子の生成には、波の揃い方(コヒーレンス)が高いレーザーが不可欠と長く考えられてきました。オタワ大のRobert Boydらとマックスプランク光科学研究所のHanieh Fattahiらは、家庭の窓ほどの大きさのフレネルレンズで集めた太陽光を、全ガラス製の円錐形コンセントレーターで髪の毛ほどの太さの光ファイバーへ絞り込み、非線形結晶に入射させることで、自発パラメトリック下方変換により量子もつれ光子対を生成しました。太陽光は色も進む向きもばらばらですが、偏光の向きさえ揃えれば偏光のもつれは保たれる、という理論予測どおりの結果です。屋外実験で理想的なもつれ状態との一致度は約94%で、ベルの不等式の破れも確認されました。搭載レーザーなしで宇宙の太陽光から暗号鍵を生成する衛星などが用途として想定されています(Optica 掲載、2026年8月6日)。

記事を読む 出典:EurekAlert!(University of Ottawa/Max Planck Institute for the Science of Light/Optica)
関連論文要約:AgGaS₂結晶における波長可変中赤外自発パラメトリック下方変換の特性評価

非線形結晶の角度を調整して、中赤外の波長を連続的に変えられる光子対をつくる研究です。

レーザー顕微鏡2026年8月6日

揺れる「すりガラス」の間に挟まれた透明な物体を1枚の画像から復元(韓国KAIST)

ガラスやプラスチックフィルム、生きた細胞のような透明な物体(位相物体)は明暗の差がほとんど出ないため普通のカメラでは見えませんが、通り抜けた光の位相のわずかなずれを解析すれば形や光学的な厚みが分かります。この定量位相イメージングは無染色の細胞観察や半導体・ディスプレイの透明部材の検査に使われてきましたが、物体の前後にある散乱層が動いていると光路が刻々と変わり、正確な情報を得るのが困難でした。KAISTのMooseok Jang准教授らは、照明を手前の散乱層の一点に強く絞り込んだうえで、光が物体と散乱層をどう通るかを記述する光学モデルと、大量の学習画像を使わず物理法則から逆算して光路を推定するAIとを組み合わせ、たった1回の強度測定から物体の形状と厚み、散乱によるぼけの性質、物体の位置を同時に決定することに成功しました(Optica 掲載、2026年8月6日)。

記事を読む 出典:phys.org(KAIST/Optica)
関連論文要約:反復投影とスパース正則化の融合:単一ショット定量位相イメージング

直接は測れない光の位相を反復計算で補い、1枚のホログラムから物体の位相像を求める研究です。

レーザー分光2026年8月6日

ファイバーのごく一部を温めるだけで、低雑音の「白色レーザー」が2倍広く(デンマーク工科大)

広い波長域を連続して出すスーパーコンティニウム光源は「白色レーザー」とも呼ばれ、医用イメージングからガス検知まで幅広く使われますが、帯域を広げるほど強度のゆらぎ(雑音)が増えるという二律背反がありました。デンマーク工科大(DTU Electro)のAndrea Arduinらは、雑音を極めて低く保ったまま、使える波長域を0.86〜2.90μmへとほぼ倍増させました。鍵は「熱分散エンジニアリング」と呼ぶ手法です。通常は特性の異なるファイバーを継ぎ合わせてパルスを圧縮しますが、接続部で損失が生じ、系も複雑になります。研究チームは1本のファイバーのごく短い区間を加熱して内部の性質をわずかに変えるだけでパルスを整形し、より短く強いパルスから広い帯域を得ました。雑音は微弱な光を捉える感度を直接制限するため、分光やガスセンシング、医用イメージングの速度と感度の向上につながります(Optica 掲載、2026年8月6日)。

記事を読む 出典:phys.org(Technical University of Denmark/Optica)
関連論文要約:ハイブリッド光チップ上のチェレンコフ位相整合を利用した堅牢かつ広帯域な紫外レーザー

(光チップ上で位相整合を工夫し、204〜319nmの広い波長域の紫外光を作り出す研究です。)

レーザー顕微鏡2026年8月6日

近赤外レーザー1本で多色・局在精度0.6Å——「褪せない点滅」を持つナノ粒子による超解像顕微鏡U-STORM(米MIT/ブロード研究所)

一分子局在型の超解像顕微鏡(STORM)は蛍光分子の確率的な明滅を利用しますが、色素は褪色するうえ、多色化には複数のレーザーと精密な光軸調整、特殊な緩衝液が必要でした。MITとブロード研究所のSam Pengらは、ランタニドの組成を精密に設計した直径10nmのアップコンバージョンナノ粒子が、近赤外の連続光を当てるだけで自発的に、しかも褪色せず無期限に点滅し続けることを見いだしました。増感イオンと発光イオンの比を変えて赤と青に光る粒子を作り分け、近赤外レーザー1本で同時多色の超解像撮像(U-STORM)を実現。同じ粒子から8万8千回以上の局在イベントを積み上げられるため局在精度は0.6Åに達し、生理的な条件下でEGFR受容体の二量体・多量体の分布を可視化しています(Nature Nanotechnology 掲載)。

記事を読む出典:optics.org(マサチューセッツ工科大学/ブロード研究所/Nature Nanotechnology)
光学素子2026年8月3日

導波路を作らずに光を一方向へ流す——天然の双軸材料で起きる「プラズモン・カナリゼーション」(独シュツットガルト大/伊IIT)

光チップでは、光を決まった道筋に通すためにリソグラフィで微細な導波路を作り込む必要があり、これが製造コストを押し上げてきました。シュツットガルト大のHarald Giessenらとイタリア技術研究所のAntonio Ambrosioらは、二次元材料 MoOCl₂ の表面に金のナノアンテナを置いて赤外レーザーを当てるだけで、光(表面プラズモン)が細い帯に閉じ込められて一方向だけに伝わる現象を観測しました。この材料は結晶方位によって金属的にも誘電体的にもふるまう双軸材料で、その異方性そのものが「見えない導波路」の役割を果たします。励起波長を変えるだけで波面の性質が切り替わることも示され、約4μmでは強い一方向伝搬、5μmでは等方的な同心円状、3μmでは開いた双曲線状になりました。近接場の観察には走査型近接場光学顕微鏡(SNOM)を用いています(Nature Nanotechnology 掲載、2026年8月3日)。

記事を読む 出典:EurekAlert!(Universität Stuttgart/Istituto Italiano di Tecnologia/Nature Nanotechnology)
関連論文要約:運河化光がバナジウム二酸化物に方向性かつ可逆的な表面構造を形成する

(フェムト秒レーザーで二酸化バナジウムの表面に、向きのそろった周期的な微細構造を作る研究です。)

レーザー分光2026年8月5日

化学反応の引き金になる電子の動きをアト秒で追う——X線2発による吸収分光で反応初期を撮影(SLAC国立加速器研究所)

化学反応は電子の動きから始まりますが、その初期過程は極めて速く、時間を追って捉えることが困難でした。SLAC国立加速器研究所のチームは、X線自由電子レーザーのアト秒パルスを2発使い、1発目で分子から電子をたたき出して反応を起こし、2発目のX線吸収分光でその後の変化を読み取る手法で、分子内の電子運動を連続した「コマ」として記録しました。最初の1フェムト秒以内に起こるコスター・クロニッヒ崩壊、量子コヒーレンスによる電子の空孔の移動、そして約10フェムト秒後に始まる化学結合の変化という、時間スケールの異なる過程が分離して観測されています。実験結果が既存の計算模型と合わなかったため理論側で模型を改良しており、光化学反応の予測精度を高める成果としてNature Physicsに掲載されました。

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出典:phys.org(SLAC国立加速器研究所/Nature Physics)
光学素子2026年8月5日

室温より高い温度でも連続動作する半導体メーザー——炭化ケイ素の点欠陥スピンを光で励起(ヴュルツブルク大学)

メーザーはレーザーと同じ誘導放出の原理でマイクロ波を発生・増幅する装置ですが、極低温などの厳しい条件を必要とすることが多く、応用は限られてきました。ヴュルツブルク大学のチームは、パワーエレクトロニクスで量産されている炭化ケイ素の結晶からケイ素原子を抜いて点欠陥を作り、そのスピン状態を光で励起することで、室温を超える温度でも連続動作するメーザーを実現しました。マイクロ波が積み上がるための共振器のQ値を設計で高めたことが連続動作の鍵で、初期実験と数値計算では低雑音増幅器としての可能性も示されています。Nature Communications掲載。入手しやすい材料を使うため、小型で集積可能なメーザー装置につながると位置づけられています。

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出典:phys.org(ヴュルツブルク大学/Nature Communications)
関連論文要約:広帯域フォトニック結晶反射器を集積した炭化ケイ素中の色中心による効率的な読み出し

(炭化ケイ素の中で光る欠陥(色中心)を、反射構造と組み合わせて効率よく読み出す研究です。)

量子光学2026年8月5日

都市郊外の架空光ファイバ62kmで量子もつれを24時間配信——既存インフラ上の量子ネットワークへ(NIST/メリーランド大学)

米国立標準技術研究所(NIST)と、NIST・メリーランド大学の共同拠点JQI、企業Qunnectのチームは、メリーランド州郊外の電柱に架けられた既存の光ファイバ網62kmを使って、量子もつれ状態の光子対を配信する実験を行いました。架空ファイバは日中に伸び夜間に縮み、風や鳥が止まることでも揺れるため、光子の偏光に符号化した量子状態は容易に乱れます。チームは参照光を同じファイバに通して偏光の変化を測り、その逆変換を実時間で掛け戻す装置を用いることで、毎秒1,500組の光子対を送り、24時間のうち92.8%の時間で配信を継続できたとしています。Journal of Optical Communications and Networking掲載。量子専用のファイバを新設せず、今のインターネットを支える設備をそのまま使える点に意義があるとされています。

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出典:phys.org(米国立標準技術研究所(NIST)/Journal of Optical Communications and Networking)
関連論文要約:AgGaS₂結晶における波長可変中赤外自発パラメトリック下方変換の特性評価

AgGaS₂結晶に660nmの光を当て、波長を変えられる中赤外の光子対をつくる研究です。

レーザー分光2026年8月5日

心筋梗塞の傷あとを光で描き分ける——組織の性状と電気信号を同時に全周撮像(ジョージ・ワシントン大学)

心筋梗塞のあとに残る瘢痕組織は、拍動をそろえる電気信号の伝わり方を乱し、不整脈の一因になります。ジョージ・ワシントン大学のチームは、6台のカメラと7個のLED照明で摘出灌流心を多方向から捉え、365nm照明によるハイパースペクトルイメージングで組織の種類を、520nm照明と電位感受性色素の蛍光(光学マッピング)で膜電位を、同じ座標系で記録する装置を作りました。傷あとに蓄積するコラーゲンの分光応答が強いことを手がかりに、健常心筋・梗塞部・その境界を区別でき、境界付近から異常な拍動が始まる様子や、興奮波が瘢痕を迂回し、瘢痕内では遅れたり止まったりする様子が観察されました。Journal of Biomedical Optics掲載。線維化や心不全、加齢に伴う変化の解析にも使えるとしています。

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出典:optics.org(ジョージ・ワシントン大学/Journal of Biomedical Optics)
関連論文要約:位相シフト光熱顕微鏡による高密度生細胞集団の中赤外超分光イメージング

中赤外の吸収を532nmのプローブ光で読み取り、生きた細胞を広い視野で成分ごとに画像化する研究です。

その他2026年8月5日

2種類の原子を同時に冷やす小型レーザー系——微小重力下で混合ボース=アインシュタイン凝縮を生成(マインツ大学ほか)

マインツ大学(JGU)、ベルリン・フンボルト大学、フェルディナント・ブラウン研究所のチームは、ルビジウムとカリウムという2種類の中性原子を同時にレーザー冷却し、ボース=アインシュタイン凝縮体(BEC)を作るための小型光学系を開発しました。装置MAIUS-Bとして、ハノーファー・ライプニッツ大学の落下試験設備「アインシュタイン・エレベーター」で微小重力下の実験に用いられ、この種の2種混合装置としては高い原子フラックスが得られたと報告されています。必要なレーザーや電子回路が倍近くに増えたにもかかわらず、搭載体積と質量をほぼ据え置いた点が特徴で、レーザーモジュールと真空槽をつなぐ光学ベンチには熱膨張の極めて小さいガラスセラミックス(Zerodur)を採用しています。Nature Communications掲載。

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出典:phys.org(ヨハネス・グーテンベルク大学マインツ/Nature Communications)
レーザー分光2026年8月4日

分子軌道を3次元で撮像——光電子分光とアルゴリズムで波動関数の全体像を復元(ゲッティンゲン大学)

電子の波動関数は量子力学の基本量ですが、直接観測することはできません。ゲッティンゲン大学を中心とする研究チームは、光電子分光で放出電子の運動量分布を測って波動関数の「半分」にあたる情報を得たうえで、残りを数値アルゴリズムで補い、ナノメートルサイズの有機分子の分子軌道を3次元像として再構成しました。分子を構成する炭素原子どうしの間隔より細かい構造まで分解できたとしています。測定には研究室に設置できる軟X線の超短パルス光源を用いており、大型施設に頼らずに時間分解測定へ展開できる点も特徴です。成果はNature Communicationsに掲載され、将来的にはフェムト秒スケールで軌道の変化を追う「動画」につながると位置づけられています。

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出典:phys.org(ゲッティンゲン大学/Nature Communications)
関連論文要約:反復投影とスパース正則化の融合:単一ショット定量位相イメージング

直接は測れない光の位相を反復計算で補い、1枚のホログラムから物体の位相像を求める研究です。

光学素子2026年8月4日

1つの光チップで2つの材料に役割を分担——コアでコム、クラッドでラマンを生む窒化シリコン共振器

多くの光チップは単一の材料で非線形光学効果を担うため、得られる機能に限りがありました。研究チームは、窒化シリコンのリング共振器(コア)と、それを囲むシリカのクラッドに別々の役割を持たせる設計を報告しました。コアでは四光波混合により周波数コムが生まれ、共振器から外側へしみ出した光がシリカと相互作用してラマン利得や第二高調波発生を担います。従来は受動的な層として扱われてきたクラッドを積極的に使う発想で、2つの材料の非線形性を組み合わせることにより、単一材料では届きにくい広い波長範囲のスーパーコンティニューム光を1つの素子から得られるとしています。成果はAdvanced Photonicsに掲載されました。

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出典:phys.org(Advanced Photonics)
関連論文要約:単一軸モードダイヤモンドラマン共振器における波長可変カスケードストークス次数発生

ダイヤモンドの共振器の中でラマン散乱を繰り返させ、波長を段階的にずらした光を作る研究です。

レーザー顕微鏡2026年8月

1本のレーザーでオングストローム級の位置決め——点滅し続けるアップコンバージョン粒子による超解像法(MIT/ブロード研究所)

1分子ずつ位置を推定する超解像顕微鏡では、蛍光色素の褪色や、点滅を起こすための薬液・光源の切り替えが実用上の制約になっていました。マサチューセッツ工科大学とブロード研究所の研究チームは、組成を作り込んだアップコンバージョンナノ粒子が、近赤外光を連続して当てるだけで自発的に、しかも褪色せずに点滅し続けることを見いだし、これを標識に用いる超解像法U-STORMを報告しました。光源は近赤外レーザー1本のみで、蛍光色素で一般的なナノメートル級を大きく上回るオングストローム級の局在精度が得られたとしています。成果は7月27日付でNature Nanotechnologyにオープンアクセス公開されました。

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出典:phys.org(マサチューセッツ工科大学/ブロード研究所)
関連論文要約:ヘプタメチンシアニン色素増感剤(IR806)とランタニドアップコンバージョンナノ粒子の相互作用

近赤外を吸収する色素とアップコンバージョンナノ粒子の間で、励起エネルギーがどう移るかを分光で調べた研究です。

レーザー顕微鏡2026年8月

1秒あたり252億画素——広い視野・高分解能・高速撮影を同時に満たす計算顕微鏡(カリフォルニア大学バークレー校)

顕微鏡では分解能・視野の広さ・撮影速度のいずれかを上げると他が犠牲になる関係が長く課題でした。カリフォルニア大学バークレー校を中心とする研究チームは、48個のイメージセンサーを並べた撮像面、専用設計の回折光学素子、復元アルゴリズムを組み合わせた計算顕微鏡を報告しました。センサーどうしの隙間に落ちるはずの光を位相マスクで各センサー上へ振り分け、圧縮センシングの考え方で欠けた情報を計算により補います。5平方センチメートルの視野で3マイクロメートルの分解能を毎秒120フレームで記録し、自由に動く多数の線虫を同時に追跡した例が示されています。煩雑な手動キャリブレーションが不要になる点も利点として挙げられています。

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出典:phys.org(カリフォルニア大学バークレー校/Nature Photonics)
関連論文要約:高忠実度な単一フレーム計算超解像

回折限界の1枚の画像から、雑音除去と計算処理で細かい構造を推定する超解像顕微鏡の研究です。

レーザー分光2026年8月

アト秒X線パルスは自ら与えた損傷を一部打ち消す——より明るく正確な回折イメージングへ(ハンブルク大学/SLAC)

X線自由電子レーザーで分子やナノ粒子を撮影する際は、強いX線が電子をはぎ取り、像を記録し終える前に試料がイオンと電子の雲に変わる「電子ブリーチング」が避けられない制約とされてきました。ハンブルク大学とSLAC国立加速器研究所を中心とする国際チームは、数百アト秒という従来の100〜1000分の1の短さのX線パルスをネオンナノ粒子へ照射し、損傷の進行を追い越すだけでなく、誘導放出によって電子が元の状態へ押し戻され、ブリーチングが部分的に打ち消される様子を観測しました。イオン化が抑えられながら信号は強くなり、X線と物質の相互作用を能動的に制御できる可能性を示しています。

