分散素子を組み込んだ画像走査顕微鏡による多色同時の高分解能撮像

Bram, L., Tal-Friedman, O., Fibeesh, N., Deek, J., Bar-Sinai, Y., Flaxer, E., Roichman, Y., Ebenstein, Y., Jeffet, J. “A Dispersive Image Scanning Microscope for Multi-color High-resolution Imaging.” ACS Photonics 2026, 13, 3796–3807. https://doi.org/10.1021/acsphotonics.5c02836

背景

 細胞内の分子の働きを捉えるには、光学顕微鏡の回折限界である約 250 nm を超える分解能が必要である。集光した励起光で試料を走査し、多画素の検出器で蛍光を捉える画像走査顕微鏡(ISM)は、各画素を微小な絞りとして働かせ、得た信号を励起点の中心へ半分戻す「画素再配置」により点像分布関数を細め、共焦点顕微鏡の2倍の横方向分解能を与える。数百の微小穴と微小レンズを刻んだ2枚の回転円板で多数の焦点を同時に走査する共焦点回転円板(CSD)と組み合わせれば取得速度は約100倍に高まる。蛍光観察では色の情報も分解能と同じく重要である。

従来の問題点

 しかし、CSDを用いたISMで多色像を得る従来法は、色ごとに濾光器を替えて順に撮る方式であり、1色あたり数百枚を要するため取得時間が大きく延びる問題点がある。撮影の時刻が色ごとにずれるため、時空間的な偽像も生じる。視野を分けて同時記録する方式は視野が狭まり、光を大きく分散させる分光方式は各点像が広い画素領域へ広がるため、実効的な視野と処理量が制限される。

結果

 そこで、本研究では検出光路に自作の直線アミチプリズムを挿入することによって解決した。回転円板が作る疎らな輝点の配列は輝点の周囲に余白があり、そこへ蛍光の波長成分を短く分散させれば、1回の取得で全ての色情報を同時に符号化できる。円板の回転と閃光励起の同期は、安価な数値信号処理器で行った。Cobolt社製の 561 nm レーザー(Jive)と 638 nm 半導体レーザー(06-MLD)は、音響光学可変濾光器を備えた光源結合器に組み込まれ、試料面で 0.22 mW と 0.5 mW の弱い励起光として蛍光色素を励起する目的で使用された。3色の蛍光微粒子では、従来3回必要だった取得を1回に短縮しつつ1.74倍の分解能向上と正確な色の判別を達成し、神経細胞では1回250枚の取得で4種の標識を同時に撮像できた。

※本記事は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)を、独自の構成で再構成した日本語要約です。

【用語解説】

  • アミチプリズム:屈折率と分散の異なる硝材を貼り合わせた分散素子。ある基準波長の光はまっすぐ通し、他の波長を波長に応じて曲げる。本研究では波長と像面上の位置がほぼ比例するよう設計され、検出光路で蛍光を短い距離だけ分散させる役割を担う。
  • 点像分布関数:点状の光源が光学系を通ったときに像面へ広がる強度分布。その幅が分解能を決め、狭いほど細かい構造を見分けられる。画素再配置はこの幅を実効的に半分にする。
  • 音響光学可変濾光器:結晶に超音波を加えて生じた屈折率の周期構造で光を回折させ、通す波長と強度を電気的に高速で選ぶ素子。複数のレーザーを1本に束ねた光源で、波長ごとの出力を切り替えるのに使う。

多色蛍光観察に使用された561 nm・638 nmレーザー

Cobolt 561nmレーザー
561nmレーザー
Cobolt 638nmレーザー
638nmレーザー