中赤外光音響信号の時間ゲーティングによる非侵襲的血糖値測定

Uluç, N., Glasl, S., Gasparin, F., Yuan, T., He, H., Jüstel, D., Pleitez, M.A. & Ntziachristos, V. “Non-invasive measurements of blood glucose levels by time-gating mid-infrared optoacoustic signals.” Nature Metabolism 6, 678–686 (2024). https://doi.org/10.1038/s42255-024-01016-9

背景

 糖尿病管理において、血糖値の正確な測定は極めて重要である。現在普及している持続血糖モニタリング装置は、皮下に埋め込んだ微小針電極で間質液中の糖濃度を測定する方式であり、指先穿刺に代わる手法として広く利用されている。光音響法は、パルス光照射により試料が吸収した光エネルギーを熱膨張に伴う超音波として検出する技術であり、中赤外領域では糖の分子振動に由来する特異的な吸収帯を利用できるため、高感度な糖検出が期待される。中赤外光音響法は超音波検出を用いるため、従来の光学検出法より深部からの信号取得が可能である。

従来の問題点

 しかし、間質液中の糖濃度は血中濃度より低く、血糖変動に対して時間遅れを伴うため、臨床的に重要な血糖動態を正確に反映できない。また、代謝活性を持たない角質層や表皮からの非特異的な光吸収が糖測定を妨害し、皮膚の湿度や脂質などの変動も測定精度を低下させる要因となっている。

解決方法と結果

 そこで、本研究では深度ゲート型中赤外光音響センサ(DIROS)を開発し、光音響信号の時間ゲーティングにより皮膚深部の毛細血管に富む領域を選択的に測定することで、上記の問題を解決した。マウス耳部での糖負荷試験において、血管豊富な領域から約97.5 μmの深度で信号を取得し、表皮由来の干渉を排除した結果、間質液測定と比較して測定精度が約2倍向上した。Cobolt社製532 nm波長レーザーは、皮膚微小血管の三次元分布を可視化し、血管豊富な測定位置を特定するための解剖学的参照画像の取得に使用された。

その他の論文要約はCobolt論文検索ページをご覧ください。

可視化に使用された532nmレーザー

532nmパルスレーザー
532nmパルスレーザー

532nmレーザーは血管構造の検証や深度の確認に使用された。