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出典:phys.org(ハンブルク大学/SLAC国立加速器研究所/Nature Communications)
その他2026年8月

光を消した瞬間に切り替わる——強誘電体結晶のナノ「バブル」ドメインを光で操る(フリンダース大学)

フリンダース大学を中心とする研究チームは、強誘電体単結晶PMN-PTの表面に電場で作った数ナノメートル規模の「バブル」ドメインが、光の照射中はほとんど変化せず、照射を止めた瞬間に急速に広がって結晶表面全体の電子状態を切り替える現象を報告しました。バンドギャップを超えるエネルギーの光を当てている間は表面付近に電子がたまり、光を切ると一気に放出されて反転が起こると説明されています。切り替えが消灯後に起こるため、照射し続ける従来の光制御デバイスに比べて発熱や消費電力を抑えられる可能性があるとしています。不揮発メモリやセンサーなどへの応用が視野に入ります。

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出典:phys.org(フリンダース大学/Advanced Functional Materials)
関連論文要約:電場で可変なニオブ酸ストロンチウムバリウム回折光学素子

強誘電体結晶の分域構造に電圧をかけ、回折のはたらきを切り替える光学素子の研究です。

2026年7月
光学素子2026年7月24日

人が描かない形が光を導く——逆設計で窒化ケイ素チップの部品を最大500分の1に(独マックス・プランク光科学研究所/米ハーバード大)

フォトニックチップには、波長ごとに光を振り分ける分波器、伝わり方(モード)を仕分ける素子、光を閉じ込めるミラーが必要です。ただし損失の小さい厚膜窒化ケイ素は屈折率の差が小さく、光を曲げたり分けたりするのに長い距離が要るため、部品が大きくなりがちでした。MPLとハーバード大は、「光に何をさせたいか」を先に指定して構造を計算機に自動探索させるインバースデザインをこの材料に適用。波長分波器を5×5μm角に、モード分波器を従来設計比で約500分の1の面積に収めました。数μm角のミラーは反射率98.5%を示し、2枚で挟むと光が100回以上往復する共振器になります。最小加工寸法や製造ばらつきへの耐性を最適化に組み込み、商用ファウンドリ工程と両立させた点も特徴です。Nature Communications掲載。

記事を読む 出典:マックス・プランク光科学研究所(MPL)プレスリリース(ハーバード大/Nature Communications 17, 6943, 2026)
その他2026年7月29日

油と水の境目にできる「メニスカス」に光を当てて細い血管をつくる——人工組織のための光造形(大阪大学)

人工臓器を機能させるには、組織へ酸素と栄養を届ける血管網が欠かせません。毛細血管に相当する細い管や太い動脈を模した構造はつくられてきましたが、その中間をつなぐ「細動脈」規模の管をつくる方法が確立しておらず、人工血管網の未解決課題として残っていました。大阪大学大学院工学研究科の森島圭祐教授らは、細い流路の中で油とハイドロゲル前駆液の界面にできる湾曲した液面(メニスカス)を利用する光造形手法を開発しました。この曲がった界面に紫外光を当てると、流路の壁に沿ってリング状にゲルが硬化します。位置を少しずつずらしながらこれを繰り返すと、リングが連なって中空のチューブ状ハイドロゲルが連続的に形づくられます。型を使わないため管の太さや形を柔軟に変えられ、人工組織に血管網を組み込む技術としての応用が期待されます。

記事を読む 出典:ResOU(大阪大学 大学院工学研究科)
量子光学2026年7月

卓上の光ファイバリングで非可換ゲージ場を再現——光が示す「震え」の運動(香港大学)

強い力・弱い力を記述する非可換ゲージ理論は操作の順序で結果が変わる点が特徴で、細かな予言を確かめるには大型加速器が必要とされてきました。香港大学の研究チームは、光ファイバのリング共振器と電気光学変調器で周波数方向の格子(合成次元)を作り、偏光を調整することで非可換な性質をもつ合成電場を実現しました。注入した光パルスの周波数重心が前後に震える様子が観測され、ディラック方程式が予言する電子のツィッターベヴェーグング(震動運動)に対応する現象として報告されています。格子は電気的に書き換えられるため、周波数領域の信号処理や量子計算の模擬実験への展開も期待されています。

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出典:phys.org(香港大学/Physical Review Letters)
関連論文要約:液晶トロンをマイクロキャビティに埋め込んだ基底状態軌道角運動量レーザー発振

液晶の欠陥構造をマイクロ共振器に閉じ込め、光渦が基底状態になるレーザー発振を実現した研究です。

量子光学2026年7月

ダイヤモンドに新種の発光欠陥「IL1」——格子振動から切り離された単一光子源へ(イリノイ大学)

ダイヤモンド中の色中心(カラーセンター)は単一の光子を出す量子光源として有望ですが、結晶格子の細かな振動(フォノン)に乱されて発光がぼやけるため、多くは絶対零度近くまで冷やして使う必要がありました。米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の電気・計算機工学科のグループは、ナノダイヤモンド中に新しい色中心「IL1」を見つけ、Nature Communicationsに報告しました。IL1は結晶全体の多数の振動と結びつくのではなく、局所的なひとつの振動モードとだけ結合するため、周囲が揺れていても発光が保たれます。研究チームはこれを、高速で走る磁気浮上列車の中でグラスの水面が静かなままである様子にたとえています。冷却の負担を減らした単一光子源や、その振動自体を量子の資源として使う道につながると期待されます。

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出典:phys.org(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校/Nature Communications)
関連論文要約:ダイヤモンド中スズ空孔色中心のコヒーレント励起

ダイヤモンド中のスズ空孔色中心を、スピンを乱さずに短いパルスで励起する手法の研究です。

光学素子2026年7月

「一方通行の光」を境界だけでなく材料内部でも——4本の信号を同時に流す新しい光の道(香港科技大学)

光を一方向にだけ進ませ、曲がり角や欠陥があっても後方へ散乱させない伝搬はトポロジカルフォトニクスの代表的な性質ですが、これまでは性質の異なる2つの「トポロジカル絶縁体」領域の境界にしか現れず、材料の大部分は光の通り道として使えませんでした。香港科技大学のXiaohan Cui氏、Che Ting Chan氏らを中心とする中国の研究グループは、そうした絶縁体領域を用意しなくても材料内部(バルク)そのもので一方通行の伝搬を実現する方法をNatureに報告しました。使える領域が広がったことで、4本のマイクロ波信号が互いに干渉せず同時に同じ構造を通過することを実証しています。1つの経路で運べる情報量を増やせる可能性があり、光集積回路や通信部品への応用が検討されています。

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出典:phys.org(香港科技大学/Nature)
関連論文要約:ハイブリッド光チップ上のチェレンコフ位相整合を利用した堅牢かつ広帯域な紫外レーザー

窒化ケイ素の導波路にBBO結晶を貼り合わせ、204〜319nmの紫外光を広く発生させたチップの研究です。

レーザー顕微鏡2026年7月

濁った組織の奥をリアルタイムで見る——非線形変換と物理を組み込んだ機械学習の組み合わせ(UCLA/ロチェスター大学)

生体組織や濃い霧のように光を強く散乱する「複雑媒質」の内部を見ることは、バイオイメージングでも産業用の視覚システムでも共通の難題です。ロチェスター大学は以前、散乱して出てきた光のうち特定の光子だけを通し、近赤外から可視域へ変換して安価なシリコンカメラで撮像できる特殊な膜を開発していました。今回、同大学とUCLAの共同チームはこれを発展させ、四光波混合と、材料固有の「エプシロン・ニア・ゼロ」波長での波長変換を使った非線形計測に、深層学習の枠組み「DeepTimeGate」を重ねた撮像法をLight: Science & Applicationsに発表しました。まず数学的に像を再構成し、続いてUCLAが開発した第2段階が物理法則に照らして妥当かを高速に検算する二段構成で、散乱の条件を変えた各種の試験で画質の指標が向上したと報告されています。

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出典:optics.org(UCLA/ロチェスター大学/Light: Science & Applications)
関連論文要約:動的散乱を通した行列ベースイメージング

(揺らぎながら散乱する媒質の向こう側にある対象を、行列を使った計算で像として復元する研究です。)

その他2026年7月

レーザーが材料を蒸発させる「反動」で切込み深さを測る——加工の実時間モニタリング(千葉大学)

半導体ウェハーからチップを切り出すレーザーダイシングは、機械的な刃に比べて壊れやすい材料も少ない応力で加工できますが、パルスが足りなければ切り残し、多すぎれば材料や保持テープを傷めるため、加工深さの管理が歩留まりを左右します。既存の深さモニタ手法は生産ラインで使うには遅い、あるいは壊れやすいという課題がありました。千葉大学大学院工学研究院の比田井洋史教授らのグループは、キスラー・ジャパンと共同で、レーザーパルスが材料表面を急激に加熱・蒸発させるときに生じる微小な「反動力」を高感度なロードセルで捉え、そこから加工深さを推定する手法を提案しました。25ナノ秒のパルスでシリコンに穴あけ加工を行う実験で、反動力がパルスごとに予測可能な振る舞いを示すことを確認しています。成果はOptics and Laser Technology誌に掲載予定です。

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出典:optics.org(千葉大学/Optics and Laser Technology)
関連論文要約:レーザー超音波による金属円筒表面微小亀裂の自動検出方法

(レーザーで励起した超音波を使って、金属円柱の表面にある微小な亀裂を自動で見つける研究です。)

光学素子2026年7月

アルゴリズムが設計した窒化シリコン素子は従来の約500分の1——高密度な光集積回路へ(ハーバード大学/マックス・プランク光科学研究所)

光を扱う集積回路は、光ファイバと導波路をつなぐグレーティングカプラや、光を一時的にためて強度を高めるリング共振器など、多数の部品からできています。従来これらは既知の形状を出発点に技術者が少しずつ寸法を調整して設計するため、手間と時間がかかっていました。ハーバード大学工学応用科学大学院(SEAS)とマックス・プランク光科学研究所の共同チームは、計算機が構造そのものを最適化するインバースデザイン(逆設計)を窒化シリコン(SiN)に適用し、波長分離素子・モードソータ・ミラーという3種類の機能素子を、従来設計の約500分の1という大きさで作製したとNature Communicationsに報告しました。硬貨ほどのチップに数百個を並べられる密度で、量子フォトニクス回路をはじめとする光集積回路の高性能化につながると期待されます。

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出典:optics.org(ハーバードSEAS/マックス・プランク光科学研究所/Nature Communications)
関連論文要約:ESO CUBES紫外分光器のための高効率透過型回折格子

(紫外域の天体分光器のために、光を波長ごとに分ける透過型の回折格子を高効率で作る研究です。)

光学素子2026年7月

「時間」方向にも周期をつけた光の結晶——テラヘルツ帯で「フォトニック時間結晶」を世界初実証(仏エコール・ポリテクニーク/独HZDR)

フォトニック結晶は屈折率を空間的に周期配列して光の流れを制御しますが、その周期を「時間」方向にも作るとどうなるか——エコール・ポリテクニーク、コレージュ・ド・フランス、ヘルムホルツ・センター・ドレスデン・ロッセンドルフ(HZDR)の国際チームが、光学特性をピコ秒周期で強く変調するフォトニック時間結晶を全光学的に実現したとNatureに発表しました。素子は金の層とインジウム・アンチモン半導体からなる周期的な凹凸構造(プラズモニック・メタマテリアル)で、半導体表面に生じる表面プラズモンが光を捕らえて振動を保ちます。ここへHZDRの超放射テラヘルツ光源TELBEから位相の揃った強いテラヘルツパルスを当てると、反射率などの光学特性が、光自身の振動周期に匹敵するピコ秒スケールで大きく変調されました。「強く」かつ「速く」変調することは難しく、これまで実証例のなかった領域です。増幅や発振につながる新しい原理として、超高速の光計算や通信、将来のテラヘルツレーザーへの応用が期待されます。

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出典:phys.org(École Polytechnique/HZDR/Nature)
レーザー分光2026年7月

道路標識や木の幹の反射を「鏡」代わりに使う、離れた場所の化学エアロゾル検知(米PNNL)

離れた場所の有害物質を光で調べる遠隔分光は、測定したい場所に反射鏡を設置する必要があり、現場では使いにくいという問題がありました。米パシフィック・ノースウェスト国立研究所(PNNL)のTim Johnsonらは、道路標識・木の幹・外壁・車の塗装面といった身の回りの面からの拡散反射を利用し、空中に漂う化学エアロゾルを赤外分光で同定する装置を開発したとApplied Opticsに報告しました。サイディングや標識など約50種類の一般的な材料の反射率を実測し、鏡ほど反射率が高くなくても十分な信号が得られることを確認。距離に応じて出射ビームを自動調整し、戻ってくる光を効率よく集める赤外レーザー・望遠鏡系も組み合わせています。危険物質の代替物質であるセバシン酸ジエチルや、炭酸カルシウムのエアロゾルを検出・同定できました。工場や大規模イベント会場での漏洩検知などを想定しており、今後は粒径分布の広い試料や複雑な混合物への対応を進めるとしています。

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出典:phys.org(PNNL/Applied Optics)
関連論文要約:偏光海洋シャインプルーフ・ライダー

水中の懸濁粒子を、後方散乱光の偏光の変化から遠隔で見分けるライダーの研究です。

量子光学2026年7月

常温セシウム原子と量子ドット——まったく別種の光源から「区別できない光子」を発生(韓国・釜山大/UNIST)

大規模な量子ネットワークには量子メモリと相性のよい光源が要りますが、半導体の単一光子源である量子ドットは発光波長がばらつき保存に向かず、原子系は周波数基準やメモリに優れる一方で使い方に制約があります。釜山大学のHan Seb Moon教授とUNISTのJe-Hyung Kim教授らは、温かいセシウム原子気体セルとInAs/GaAs量子ドットという、物理的にまったく異なる2つの独立した光源から出た単一光子どうしで、直接の2光子干渉(ホン・オウ・マンデル効果)を観測したとLight: Science & Applicationsに発表しました。検出系の時間分解能を補正した干渉可視度は0.65±0.14で、両者の光子が互いに区別できないことを示しています。スペクトルや時間波形をそろえる追加の加工を行わずに達成した点が特筆されます。光子を作る側と保存する側を別々の材料系が担う「ハイブリッド量子ネットワーク」への道を開く成果です。

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出典:phys.org(Pusan National Univ./UNIST)
量子光学2026年7月

大気の乱れでねじれ模様が崩れても情報は残る——もつれ光の「トポロジー」に注目(南アフリカ・ウィットウォータースランド大)

光の軌道角運動量(ねじれ)は無限に近い種類の「文字」を作れるため大容量通信の有力候補ですが、悪天候や大気の乱流を通ると模様が崩れてしまうことが長年の障壁でした。南アフリカ・ウィットウォータースランド大学のAndrew Forbesらは、模様そのものではなく、そこに埋め込まれた数学的な性質=トポロジー(大きく変形しても保たれる量)に注目しました。強い乱流を通したもつれ光子を測定したところ、ねじれ模様が大きく劣化し従来の量子相関の指標が落ちる条件でも、トポロジカル不変量は保たれたままであることをPhysical Review Lettersで示しました。頑丈になるよう特別に設計した光ではなく、量子光を作れば自然に備わっているねじれ構造から不変量が組み立てられている点が新しく、追加の手間がかかりません。実環境での高次元な量子通信の可能性を改めて開く成果です。

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出典:phys.org(Wits University/PRL)
光学素子2026年7月

1枚の発光層から青・緑・黄・赤——テルビウムを入れた窒化物LEDで4色を室温発光(大阪大学/立命館大学)

フルカラー表示には通常、赤・緑・青それぞれの発光素子が必要で、マイクロLEDでは別々に作ったチップを並べるため微細化が難しいという課題があります。大阪大学と立命館大学のチームは、窒化物LEDで既に広く使われている製法を用い、テルビウムイオンを含む窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)のLEDを作製。同じ発光領域から青・緑・黄・赤の4色を、室温・電流駆動で得たとApplied Physics Lettersに発表しました。アルミニウム組成を高めることで外部量子効率は最大10.3倍に向上し、窒化アルミニウムの下地層の上に成長させることで結晶品質と素子特性も改善しています。カラーフィルターを併用すると、同じ発光領域から赤・緑・青を個別に取り出せました。効率や色ごとの輝度制御にはまだ改良が必要ですが、スマートグラスなど小型・高精細ディスプレイや、新しい白色光源につながると期待されます。

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出典:phys.org(University of Osaka/立命館大学)
関連論文要約:結晶相の制御によるエルビウム酸化物ナノ粒子の発光増強

エルビウム酸化物ナノ粒子を焼鈍して結晶相をそろえ、赤色発光を強める条件を調べた研究です。

レーザー顕微鏡2026年7月

角膜の変形を9か所同時に測る多点OCT——円錐角膜の早期発見へ(ポーランドICTER)

角膜が薄く変形する円錐角膜などでは、形が目に見えて変わる前に力学的な性質が変化します。ポーランドのICTER(国際眼科研究センター)は、VCSEL光源を使った波長掃引OCTの長いコヒーレンス長と、通信技術である空間分割多重を組み合わせ、角膜の中心1点と周辺8点の計9か所を1回の取得で同時に計測する試作機を開発したとBiomedical Optics Expressに報告しました。眼圧測定と同じ空気パルスで角膜を変形させますが、その応答は約20ミリ秒しか続かず繰り返せないため、各点を順番に走査すると時間的なずれが避けられませんでした。同時計測にしたことで、空気パルス後の変形が1つではなく明確に2つの段階に分かれることが直接観測されました。角膜の非対称性=局所的な力学的弱さの評価につながり、他の軟組織の高速な力学計測への展開も見込まれています。

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出典:optics.org(ICTER/Biomedical Optics Express)
関連論文要約:動き補正機能を備えたブリュアン顕微鏡によるヒト皮膚の生体内における生体力学的特性の測定

