運河化光(Canalized light)がバナジウム二酸化物に方向性かつ可逆的な表面構造を形成する

Kazenwadel, D., Neathery, N., Baum, P. “Canalized light creates directional and switchable surface structures in vanadium dioxide.” Nature Communications 16, 3960 (2025). https://doi.org/10.1038/s41467-025-58929-6

背景

 超高速で光学特性を制御できる材料は、情報処理や能動光学素子の高度化に重要であることから研究が進展している。バナジウム二酸化物は温度や光照射により絶縁体から金属へ相転移する強相関酸化物であり、その転移はフェムト秒時間領域で生じる特性をもつ。また低温単斜晶相では結晶軸に沿った光学異方性を示す。レーザー誘起周期表面構造は、強いパルス光照射によりナノ周期の溝を自己組織的に形成する現象であり、光機能制御への応用が期待されている。本研究は単結晶バナジウム二酸化物において、結晶性を保持したまま方向制御可能な表面構造形成を実現するものである。

従来の問題点

 しかし、従来のレーザー加工では表面が非晶質化や多結晶化しやすく、鋭い相転移特性が損なわれる問題があった。また形成構造は主に入射偏光方向に依存し、結晶固有の異方性を活用した方向制御や再書き込み性は十分に示されていなかった。

解決方法と結果

 そこで、本研究では1030nmフェムト秒レーザーにより一時的に金属状態を誘起し、表面波の形成を利用して周期構造を生成した。特に光励起初期に生じる異方的誘電応答により、cm軸方向のみに伝搬する運河化光が発現し、偏光に依存しない副調波構造が形成された。電子後方散乱回折により単結晶性が保持されることを確認した。さらに561nmのCobolt社製CWレーザーを回折光検出に用い、1030nmパルスで相転移を誘起すると回折強度が高速に変化し、可逆的光スイッチ動作を実証した。

※この要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。

論文で使用されたCoboltのレーザー

561nmレーザー
561nmレーザー

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