Torun, C.G., Gökçe, M., Bracht, T.K., Isaza Monsalve, M., Benbouabdellah, S., Nacitarhan, Ö.O., Stucki, M.E., Bermeo Alvaro, D., Markham, M.L., Pregnolato, T., Munns, J.H.D., Pieplow, G., Reiter, D.E., Schröder, T. “SUPER and femtosecond spin-conserving coherent excitation of a tin-vacancy color center in diamond.” Nature Communications 2026, 17, 2154. https://doi.org/10.1038/s41467-026-69911-1
単一光子を決定論的かつコヒーレントに生成することは、量子ネットワークや光量子計算といった量子技術応用の中核要素である。この目的に向け、ダイヤモンド中の負電荷スズ空孔カラーセンター(SnV、ダイヤモンド格子中の炭素原子位置にスズ原子と空孔が形成する発光中心)が近年注目を集めている。SnVは、スペクトル拡散に対する一次の耐性を有し、他の第IV族カラーセンターと比べて高温でも長いコヒーレンス時間を保つという優れた特性をもつことから、量子メモリやコヒーレント単一光子生成など多様な応用が実証されてきた。スピンと光子を結びつけるスピン光子インターフェースの構築においては、光学活性なスピン系をコヒーレントに励起することが鍵となる。共鳴励起は励起状態を効果的に準備できる手法であり、また半導体量子ドットを対象に、二色位相同期励起やSUPER(量子発光体集団のスイングアップ励起)方式といった非共鳴コヒーレント方式も提案・実証されてきた。
しかし、共鳴励起では励起光と放出光子が同じ搬送周波数をもつため、スペクトルフィルタリングによる分離ができず、偏光・時間・空間領域での分離法は固体量子系では損失や複雑な光構造を要するという問題点がある。また、これまでの非共鳴方式は二準位系のみを対象とし、スピン自由度を考慮しておらず、さらに光学特性は優れるが電子スピン特性に劣る半導体量子ドットでのみ実現されていたという問題点がある。
そこで本研究では、ミリ秒のコヒーレンス時間をもつSnVに対し、二つの赤方離調パルス対を用いるSUPER方式を適用し、群IV族欠陥のスピン多様体を含む拡張モデルにより、SUPERパルスがスピンの準備・制御・読み出しと両立することを理論的・実験的に示した。実験では308 GHz離調で55%の反転を達成し、シミュレーションと良好に一致、出力増強により99.8%の反転忠実度が可能と結論した。さらにフェムト秒共鳴パルスでGHz級の超高速ラビ振動を実証し、SUPERパルスがスピン混合を誘起しないことを確認した上で、周波数基底符号化によるスピン間もつれ生成方式を提案した。なお、Cobolt社製の445nmレーザーは、測定シーケンスにおいて発光中心の電荷状態初期化(SnVを明状態に準備)の目的で使用された。
※この要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。
論文で使用されたCoboltのレーザー
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