ブリルアン顕微鏡とOCTを組み合わせ、動きを補正しながらヒトの皮膚の硬さを深さごとに測る研究です。

レーザー分光2026年7月

超短パルスの泡で「自分を洗う」ナノ空隙センサー——血清中でも24時間、感染の兆候を検出(米バージニア工科大)

分子を高感度に捉えるセンサーは、血液や体液中のタンパク質が表面に付着して数時間で感度を失うのが弱点でした。バージニア工科大学のWei Zhouらは、幅10ナノメートル以下の微小な空隙を並べた柔らかいセンサーに超短パルスレーザーを当て、空隙内に生じるキャビテーション気泡の局所的な熱で付着物を穏やかにはがす「自己再生」の仕組みを作り、Advanced Scienceに発表しました。狭い空隙で強く増強される表面プラズモンが高感度の源ですが、同じ狭さが目詰まりの原因にもなっていました。ヒト血清に24時間さらしたセンサーは、再生処理のあと感度を取り戻し、緑膿菌が作る感染の指標分子ピオシアニンを検出。再生を繰り返しても性能を保ちました。慢性創傷の見守りに加え、水質監視や手術中の組織判別への応用も視野に入れています。

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出典:optics.org(Virginia Tech/Advanced Science)
関連論文要約:電気化学支援SERSを用いた再利用可能かつ容易に製造可能なフローセルによる高速多成分検出および特性評価の要件

電位を制御しながらSERSを行い、繰り返し使えるフローセルで複数の分析対象を高速に検出する研究です。

光学素子2026年7月

溶液から作れるペロブスカイトで「電気駆動ポラリトンレーザー」を初実証——60年来の課題に解答(露スコルテック/ITMO大)

同じスコルテックのグループが直前に報告した「強結合⇄弱結合の遷移を1枚の共振器で連続観測」(Nanophotonics)は光励起でしたが、こちらは電気を流して発振させた点が新しい成果です。スコルコボ科学技術大学(Skoltech)とITMO大学らが、溶液プロセスで作製したハライドペロブスカイト微結晶を用い、直流電流を流すだけで発振する「ポラリトンレーザーダイオード」を世界で初めて実証したとNatureに発表しました。ポラリトンは光子と励起子が強く結合した準粒子で、ボース粒子的な性質により反転分布を必要とせず、従来の半導体レーザーよりはるかに低い注入密度でコヒーレント光を出せます。ただし溶液系半導体は大電流下の発熱で劣化するため、電気駆動のレーザーダイオード化は60年間の難題でした。研究チームは高フィネス微小共振器の中にペロブスカイト微板と単層カーボンナノチューブ薄膜電極を組み込み、2段階の冷却プロトコルで可動イオンの分布を凍結させて安定なp-i-n接合を形成。結晶格子を壊さずにキャリアを注入し、わずか60マイクロアンペアという低しきい値で連続直流駆動のポラリトン発振を確認しました。エピタキシャル成長に頼らない安価な光源として、光センシング・分光や高速計算への応用が期待されます(Nature 掲載、2026年7月29日)。

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出典:phys.org(Skoltech/Nature)
レーザー分光2026年7月

アト秒パルス2発だけで電子の動きを撮る——強い赤外光に頼らない「純アト秒」分光(独マックス・ボルン研究所)

ベルリンのマックス・ボルン研究所(Forschungsverbund Berlin)のチームが、ポンプ光とプローブ光の両方にアト秒の極端紫外パルスを使う分光法を実証しました。従来のアト秒計測は、アト秒パルスと強い近赤外パルスを組み合わせるのが一般的でしたが、強い赤外電場が測りたい系自体を乱してしまい、本来の電子応答が見えにくくなる問題がありました。研究チームは卓上の高次高調波源で約270アト秒のパルスを発生させ、精密な分割遅延光学系で遅延を独立に可変できる2発のパルスに複製。1発目でキセノン原子から電子を1個取り去り、2つの近接した電子状態の重ね合わせにあるイオンを生成し、生じた正孔の周期的な振動を2発目のパルスによる極端紫外吸収スペクトルの変化として記録しました。観測された約3フェムト秒の周期はスピン軌道分裂に対応するうなりと一致。分子内の電荷移動や光化学反応の初期過程を、系を乱さずに追跡できる分光法として期待されます(Nature Communications 掲載、2026年7月29日)。

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出典:phys.org(Forschungsverbund Berlin/Nature Communications)
量子光学2026年7月

結晶中の希土類イオン2個を光で選び分けて操る——通信波長で使える量子ネットワーク基盤へ(米プリンストン大)

プリンストン大学の研究チームが、結晶中で数ナノメートルしか離れていない2個のエルビウムイオン(Er³⁺)と、近傍の核スピンを、光を使って個別に区別しながら量子的に制御することに成功したとNature Physicsに発表しました。量子ネットワークは離れた装置(ノード)を結んで情報をやり取りする構想で、結晶中の原子欠陥は単一光子を放って情報を運べる一方、各ノードの内部でも情報を保持・処理する必要があります。そのためには近接した複数のスピンを見分けて操作する技術が要になります。研究チームは、個々のEr³⁺が光遷移・スピン遷移の周波数をわずかに違えている点を利用し、狙ったイオンだけを選択的に励起して2量子ビットとして扱えることを示しました。エルビウムは光ファイバー通信と同じ波長帯で発光するため、既存の通信インフラとの接続に有利です。同グループの以前の成果であるスピンと光子の量子もつれと組み合わせることで、拡張性のあるネットワークノードにつながると期待されます(Nature Physics 掲載、2026年7月29日)。

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出典:phys.org(Princeton University/Nature Physics)
光学素子2026年7月

「アインシュタイン問題」を解いた1種類のタイルで、光の回折までキラルになる(東大生産技術研究所)

東京大学生産技術研究所らの研究チームが、2023年に発見された非周期モノタイル「スミスの帽子(hat)」の形をナノ構造として作り込み、レーザー光を当てると従来のフォトニック準結晶では見られなかった回折が現れることを示しました。アインシュタイン問題とは「1種類のタイルだけで平面を非周期に埋め尽くせるか」という長年の数学の問題で、スミスの帽子はその初の答えです。研究チームは電子線リソグラフィで窒化ケイ素薄膜にこのタイル配列を作製。回折パターンが風車のようにねじれ、構造が鏡映対称性を持たないことに由来するキラルな光学応答が直接現れました。さらに入射光の方向と偏光によって回折像が変わり、構造を鏡像にすると応答も反転するという、対称性で制御できる新しい光学応答も確認しています。非周期秩序とキラリティを融合した光学素子設計の新しい方向性として注目されます(Nature Communications 掲載、2026年7月29日)。

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出典:phys.org(東京大学生産技術研究所/Nature Communications)
その他2026年7月

「距離の繰り返し」に着目して大規模な最適化問題を光で解く枠組み(大阪大学)

大阪大学の研究チームが、輸送網の設計や大規模データの整理など多くの実問題に共通する数理構造を見いだし、それを光コンピューティングで扱いやすい形に書き換える枠組みをCommunications Physicsに発表しました。最適化問題は候補が膨大になると計算資源が急増しますが、光は並列に伝搬・干渉できるため、候補解を光のパターンとして符号化すれば「その解がどれだけ良いか」を高速に評価できます。課題だったのは、多数の変数が互いに影響し合う「密な相互作用」をハードウェアの規模を膨らませずに扱うことでした。研究チームは、こうした問題の多くが要素間の相対位置や距離という共通の言葉で書けることを示し、データ内の繰り返しパターンを利用して計算量を削減。畳み込み構造になるため高速フーリエ変換による加速が効き、従来の電子計算機でも効率が上がるといいます(Communications Physics 掲載、2026年7月29日)。

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出典:phys.org(大阪大学/Communications Physics)
量子光学2026年7月

ポラリトン・レーザーの「強結合⇄弱結合」を1枚の共振器で連続観測——室温コヒーレント光源へ(露スコルテック)

スコルコボ科学技術大学(Skoltech)らが、光と物質が融合した準粒子「ポラリトン」を用いるレーザーで、共振器の厚みを少しずつ変えることにより「強結合」から「弱結合」への切り替わりを1つの素子の中で連続的に観測したと報告しました。ポラリトンは光子と半導体構造の相互作用で生じ、密度が高まると励起子の波動関数がそろって「ポラリトン凝縮」と呼ばれるコヒーレントな状態を作り、反転分布を必要としない低しきい値のナノレーザーになり得ます。研究チームは有機ポリマーMeLPPPの厚さ180nmの薄膜をブラッグ鏡に載せ、空気層を挟んだ非対称の開放型共振器を作製。局所的な圧縮で厚みを精密に調整し、フェムト秒レーザーで動作を実時間観測したところ、発振しきい値が動作領域によって1桁以上変化することや、ポラリトンのエネルギーがポリマー分子の振動共鳴と一致するとしきい値が下がることを捉えました。低温冷却の要らない超高速の光スイッチや光論理素子、通信回路・高感度バイオセンサーへの集積が期待されます(Nanophotonics 掲載、2026年7月28日)。

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出典:phys.org(Skoltech/Nanophotonics)
レーザー分光2026年7月

光で現れる「隠れた状態」を30フェムト秒で追う——超高速分光が金属有機構造体の中間状態を捉える(東京科学大ほか)

東京科学大学(Science Tokyo)・東北大学・名古屋工業大学の研究チームが、時間分解分光(ポンプ・プローブ分光)を用いて、金属イオンと有機分子をつないだ金属有機構造体(MOF)が光を吸収してから「隠れた状態(hidden state)」を作るまでの過程を、わずか30フェムト秒の時間スケールで観測したと報告しました。材料は光を当てると通常とは異なる性質を示す状態に移ることがあり、加熱・冷却では届かない制御の手がかりになりますが、その最初期の変化は極めて短時間で起こるため観測が困難でした。研究では6フェムト秒の超短パルスを使う時間分解反射分光により、光吸収の直後に隣り合うサイト間の結合が強弱を繰り返す「ボンドオーダー波」と呼ばれる中間電子状態を経て、30フェムト秒以内に新たな光吸収帯(=隠れた状態)が生じることを突き止めました。この隠れた状態は正負の電荷が偏った「極性」を持ちうるとされ、光による材料物性の高速制御や光電子デバイスへの応用が期待されます(Physical Review Letters 掲載、2026年7月22日)。

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出典:phys.org(東京科学大学ほか/Physical Review Letters)
関連論文要約:二次元共役金属有機構造体合成中のその場品質管理のためのラマンマーカーバンド

(594nm励起のラマン分光で、金属有機構造体(MOF)が合成されていく途中の結晶の質をその場で見分ける研究です。)

その他2026年7月

光を当てるだけで半導体を「トポロジカル」に——フロケ状態の直接観測に世界初成功(スイス・フリブール大)

スイス・フリブール大学のClaude Monney教授らが、強い光で物質の電子状態を一時的に作り替える「フロケ工学」を用い、光を当てている間だけ半導体をトポロジカル絶縁体のように振る舞わせる「フロケ・トポロジカル状態」を実験で直接捉えることに世界で初めて成功したと報告しました。2011年に理論提案されて以来、この状態は極めて短寿命で他の光‑物質効果と区別しにくく、実証は困難とされてきました。研究チームはトポロジカル相転移に近い半導体スズテルル(SnTe)を30Kに冷やし、バンドギャップ付近に調整したフェムト秒のポンプ光を照射。時間分解ARPES(角度分解光電子分光)で電子構造の時間変化を追ったところ、ポンプ光が当たった瞬間だけトポロジカル表面状態の目印である「ディラックコーン」が現れ、約100フェムト秒後に消えることを観測しました。原子の位置は動いておらず、光による電子構造の反転(バンド反転)が原因と結論づけています(Nature Physics 掲載、2026年7月27日)。

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出典:phys.org(フリブール大学/Nature Physics)
その他2026年7月

レーザーが材料を蒸発させる「反跳力」で切断の深さを測る——半導体ウェハのダイシングを実時間監視(千葉大)

千葉大学大学院工学研究院の比田井洋史教授らが、レーザーダイシングの加工深さを、加工中に生じる「反跳力」から実時間で読み取る手法を報告しました。レーザーダイシングは半導体ウェハからチップを切り出す工程で、機械的な刃に比べて壊れやすい材料に応力をかけずに加工できる利点があります。一方でパルスが足りなければ切り残し、多すぎれば材料や固定テープを傷めるため、深さの管理が歩留まりを左右します。研究チームは、パルスが材料を急速に加熱・蒸発させたときに表面へ生じるごく小さな反力に着目し、ロードセルで測定しました。パルスエネルギーを上げると反跳力は増え、焦点を外すと減るという関係が得られ、25ナノ秒パルスによるシリコンの穴あけでは、深さが増すにつれて反跳力が規則的に低下し、貫通した瞬間に明確な変化が現れました。装置を止めずに測れるため、製造ラインでの工程監視への適用が見込まれます(Optics and Laser Technology 掲載、2026年7月27日)。

記事を読む 出典:phys.org(千葉大学/Optics and Laser Technology)
関連論文要約:レーザー超音波による金属円筒表面微小亀裂の自動検出方法

(532nmレーザーで金属表面に超音波を起こし、円筒部品の微小な亀裂を非破壊で自動検出する研究です。)

光学素子2026年7月

表から見るか裏から見るかで応答が変わる薄膜——磁場もメタマテリアルも使わずに光の相反性を破る(米コーネル大)

米コーネル大の研究チームが、溶液プロセスで作れる半導体ナノクラスタの薄膜において、直線偏光の吸収と発光が表側と裏側で異なる「非相反」な振る舞いを示すことを実証しました。通常の光学素子はどちら側から光が入っても同じように応答します(光学的相反性)。これを破るには複雑なメタマテリアルや外部磁場が必要とされてきました。研究チームが用いたのは「マジックサイズクラスタ」と呼ばれる、らせん状に自己組織化するナノ材料です。薄膜に加工すると直線偏光にも円偏光にも強く相互作用し、線二色性とキラル二色性が同時に現れます。この組み合わせによって、同じ膜が向きによって別の偏光板のように振る舞います。一方向性の光学素子や、量子情報処理に向けた偏光制御への応用が期待されます(Nature Materials 掲載、2026年7月27日)。

記事を読む 出典:phys.org(Cornell University/Nature Materials)
光学素子2026年7月

磁石を使わずチップ上で光を一方通行に——電気で広帯域に調整できる光アイソレータ(米イリノイ大アーバナ・シャンペーン校)

米イリノイ大アーバナ・シャンペーン校の研究チームが、薄膜ニオブ酸リチウム上に電気光学効果だけで動作する集積型の光アイソレータを実現しました。順方向はほとんど損失なく光を通し、逆方向はおよそ33dB遮断します。従来のアイソレータは磁気光学材料や可動部を必要としましたが、本素子は原子系で知られるオートラー・タウンズ分裂を電気光学変調で模擬する構成をとり、磁性材料を使いません。印加電圧によって動作波長をテラヘルツ規模にわたって掃引でき、先行する音響光学方式に比べて調整幅は数千倍とされています。標準的なフォトニクス製造プロセスと整合するため、データセンター内の光信号ルーティングなど、小型・低消費電力・波長可変が同時に求められる用途に向きます(Nature Communications 掲載、2026年7月27日)。

記事を読む 出典:phys.org(University of Illinois Urbana-Champaign/Nature Communications)
関連論文要約:ニオブ酸ストロンチウムバリウム単結晶を用いた電場可変回折光学素子

(強誘電体結晶に電圧をかけて回折の効き方を変え、軌道角運動量をもつ光を作る素子の研究です。)

光学素子2026年7月

人が描かない形を計算が見つける——逆設計で最大500分の1に小型化したチップ部品(独マックス・プランク光科学研究所/米ハーバード大)

独マックス・プランク光科学研究所と米ハーバード大の研究チームが、インバースデザイン(逆設計)によって、窒化シリコン製のフォトニックチップ部品を従来設計の最大500分の1のサイズで実現しました。作製したのは波長分離素子・モードソーター・ミラーの3種です。ミラーは数マイクロメートル角ながら入射光の98.5%を反射し、目的以外の空間モードは通しません。逆設計は「光にどう振る舞ってほしいか」を先に指定し、それを満たす構造を最適化で探す方法で、得られる形状は人間の直感からは出てこないものになります。今回は既存の製造ラインにそのまま投入できる設計制約を守った点が特徴で、集積フォトニック回路を高密度化するうえで実装しやすい道筋を示しました(Nature Communications 掲載、2026年7月24日)。

記事を読む 出典:phys.org(Max Planck Institute for the Science of Light/Harvard SEAS/Nature Communications)
レーザー分光2026年7月

標識を付けずに1分子の「かたちの変化」を追う——メタサーフェス増強ラマン(蘭トゥウェンテ大)

蘭トゥウェンテ大の研究チームが、液中にある単一タンパク質の構造変化を、色素や標識を一切付けずに追跡する光学手法を報告しました。読み取るのはタンパク質自身の分子振動で、原理としてはラマン分光を用います。ラマン散乱は分子の化学構造や立体構造を反映しますが、1分子からの信号は通常あまりに微弱で測定できません。研究チームはメタサーフェスによる局所的な電場増強でこの壁を越えました。無標識(ラベルフリー)であるため、標識そのものが分子の動きを変えてしまう懸念を避けられます。薬剤や毒素、ほかの生体分子に触れたときにタンパク質がどう応答するかを、1分子レベルで観察する用途が想定されます(ACS Nano 掲載「Label-Free Single Protein Dynamics Revealed by Metasurface-Enhanced Raman Spectroscopy」、2026年7月22日)。

記事を読む 出典:phys.org(University of Twente/ACS Nano)
関連論文要約:キラルメタ表面における近接場増強

(らせん状ナノ構造が作る近接場の増強を、分子のラマン散乱から明らかにした研究です。)

