785 nmカスタムラマン分光器と機械学習を用いた14種農薬の包括的ラマン指紋解析および分類

Yüce, M.; Öncer, N.; Çınar, C.D.; Günaydın, B.N.; Akçora, Z.İ.; Kurt, H. “Comprehensive Raman Fingerprinting and Machine Learning-Based Classification of 14 Pesticides Using a 785 nm Custom Raman Instrument.” Biosensors 2025, 15, 168. https://doi.org/10.3390/bios15030168

背景

 農薬(殺虫剤・除草剤・殺菌剤)は現代農業において作物を病害虫から守る上で重要な役割を担っており、食品安全・環境保護の観点から残留農薬の迅速かつ正確な検出技術の開発が強く求められている。ラマン分光法とは、分子に光を照射した際に生じる非弾性散乱(ラマン効果)を利用して、分子の振動・回転状態を反映した固有のスペクトル(指紋)を非破壊・ラベルフリーで取得できる分析手法であり、農薬検出をはじめ環境モニタリングや臨床診断など幅広い分野で応用が進んでいる。近年では、主成分分析(PCA)や階層型クラスター解析(HCA)、ランダムフォレストなどの機械学習手法との組み合わせにより、複雑なスペクトルデータからの自動分類・識別が可能となり、専門知識を持たない利用者にも扱いやすい検出システムの実現が期待されている。

従来の問題点

 しかし、既存のラマン分光を用いた農薬検出研究では、対象農薬の種類が少数に限られており、得られたデータは文献間や測定者間で再現性に乏しく、特定用途への応用に適した信頼性の高いスペクトルデータベースが整備されていないという問題点がある。また、532 nmなど短波長の励起光を用いた場合、試料由来の蛍光がラマンピークを覆い隠し、スペクトルの解析精度を低下させるという課題も指摘されていた。

解決方法と結果

 そこで本研究では、蛍光干渉を低減できる785 nmの励起波長を採用した自作ラマン分光装置を構築し、14種の農薬標準試料に対して各試料20回以上の繰り返し測定を実施することで、400〜1700 cm⁻¹の範囲における包括的なラマン指紋ライブラリを世界で初めて構築した。励起光源には、広い波長域・低ノイズ・高出力を特長とするCobolt社製785 nmレーザー(Cobolt 08-NLD、最大出力400 mW)が使用され、農薬粉末試料へのラマン励起およびシリコン基板上の食品抽出物の計測(200 mW)に用いられた。PCAおよびHCAにより14種農薬は4つのクラスターに分類され、ランダムフォレスト分類器では精度・適合率・F1スコア・感度がいずれも100%を達成した。さらに、キュウリ・ピーマン・小麦粉に農薬をスパイクした実試料においても10 µM濃度での検出と正確な分類に成功し、構築したシステムの実用性が実証された。

※本要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。

論文で使用されたラマン分光用785nmレーザー

785nmレーザー
785nmレーザー

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