高倍率均一膨張顕微鏡法による中心小体の超微細構造の可視化

Yang, W.Q., Ben Chang, T.J., Pan, L.C., Yang, T.T. “High-fold Homogeneous Expansion Microscopy Reveals Ultrastructural Centrioles.” ACS Nano 20(21), 15716–15729 (2026). https://doi.org/10.1021/acsnano.6c05501

背景

 生体分子をナノメートル精度で観察できる超解像顕微鏡は、細胞生物学に大きな変革をもたらしてきた。中でも、試料自体を膨潤性の高分子ゲルに埋め込んで物理的に拡大し、通常の顕微鏡で微細構造を観察する膨張顕微鏡法は、光学的な工夫に依存せずに高い分解能を得られる手法として注目されている。特に標識を膨張後に行う方式は、標識密度を高められ、標識に伴う位置ずれを抑え、蛍光色素の劣化も防げるという利点をもつ。ゲルの化学組成を調整することで、当初の約4倍から10倍程度へと膨張率を高める試みも進められてきた。

従来の問題点

 しかし、膨張率を高める研究の多くは細胞小器官の超微細構造の保存に十分な注意を払っておらず、約4倍のU-ExM法では狭い体積に収まる中心小体の微細構造を保てるものの、より高い膨張率で構造を歪めずに拡大することは困難であった。

結果

 そこで、本研究ではゲル・細胞・小器官を通じて均一に8~9倍拡大しつつ微細構造を保つ高倍率均一膨張顕微鏡法(hiHomoExM)を開発することによって解決した。これを一分子局在化顕微鏡(dSTORM)と組み合わせ、実効約2ナノメートルの分解能で、中心小体近位部におけるCEP44の周期的な積層構造や、微小管との連結を示すCCDC77の局在、さらに中心小体のらせん的な左右非対称性を明らかにした。Cobolt社製の561 nm連続波固体レーザー(Jive561、150 mW)は、拡大した試料全体を均一に照らす4本の励起光源の一つとして、蛍光標識を励起する目的で用いられた。

※この要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。

用語解説】

  • 膨張顕微鏡法(ExM):試料を膨潤性ゲルに埋め込んで物理的に拡大し、通常の顕微鏡で光の回折限界を超える分解能を得る手法。光学的な超解像法と異なり、試料調製によって分解能を高める。
  • 中心小体(centriole):細胞分裂時の紡錘体形成や繊毛・鞭毛の基部を担う円筒状の微小構造体。微小管が9回対称に配列する。
  • 一分子局在化顕微鏡(dSTORM):個々の蛍光分子を時間差で明滅させ、その中心位置を精密に推定することで、光の回折限界を超える分解能を得る超解像法。

超解像蛍光観察に使用された561 nmレーザー

Cobolt 561nmレーザー
561nmレーザー