レーザー顕微鏡2026年7月

「暗くなるセンサー」を反転させて読む——細胞内の酵素活性をナノドメイン単位で可視化(米イリノイ大シカゴ校)

米イリノイ大シカゴ校の研究チームが、活性が高いほど蛍光が減るタイプ(ネガティブ型)の蛍光バイオセンサーの読み出しを反転させ、細胞全体にわたって酵素活性の分布を捉える手法 FINICI を報告しました。従来の顕微鏡観察では活性が細胞全体で平均化されてしまい、実際に反応が起きているナノドメインが背景に埋もれる問題がありました。ネガティブ型センサーは活性の高い場所ほど暗くなるため、活性がない領域と見分けがつかないことが原因です。本手法は分子内相互作用に由来する蛍光ゆらぎの変化を指標にすることで、この暗い信号を正の信号として読み直します。センサーを設計し直さずに既存のものをそのまま使える点が実用上の利点で、cGMP・Srcキナーゼ・Sykキナーゼのナノドメインが実際に観察されました(PNAS 掲載、2026年7月14日)。

記事を読む 出典:phys.org(University of Illinois Chicago/PNAS)
量子光学2026年7月

制御も測定もせずにもつれが保たれる——相関した光子の「量子バス」で20年前の予測を実証(墺ISTA)

オーストリア科学技術研究所(ISTA)の研究チームが、相関のある光子からなる「量子バス」を共通の環境として使い、離れた2つの量子ビットを完全に自律的にもつれさせる実験に成功しました。これまで離れた量子ビット間の量子もつれの生成は、能動的な制御と繰り返しの測定に頼るのが一般的でしたが、本手法では外から操作を加えなくても、バスとの相互作用の結果としてもつれた状態に落ち着きます。20年以上前に提案されながら実験的な確認がなかった予測を裏付けた形です。バスが持つもつれのうち実際に移せたのは約10%で、能動制御による方式に比べると効率はまだ低い段階にあります。制御回路を減らせる方向性として、量子ネットワークの拡張性に関わる成果です(Physical Review X 掲載、2026年7月14日)。

記事を読む 出典:phys.org(Institute of Science and Technology Austria/Physical Review X)
量子光学2026年7月

都市の通信ファイバーで「量子もつれ」を実配信——量子インターネットが研究室の外へ(米ノースウェスタン大)

米ノースウェスタン大が、実際に使われている通信用光ファイバー網(イリノイ州エバンストン〜シカゴ間 約24.4km)を使って、量子もつれ状態の光子ペアを配信することに成功しました。もつれた光子の一方を波長分割多重(WDM)で既存の古典通信・光同期クロックと同じファイバーに相乗りさせ、通常の通信トラフィックが流れる中でももつれを保ったまま伝送できることを示しました。専用の暗いファイバーではなく「現役の通信インフラ」の上でもつれ配信が成り立つ点が新しく、将来の量子インターネットや量子鍵配送を既設ネットワーク上に構築できる可能性を示す成果です(2026年7月22日公開)。

記事を読む 出典:phys.org(Northwestern University)
関連論文要約:プログラム可能な線形フォトニック回路におけるフォック状態量子光のコヒーレント吸収の模擬

(書き換え可能な集積フォトニック回路の上で、単一光子やNOON状態の吸収と透過を切り替えた研究です。)

レーザー分光2026年7月

プラズマの「設計ルール」でアト秒フラッシュを守る——電子を観る超高速計測へ(露Skoltech)

ロシアのSkoltechと上海の研究者が、強いレーザーとプラズマの相互作用で生じるアト秒(100京分の1秒)の超短光パルスを、乱さずに保つためのプラズマの設計指針を示しました。アト秒パルスは原子・分子の中を動く電子の一瞬をとらえる「ストロボ」として使われますが、生成過程でパルスが劣化しやすいのが課題でした。プラズマの密度や形状を最適化することで、明るく整ったアト秒フラッシュを安定に得る条件を理論的に明らかにし、電子のリアルタイム観測やアト秒分光の高度化につながると期待されます(2026年7月22日公開)。

記事を読む 出典:phys.org(Skolkovo Institute of Science and Technology)
レーザー分光2026年7月

ねじれた光で「右手型・左手型」を見分ける——軌道角運動量ビーム×質量分析(印TIFR/IIT)

インド・タタ基礎研究所(TIFR)とインド工科大ボンベイ校・ハイデラバード校のグループが、軌道角運動量をもつ「ねじれた」超短パルスレーザー(数百フェムト秒)を気体状のカンファー(樟脳)に照射し、生成する分解イオンの本数が、光のねじれと分子の「手の向き(キラリティー)」の組合せによって変わることを示しました。飛行時間型質量分析計でイオンを数えるだけで鏡像異性体を区別でき、円二色性の微小差や電子の角度分布を測る従来法のような複雑な光学配置を必要としません。医薬品や生体分子で重要な異性体の判別を簡便にする手法として期待されます(Science Advances、2026年7月26日公開)。

記事を読む 出典:phys.org(Tata Institute of Fundamental Research)
関連論文要約:キラリティ付与によって観測可能となるハイパーラマン光学活性

(金のらせん構造でアキラルな色素分子にキラリティを移し、ハイパーラマン散乱の光学活性を初めて観測した研究です。)

レーザー顕微鏡2026年7月

1回の観察で「形・分子・元素」をつなぐ相関顕微鏡施設——凍らせたまま生体材料も(米タフツ大)

米タフツ大学が、走査電子顕微鏡にラマン分光とEDX(元素分析)を組み合わせ、さらに共焦点レーザー走査顕微鏡や原子間力顕微鏡まで位置情報を共有させた相関イメージング施設「COCOON」を、学術・産業の外部利用に開放しました。0.8nmまで分解する電子顕微鏡と光学顕微鏡の視野を、同じ試料の同じ領域で結びつけられるため、装置間を移動する際に失われがちだった「どこを見ていたか」を保ったままマクロからナノまで追えます。急速凍結した状態を維持して観察できるので、水を含む生体材料を乾燥させずに調べられる点も特徴です(2026年7月10日公開)。

記事を読む 出典:phys.org(Tufts University)
関連論文要約:ラマン顕微分光法による消費者向け樹脂中のチタン化学種の決定

(405nm励起のラマン顕微分光で、樹脂や繊維に含まれる酸化チタンの結晶形を見分けた研究です。)

その他2026年7月

ホタルの光の「明るさ」、100年以上信じられた値が過大だった——古い測定を鵜呑みにする危うさ(米レミザAI)

米レミザAIのDavid Silver氏が、1世紀以上にわたり使われてきたホタルの光の明るさの基準値を再検証し、実際にはかなり過大評価されていた可能性が高いと報告しました。ホタルの発光は、ルシフェリンとルシフェラーゼの反応で生じる生物発光です。その明るさは1912年に近代放射計測の草分けであるWilliam Coblentzが初めて測定しましたが、当時の値を現代の標準単位へ換算する過程で大きな誤差が生じていたとみられます。古い測定データをそのまま現代の単位に読み替えることの危うさを示す事例で、光の明るさ(測光)を正しく扱う重要性を改めて浮き彫りにしました(American Journal of Physics、2026年7月13日公開)。

記事を読む 出典:phys.org(Remiza AI / American Journal of Physics)
量子光学2026年7月

低消費電力で体の微弱な磁場を測る——ダイヤモンド量子センサ×ラムゼー干渉(東京科学大)

東京科学大(Institute of Science Tokyo)が、光を閉じ込めるダイヤモンド導波路とラムゼー干渉法を組み合わせ、心臓や脳など体が発する微弱な磁場を低消費電力で検出できる磁気センサを開発しました。ダイヤモンド中の窒素-空孔(NV)中心を用い、わずか210mWのレーザーで動作しながら高い感度を実現しています。従来の生体磁気計測(心磁・脳磁)は大がかりで消費電力も大きいのが課題でしたが、小型・低電力で室温動作できるため、ウェアラブルや在宅での生体磁気モニタリングへの展開が期待されます(2026年7月22日公開)。

記事を読む 出典:phys.org(Institute of Science Tokyo)
関連論文要約:ダイヤモンド量子センサを用いた大規模並列ナノスケール磁力計測

ダイヤモンド中のNV中心を数百個同時に読み出し、微弱な磁場をナノスケールで並列計測した研究です。

レーザー顕微鏡2026年7月

物理を組み込んだAIで「濁りの奥」を鮮明に——生体イメージングと自動運転センサへ(米UCLA)

米UCLAが、光の伝わり方(物理法則)を学習に組み込んだ機械学習で、散乱して見えにくくなった被写体の画像を、偽の模様(アーティファクト)を出さずに復元する手法を示しました。生体組織のように光を強く散乱させる媒質の内部を画像化する拡散光計測や、霧・悪天候下でのLiDAR・自動運転センサなど、光が乱れる状況での画像化に役立つと期待されます。物理モデルとデータ学習を組み合わせることで、少ないデータでも安定して高精細な再構成ができる点が特徴です(2026年7月22日公開)。

記事を読む 出典:phys.org(University of California, Los Angeles)
関連論文要約:動的散乱を通した行列ベースイメージング

動く散乱媒質を通しても、画像の相関から物体の像を復元する行列ベースの計算イメージングの研究です。

光学素子2026年7月

レーザーが歪ませる鏡を「サーモグラフィ」で読む——重力波望遠鏡LIGOの感度を高める補償光学(米UCリバーサイド)

米カリフォルニア大リバーサイド校のチームが、重力波望遠鏡LIGOの心臓部にある大型鏡の微小な熱変形を赤外サーモグラフィで捉え、補償光学で補正する新手法を開発しました。LIGOでは約1メガワットに達するレーザーが4kmの装置内を巡り、鏡がわずかに光を吸収して数ナノメートル変形し、測定感度を下げてしまいます。研究では市販の赤外カメラの熱画像を波面計測や熱流モデルと組み合わせ、鏡全体の光学的な歪みを再構成しました。次期LIGO A+の歪み感度を最大31%高め、中性子星の合体をより遠くまで観測できると見積もっています。新たな装置開発を必要としない点も特長です(Classical and Quantum Gravity、2026年7月22日公開)。

記事を読む 出典:optics.org(University of California, Riverside)
その他2026年7月

溶ける「マイクロニードル」で光を皮膚がんへ導く——光線力学療法をより効果的に(米テキサスA&M大/ブラジル・サンパウロ大)

米テキサスA&M大とブラジル・サンパウロ大のチームが、水に溶けるマイクロニードル(微細な針の集合体)を使って、光線力学療法(PDT)の効果を高める方法を示しました。PDTは光に反応する薬剤をがん組織に集め、特定波長の光を当てて活性酸素で細胞を壊す治療ですが、薬も光も皮膚の深部まで届きにくいのが課題でした。針に薬剤を含ませて深く均一に届けると同時に、針の形状を工夫して光を組織内へ広く散らすことで、従来照らしにくかった部位まで光を届けられる可能性を示しました。非黒色腫皮膚がんなどのより効果的な治療につながると期待されます(Journal of Biomedical Optics、2026年7月22日公開)。

記事を読む 出典:optics.org(Texas A&M University / University of São Paulo)
関連論文要約:可視パルスレーザーを用いた癌細胞の選択的殺傷

金ナノスターを取り込ませたがん細胞に532nmのナノ秒パルスレーザーを当て、狙った場所だけを熱で壊す研究です。

光学素子2026年7月

1画素ずつ電気で書き換えるメタサーフェス——ホログラムでゲームも操作(独シュツットガルト大)

独シュツットガルト大(Laura Na Liuら)が、金のプラズモニック・ナノアンテナと電気化学的に応答する極薄の導電性高分子を組み合わせ、可視光で動作するメタサーフェスの画素を1つずつ独立に電気制御できる「有機メタデバイス」を開発しました。これまでのアクティブメタサーフェスは、あらかじめ決めた光学機能の切り替えや限られた画素制御にとどまっていましたが、本素子は1V以下の電圧・ミリ秒の応答で、各画素をほぼクロストークなしに切り替えられます。実演では、キーボード入力が即座にホログラム投影の文字や数字に変換されるほか、ゲームコントローラで「スネーク」や落ち物パズルのホログラム版をプレイでき、ユーザーの操作に光が実時間で追従する「対話型の光学素子」を実証しました。イメージングや通信、センシング、ウェアラブル光学への展開が見込まれます(Nature Communications 掲載、2026年7月21日)。

記事を読む 出典:optics.org(University of Stuttgart/Nature Communications)
光学素子2026年7月

「凍らせて」作る光ファイバー——光と音の結合を従来の1,000倍に(独マックス・プランク光科学研究所ら)

独マックス・プランク光科学研究所(MPL)とライプニッツ大学ハノーファー、ライプニッツ光技術研究所(IPHT)が、液体を満たしたガラス毛細管を凍らせるという新しい方法で光ファイバーを作製し、光と音波を同時に導きながら、両者を通常の石英ファイバーの約1,000倍の強さで結合させることに成功しました。溶岩が岩へ固まり、湖が凍るのと同じ「液体から固体への相転移」を利用してファイバーのコアを形成します。光ファイバー中では、光は音響波とブリルアン散乱を介して相互作用しますが、通常のガラスでは結合が弱く、信号処理に大きな光パワーが必要でした。結合強度が桁違いに高まったことで、脳型(ニューロモルフィック)光計算や量子信号処理の消費エネルギーを数桁低減できると期待されます(Optica 掲載、2026年7月21日)。

記事を読む 出典:phys.org(Max Planck Institute for the Science of Light/Optica)
関連論文要約:複屈折誘起位相遅延により散乱媒質中でのブリルアン力学イメージングを実現

(音響フォノンによる光の散乱「ブリルアン散乱」を使い、散乱の強い生体組織の硬さを無標識で画像化する研究です。)

その他2026年7月

電場なしで電子を「狙って」流す——2色のレーザーで半導体中の電流を操縦(米ミシガン大)

米ミシガン大(Steven Cundiffら)が、電源や電場を使わずに、2色のレーザー光だけで半導体中に電子の流れ(電流)を作り、さらにその向きまで制御できることを実証しました。通常、電子は電場をかけると材料中を跳ね回りながら漂って移動しますが、本手法では2つの光の偏光の向きを回転させることで、電子を特定の方向へ細く絞った流れとして「押し出す」ことができます。これまでも光だけで電流を生む研究はありましたが、光が電流を「点ける」だけでなく「狙いを定める」段階へ進めた点が新しい成果です。素子は同大のナノ加工施設で作製され、光の性質を測る新しいセンサーへの応用も見込まれます。光学と電子回路の橋渡しとして、センシングやイメージング、通信への展開が期待されます(Physical Review Letters 掲載、2026年7月21日)。

記事を読む 出典:phys.org(University of Michigan/Physical Review Letters)
光学素子2026年7月

光の速度をチップ上で「その場で」調整——AI時代の光コンピューティングへ(ソウル大)

韓国・ソウル大(Namkyoo Park/Sunkyu Yuら)が、光信号の速度と波形を自在に制御できるスローライト用のプログラマブル光集積回路を提案しました。光は速度が一定のため、光コンピューティングに不可欠なバッファやメモリの実装が難しいという課題がありました。研究チームは複数の光共振器の干渉を使うCRIT(結合共振器誘起透過)構造を作り替え、「明モード」と「暗モード」を一つの自由度として扱う2つのループ結合器を導入。これにより、作製後は固定だった遅延量や通過帯域を、動作中にリアルタイムで再構成できます。窒化シリコン(Si₃N₄)基板での実装可能性も電磁界シミュレーションで確認し、データセンターやAIサーバの低消費電力・高効率化、光通信機器の小型化への応用が期待されます(Advanced Science 掲載)。

記事を読む出典:phys.org(Seoul National University/Advanced Science)
関連論文要約:単一光微小共振器における再構成可能な共鳴トラッピング

らせん状の微小管共振器で、特定の波長の光の閉じ込めを強める仕組みを調べた研究です。

量子光学2026年7月

中性原子の「消える誤り」を利用、量子誤り訂正を実現可能に(プリンストン大)

米プリンストン大(Jeff Thompsonら)が、量子コンピュータの弱点である計算誤りを、検出・訂正しやすい形にあらかじめ設計する新しい方式を提案しました。準安定状態のイッテルビウム171という中性原子を量子ビットに使い、誤りを「どの量子ビットが壊れたか分かる(消失=erasure)誤り」に変換。問題のある量子ビットを特定できるため、通常なら訂正できないごく小さな符号(距離2)でも1個の誤りを訂正できることを示しました。中性原子はレーザーの光ピンセットで整然と並べて制御でき、大規模化しやすいのが特長で、誤り耐性を備えた実用的な量子計算機に向けた一歩です(Nature Physics 掲載)。

記事を読む出典:phys.org(Princeton University/Nature Physics)
光学素子2026年7月

ナノの隙間で赤外の「色」を選ぶ——熱センサーをチップに載せる可変赤外フィルタ(豪UWA/ANU)

豪州のメタ光学研究拠点TMOS(西オーストラリア大・オーストラリア国立大)が、電圧で透過波長を変えられる超小型の赤外フィルタを開発しました。かさばる熱赤外センサー系をチップ上に集約でき、携帯型の汚染検知器やマルチスペクトルカメラ、次世代の化学センサーへの道を開きます。素子は金とシリコンの薄膜をナノスケールの孔で穴あけした「サンドイッチ」構造のメタサーフェスで、層間のごくわずかなすき間(1µm以下)を電気的に変えることで、通過する長波長赤外(LWIR)の波長を連続的に調整します。金属薄膜の微小な孔を光が予想以上に効率よく通る「異常光透過」を利用し、10V以下の低電圧で透過ピークを約8µm→9.8µmまで可変にしました。単体では分光フィルタですが、熱検出器と組み合わせると温度だけでなく物質やガスを識別できます。メタン漏れや工業排出の検知、非接触診断、ドローン搭載など、省電力・軽量が求められる用途に向きます(Advanced Materials Technologies 掲載、2026年7月13日)。

