Muszyński, M., Bobylev, D., Kapuściński, P., Oliwa, P., Mędrzycka, J., Oton, E., Mazur, R., Morawiak, P., Piecek, W., Kula, P., Solnyshkov, D., Malpuech, G., Szczytko, J. “Ground-state orbital angular momentum lasing from liquid crystal torons embedded in a microcavity.” Science Advances 12, eaeb6167 (2026). https://doi.org/10.1126/sciadv.aeb6167
電磁波中で位相が特異点をなす光渦は、量子化された軌道角運動量(OAM)を運ぶことから、光通信や光操作への応用として近年盛んに研究されている。OAMを持つ渦ビームは通常、常光波動方程式の基底状態ではない解であり、方位角φに対する位相因子 eilφ(整数lはトポロジカルチャージ)で表され、1光子あたり ℏl のOAMを運ぶ。光を微小空間に閉じ込める光共振器(マイクロキャビティ)に自己組織的な液晶の配向欠陥を封じ込めると、光の偏光と空間分布が結び付いたスピン軌道結合状態が階段状の準位として現れる。とりわけキラル液晶中に自発形成される軸対称な欠陥構造はトロンと呼ばれる。
しかし、こうした系では最低エネルギーの基底状態を渦の無い状態が占め、OAMを持つ渦状態は励起状態に限られるため、基底状態から直接OAMレーザー発振を得ることは難しいという問題があった。
そこで、本研究では色素をドープしたマイクロキャビティにキラル液晶トロンを自己組織的に埋め込むことで、状態の順序を反転させ、基底状態そのものが光渦を持つ系を実現した。レーザー発振で観測されるフォーク状の干渉縞により、基底状態がOAMを担うことを確認した。さらに、空間的に変化する液晶の複屈折が実空間の非可換ゲージ場として働いて状態順序の反転(トポロジカル転移)を引き起こすことを、偏光を結合する位置依存項を含む有効シュレディンガー方程式に基づく理論模型で説明した。Cobolt社製のQスイッチ半導体励起固体レーザー(Tor XS、中心波長532 nm、パルス幅2 ns)は、キャビティ内の色素を励起してレーザー発振・発光を生じさせる励起光源として用いられた。
※この要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。
【用語解説】
- 軌道角運動量(OAM):光ビームがらせん状の波面をもつときに運ぶ、伝搬方向まわりの回転的な運動量。1光子あたり ℏl(lは整数)で量子化され、渦ビームの識別や情報の多重化に利用される。
- トロン(toron):キラル液晶中に自己組織的に形成される、軸対称で局在したトポロジカルな配向欠陥構造。安定に存在し、光渦の発生源となりうる。
- 非可換ゲージ場:作用の順序を入れ替えると結果が変わる(非可換な)内部自由度に働く場。本研究では、液晶の空間的に変化する複屈折が光の偏光自由度に対してこの役割を果たし、状態順序の反転を導く。
キャビティ内色素の励起に使用された532 nmパルスレーザー
関連する最新ニュース
特別な素材なしで光を「ねじる」——自由空間で生まれるキラル光(英UEA/南ア Wits)
