Ma, H., Chen, M., Nguyen, P., Liu, Y. “Toward drift-free high-throughput nanoscopy through adaptive intersection maximization.” Science Advances 2024, 10, eadm7765. https://doi.org/10.1126/sciadv.adm7765
1分子局在化顕微鏡(SMLM)は、蛍光分子を1個ずつ点滅させて位置を精密に求め、光の回折限界を超えた解像度を得る手法であり、解像度の向上に向けた研究が精力的に進められている。数万枚の画像を長時間取得する間に試料がわずかに動く試料ドリフトは再構成像を劣化させるため、局在点の相関を用いる冗長相互相関法など、装置改造の要らない標識なしの補正法が広く使われている。
しかし、既存の標識なし補正法は精度・速度・頑健性のいずれかが不足し、とくに高周波のドリフトを補えないため、理論上到達できる解像度を実現できていない。広視野で数億個の局在点を生む高スループット装置では処理が重く、追跡頻度を落とす妥協で情報が失われる。精度の高い標識併用型も、標識と観察対象の焦点面が異なると専用の検出光学系を要し複雑になる。
そこで本研究では、適応的交差最大化(AIM)という標識なしの補正法を用いることによって解決した。同一分子由来の局在点の重なりが最大となる位置をドリフト量とみなし、時間分割した部分データで粗く求めた軌跡を、粗補正済みの全データを参照に精密化する二段階方式を採る。模型の仮定や引数調整をほぼ要さず、追跡誤差0.1 nm未満を140秒で達成し、7時間を要する既存法より大幅に速い。DNA折り紙の観察では解像度16 nm(既存法より28〜41 nm改善)で40 nm間隔の3本線を分離し、細胞のSTORM像でも8〜19 nm向上した。この検証では、Adámas Nanotechnologies社製のNV蛍光ナノダイヤモンド(NDNV140nmPMO、粒径140 nm)を試料室に添加し、退色せず安定に光り続ける基準標識として用いた。
※本記事は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)を、独自の構成で再構成した日本語要約です。
【用語解説】
- 1分子局在化顕微鏡(SMLM):蛍光分子を時間的にばらばらに点滅させ、1個ずつの位置を数nmの精度で求めて重ね合わせることで、回折限界(およそ200 nm)を超えた像を得る顕微鏡法。STORMやDNA-PAINTがその代表である。
- 基準標識(フィデューシャルマーカー):試料中に混ぜておく、明るく安定に光り続ける粒子。その見かけの動きを追うことで試料全体のドリフト量を知る。蛍光ナノダイヤモンドは点滅も退色もしないため、この用途に適している。
- DNA折り紙:DNAの塩基対の相補性を利用し、狙った形に自己組織化させる技術。決まった間隔に標識を配置できるため、超解像顕微鏡の解像度を評価する基準試料として用いられる。