記事を読む 出典:optics.org(University of Western Australia/ANU・TMOS/Advanced Materials Technologies)
量子光学2026年7月

光を「彫って」量子物質を再現——回路を大きくせず300通りをシミュレート(カナダ・オタワ大)

カナダ・オタワ大とNexus for Quantum Technologies研究所、伊フェデリコ2世大のチームが、光ビームの形を作り込むことで複雑な物質中を粒子が動く様子を再現する、プログラム可能な量子シミュレータを開発しました。回路を大型化することなく多様な系を扱えます。込み入った電子回路を配線する代わりに、光子の空間パターンと偏光という2つの内部自由度を精密に設計した構造光を用い、結晶中の電子と同じように時間発展させます。3枚の空間光変調器(SLM)が計算を担い、ソフトウェアの更新だけで実験全体を別のシミュレーションに再構成できます。情報が光に載っているため各段階を直接撮影でき、固体素子の奥に埋もれがちな量子ダイナミクスを鮮明に観察できます。量子輸送やトポロジカル現象の研究、将来の量子技術の基盤検討に道を開きます(Light: Science & Applications/Advanced Photonics 掲載)。

記事を読む 出典:phys.org(University of Ottawa/Light: Science & Applications・Advanced Photonics)
量子光学2026年7月

冷却なしで「光の量子性」を選り分ける——金のメタ結晶で室温量子材料を実現(米ルイジアナ州立大)

米ルイジアナ州立大(LSU)らが、極低温の冷凍装置なしに室温で動く新しい量子材料「量子統計プラズモニック・メタ結晶」を作製しました。ガラス基板に載せた厚さ約110nmの金薄膜に集束イオンビームで100個の微小スリット(各200×400nm、間隔1µm)を刻み、その1つ1つを人工原子(メタ原子)として周期配列した、自然界に存在しない極薄の結晶です。金属ナノ構造を並べたメタサーフェス状の素子で、波長や偏光ではなく「複数光子の統計的なふるまい(量子統計)」に応じて光を選別・伝送し、量子コヒーレンスを保ったまま輸送できます。従来の量子材料は量子性を保つのに大がかりな冷却が必要でしたが、それを不要にした点が大きな進歩です。量子情報処理や太陽光エネルギー変換への応用に向けた、人工量子材料の設計指針を与える成果です(Nature 掲載、2026年7月15日)。

記事を読む 出典:phys.org(Louisiana State University/Nature)
関連論文要約:密なナノヘリックス配列——非キラル分子のラマン散乱で明かすキラルメタ表面の近接場増強

金のナノらせんを高密度に並べたキラルなメタ表面を作り、その近接場の増強をラマン散乱で可視化した研究です。

その他2026年7月

電流も磁場も使わず、光パルスだけで反強磁性体に情報を書き込む(独アウクスブルク大ら/日独共同)

ドイツ・アウクスブルク大学を含む日独共同研究チームが、超短パルスのレーザー光だけで反強磁性体に磁気情報を書き込むことに初めて成功しました。反強磁性体は応答が速く外部の乱れに強いため次世代の記録媒体として期待されてきましたが、その磁気状態を精密に制御するのが難しいという壁がありました。今回の手法では、光の偏光ではなく「光が進む向き」を利用して状態を選び分けます。磁気光学効果を介して磁化と光を結び付ける仕組みで、電流を流さずに記録できるため、省電力な情報デバイスにつながる可能性があります(Nature Materials 掲載、2026年7月4日公開)。

記事を読む 出典:phys.org(University of Augsburg/Nature Materials)
その他2026年7月

CO2レーザーでガラス容器を隙間なく封じる——化学廃棄物の長期保管へ(独LZH)

ドイツのレーザーツェントラム・ハノーファー(LZH)が、厚肉ガラス容器をレーザーで密封する加工プロセスを開発しました。ガラスは化学的にほとんど反応しないため、電池材料や産業廃液のような危険物を長期保管する容器に適しますが、従来の接合法は入熱が大きく残留応力が生じやすく、自動化も難しいという課題がありました。研究チームは波長10.6µmのCO2レーザーを用い、接合する2つの部材を1台の光源で同時に加熱するレーザー溶接方式を採用。微小な隙間や空隙のない連続した溶接ビードを得ることに成功しました(Journal of Laser Applications 掲載、2026年7月11日公開)。

記事を読む 出典:phys.org(Laser Zentrum Hannover e.V./Journal of Laser Applications)
量子光学2026年7月

光・磁性・電荷が絡み合う原子数層の材料——「磁性ファンデルワールス材料の励起子」を総括(米CCNY)

米ニューヨーク市立大シティカレッジ(CCNY)のMenon研究室が、光と磁性と電荷が強く結び付いた原子数層の物質群について、現状と展望をまとめた総説を Nature Materials に発表しました。光で電子が持ち上げられると、電子と正孔が対になった励起子が生まれます。層状の磁性半導体では、この励起子が材料の磁気秩序やスピン波(マグノン)と相互作用するため、磁気の状態が発光や吸収の性質に現れ、逆に光で磁気の状態を読み書きできる可能性があります。次世代の光電子デバイスや量子技術に向けた研究領域の見取り図を示す内容です(2026年7月14日公開)。

記事を読む 出典:phys.org(City College of New York/Nature Materials)
関連論文要約:共鳴ラマン散乱を用いた薄膜CrBr₃の振動および磁気特性の研究

(層状磁性材料CrBr₃の振動と磁気の性質を、共鳴ラマン散乱で詳しく調べた研究です。)

光学素子2026年7月

AIが作製条件を逆算——量子ドットLEDの効率2倍・寿命40倍に(韓国・ソウル大)

韓国・ソウル大学工学部の研究チームが、量子ドット発光ダイオード(QLED)の作製条件を人工知能に逆算させる手法を開発しました。QLEDは量子ドットを溶液から塗って発光層を作りますが、従来は溶媒の組み合わせを試行錯誤で探すしかなく、粒子が不均一に詰まって電荷が流れにくくなる問題がありました。今回のAIプラットフォームは、望む膜の状態から最適な溶媒組成を予測します。実際に素子を作ったところ、発光効率が約2倍、動作寿命は40倍以上に伸びました。ディスプレイ用途をはじめ、材料開発の期間短縮につながる成果です(2026年7月18日公開)。

記事を読む 出典:phys.org(Seoul National University College of Engineering)
関連論文要約:InP/ZnSコア・シェル量子ドットの凝集がアゾポリマー複合薄膜の複屈折誘起特性に与える影響

(量子ドットを高分子薄膜に分散させ、粒子の凝集が光記録材料の特性に与える影響を調べた研究です。)

量子光学2026年7月

「送らずに届ける」が直接送信に勝った——量子テレポーテーションで光子損失を克服(中国科学技術大)

中国科学技術大(Chaoyang Lu、Li-Chao Pengら)が、量子テレポーテーションが光子をそのまま送る「直接送信」より効率的であることを実験で初めて示しました。長距離の量子通信では、伝送距離が延びるほど光子の散乱・吸収による損失が深刻になります。テレポーテーションは量子もつれを使い、粒子自体を送らずに量子状態だけを転送する手法ですが、遠隔ノード間で質の高いもつれを用意すること自体が難しく、直接送信と正面から比較した研究はありませんでした。チームは6個の光子のうち4個を測定し、その結果を合図に残る2個に高品質なEPR対を用意する「予告付き」の全光学的手法を開発。これにより直接送信で生じる損失をほぼ回避できます。透過率約1%の損失チャネルで検証したところ、最適な量子クローニングで補強した直接送信と比べても約3倍効率的でした。量子中継器やネットワーク型量子計算に向けた一歩です(Nature Physics 掲載)。

記事を読む 出典:phys.org(University of Science and Technology of China/Nature Physics)
関連論文要約:プログラム可能な線形フォトニック回路におけるフォック状態量子光のコヒーレント吸収の模擬

(光子対を使い、量子の光が吸収・干渉する様子をプログラム可能な集積回路の上で再現した研究です。)

その他2026年7月

放射線量を200分の1に——「ゴーストイメージング」で2メガピクセルのX線撮影(中国科学院上海高等研究院)

中国科学院・上海高等研究院(Tiqiao Xiaoら)が、通常のX線撮影に必要な光子のわずか0.48%で、約2メガピクセルの高解像度X線画像を得る手法を実証しました。ゴーストイメージングは2本の光束の相関から像を再構成する計算イメージング手法で、ランダムなパターンを担う参照光は試料に当たらず、試料を通る光はごく弱くて済むため被曝線量を大きく減らせます。ただし従来は「極低光量」と「高解像度」の両立が難しく、実験的な実証が進んでいませんでした。研究チームは結晶で高い相関を保ったままX線を弱い試料光と強い参照光に分け、微弱信号用と微細構造用の最適な検出器を組み合わせ、さらに合成開口の考え方で数十回の測定から全体像を再構成する アルゴリズムを導入。上海放射光施設のビームラインでの比較実験で、従来法と同じコントラスト対雑音比を0.48%の光子数で達成し、1,992×944画素の画像を得ました。胸部X線やCTなど日常診療への応用、とくに小児・妊婦・頻回検査の被曝低減が期待されます(Optica 掲載)。

記事を読む 出典:phys.org(Optica/Shanghai Advanced Research Institute, CAS)
関連論文要約:粒子群最適化による物体変調スペックルを用いたシングルショットイメージングのための制御変数調整

散乱した光のまだら模様から、一回の撮影で元の像を計算で復元する手法の研究です。

レーザー分光2026年7月

お腹の赤ちゃんの「酸素」を光で直接測る——分娩監視を1970年代から刷新へ(米カーネギーメロン大/ICFO)

米カーネギーメロン大(Jana Kainerstorfer代表研究者)とスペインICFOなどの国際コンソーシアムが、分娩中の胎児の低酸素(hypoxia)を直接・実時間で評価する装着型モニタリングシステムの開発に着手しました。米ARPA-H支援の3,900万ドル規模プロジェクト「OMEGA」で、2026年6月に始動。分娩中の胎児評価は1970年代からほぼ変わらず心拍数モニタリングが標準ですが、心拍の変化は問題の兆候を示すだけで「酸素が足りているか」は分かりません。OMEGAは近赤外分光(NIRS)や脳波などの光学・電気生理センサーとAIを組み合わせ、胎児だけでなく母体・胎盤・子宮も含めた系全体を非侵襲で計測し、低酸素の有無と原因の両方を捉えます。ICFOは乳幼児の脳血流を診るTinyBrainsプロジェクトでfNIRSと拡散光計測(DCS)を統合した実績があり、装着型OEMモジュールを担当します(optics.org)。

記事を読む出典:optics.org(Carnegie Mellon University/ICFO/ARPA-H)
関連論文要約:中赤外光音響信号の時間ゲーティングによる非侵襲的血糖値測定

光音響信号を時間で切り分け、皮膚の深部にある血管から血糖値を非侵襲に読む手法の研究です。

光学素子2026年7月

青色の寿命が5,000倍に——樹脂で封止して量子ドットLEDを実用域へ(MIT/サムスン)

米MIT(Vladimir Bulović、Moungi Bawendiら)とサムスンの共同研究が、電気励起型の量子ドットLED(QD-LED)の寿命を大きく延ばす方法を示しました。QD-LEDは純度の高い色を省エネで出せますが、とくに青色素子が赤・緑より50〜100倍不安定で、実用化を阻んできました。チームはQD-LEDをナノメートル厚の薄片に切り出して断面を高分解能顕微鏡で観察し、動作中に発光を担う3層が変質・薄膜化し量子ドット同士が融合すること、その一因が動作中に放出される余分な水素・酸素であることを突き止めました。アクリレート系樹脂で封止するとこれらの放出が抑えられ、赤で8倍、青では5,000倍超の寿命改善を実現。薄型・大面積で色純度の高い光源として、テレビやAR/VR、医用イメージング、照明への展開が期待されます(Science Advances 掲載)。

記事を読む 出典:optics.org(MIT/Samsung SAIT/Science Advances)
関連論文要約:InP/ZnSコア・シェル量子ドットの凝集がアゾポリマー複合薄膜の複屈折誘起特性に与える影響

(量子ドットを樹脂の薄膜に混ぜ、粒子の凝集が膜の光学特性をどう変えるかを調べた研究です。)

レーザー顕微鏡2026年7月

1ピコ秒の「1発撮り」で生きた線虫の化学変化を動画に(米テキサスA&M大)

米テキサスA&M大(Alexei Sokolov、Zhenhuan Yiら)が、生きた生物の中で進む化学変化を実時間で捉える広視野赤外マイクロ分光イメージングを開発しました。ラマンや赤外の分光イメージングは分子振動をもとに無標識で化学分布を可視化できますが、走査や長時間・複数回露光が必要なため、速い動きはブレて撮れませんでした。本手法は約1ピコ秒のレーザーパルス対1組で1枚を撮る「シングルショット」方式。三次の和周波過程で赤外光を可視信号に変換し、走査せずに共鳴発光から画像全体を一度に取得します。1コマがピコ秒スケールのため動きによるブレがほとんど生じません。水中の生きた線虫(C. elegans)を約400nmの空間分解能で撮影し、kHzレーザーで同レートの動画化にも成功。水を多く含む生体試料にそのまま使えるため、病態の発生・進行の追跡や薬剤応答の観察への応用が期待されます(PNAS 掲載)。

記事を読む出典:optics.org(Texas A&M University/PNAS)
関連論文要約:位相シフト光熱顕微鏡による高密度生細胞集団の中赤外超分光イメージング

中赤外の分子振動をもとに、生きた細胞を染めずに化学組成ごと画像化する顕微鏡の研究です。

光学素子2026年7月

世界初の「中性子レンズ」——炉やセルの中の構造を6m離れて鮮明に撮る(スイスPSI)

スイス・パウル・シェラー研究所(PSI)が、世界初となる中性子イメージング用の色消し(アクロマート)レンズを開発しました。中性子は金属を深く透過しつつ水素やリチウムなど軽元素に敏感で、電池やエンジン内部の観察に有用ですが、物質との相互作用が弱く曲げる・集めるのが難しいという難点があります。中性子ビームは多波長を含むため、それらを同一焦点に結べる実用レンズがこれまで存在せず、試料を検出器のすぐ近くに置くしかなく分解能と試料サイズが制限されていました。新レンズはニッケルの同心円リング(最細部は200nm以下)で回折を、ダイヤモンド構造で屈折を担わせ、広い波長域を同一点に集束。20µm以下の分解能を実現し、6m離した市販リチウムイオン電池の巻回電極構造を7倍に拡大撮像しました。炉・クライオスタット・圧力セル内部の観察や中性子顕微鏡への道を開きます(Nature Communications 掲載)。

記事を読む 出典:phys.org(Paul Scherrer Institute/Nature Communications)
関連論文要約:高効率な赤緑青色消し液晶回折光学素子

(液晶を多層にねじった回折素子で、波長ごとに焦点がずれる色収差を抑えた研究です。)

光学素子2026年7月

波長を変えるだけで画像を呼び出す——回折層に4,000枚以上を記録する光ストレージ(UCLA)

米UCLA(Aydogan Ozcan、Mona Jarrahiら)が、深層学習で設計した受動的な誘電体の回折層を積み重ね、そこに多数の画像を記録して光だけで読み出す「波長多重回折光ストレージ」を提案・実証しました。各画像に固有の照明波長を割り当て、ラジオの選局のように入射光の波長を変えるだけで、同じ出力視野に別々の画像が浮かび上がります。可視域のシミュレーションでは4,000枚超の独立した画像パターンを平均48dB超のピーク信号対雑音比で再構成でき、波長チャネル間の干渉も小さく抑えられました。実証機として2層の回折素子を試作し、500〜740nmの6波長で6枚の画像の記録・読み出しに成功。機械的な可動部や磁気媒体の劣化がなく、長期アーカイブや情報セキュリティ、ディスプレイ、光コンピューティングへの応用が期待されます。偏光や入射角との多重化でさらに容量を増やせます(回折光ニューラルネットワークの設計手法を応用、Advanced Photonics 掲載)。

記事を読む 出典:phys.org(UCLA/Advanced Photonics)
関連論文要約:再生可能エネルギー最適化に向けたBayfol®フォトポリマー中の多重ホログラムによる太陽光制御

フォトポリマーに複数のホログラムを重ねて記録し、太陽光を電池面へ導く研究です。

量子光学2026年7月

目の中に見える「幻の模様」を検査に使う——量子光学の構造光で網膜の健康を測る(米バッファロー大)

米バッファロー大(Dusan Sarenacら)とウォータールー大が、偏光した光が網膜の構造で散乱するときに周辺視野へ現れる淡い蝶ネクタイ状の模様「ベームのブラシ(Boehm’s brushes)」を、はっきり見えるようにする手法を報告しました。網膜疾患があると知覚しにくくなるため健康状態の指標になり得ると考えられてきましたが、健常者でも見えにくく臨床応用は困難でした。研究チームは量子光学で発展し顕微鏡や精密計測にも使われる構造光(偏光を空間的に設計した光)を用い、網膜構造の対称性に合わせることで模様を明るく大きくし、ローブ(花弁)の数も変えられるようにしました。健常者約12名で視覚閾値を測定し、中心から離れた視野ほど検出しやすいという基準データを取得。次段階は加齢黄斑変性など網膜疾患患者での検証です(PNAS 掲載)。

記事を読む 出典:phys.org(University at Buffalo/University of Waterloo/PNAS)
関連論文要約:生物由来ガラス繊維における波面制御と偏光特性

海綿など生物が作るガラス繊維を光が通るとき、波面と偏光がどう変わるかを調べた研究です。

その他2026年7月

1チャンネル200Gbpsの受光素子——AIデータセンターの光受信を倍速に(韓国ETRI)

