Alghamdi, A., Aldehaiman, M.M., Serag, M.F., Nozue, S., Ciocanaru, I.A., AbuZineh, K., Merzaban, J.S., Habuchi, S. “Combined TIRF and 3D Super-Resolution Microscopy for Nanoscopic Characterization of Adhesion Molecules on Microvilli.” Analytical Chemistry 98(23), 16898–16911 (2026). https://doi.org/10.1021/acs.analchem.5c08159
造血幹・前駆細胞や白血病細胞が血流に乗って特定の組織へ移動し定着する過程はホーミングと呼ばれ、幹細胞移植の成否や白血病の病態理解に直結することから、近年盛んに研究が進められている。この過程は、細胞表面にある接着分子(CD44やPSGL-1など)が血流のずり応力の下で段階的に相互作用することで制御される。細胞表面には微絨毛と呼ばれる微小な突起が多数あり、接着分子はその上に配置されて働くと考えられている。こうした数十ナノメートルの空間配置を観察する手段として、光の回折限界を超える分解能をもつ超解像顕微鏡が有力である。
しかし、細胞表面のナノスケール形態と接着分子の空間分布を同時に捉える観察技術がなく、微絨毛の上で接着分子がどのように配置され、ずり応力の下でどう再編成されるのかは不明のままであった。
そこで、本研究では微小流路と全反射蛍光顕微鏡、三次元単分子局在化顕微鏡を統合した超解像観察基盤を構築することによって解決した。ずり流動の下でその場固定した細胞について、表面形態を全反射蛍光像で再構成し、その上にCD44・PSGL-1・アクチンの三次元分布を約30ナノメートルの分解能で重ね合わせ、微絨毛上での明確な局在と細胞転動時の再編成を明らかにした。Cobolt社製の488 nmおよび640 nm連続波固体レーザー(各60 mW)は、この超解像蛍光観察において蛍光標識を励起する光源として用いられた。
※この要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。
【用語解説】
- ホーミング:血流中の細胞が特定の組織を認識して接着・移動し、そこへ定着する一連の過程。造血幹細胞が骨髄へ戻る現象などを指す。
- 全反射蛍光顕微鏡(TIRFM):試料と界面のごく薄い層だけを照らし、細胞表面の近傍のみを高い明暗比で観察する手法。背景光が抑えられ、表面形態を捉えやすい。
- 単分子局在化顕微鏡(SMLM):個々の蛍光分子を時間差で明滅させ、その中心位置を精密に推定することで、光の回折限界を超える分解能を得る超解像法。


