複屈折誘起位相遅延により散乱媒質中でのブリルアン力学イメージングを実現

Antonacci, G., Vanna, R., Ventura, M., Schiavone, M.L., Sobacchi, C., Behrouzitabar, M., Polli, D., Manzoni, C. & Cerullo, G. “Birefringence-induced phase delay enables Brillouin mechanical imaging in turbid media.” Nature Communications 15, 5202 (2024). https://doi.org/10.1038/s41467-024-49419-2

背景

 生体の力学的特性は、がんの浸潤や眼疾患、神経変性疾患、骨疾患など多様な生体機能や病態と密接に関連しており、その非侵襲的な評価手法の開発が求められている。物質中の自発的な音響振動(音響フォノン)と光の非弾性散乱を利用して粘弾性特性を光学的に計測する手法であるブリルアン顕微鏡は、非接触・無標識で細胞以下の空間分解能を有する三次元力学イメージング技術として近年急速に研究が進められている。本手法は眼科や循環器、がん診断など幅広い臨床応用が期待されており、生体力学研究において重要な役割を担っている。

従来の問題点

 しかし、不透明な散乱性の高い生体試料では、レイリー散乱やフレネル反射に起因する弾性背景光がブリルアン散乱光より百万倍以上強く、信号検出が極めて困難であるという問題点がある。従来の多段VIPA(Virtually Imaged Phased Array)分光器やルビジウムガスセルなどの背景光除去手法は、複数の光学経路を必要とし装置の安定性や透過率を低下させるか、使用波長が限定されるなどの制約があった。

解決方法と結果

 そこで、本研究では複屈折誘起位相遅延(BIPD)フィルタを導入することにより、この課題を解決した。バナジン酸イットリウム結晶の複屈折性を利用してブリルアンとレイリー信号の偏光状態を分離し、単一光路・単一通過で65 dBの消光比を達成した。光源にはCobolt社製単一縦モード660nmレーザーを励起光として使用した。本手法により、純牛乳中や高反射界面など極めて散乱の強い環境下でブリルアン信号の取得に成功し、さらに大理石骨病モデルマウスの椎骨組織において、健常対照と比較して有意に高い周波数シフトおよび線幅を示す力学特性の変化を明らかにした。

※この要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいており、査読前論文です。

使用された660 nmレーザー

660nmレーザー
660nmレーザー

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