韓国電子通信研究院(ETRI)が、1チャンネルあたり200Gbps級の光信号を処理できるフォトダイオード(受光素子)を韓国で初めて開発しました。データセンターで一般的な112Gbps級に対し、最大224Gbps/チャンネルと約2倍の処理能力です。InGaAs系の素子で、70GHz以上の帯域と0.75A/W以上の高い受光感度を0.5×0.4mmのサイズで両立。チップ裏面にリン化インジウム(InP)製の凸レンズを一体形成する「裏面レンズ集積構造」により、受光効率と位置合わせのしやすさを大きく改善しました。別体の受光レンズが不要なため実装が簡素化でき、800Gbps/1.6Tbps級の光モジュールでのコスト低減も見込まれます。AIデータセンター内部の光トランシーバや5G/6G基地局への適用が期待されます(Optics Express 掲載)。

記事を読む 出典:phys.org(ETRI/Optics Express)
量子光学2026年7月

ガラス表面の静電気で原子を捕まえる——量子情報の保持時間が10倍に(独フンボルト大)

独フンボルト大ベルリン(Arno Rauschenbeutel、Riccardo Pennettaら)が、髪の毛の約100分の1という極細ガラスファイバーの近くに、レーザー冷却した原子を捕捉・制御する新方式を実証しました。従来のナノフォトニック系では原子を引き寄せるのに複数のレーザービームが必要でしたが、本手法はガラス表面に自然に生じる静電気的な力で原子を引き寄せ、青方離調したエバネッセント場でやさしく押し返して安定な捕捉領域を作ります。捕捉力は従来より弱いものの、原子はほとんど失われずに移送でき、光の弱い領域に留まるため擾乱が減少。その結果、捕捉時間は約2倍、量子情報の保持時間は約10倍に伸びました。量子メモリや量子通信ネットワークの簡素化・高信頼化につながる成果です(Nature Photonics 掲載)。

記事を読む 出典:phys.org(Humboldt-Universität zu Berlin/Nature Photonics)
量子光学2026年7月

2,000個の原子を光ピンセットで整列——量子コンピュータ向けレーザー光学系(フラウンホーファーILT)

ドイツのフラウンホーファーILT(アーヘン)が、シュツットガルト大学第5物理学研究所で建設中の量子コンピュータ向けに、2,000個のリュードベリ原子をサブミクロン精度で配置する高度なレーザー光学系を開発しました。20行×100列に個別制御できる2,000本のレーザー焦点を、超小型の真空チャンバー内へ投影。それぞれが光ピンセットとして働き、原子どうしが相互作用するのに必要な3.5µmの間隔で捕捉・保持します。量子論理演算はこの原子配列上で進み、多数の量子ビットを密に集積できます。実用的な量子コンピュータのスケールアップに向けた基盤技術です(Fraunhofer ILT/シュツットガルト大学)。

記事を読む 出典:phys.org(Fraunhofer ILT/University of Stuttgart)
レーザー顕微鏡2026年7月

電子を「アト秒」で動かして観る——超高速STMが量子力学の時空間限界に到達(レーゲンスブルク大/MPI)

独レーゲンスブルク大(J. Repp、R. Huberら)とハンブルクのマックス・プランク研究所(A. Rubioら)が、新開発のレーザー系を用いた超高速走査トンネル顕微鏡(STM)で、電子の位置と時間発展を同時に任意の精度では決められない「時空間限界」を初めて観測しました。金属探針から銀表面へ数原子径だけ離れた距離を、2つの光パルスの時間差を変えながら電子を移動させ、トンネル過程をアト秒(10⁻¹⁸秒)の時間分解能で捉えました。電子を狭い時空間に閉じ込めると波束が空間的に広がる、という関係も直接測定。将来はCMOSの数十万倍速い電子制御や、化学結合を狙って切る・変える反応制御への応用が見込まれます(Nature Photonics 掲載)。

記事を読む出典:phys.org(University of Regensburg/Max Planck Institute/Nature Photonics)
関連論文要約:量子エレクトロメーターによる原子格子スケールでの時間分解材料科学

(ダイヤモンド中の発光欠陥を使い、単一電子の動きを原子スケール・ナノ秒級で読み取る研究です。)

光学素子2026年7月

極薄「回折レンズ」が光を針状に集束——OCTの撮像深さを9倍に(中山大学)

中国・中山大学のHaowen Liangらが、厚さわずか約7µmの多層回折レンズで光を細く長い「光ニードル(optical needle)」に集束させ、光コヒーレンストモグラフィー(OCT)の撮像深さを従来比で約9倍に高めました。数百万個の微細な階段状構造で複数の光学機能を1枚に集約し、800〜900nmの広帯域光を横幅2.4µm・焦点深度2,640µm(深さ対幅比1,100:1)の針状ビームに整えます。従来の対物レンズを置き換えるだけで、組織の表面の微細構造と深部を同時に高解像度で捉えられます。眼科診断の早期化や、将来はスマートフォンのカメラなど小型・低コストな撮像系への応用が期待されます(Optics Letters 掲載)。

記事を読む出典:phys.org(Optica/Sun Yat-sen University/Optics Letters)
関連論文要約:水溶性配向材料を用いた透過型多層幾何位相格子

(液晶の層を重ねた薄い回折素子を水溶性の配向材料で作り、偏光を選んで光を曲げる研究です。)

量子光学2026年7月

量子もつれで衛星⇄地上の「時刻」を守る——妨害を即座に検知するもつれ光源(豪CSIRO)

オーストラリアのCSIROが、衛星測位・時刻配信(GNSS)信号への妨害やなりすましに対抗するため、持ち運び可能で高フラックスな量子もつれ光子源「Quantum Light Source」を開発し、国防科学技術グループ(DSTG)へ2台納入しました。シンプルなガラスキューブで、反対方向に進む光子対を量子もつれ状態にします。片方を地上に残し、もう片方を数百km上空の衛星へ送っても相関が保たれ、安全な通信リンクを張れます。量子もつれは干渉に極めて敏感で、第三者が信号を傍受・改ざんすると量子状態が変化するため妨害を即座に検知でき、別チャンネルへ切り替えられます(もつれ配送)。防衛用途に限らず、通信網・電力網・金融など民生インフラの高信頼な時刻同期にも波及する成果です(CSIRO)。

記事を読む出典:phys.org(CSIRO)
その他2026年7月

フェムト秒「デュアルコム」ライダーで微小金属部品をミクロン精度で3D計測(英ヘリオット・ワット大)

英ヘリオット・ワット大のDerryck T. Reidらが、2本のフェムト秒周波数コム(デュアルコム)を用いた新方式のライダーで、小さな金属部品を従来のライダーより桁違いに高い精度で3次元計測できることを示しました。自動運転車のライダーが数cm精度で大きな対象を測るのに対し、本手法は約400mmの距離からアルミ部品をミクロン精度で撮像し、3面で9〜38µmの確度を達成。数百フェムト秒の超短パルスと、戻り光を二光子吸収で直接電気信号に変える「完全電子式」検出を組み合わせ、外乱に強くシンプルなレーザーで動きます。エンジン内部など手の届きにくい部品の非接触検査・品質管理への応用が期待されます(Renishaw社との産学連携、Optics Letters 掲載)。

記事を読む 出典:optics.org(Heriot-Watt University/Renishaw/Optics Letters)
その他2026年7月

レーザーの「指紋」で機器を本人確認——パスワード不要、AIが瞬時に認証(サウジKAUST)

サウジアラビアのKAUST(Yating Wan助教ら)が、極小のレーザー素子が発する固有の光パターンを機器ごとの“指紋”として使い、パスワードやセキュリティキーなしで機器の正当性を確認できる認証技術を開発しました。カオス的に振る舞う微小レーザー(VCSEL)は、同じ素子でも複製が極めて難しい複雑な光信号を生み、その統計的な特徴をAIがほぼ瞬時に照合します。実験では極めて高速かつ低消費電力で認証応答を生成でき、数百万台の機器・サーバー・センサーが安全に通信する必要があるクラウド、AI基盤、IoTネットワークへの応用が期待されます。光技術(フォトニクス)とAIを組み合わせ、大規模ネットワーク時代のデジタルセキュリティに新たな選択肢を示す成果です(Nature Electronics 掲載)。

記事を読む 出典:Mirage News(KAUST/Nature Electronics)
その他2026年7月

CO2レーザー溶接で「密閉ガラス容器」を自動製造——危険廃棄物の長期保管に(独LZH)

ドイツのレーザーセンター・ハノーバー(LZH)が、CO2レーザーで厚肉ガラス容器を溶接密閉する新製法を「LasGlaReLa」プロジェクトで開発しました。電気自動車の普及で増える電池材料や化学産業廃棄物は、環境保護・安全な取扱い・長期の構造健全性を同時に満たす「カテゴリーIV処分場」向け容器が必要です。化学的に極めて不活性なガラスは残留物と反応せず、将来の回収・リサイクルにも適します。従来の熱ガス法は入熱が制御しにくく残留応力が大きい上、自動化も難しいのが課題でした。研究チームは波長10.6µmのCO2レーザー1台で2つの接合部材を同時に加熱し、5mm厚の板ガラスを全厚にわたり微小空隙のない連続溶接。入熱後も機械的強度が保たれ(2週間保管後の応力試験で確認)、フタが重力で自然に沈み込むためクランプ治具が不要という独自方式です。高速で自動化に適します(Journal of Laser Applications 掲載)。

記事を読む 出典:optics.org(Laser Zentrum Hannover/Journal of Laser Applications)
レーザー分光2026年7月

2色の赤外レーザーで分子の「かたち」を制御——隠れた指紋を暴く(フリッツ・ハーバー研究所)

ドイツ・フリッツ・ハーバー研究所の研究チームが、高度に同期させた2本の赤外(IR)レーザーを使い、分子が異なる立体構造(配座)へ切り替わる様子を制御できることを示しました。極低温のヘリウム液滴中の分子に波長の異なる2つのレーザーを当て、赤外分光で通常は見えない構造の「指紋」を引き出します。分子が化学反応の途中でどのように組み替わるかを観察する新しい窓口となり、反応を支配する微視的プロセスの基礎的理解につながります(Fritz Haber Institute)。

記事を読む出典:phys.org(Fritz Haber Institute)
関連論文要約:面増強ラマン分光法によるParietaria judaica花粉アレルゲン蛋白質の振動指紋の初取得

(銀のナノ構造で微弱な信号を増やし、花粉アレルゲン蛋白質の振動指紋をラマン分光で捉えた研究です。)

量子光学2026年7月

冷却不要で「置くだけ」の単一光子源——19インチラックに集積、室温動作(韓国KRISS)

韓国標準科学研究院(KRISS)が、極低温冷却を必要とせず室温で動作する単一光子源を、19インチラックに収まる小型装置として開発しました。電源を入れればすぐ使える「プラグ&プレイ」設計で、量子光源技術を実験室の外の実地利用へと近づけます。光子を1個ずつ生成する単一光子源は、量子通信・量子計算・量子センシングの出発点となる要素です。決定論的な空間マッピング技術で光子の位置を精密に定め、扱いやすさと安定性を両立しました(Laser & Photonics Reviews 掲載)。

記事を読む出典:phys.org(KRISS/Laser & Photonics Reviews)
関連論文要約:DNA塩基をsp3量子欠陥へ書き込む技術

カーボンナノチューブに狙って量子欠陥を作り込み、室温で光子を1個ずつ放たせる化学手法の研究です。

レーザー分光2026年7月

自宅で測る「肌の水分量」——近赤外の拡散反射で皮膚の奥まで(中国医学科学院/カーディフ大)

中国医学科学院・北京協和医学院とカーディフ大などのチームが、皮膚の水分量を手軽に測る小型の近赤外センサーを開発しました。アトピー性皮膚炎(AD)では水分保持が症状の鍵ですが、従来法は表面止まりで、皮膚病変や環境ノイズに弱く携帯測定が困難でした。そこで皮膚の各層から戻る光を解析する拡散反射分光を採用。910nmと970nmの2波長と専用プローブ形状で、表面ではなく皮下の水分変化を捉えます。温度で変わる皮膚の光学特性を補正する「温度対応アルゴリズム」を組み合わせ、光強度のゆらぎや熱ドリフトに強くしました。新指標「光学水和指数(OHI)」でAD患者と健常者を高精度に判別し、保湿剤塗布後の短時間の変化も追跡。在宅での非侵襲モニタリングに道を開きます(APL Photonics 掲載)。

記事を読む出典:optics.org(Chinese Academy of Medical Sciences/Cardiff University/APL Photonics)
関連論文要約:動き補正機能を備えたブリュアン顕微鏡によるヒト皮膚の生体内における生体力学的特性の測定

660nmのレーザーで、生きたヒトの皮膚の硬さを触れずに深さごとに測る顕微鏡の研究です。

レーザー顕微鏡2026年7月

ハイドロゲル光ファイバで乳がんを内側から撮像——太さ0.1mm級の柔らかいファイバ(ハルビン工程大)

中国・ハルビン工程大の張宇(Yu Zhang)らが、生体適合性の高いハイドロゲル製マルチモード光ファイバ(HMMF)を開発しました。太さ約120〜200µmと細く、数百µm幅しかない乳管など体内の狭い空間にも入り込めます。クモの糸の紡糸に着想を得た延伸紡糸法で作り、水分を保って数日の安定性を確保、980nmで1.05dB/cmと低損失。ファイバ先端から光を送って組織のスペックル像を取得し、二段階のマルチモードファイバイメージングと深層学習で、正常・浸潤がん・乳管がんを93.97%の精度で分類しました。従来の硬いファイバより低侵襲で、乳がんの早期発見や体内センシング・手術ナビへの応用が期待されます(Optics Express 掲載)。

記事を読む出典:optics.org(Harbin Engineering University/Optics Express)
関連論文要約:マルチモード光ファイバの透過行列:インライン型と離軸型ホログラフィの比較

髪ほどの細さのファイバ越しに像を結ぶため、光の通り方を表す透過行列の測り方を比べた研究です。

光学素子2026年7月

散乱をむしろ味方に——「回折光ニューラルネットワーク」で濁った媒質越しに像を復元(UCLA)

米UCLA(Aydogan Ozcanら)が、生体組織のように光を散らす「濁った(散乱)媒質」の内部に、学習させた受動的な回折光ニューラルネットワークの層を層状に埋め込むことで、未知の散乱体の向こう側にある物体の像を光だけで復元する新方式を実証しました。散乱体の中に最適化した回折層を分散配置することで、光の伝搬そのものを情報復元プロセスの一部として使えます。可視光での実験でも像の復元に成功し、バイオメディカルイメージング、リモートセンシング、光通信への応用が期待されます(Laser & Photonics Reviews 掲載)。

記事を読む 出典:phys.org(UCLA/Laser & Photonics Reviews)
レーザー顕微鏡2026年7月

光だけで動く内視鏡先端カメラ——世界初のチップオンチップFLIMマイクロカメラ(Tyndall)

アイルランドのTyndall National Instituteが、電池も配線も使わず「光」だけで駆動する超小型の生体内デバイスで2つの世界初を達成しました。外径わずか4mmの内視鏡スケールで、先端のカメラチップは光ファイバで送った光を多分割の太陽電池で受けて発電し、完全に光給電で動作します。さらに世界初となる内視鏡スケールの蛍光寿命イメージング(FLIM)マイクロカメラを実現し、30µm以下の微細構造を分解します(Optics Letters 掲載)。

記事を読む出典:optics.org(Tyndall National Institute/Optics Letters)
関連論文要約:直接的な寿命地図再構成を用いたRATS法によるナノ秒圧縮蛍光寿命顕微鏡イメージング

不規則に強度を揺らした光で照らし、蛍光が消えるまでの時間の分布を高速に再構成する顕微鏡の研究です。

光学素子2026年7月13日

中赤外の光を画素ごとに操るメタサーフェス——2次元の画素単位制御を初めて実装(米MIT)

熱を加えると結晶とアモルファスの間で状態が変わる相変化材料を用いたメタサーフェスで、入ってくる中赤外光を画素ごとに独立して制御できる素子をつくりました。ディスプレイで使われる格子状の配線(クロスバー)を応用し、交点の下に置いたドープシリコンの発熱で各画素を切り替える構造で、2次元の画素単位制御を実装したのは初めてとしています。6×6画素の試作で繰り返し動作を確認し、可動部なしに焦点を変えられます。中赤外はメタンなど多くの分子が吸収する波長域で、ガス漏れ検知や熱画像、大気の監視への応用が想定されています。半導体工場の一般的な工程で作れる点も利点として挙げられています。

記事を読む 出典:MIT News(Nature Communications)
2026年6月
光学素子2026年6月

既設の光ファイバーで毎秒450テラビット——実回線で世界記録を更新(NICT/情報通信研究機構)

NICT(情報通信研究機構)と英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンなど6機関が、ロンドン市内に既に敷設されている標準的なシングルモード光ファイバー39kmを使い、毎秒450テラビットの伝送に成功しました。O・E・S・C・Lの5帯域をまとめて使う波長分割多重(WDM)により、信号の帯域幅は42.4THz(1,264〜1,618nm)と過去最大、波長チャネル数は1,273に達します。従来記録(402/430Tb/s)はいずれも実験室のファイバーでの成果でしたが、今回は接続点や修復跡を含む実回線での実証で、敷設済み設備を活かして通信容量を伸ばせることを示しました(OFC2026ポストデッドライン発表、2026年6月1日公開)。

記事を読む 出典:NICT(情報通信研究機構)
その他2026年6月

「割らずに卵の中を見る」——卵殻が光を閉じ込める性質を発見(伊・蘭)

イタリア・ミラノ工科大と孵卵装置メーカーHatchTech(オランダ)らのチームが、無傷の鶏卵に光を入れると、卵殻が「積分球」のように光子を何度も反射して閉じ込め、わずか4cmの卵の内部で光子が最大約2mもの距離を進むことを、時間分解の拡散光計測で発見しました。この性質を使えば、卵を割らずに胚の雌雄判定や受精・品質の評価を非侵襲で行える可能性があり、毎年大量に殺処分される雄ヒナの問題の解決にもつながると期待されます(Cell Press「Newton」6月19日掲載)。

