Cabillic, M., Forriere, H., Bettarel, L., Butler, C., Neuhaus, A., Idrissi, I., Sambrano-Lopez, M.E., Rossbroich, J., Müller, L.-R., Ries, J., Grenci, G., Viasnoff, V., Levet, F., Sibarita, J.-B., Galland, R. “In-depth single molecule localization microscopy using adaptive optics and single objective light-sheet microscopy.” Nature Communications 2025, 16, 8362. https://doi.org/10.1038/s41467-025-62198-8
1分子局在顕微鏡(SMLM)は、蛍光分子を1個ずつ疎らに発光させて位置を精密に求め、その積算から回折限界を超えた像を得る手法であり、細胞内のタンパク質の配置を数十nmの精度で捉えられることから広く用いられている。点像分布関数(PSF)に非点収差を与えれば、深さ方向の位置も同時に読み取れる。厚い試料には、薄い光の層だけで試料を照らして背景光を抑えるライトシート照明が適しており、45°ミラーを備えた微細加工デバイスを用いることで、高開口数の対物レンズ1本が照明と検出を兼ねるsoSPIMという構成が実現されている。
しかし、SMLMで一般的なTIRFやHILO照明はカバーガラス近傍しか観察できず、細胞全体や深部を扱えない。体積を面ごとに逐次取得すると数時間以上を要し、その間の機械的なずれ(ドリフト)を実時間で補正する必要があるが、各深さに基準となる目印を置くことは容易でない。またカバーガラスから10 µm以上離れると光学収差が増え、収差に敏感な非点収差方式では3次元の局在精度が落ちる。
そこで本研究では、微細加工デバイスのマイクロウェルを囲む屈折率整合ポリマーに蛍光ナノダイヤモンドを一様に埋め込み、全深さにわたる基準点光源として使うsoSMARt法により解決した。用いたのはAdamas Nanotechnologies社製の直径100 nmのNV中心蛍光ナノダイヤモンド(NDNV100nmMd10ml)で、褪色せず明るいため、紫外線硬化を伴う作製工程と長時間測定に耐える目印として選ばれ、ポリマーへ1:20で混合し1面あたり約19個の密度で分散させた。この点光源を指標に変形鏡で収差を自動補正し、専用ソフトSMARtrackで3軸ピエゾに実時間の帰還をかけ、軸方向12.9 nm・横方向6.4 nmの精度でドリフトを抑えた。カバーガラスから14 µm上の細胞核膜を測定して膜厚を横79 nm・軸183 nmと決定し、細胞1個の体積全体で横7.0 nm・軸40.5 nmの分解能を達成した。深層学習を用いた高密度解析の併用で測定時間を約1桁短縮し、直径100 µmの細胞集合体にも適用した。
※本記事は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)を、独自の構成で再構成した日本語要約です。
【用語解説】
- soSPIM(単一対物ライトシート顕微鏡):試料を入れる微細な井戸の側面に45°の反射鏡を作り込み、対物レンズ1本から入れた光をその鏡で折り曲げて薄い光の層(ライトシート)を作る方式。照明と検出を同じ高開口数レンズで行える。
- 補償光学(変形光学素子):試料や媒質によって乱れた光の波面を、面形状を変えられる鏡で逆向きに歪ませて打ち消し、像の鋭さを回復させる技術。天体観測から顕微鏡へ応用された。
- フィデューシャルマーカー(基準マーカー):視野内に固定して置く明るい点状の目印。像の位置ずれ量を測る基準になり、装置のドリフト補正や複数画像の重ね合わせに使う。
