生体内光刺激・電気生理記録・微小流体送達のためのナノフォトニック神経プローブ

Mu, X., Chameh, H.M., Movahed, M., Chen, F.D., Straguzzi, J.N., Kumar, P., Stalmashonak, A., Wahn, H., Chua, H., Luo, X., Lo, G.Q., Poon, J.K.S., Valiante, T.A., Sacher, W.D. “Nanophotonic neural probes for in vivo photostimulation, electrophysiology, and microfluidic delivery.” Microsystems & Nanoengineering 2026, 12, 100. https://doi.org/10.1038/s41378-026-01192-6

背景

 脳機能の解明には、浅部から深部までの神経活動を精密に操作・計測する技術が求められている。中でも、光感受性タンパク質を神経細胞に発現させ、光でミリ秒精度に神経活動を制御するオプトジェネティクス(光遺伝学)は、細胞種を選んで神経回路を操作できることから、埋め込み型の神経プローブによる光照射・電気記録と組み合わせて近年急速に発展している。加えて、脳内の神経化学物質は生理・病態の両面で脳のふるまいを左右するため、微小流路を備えたプローブによる薬液の局所注入や神経化学物質の採取が、回路レベルの動態と分子シグナルを結びつける手段として注目されている。こうした光刺激・電気記録・薬液送達を1本のプローブに集約した多機能神経プローブは、光遺伝学的・神経化学的・薬理学的な統合的解析への有望な道筋となる。

従来の問題点

 しかし、シリコンプローブや光ファイバ型インプラントでは、これら三つの機能を細い1本のプローブに高密度で集積することが難しく、とりわけ光刺激では、単一光源からの光を多数の刺激点へ空間選択的に振り分け、各発光点を独立に制御する手段が限られるという問題がある。

結果

 そこで、本研究では可視光対応のシリコンフォトニクス基盤上に、導波路と回折格子カプラからなる多数の微小発光点、記録電極、微小流路を集積したナノフォトニック神経プローブを作製することで、これを解決した。光刺激の光源にはCobolt社製の488 nm半導体レーザーを用い、その光をMEMSミラーでマルチコアファイバの16本のコアへ選択的に結合させ、各コアがオンチップ導波路と回折格子カプラを介して目的の発光点を励起することで、任意の光刺激パターンを定義した。マウス生体内で光遺伝学的刺激と電気生理記録を同時に行い、さらに微小流路から4-APを注入して発作様活動を誘発できることを示し、多機能プローブとしての有効性を実証した。

※本記事は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)を、独自の構成で再構成した日本語要約です。

【用語解説】

  • オプトジェネティクス(光遺伝学):光感受性タンパク質を神経細胞に発現させ、光の照射でミリ秒単位の精度で神経活動を興奮・抑制させる手法。
  • 回折格子カプラ(グレーティングカプラ):導波路を伝わる光を回折によって外部へ取り出す(または取り込む)微小素子。本プローブでは脳内へ光を放つ各発光点として機能する。
  • 4-AP(4-アミノピリジン):カリウムチャネルを遮断して神経の興奮性を高め、発作様の神経活動を誘発する実験用試薬。

光遺伝学的光刺激に使用された488 nmレーザー

488nmレーザー