記事を読む 出典:EurekAlert!(Cell Press/Politecnico di Milano)
関連論文要約:動的散乱を通した行列ベースイメージング

揺らいで散乱する媒質の向こう側でも、行列の計算で像を復元するイメージング手法の研究です。

その他2026年6月

「マグノン運動量顕微鏡」でナノスケールのスピン波を直接可視化(マックス・ボルン研ほか)

独マックス・ボルン研究所(MBI)を中心に、ヘルムホルツ・センター・ベルリン、ナポリ大、スイス連邦工科大ローザンヌ(EPFL)の国際チームが、磁石中のスピンの集団励起「マグノン」を、軟X線を使って二次元の運動量空間で直接撮像する新手法「マグノン運動量顕微鏡(MMM)」を開発しました。実験ではマグノンが軟X線に対する動的な回折格子として働き、その回折パターンからナノメートル波長(テラヘルツ帯に相当)のマグノンの波長と振幅を1回の測定で決定できます。試料の微細加工を必要とせず高感度・高速で、代表的な磁性体イットリウム鉄ガーネット(YIG)で4マグノン散乱などの強い非線形相互作用を観測。波で情報処理する省エネな次世代コンピューティングの基盤研究を前進させます(Nature Physics 掲載)。

記事を読む 出典:phys.org(Max Born Institute)
関連論文要約:ナノスケールスピン波の位相分解光学特性評価

ナノ共振器で光を回折限界より小さく絞り込み、波長204nmのスピン波の位相を測った研究です。

レーザー分光2026年6月

持ち運べる「紫外デュアルコム分光計」で大気汚染物質を実時間で指紋分析(オーストリア・グラーツ工科大)

オーストリア・グラーツ工科大(TU Graz)のBirgitta Bernhardtらが、世界初の広帯域紫外(UV)デュアルコム分光計を小型・モバイル化し、大気汚染ガスを実時間で高精度に「指紋」分析できることを示しました。わずかに繰り返し周波数の異なる2台の周波数コムの干渉を使い、高い光周波数を扱いやすい無線周波数帯へ変換します。分解能1GHz・帯域12THz・1秒以下の取得時間で、最大2.5km先の分子の吸収スペクトルを捉えます。UV領域は分子の電子遷移を励起でき大気の光化学反応に直結する重要領域ですが、コム光源が乏しく未開拓でした。本装置はホルムアルデヒドの微細な吸収線を多数新たに観測し、1960年代以来教科書に載る回転定数の誤りを最大15%修正。複雑な電子安定化装置が不要で、大気計測・バイオセンシング・呼気診断への応用が期待されます(PhotoniX 掲載)。

記事を読む 出典:Laser Focus World(TU Graz/PhotoniX)
レーザー顕微鏡2026年6月

色収差を「深さスキャナー」に——極薄メタレンズで可動部なしの3D共焦点イメージング(米ペンシルベニア州立大)

米ペンシルベニア州立大(Zhiwen Liu、Xingjie Niら)が、通常は「収差」として嫌われる色収差を逆手に取り、機械的な焦点走査なしで深さ方向の3D共焦点イメージングを行う極薄メタレンズを実証しました。波長ごとに異なる深さへ光を集める強分散メタレンズと広帯域光、共焦点ピンホールを兼ねる単一モード光ファイバを組み合わせ、色(波長)を深さに対応づけて反射スペクトルから直接深さ情報を読み取ります。可視域200nm帯で1.3mmの深さ範囲をカバーし、軸方向の空間帯域積は約68と従来のメタレンズ型色共焦点より大幅に向上。可動部が不要で小型化に適し、表面形状計測や半導体・微小光学部品の検査、内視鏡型イメージングへの応用が期待されます(Nano Letters 掲載)。

記事を読む出典:Laser Focus World(Penn State University/Nano Letters)
関連論文要約:液晶を用いた色収差のない回折光学素子を用いた仮想現実ディスプレイ

液晶フィルムを3枚重ね、色ごとの焦点ずれ(色収差)を抑えた薄型の回折レンズの研究です。

量子光学2026年6月

特別な素材なしで光を「ねじる」——自由空間で生まれるキラル光(英UEA/南ア Wits)

英イーストアングリア大(UEA)と南アフリカ・ヴィットヴァーテルスラント大(Wits)が、特別な材料やメタサーフェス、強い集光を使わずに光のキラリティ(ねじれ)とスピン角運動量を生成・制御する新手法を示しました。偏光が場所ごとに変化する構造化ビームを自由空間で伝搬させると、最初は円偏光成分が無くてもスピンが局所的に立ち上がり、領域ごとに分離します。鍵は伝搬しても保たれるビームの「トポロジー」で、パンチャラトナム位相指数が制御の指標になります。軌道角運動量(OAM)は整数で何通りにもねじれるため、情報符号化の「文字数」を大きく増やせます。生体・医薬品のキラルセンシングや、古典・量子通信への応用が期待されます(Light: Science & Applications 掲載)。

記事を読む出典:optics.org(University of East Anglia/University of the Witwatersrand/Light: Science & Applications)
関連論文要約:軌道角運動量(OAM)レーザーの実現

マイクロ共振器に液晶の渦構造を埋め込み、ねじれた光(軌道角運動量)を発振させた研究です。

その他2026年6月

小さな金属部品をミクロン精度で3D計測——「二光子デュアルコムLiDAR」(英ヘリオット・ワット大)

英ヘリオット・ワット大のDerryck Reidらが、精密測定機器メーカーRenishawとの共同で、対象までの距離を非接触でミクロン精度計測できる新方式のLiDARを開発しました。2台のモード同期レーザーが作るデュアルコム(光周波数コム)測距に、二光子吸収を使った完全電子式の検出を組み合わせ、40cm先のアルミ加工部品を9〜38ミクロンの精度で点群化。製造現場の非接触検査・品質管理への応用が期待されます(Optics Letters 掲載)。

記事を読む 出典:EurekAlert!(Optica/Heriot-Watt University/Optics Letters)
光学素子2026年6月

「メタサーフェス」で太陽の磁場を一発撮影——実用装置への初応用(UCサンディエゴ/BAE)

米UCサンディエゴのNoah Rubinらが、極薄の平面光学素子「メタサーフェス」を実用の科学観測装置に初めて組み込みました。太陽撮像メタサーフェス偏光計「SIMPol」は偏光を回折次数へ空間的に振り分け、可動部なしに複数の偏光画像を同時取得します。Dunn太陽望遠鏡で黒点の磁場を定量マッピングし、NASAの最新宇宙ミッションに匹敵する結果を得ました(Science Advances 掲載)。

記事を読む 出典:Optics & Photonics News(UC San Diego/BAE Systems/Science Advances)
量子光学2026年6月

世界初、光量子コンピュータをクラウド公開——「天衍-P2000」が2,682光子を制御(中国)

中国電信量子集団と済南量子技術が、光量子コンピュータ「天衍-P2000」を稼働させクラウド公開しました。干渉導波路メッシュ上で2,682個の光子を同時に制御し、高難度の計算を29マイクロ秒で完了。光方式は室温動作でき、既存の光ファイバ・量子通信網と直接つなげるのが強みです(九章4.0と同じ光学アーキテクチャ)。

記事を読む 出典:ECNS/China Daily(China Telecom Quantum Group)
レーザー分光2026年6月

短寿命の稀少同位体を「飛行中」にレーザー分光——韓国初、原子核構造研究へ(IBS IRIS)

韓国・基礎科学研究院IRISを中心とする共同チームが、稀少同位体ビームを用いた韓国初のレーザー分光実験に成功。イオン・原子ビームとレーザーを一直線に重ねるコリニアレーザー分光装置「CLaSsy」で、秒速約40万mで飛行する短寿命核の電子構造を崩壊前に測定しました(Journal of Instrumentation掲載)。

記事を読む 出典:Seoul Economic Daily(IBS IRIS)
光学素子2026年6月

「仮想メタサーフェス」で光を自在に整形、20ミリ秒ごとに機能を書き換え(英ノッティンガム・トレント大)

英ノッティンガム・トレント大のMohsen Rahmaniらが、従来のメタサーフェスの代わりに空間光変調器で二次元の光学パターンを画素ごとにエミュレートする仮想メタサーフェスを開発。色の混合・赤外を可視に変換・焦点距離調整などを1つのデバイスで瞬時に切り替えられます(Advanced Photonics Nexus 掲載)。

記事を読む 出典:phys.org(Nottingham Trent University)
レーザー顕微鏡2026年6月

「広い視野」を丸ごと学習するAIで蛍光画像を高精度復元「LargePNet」(北京大)

北京大のXi Pengらが、蛍光顕微鏡画像を復元する汎用AI「LargePNet」を開発。広い視野の統計情報をそのまま取り込む設計で大局的な相関を保ち、PSNRで0.5〜2dB改善、推論をCNNの約4倍高速化。200nm分解能の長時間タイムラプスや三色STED超解像を実現しました(Nature Communications 掲載)。

記事を読む出典:phys.org(Peking University/Nature Communications)
関連論文要約:広視野マルチフォーカス並列RESOLFTナノスコピー

弱い光で細胞を傷めずに超解像で撮るため、観察できる視野を4倍に広げた研究です。

量子光学2026年6月

二次元材料ZnPS₃が単一光子を放出、量子チップへの新たな道(ワルシャワ大ほか)

ワルシャワ大・シンガポール国立大・ラドバウド大の共同チームが、層状二次元材料ZnPS₃から単一光子の放出を初観測。点欠陥がレーザー励起で規則的な光子の流れを生み、偏光度が高く量子暗号に好適。基板を選ばず微小光回路やシリコンチップに集積しやすい材料基盤です(ACS Nano掲載)。

記事を読む出典:phys.org(ワルシャワ大学/ACS Nano)
関連論文要約:DNA塩基をsp3量子欠陥へ書き込む技術

カーボンナノチューブに狙って量子欠陥を作り込み、室温で光子を1個ずつ放たせる化学手法の研究です。

量子光学2026年6月

室温で世界最高のレーザー周波数安定度、光原子時計へ(英NPL)

英NPLが、室温動作の光共振器で分数周波数不安定度4×10⁻¹⁷という室温最高のレーザー周波数安定度を達成。長さ68cmの共振器でミラーのブラウン熱雑音を抑え、極低温冷却なしで最先端の安定度を実現しました。光原子時計やSI秒の再定義に貢献します(Optica掲載)。

記事を読む 出典:optics.org(NPL/Optica)
その他2026年6月

「数ピコメートルの鏡のズレ」が系外惑星の直接撮像を左右(米研究)

米国の研究チーム(Sanchez-Soriaら)が、分割鏡(セグメント鏡)を持つ将来の大型宇宙望遠鏡で系外惑星を直接撮像する際、鏡セグメント間のごくわずかな位置ずれ(波面ドリフト)が画像処理性能をどれだけ損なうかをシミュレーションで評価しました。コロナグラフと、RDI・ADI・CDIという3種の差分画像処理を比較したところ、地球型や金星型の惑星を検出するには「10分あたり2ピコメートル未満」というセグメント整列の安定性が必要だと判明。大規模な光学的ゆがみよりも、セグメント間の微小なズレの方がはるかに悪影響が大きいことを示しました。次世代宇宙望遠鏡の設計指針となる成果です(Journal of Astronomical Telescopes, Instruments, and Systems 掲載)。

記事を読む 出典:phys.org(高コントラスト撮像シミュレーション研究)
その他2026年6月

液晶マイクロ共振器で離れたレーザーを同期、室温で「スーパーモード」発振

英サウサンプトン大・ワルシャワ大などの欧州チームが、液晶と有機色素を封入した微小な光共振器の中で、数十マイクロメートル離れた複数の微小レーザー発光点を自発的に位相同期させ、空間的に広がった単一のコヒーレント光「スーパーモード」として発振させることに成功。従来は極低温・強結合領域でしか観測されなかった現象を、室温・弱結合の簡素な材料系で実現しました。電圧で液晶分子の向きを変えると発光点間の結合のオン/オフや強度、出射方向・偏光まで動的に制御でき、光コンピューティングやニューラルネットワーク、再構成可能な集積光回路への応用が期待されます(Nature Communications 掲載)。

記事を読む 出典:EurekAlert!(University of Warsaw/University of Southampton)
関連論文要約:単一光微小共振器における再構成可能な共鳴トラッピング

(微小な管状共振器の中で、光を閉じ込める共鳴の位置を作り替えられることを示した研究です。)

その他2026年6月

レーザーで光学部品に「位置合わせ」を作り込み、フォトニクス製造を低コスト化(英ヘリオット・ワット大)

英ヘリオット・ワット大発のFreeForm Photonicsが、光学ガラス部品そのものにレーザーで受動的な位置合わせ構造を直接作り込む製造法を実用化へ。フォトニクス製造コストの半分以上を占めてきた手作業のアライメント調整を不要にし、サブミクロン精度で高速・安価な組立を可能にします。量子コンピュータや次世代医療診断、光通信インフラなど、これまで手作業で組み立てられてきた光部品の量産化に道を開く成果で、スコットランド・エンタープライズの支援のもと事業化が進められています。

記事を読む 出典:Heriot-Watt University
レーザー分光2026年6月

メラニンを正確に測る——ラマン分光の信号ゆがみを補正(ICFO)

スペイン・ICFO(光科学研究所)のチームが、生体に多く含まれるメラニン色素をラマン分光で正確に分析するための補正法を開発。強い蛍光バックグラウンドや、レイリー光除去フィルターに由来する波打ち(リップル)といった信号のゆがみを取り除き、色(色素量)の異なる試料どうしを正しく比較できるようにしました。皮膚や腫瘍など、メラニンが関わる組織の非侵襲診断への応用が期待されます(Journal of Physical Chemistry Letters 掲載)。

記事を読む 出典:optics.org(ICFO)
関連論文要約:モバイル臨床ラマンによる口腔がん診断

1台を3通りに組み替え、細胞・液体・口腔内をその場でラマン分光できる可搬システムの研究です。

その他2026年6月

円偏光レーザーで核融合実験の後方散乱を低減、光学素子の損傷を抑制(米LLNL)

米ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)が、国立点火施設(NIF)の慣性閉じ込め核融合で使う192本のレーザーについて、光の偏光状態が「交差ビームエネルギー移行(CBET)」に与える影響をシミュレーションで解析。直線偏光ではなく円偏光を用いると、同じ円錐に入るビーム間のばらつきが減り、後方散乱(バックスキャッター)が抑えられて光学素子の損傷を低減できることを示しました。より高出力での運転や、将来のレーザー核融合施設の設計につながる成果です(Physics of Plasmas 掲載)。

記事を読む 出典:Lawrence Livermore National Laboratory
その他2026年6月

室温の光共振器で世界最高クラスのレーザー周波数安定度を達成(英NPL)

英国立物理学研究所(NPL)が、室温で動作する全長68cmの光学リファレンス共振器を用い、レーザーの相対周波数不安定度4×10⁻¹⁷を達成。これまで同等の性能は複雑な極低温装置でしか実現できておらず、室温で到達したのは初めてとされます。レーザー線幅は12mHzに達しました。超安定レーザーは光格子時計(次世代の光原子時計)の中核技術であり、高精度な時刻・周波数標準やナビゲーション、基礎物理の検証を支える成果です(Optica 掲載)。

記事を読む 出典:phys.org(National Physical Laboratory)
量子光学2026年6月

「超放射」でDLCZの壁を破る単一光子源、量子中継器の効率を改善(ウォータールー大IQC)

カナダ・ウォータールー大の量子コンピューティング研究所(IQC)のチームが、原子集団のスピン波から光子を取り出す読み出しを「超放射」で駆動する新方式の単一光子源を実証し、量子中継器の25年来の標準である DLCZ プロトコルを上回る読み出し効率と量子相関を達成しました。超放射は発光強度が原子数の2乗で強まるため、複雑な共振器を使わずに効率を高められます。長距離の量子鍵配送や将来の量子インターネットに向けた前進で、SPIE「Photonics for Quantum 2026」(6月、ウォータールー)で発表されました。

記事を読む 出典:Tech Times(University of Waterloo IQC/SPIE)
関連論文要約:線形フォトニック回路でのフォック状態量子光

プログラムできる集積光回路の上で、単一光子や2光子の吸収のふるまいを再現した研究です。

レーザー分光2026年6月

「未開封のまま」有毒メタノールを検出するレーザー分光(セント・アンドルーズ大)

英セント・アンドルーズ大とオーストラリア・アデレード大のチームが、瓶を開けずに酒類中の有毒なメタノールを検出できる新しいラマン分光法を開発。レーザー光をリング状に整形し波長を微調整することで、瓶のガラスや主成分のエタノールからの信号を抑え、メタノール由来の信号だけを取り出します。緑・茶・青など着色ガラスの瓶でも、無色のジンやウォッカから着色したウイスキーまで対応し、検出下限0.2%(人体の安全限界の約1/10)を達成。偽造酒対策のほか、医薬品・化粧品などの非破壊検査への応用も期待されます(Journal of Physics: Photonics 掲載)。

記事を読む 出典:University of St Andrews(セント・アンドルーズ大/アデレード大)
関連論文要約:ラマン分光+機械学習による物質識別

蛍光の邪魔を抑えた785nm励起で、14種の農薬のラマン指紋を集めて機械学習で見分けた研究です。

その他2026年6月

室温・液晶マイクロ共振器で複数のレーザー点を同期、単一の「スーパーレーザー」に

英サウサンプトン大・ワルシャワ大らの国際チームが、液晶と有機色素を封入した微小な光共振器の中で、空間的に離れた複数の微小レーザー発光点を自発的に位相同期させ、全体が一つの広がったコヒーレント光源(スーパーモード)として振る舞う新方式を実証。従来は極低温・強結合領域でしか見られなかった集団的な振る舞いを、室温・弱結合の簡素な系で実現しました。電圧で液晶分子の向きを変えると発光点同士の結合のオン・オフや強度を制御でき、再構成可能なフォトニクス回路や光コンピューティングへの応用が期待されます(Nature Communications 掲載)。

