プログラム可能な線形フォトニック回路におけるフォック状態量子光のコヒーレント吸収の模擬

Krishna, G., Gao, J., O’Brien, S., Yadgirkar, R., Deenadayalan, V., Preble, S., Zwiller, V., Elshaari, A.W. “Emulation of coherent absorption of Fock-state quantum light in a programmable linear photonic circuit.” Nature Communications 2026, 17, 4211. https://doi.org/10.1038/s41467-026-72850-6

背景

 量子フォトニクスでは、光の状態の時間発展は通常、光子数を保つ可逆的なユニタリ変換で記述され、多port干渉計によって実装される。これを光子数の保たれない不可逆な過程へ拡張したものが非ユニタリ変換であり、損失や測定の反作用といった開放系の現象を記述する。線形光学をこの領域へ拡張すると、散逸やデコヒーレンス、一般化測定の模擬が可能になることから、非ユニタリ変換は近年重要性を増している。その代表例がコヒーレント完全吸収(CPA)であり、これは損失媒質が両側から入射する光を、媒質自体のみならず入力光の相対位相に応じて部分的あるいは完全に吸収する現象である。CPAは任意の光子数を持つフォック状態へ拡張でき、単一光子では決定論的な吸収・透過が、二光子NOON状態では線形媒質中でも非線形的な振る舞いが生じ、状態選択的なろ過や光子相関の操作を可能にする。

従来の問題点

 しかし、従来の量子CPA実験は再構成不可能な固定素子に依存しており、吸収体の媒介変数が固定で動作点が限られ、入力位相の制御に可動部を要したため、安定性や調整速度に制約があるという問題があった。

解決方法と結果

 そこで本研究では、量子コヒーレント吸収をプログラム可能な集積フォトニック回路上で模擬し、これらを解決した。損失ビームスプリッタ変換を準ユニタリ分解法により補助モードを介して8モードのClements型万能干渉計へ埋め込み、CPAの全媒介変数を可変とした。単一光子状態では完全透過と完全吸収の位相制御による連続調整を、二光子NOON状態では決定論的単一光子吸収と確率論的二光子吸収の切替を観測し、反凝集や束化といった非古典効果も確認した。古典Fisher情報は単一光子で1、NOON状態で3.4に達し、ショットノイズ限界2を超えハイゼンベルク限界4に迫った。なお光子対を生成する自然パラメトリック下方変換(SPDC)光源の励起光には、Cobolt社製の連続波ダイオードレーザー(785nm、70mW)が用いられた。

※この要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。

【用語解説】

  • NOON状態: N個の光子が2つのモードのいずれか一方に全て存在する状態の重ね合わせ。位相に対する感度が古典的な光より高く、量子計測において精度向上に有利となる。
  • コヒーレント完全吸収(CPA): 損失媒質に両側から入射する光が、その相対位相に依存して完全に吸収される現象。レーザー発振の時間反転過程とみなせる。
  • Fisher情報: 出力の確率分布が入力位相の微小変化に対してどれだけ敏感かを表す量。値が大きいほど、与えられた測定で達成できる位相推定の精度(Cramér-Rao限界)が高いことを意味する。

分光に使用された785nmレーザー

785nmレーザー
785nmレーザー

その他の論文要約はCobolt論文検索ページをご覧ください。

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