発光寿命計測を統合した選択平面照明顕微鏡による三次元細胞培養内の酸素の可視化

Välimäki, H., Belay, B., Kuusinen, S., Pöppönen, P., Montonen, T., Kulmala, L., Valtonen, J., Pekkanen-Mattila, M., Aalto-Setälä, K., Hyttinen, J., Kallio, P. “Luminescence lifetime imaging integrated into selective plane illumination microscopy for oxygen imaging in 3D cell cultures.” Biomedical Optics Express 2026, 17, 3680. https://doi.org/10.1364/boe.593015

背景

 生体組織を正確に模倣する三次元細胞培養は、創薬評価や病態の再現において二次元培養より有用であることから、研究基盤として急速に広がっている。立体組織では内部への酸素供給が課題となり、組織各部の酸素分圧を実時間で立体的に把握する計測技術が求められる。発光体が光を出し続ける時間(寿命)を画像化する発光寿命計測は、信号強度の変動に左右されにくく、酸素濃度を定量する手法として有力である。また、試料を薄い光の面で順に照らす選択平面照明顕微鏡は、退色や光毒性を抑えつつ高速に立体像を得られる点で、生きた立体試料の観察に適している。

従来の問題点

 しかし、共焦点顕微鏡や多光子顕微鏡による立体観察は、時間分解能や退色、光毒性に制約がある。さらに、選択平面照明と、励起光を連続的に変調して位相差から寿命を求める周波数領域の発光寿命計測とを組み合わせた立体的な酸素の可視化は、これまで報告がなかった。

結果

 そこで、本研究では選択平面照明と周波数領域の発光寿命計測(pco.flimカメラ)を統合した計測系を構築することで、この課題を解決した。市販の酸素感受性微小球で寿命較正を行い、ヒトiPSC由来の心筋組織および細胞凝集体の内部酸素分圧を立体的に地図化し、拡散反応モデルから平均酸素消費速度と細胞数まで推定した。励起光源にはCobolt社製の505 nm半導体レーザー(06-MLD)を用い、これを5 kHzで正弦波状に変調してりん光酸素指示薬を励起し、円筒レンズで薄い光の面を生成する役割を担わせた。

※本記事は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)を、独自の構成(背景・従来の問題点・結果)で再構成した日本語要約です。

【用語解説】

  • 選択平面照明顕微鏡(SPIM):試料を薄い光の面で横から照らし、その面だけを一度に撮像する顕微鏡。点で走査する方式より退色や光毒性が少なく、立体試料を高速に観察できる。
  • 発光寿命計測(りん光寿命イメージング):発光体が光を出し続ける時間を画素ごとに測る手法。この寿命は酸素などの周囲環境で変化する一方、光の強さの揺らぎには影響されにくい。
  • シュテルン・フォルマー式:発光の寿命や強さが、消光物質(ここでは酸素)の濃度によってどれだけ短くなるかを表す関係式。酸素分圧の定量に用いる。

酸素指示薬の励起に使用された505 nmレーザー

Cobolt 505nmレーザー
505nmレーザー