記事を読む 出典:phys.org(University of Southampton/University of Warsaw)
その他2026年6月

「偏光まで測る」コヒーレントLiDARで距離・速度・材質を一度に取得

カナダ・トロント大とCiena社が、通信用のコヒーレント光モデムを送受信器に流用し、各走査点1回の計測で距離・速度に加えて表面の材質(偏光情報)まで同時に取得する新方式のLiDARを開発。直交2偏光を毎秒数百億回ランダム変調し、偏光の変化から距離・速度・材質を復元します。アイセーフ強度でミリ精度の測距を実現し、金属とプラスチックや本物と造花の判別、霧・雨など視界不良下での散乱透視も実証。ロボティクスや自動運転、リモートセンシングへの応用が期待されます(Optica 掲載)。

記事を読む 出典:Optica(University of Toronto/Ciena)
量子光学2026年6月

ノイズに強い新種のもつれで次世代量子センサーを高精度化(JQI/JILA)

米JQI・JILAらの理論チームが、2つの原子集団を光共振器越しの光子のやり取りで結び付け、両センサーに共通するノイズには鈍感で「差分の信号」には鋭敏な新種のもつれ状態(リープ・マティス状態)を提案。デコヒーレンスフリー部分空間を使い、レーザー周波数の揺らぎなど現行の光格子時計を悩ませる共通ノイズを打ち消します。系を大きくするほど短時間で準備でき、実用的な量子センサーの規模拡大に向く点が特長です(Physical Review X 掲載)。

記事を読む 出典:Joint Quantum Institute(JQI/JILA)
量子光学2026年6月

離れた3つの原子量子ビットを光で結ぶ「GHZ状態」を分散生成(Duke/IonQ)

米デューク大量子センターとIonQが、約2m離して置いた3モジュール内の単一バリウムイオンを、放出された単一光子の干渉を介して結び付け、3者間のもつれ「GHZ状態」をネットワーク越しに分散生成することに成功。局所2量子ビットゲートや事後選択を使わずに忠実度84〜88%を達成し、Merminの不等式を27σ破って検出ループホールも閉じました。単一の真空槽に頼らず光接続で量子処理ノードをつなぐ、モジュール型量子計算への道を示す成果です(arXiv公開)。

記事を読む 出典:Quantum Computing Report(Duke Quantum Center/IonQ)
その他2026年6月

光音響イメージングで生体組織内のマイクロプラスチックを初めて可視化

英UCL・キングストン大・バーミンガム大(Stephen Patrickら)が、組織にレーザーパルスを当て、マイクロプラスチック特有の光吸収で生じる微弱な超音波を検出する「光音響イメージング」により、生きたマウス体内深部のマイクロプラスチックを非侵襲・高分解能で初めて地図化。ポリプロピレンやポリエチレンの粒子を、化学標識なしで数か月にわたり追跡できました。信号量が蓄積量に比例するため、日常的な曝露と健康影響を結びつける研究への応用が期待されます(Advanced Science 掲載)。

記事を読む 出典:UCL News(UCL/University of Birmingham)
その他2026年6月

世界最高クラス「2.0kW」のレーザーダイオードバーを開発(浜松ホトニクス)

浜松ホトニクスが、NEDO委託事業として単一バーで世界最高クラスとなる連続2.0kW出力の半導体レーザー(LD)バーを開発。LDバーは多数の発光部を一列に並べた素子で、高出力・高エネルギーの固体レーザー励起に多数使われるため、1バーあたりの高出力化が強く求められていました。成果は国際半導体レーザー会議(ISLC 2026・フィンランド/タンペレ、6月14〜17日)で発表。レーザー加工や核融合用レーザーの励起源の小型化・低コスト化につながると期待されます。

記事を読む 出典:optics.org(浜松ホトニクス)
レーザー分光2026年6月

「畳み込み分光器」で約$10・センチ角の高精度分光チップ

英ケンブリッジ大とGlitterinTechが、畳み込み定理を光の領域で直接実行する新方式の「畳み込み分光器(ConvSpec)」を開発。アンバランスMZIやマイクロリング共振器を縦続接続し、位相を比例制御して分光応答をずらすことで、約10ドル・センチ角ながら据置型を上回る精度を実現しました。窒化ケイ素フォトニクス上に集積し近赤外(1200〜1700nm)で動作。プラスチックや医薬品の判別、非侵襲の血糖・血中乳酸モニタリングなどを実証しています(Nature Photonics 掲載)。

記事を読む 出典:University of Cambridge(Dept. of Engineering)
レーザー顕微鏡2026年6月

「レーザー位相板」でクライオ電顕の小さなタンパク質を鮮明化

米UCバークレーとBiohub(Holger Müllerら)が、超高強度の連続波レーザーで電子線の位相をずらす「レーザー位相板」をクライオ電子顕微鏡に搭載。位相コントラスト法により、これまで小さすぎて鮮明に写せなかったヘモグロビンなど大半のヒトタンパク質を高コントラストで撮像できるようにしました。創薬や細胞内構造解析(クライオET)の前進が期待されます(Science 掲載)。

記事を読む 出典:Berkeley News(UC Berkeley)
レーザー顕微鏡2026年6月

安価な「ハイブリッド固液レンズ」で大型組織を高解像3Dイメージング

米コロンビア大(Raju Tomerら)が、曲率のある固体レンズと屈折率を精密に合わせた液浸液を一体化し、単一の光学系として働かせる「ハイブリッド固液光学(HySIL)」を開発。安価な空気対物レンズで、各種の組織透明化法に対応しつつセンチメートル大の組織をサブミクロン分解能・収差なく撮像できます。ライトシート顕微鏡に統合し、マウス全脳やヒトがん生検の3D病理などへの応用を示しました(Nature Biotechnology 掲載)。

記事を読む 出典:phys.org(Columbia University)
関連論文要約:低コストで作れるライトシート顕微鏡(Cobolt Skyra)

透明化した組織を3Dで見るライトシート顕微鏡を、市販部品だけで安く自作できるようにした研究です。

その他2026年6月

フェムト秒レーザーを1チップに集積、卓上機に匹敵

スイスEPFL(Tobias Kippenbergら)が、卓上型フェムト秒レーザーに匹敵する性能をもつ集積モード同期レーザーを初実現。エルビウム添加窒化ケイ素チップ上のMamyshev発振器により、パルスエネルギー1.05nJ・パルス幅147フェムト秒を達成しました。マッチの頭ほどの面積に折り畳まれ、ウエハ単位で量産可能。分光やセンシング、将来の小型な光原子時計や周波数コム計測への応用が期待されます(Nature 掲載)。

記事を読む 出典:ScienceDaily(EPFL)
その他2026年6月

光の生成・制御・読出しを1チップに集積

豪モナッシュ大などが、光の「バレー自由度」に情報を載せ、その生成・経路制御・電気信号への変換を1つのチップで完結させる集積バレートロニクス回路を初実現。原子数層の薄膜材料とメタサーフェスを積層し、室温動作で2枚の画像を同時処理。低消費電力な光コンピューティングや量子技術への応用が期待されます(Nature Photonics 掲載)。

記事を読む 出典:ScienceDaily
その他2026年6月

光を「映す」と「読む」を同時にこなす新型ピクセル(ETHチューリッヒ)

スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH)のDavid Norrisらが、光を出して画像を映すだけでなく、入ってくる光を解析して撮影もできる新型ピクセル「フーリエピクセル」を開発しました。ナノメートル精度で彫り込んだ表面で光を干渉させ、明暗(強度)に加えて位相や偏光まで制御・解析できます。従来のピクセルは「表示」か「撮像」のどちらかしかできませんでしたが、両方を1画素で兼ねられるため、将来はカメラとディスプレイを一体化した双方向デバイスへの応用が期待されます(Nature、6月24日掲載)。

記事を読む 出典:ETH Zurich(Nature)
その他2026年6月

世界初の「核時計」が稼働——原子核の振動で時を刻む(欧州・中国)

欧州(ウィーン工科大ら)と中国(清華大ら)の2チームが、原子核のエネルギー準位の遷移で時を刻む世界初の「核時計(nuclear clock)」をそれぞれ実証しました。現在の光原子時計が電子のエネルギー準位を使うのに対し、核時計はトリウム229の原子核を紫外レーザーでわずかに励起し、その「振動」を基準にします。両チームはレーザー光の吸収信号を監視して周波数を核遷移にロックし、時計の刻みが時間とともにずれないようにしました。原子核は外乱に強く結晶中で保護されるため、より頑健で可搬性が高く、将来はより高精度な時計や、核内部の力を探る新たな手段になると期待されます(arXivに6月公開、Natureが報道)。

記事を読む 出典:Nature(ウィーン工科大/清華大)
量子光学2026年6月

極薄半導体で「もつれ光子」を高効率生成、忠実度99%超(ウィーン大ら)

ウィーン大学のBenjamin Braunらが、伊ラクイラ大・米コロンビア大と共同で、原子数層の極薄半導体「遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)」を周期的に分極反転させ、もつれ光子対を高効率に生成する手法を実証しました。自発パラメトリック下方変換(SPDC)では通常、嵩高い非線形結晶と複雑な光学系で位相整合を取る必要がありますが、TMDの非線形性を周期的に反転させて「擬似位相整合」を実現し、コヒーレンス長の制約を超えて変換効率を高めました。偏光もつれの忠実度は99%超を維持。ナノフォトニクス上に集積できる量子光源として、量子鍵配送や量子センサーへの応用が期待されます(arXiv公開)。

記事を読む 出典:arXiv(University of Vienna/Columbia University)
量子光学2026年6月

光量子プロセッサをGPUスパコンに直結、低遅延統合を実証(Quandela/NVIDIA)

仏Quandelaが、自社の光(フォトニック)量子プロセッサ(QPU)とNVIDIAのGPUインフラを、低遅延インターフェース「NVQLink」とFPGAベースの量子制御装置を介して直結する経路を実証しました。従来クラウドAPIやジョブキュー経由だった量子計算を、GPUと並ぶ「アクセラレータ」としてHPC環境の内側に同居させる新しい実行モデルを示すものです。光回路は推論中も同じ構成を保てるため、単一光子を用いる光量子計算は量子機械学習(量子リザバー計算や量子特徴マップなど)に好適。量子コンピュータをスパコンに組み込む一歩で、独・ハンブルクのISC High Performance 2026で発表されました。

記事を読む 出典:Quandela(NVIDIA/ISC 2026)
2026年5月
レーザー顕微鏡2026年5月

レーザーで試料を非接触回転、繊細な細胞を高精細3D撮像(KIT)

独カールスルーエ工科大(KIT、Moritz Kreysing/Fan Nanら)が、レーザーで液中に微小な温度差を作り、生じる緩やかな流れで浮遊する細胞などの試料を3次元すべての方向に非接触で回転させる手法を開発。ピペットや針といった微小工具を使わず試料を傷めずに様々な角度から撮像でき、複数視点の像を統合してより高精細な3次元像を得られます。基礎医学研究のほか、非接触の微小操作・微小ロボティクスや超精密加工への応用も期待されます(Light: Science & Applications 掲載)。

記事を読む 出典:Light: Science & Applications(Karlsruhe Institute of Technology)
レーザー顕微鏡2026年5月

無標識ナノスコピー「RO-iSCAT」で細胞間の3D連絡網を可視化

豪ANU(John Curtin医学研究所)が、照明光の角度を回転させて高さ違いの像を統合する無標識ナノスコピー「RO-iSCAT」を開発。細胞から伸びる極細の管状突起が数日かけて伸縮・再接続し連絡網を形づくる様子を、色素を使わず3Dかつリアルタイムで捉えました。微弱な散乱光を約10倍に増強し、がん細胞や血管細胞の相互作用の観察にも応用しています(Nature Communications 掲載)。

記事を読む 出典:ANU College of Science and Medicine
レーザー分光2026年5月

非等間隔コムで「感度と速度の両立」を実現

中国・山西大学のグループが、CWファイバーレーザーと単側波帯位相変調器だけで作る「非等間隔モードの周波数コム」による自己ヘテロダイン分光を実証。デュアルコム分光より約1桁高い感度を保ちつつ、ナノ秒・単発で微弱な分子吸収を計測でき、時間分解分光の長年の課題を解消しました(Nature Communications 掲載)。

記事を読む 出典:Nature Communications
量子光学2026年5月

量子の「W状態」を1度の測定で識別する光回路

京都大学・広島大学のチームが、3つの光子のもつれ「W状態」を1回のもつれ測定で見分ける手法を実証。W状態が持つ巡回対称性を利用した量子フーリエ変換回路を、長時間無調整で安定動作する光量子回路として構築しました。GHZ状態の測定提案から四半世紀を経た難題の解決で、量子テレポーテーションや測定型量子計算の前進が期待されます(Science Advances 掲載)。

記事を読む 出典:ScienceDaily(Kyoto University)
量子光学2026年5月

量子ドット単一光子源で120kmの量子鍵配送

独中の国際チームが、テレコム帯の半導体量子ドットが放つオンデマンド単一光子と時間ビン符号化を用い、120km超の光ファイバーで安定した量子鍵配送(QKD)を実証。6時間以上の連続運転を実現し、固体単一光子源を使う実用的な量子通信網への一歩となりました(Light: Science & Applications 掲載)。

記事を読む 出典:ScienceDaily
2026年4月
レーザー顕微鏡2026年4月

超広視野・深部対応の2光子顕微鏡「ULTRA」で脳を多階層イメージング

研究チームが、50mm²を超える超広視野で単一細胞分解能を保つ最先端の2光子顕微鏡「ULTRA」を開発。補償光学を組み込み、表層から深さ900μmまで、横方向7mm超・体積45.24mm³にわたってマウス脳の構造と神経活動を生きたまま可視化しました。広く離れた複数の脳領域を高分解能で同時に観察でき、大規模な神経回路の包括的な解析に向けた強力なツールとなります(Light: Science & Applications 掲載)。

記事を読む出典:Light: Science & Applications
関連論文要約:細胞内部の神秘を解き明かす超短パルスレーザーによる新たな多光子イメージング技術

28フェムト秒の超短パルスで、2光子・3光子・高調波の像を同時に取得する多光子顕微鏡の研究です。

レーザー顕微鏡2026年4月

AIで超解像SIMをリアルタイム化「UBSIM」

米UCサンディエゴ校が、構造化照明顕微鏡(SIM)の画像再構成にAI(アルゴリズム・アンローリング)を組み込んだ「UBSIM」を開発。物理モデルに基づくため偽構造(ハルシネーション)を抑えつつ、生細胞を最大50フレーム/秒の超解像動画で観察できます(Nature Communications 掲載)。

記事を読む 出典:AIwire(UC San Diego)
量子光学2026年4月

異なる量子ドット間で270mの光子テレポーテーション

独パーダーボルン大とローマ・サピエンツァ大などの国際チームが、別々の量子ドットが放つ単一光子の偏光状態を、270mの自由空間リンク越しにテレポーテーションすることに初成功。忠実度は82%に達し、量子中継器を介した実用的な量子インターネットへの重要な一歩です(Nature Communications 掲載)。

記事を読む 出典:ScienceDaily
光学素子2026年4月

可視メタレンズを「毎秒300個」量産する製造法

韓国・成均館大などのグループが、ロールtoロールのナノインプリントと二酸化チタンの共形コーティングを組み合わせ、可視光メタレンズを毎秒300個・全長200mのアレイとして連続量産する技術を実証。従来レンズ並みかそれ以下のコストで、フラット光学の本格的な商用化に道を開きました(Nature 掲載)。

記事を読む 出典:Nature
その他2026年4月

原子層材料の微小共振器で光を数百万サイクル閉じ込め

フィンランド・アールト大などが、壊れやすいファンデルワールス材料をアルミ薄膜で保護してナノ加工する手法を考案し、超平滑な微小ディスク共振器を作製。Q値100万超(損失は1サイクルあたり約100万分の1)を達成し、従来比3桁の性能向上と1万倍の波長変換効率を実現。オンチップの量子光源やセンサーへの応用が見込まれます(Nature Materials 掲載)。

記事を読む 出典:Aalto University
2026年3月
レーザー顕微鏡2026年3月

無標識で生細胞を観る「干渉散乱×画像走査」顕微鏡

米スタンフォード大(W.E. Moerner らのグループ)が、干渉散乱顕微鏡とアレイ検出器型の画像走査法を組み合わせた新顕微鏡「iISM」を開発。蛍光標識なしで約120nmという高分解能を実現し、低照射パワーで生細胞を長時間ダメージ少なく観察できます(Light: Science & Applications 掲載)。

記事を読む 出典:Stanford Report
2026年2月
レーザー分光2026年2月

放物面鏡キャビティ増強ラマンで微量ガスを高感度検出

放物面鏡とマルチパスセルを組み合わせ、励起強度とラマン散乱の収集効率をともに高める「放物面鏡キャビティ増強ラマン分光(PM-CERS)」を提案。従来のマルチパスセルに比べ信号強度・S/Nを数倍に高め、空気中の窒素・酸素・水蒸気・CO₂などをppmレベルで短時間に検出できます。

記事を読む 出典:phys.org
レーザー分光2026年

コンパクトなテラヘルツ・デュアルコム分光

全デジタルで生成した適応クロックを用いる小型テラヘルツ・デュアルコム分光システムが報告されました。超安定レーザーを必要とせず、1.6THz帯で2万本超のコム線を分解。高安定なサンプリングにより、テラヘルツ領域での精密計測の実用化に近づく成果です(Advanced Physics Research 掲載)。

記事を読む 出典:Advanced Physics Research

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