Morganti, D.; Longo, V.; Leonardi, A.A.; Irrera, A.; Colombo, P.; Fazio, B. “First Vibrational Fingerprint of Parietaria judaica Protein via Surface-Enhanced Raman Spectroscopy.” Biosensors 2025, 15, 182. https://doi.org/10.3390/bios15030182
花粉由来のアレルゲン蛋白質の分子レベルでの同定と特性評価は、アレルギー反応を引き起こす特定の蛋白質構造の解明や、精密な診断法・個別化ワクチンの開発において極めて重要であり、近年活発に研究が進められている。地中海地域において主要なアレルゲン源であるParietaria judaica(和名:ヒメミズナ)の花粉は、鼻炎や喘息など重篤な呼吸器症状を引き起こすことが知られている。この花粉に含まれる主要アレルゲンPar j 1およびPar j 2は非特異的脂質輸送蛋白質に、副次的アレルゲンPar j 4はカルシウム結合蛋白質にそれぞれ分類される。分子の構造や官能基の振動状態を非標識で解析できる手法として、試料に単色光を照射し散乱光の振動数変化から分子の振動状態を調べるラマン分光法が広く用いられている。さらに、貴金属ナノ構造体の局在表面プラズモン共鳴を利用して信号を大幅に増強する表面増強ラマン散乱(SERS)は、微量分子の高感度検出を可能とする強力な分析手法として注目されている。
しかし、通常のラマン分光法では信号強度が弱く、微量の蛋白質試料の検出が困難であるという問題がある。実際に蛋白質溶液のラマン測定では水の信号に埋もれて蛋白質由来の振動信号が検出限界以下となり、基板上で乾燥・濃縮させても緩衝液由来の信号との重複により、三種のアレルゲンを識別するための重要な振動モードの判別が困難であった。
そこで、本研究では金属補助化学エッチング法により作製した銀樹枝状ナノ構造体をSERS基板として用い、Par j 1、Par j 2、Par j 4の三種の組換えアレルゲン蛋白質の振動指紋を文献上初めて取得した。励起光源として波長473 nmのCobolt社製固体レーザー発振器を用い、ラマン測定では5 mW、SERS測定では45 µWの出力で各蛋白質の振動スペクトルを取得した。銀樹枝状構造体は含水環境下でも生体分子を微小空洞内に保持し、10⁶を超える増強係数により、各蛋白質のアミノ酸組成の違いに対応した詳細な振動モードの識別を実現した。特にPar j 1とPar j 2間ではリシン由来信号強度の差異、Par j 4との間ではシステイン由来のジスルフィド結合信号の有無により、明確な識別が可能となった。
※この要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。
伝導率測定に使用された473nmレーザー
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