Schardt, J., Paulsen, M., Abshari, F., Gerken, M. “Resonant laser excitation for nanoscale photocatalytic gold growth on patterned templates.” Scientific Reports 2026, 16, 2592. https://doi.org/10.1038/s41598-026-36556-5
金属の細線を局所的に形成する技術は、センサや光電子素子、脳の情報処理を模した神経模倣計算の発展に欠かせない。前駆体の溶液から光を当てた場所だけに金属を析出させる光触媒的成長は、化学的に溶かして元へ戻せる可逆的な手法として注目され、光触媒活性に優れた二酸化チタン表面での金の成長がよく調べられている。一方、高屈折率の薄膜に周期的な溝を刻んだナノ格子へ斜めから光を入れると、特定の波長と入射角で光が薄膜内の導波モードへ結合し、格子付近の電場が強まる導波モード共鳴が生じる。共鳴条件は格子周期と入射角で調整できる。
しかし、従来の光触媒的成長は、遮光マスクで照射領域を制限するか二酸化チタン自体を微細加工して場所を決めており、外部からの光刺激に応じて成長位置を変える柔軟さに乏しい問題点がある。また二酸化チタンはそれ自体が光触媒活性をもつため、共鳴を伴わない照射では金の粒子が表面全体に散らばる問題点がある。
そこで、本研究では二酸化チタンにナノ格子を刻んだ光学テンプレートを作製し、導波モード共鳴が生じる入射角で単色レーザーを照射することによって解決した。まず発光層を載せた試料で格子周期に応じた発光増強を確かめ、繰り返し数の少ない六方格子では共鳴が鈍る代わりに結合する周期の範囲が広がることを示した。次に発光層を除き、塩化金酸の溶液を満たした流路内で2時間照射したところ、共鳴条件では金の細線が密に形成され、非共鳴では粒子が散在するにとどまった。周期170nmの格子で最も強い細線形成が得られた。Cobolt社製の紫外レーザーZouk(355nm、10mW)は、金成長に適した励起波長をもつ単色光源として、この共鳴結合を起こすために用いられた。
※本記事は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)を、独自の構成(背景・従来の問題点・結果)で再構成した日本語要約です。
【用語解説】
- 導波モード共鳴:薄い高屈折率層に周期的な格子を設けると、特定の波長と入射角の光が層内を伝わる導波モードへ結合し、反射や透過が急峻に変化するとともに格子近傍の電場が強まる現象。
- 光触媒的な金成長:光を吸収した半導体の中に生じた電子が溶液中の金イオンを還元し、表面に金属の金を析出させる過程。光を当てた場所だけに金属を作れる。
- 神経模倣計算:神経細胞の結合が刺激に応じて強まったり失われたりする性質をまねて情報処理を行う計算方式。配線が固定された従来の回路とは異なり、素子の結合そのものが書き換わる。

