Fabre, C., Jatteau, M., Voudouris, P., Melfou, M., Motto-Ros, V., Guellour, S., Fernandes, J., Tarantola, A. “Multi-scale LIBS imaging of sulfosalts: From rapid mineral discrimination to high-resolution imaging of critical elements.” Spectrochimica Acta Part B: Atomic Spectroscopy 2026, 107658. https://doi.org/10.1016/j.sab.2026.107658
欧州では重要原料の需要が高まり、効率のよい鉱床探査法が求められている。硫塩鉱物は銅・アンチモン・砒素を主成分としながら、銀・インジウム・テルル・水銀などの重要元素を取り込む鉱物群で、熱水性鉱床の高品位資源である。その分析に向くのが、試料にパルス光を集光して微小な発光を起こし、発光線から元素を読み取るレーザー誘起発光分光法(LIBS)である。前処理が少なく、分解能を光学系で変えられる。
しかし、硫塩鉱物は連続的な固溶体をつくり主成分組成が似通うため、外観からも携帯型の蛍光X線分析からも端成分の判別が難しいという問題点がある。加えて蛍光X線は感度が足りず、銀などの微量元素を検出できない。従来の元素像の分解能は 10〜20 µm で、重要元素が 1 µm 前後の包有物に濃集する場合は1画素に複数の相が混ざる。集光ビームが点広がり関数として働くため像はぼけ、小さな相は実際より大きく見え、分布量を過大に見積もる危険がある。
そこで、本研究では分解能の異なる三段の測定を組み合わせることによって、解決した。携帯型は砒素とアンチモンなどの発光強度比で端成分を判別し、蛍光X線では見えない銀も検出する。15 µm の顕微LIBSは数cm 角の元素像で相の区別と累帯構造、インジウム濃集域を示す。さらに 2 µm の高分解能顕微LIBSで微小域を測る。この高分解能系の光源にCobolt社製の532nmパルスレーザー TorXEが使われた。パルス幅 2 ns、最大パルスエネルギー 0.25 mJ を 50倍対物レンズで集光して 2 µm を得た。8時間のパルス間安定性 3 % 以下が長時間の走査を支えた。15 µm で面状に見えた銀と水銀は、実際には 10 µm 未満、水銀は 2 µm 前後以下の包有物と判明した。見かけの分布は分解能に支配されるため、探査初期は定量より元素の同定と担体相の特定が信頼できると結論している。
※本記事は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)を、独自の構成で再構成した日本語要約です。
【用語解説】
- 端成分:固溶体の両端にあたる純粋な組成の鉱物。固溶体は結晶の骨組みを保ったまま特定の原子が任意の割合で入れ替わる鉱物で、四面銅鉱(アンチモンを含む)と砒四面銅鉱(砒素を含む)の間では両者が連続的に置き換わる。実際の鉱物の多くは中間組成であり、砒素とアンチモンの比がどちらの端成分に近いかの指標になる。
- レーザー誘起発光分光法(LIBS):試料の表面にパルス光を強く集光し、ごく微量を瞬間的に蒸発させて高温の発光体をつくり、そこから出る発光線の波長と強さで含まれる元素を判定する手法。真空や試料の溶解が不要で、1点あたり数ミリ秒で多元素を同時に読み取れる。集光点を走査すれば元素分布の像が得られる。
- 点広がり関数(PSF):1点の信号が測定系を通ったときに、どれだけの広がりをもって記録されるかを表す関数。集光したビームの強度分布がこれに相当し、得られる像は試料の真の構造とPSFを畳み込んだものになる。相の大きさがPSFの幅より小さくなると、像の形は試料の実体よりもPSFで決まってしまう。

