ブロック共重合体を用いたコリスチンの複合コアセルベーションによる安定な抗菌ナノ粒子の創出

Vogelaar, T. D., Agger, A. E., Reseland, J. E., Linke, D., Jenssen, H., Lund, R. “Crafting Stable Antibiotic Nanoparticles via Complex Coacervation of Colistin with Block Copolymers.” Biomacromolecules 2024, 25, 4267-4280. https://doi.org/10.1021/acs.biomac.4c00337

背景

 抗菌性多糖類(AMP)は、生体の自然免疫系の一部として多様な生物に存在する天然の化合物であり、従来の抗菌薬とは異なり、その両親媒性によって細菌の細胞膜に親和性を持ち、物理的に膜を破壊する作用機序を有している 。中でもコリスチン(ポリミキシンE)は、グラム陰性菌の外膜に存在する負電荷の脂質Aと静電引力によって強く結合し、内膜を貫通して細菌を死滅させる非常に強力な薬剤である。近年、多剤耐性菌の脅威が増す中で、コリスチンは最後の手段として重要な役割を担っており、安価で高い治療効果が期待できるため、その有効な活用方法が模索されている。薬剤の運搬手法として注目される複合コアセルベーションは、反対の電荷を持つ高分子間の静電相互作用と対イオンの放出により、水溶性の複合体相を形成する現象である。この手法で形成される複合コアセルベート核ミセル(C3Ms)は、電荷を持つ薬剤を核(コア)に閉じ込め、周囲を親水性の外殻(シェル)で覆うことで、溶液中での高い分散安定性を維持することが可能となる 。これにより、薬剤の機能を保持したまま、外部環境からの保護や体内での滞留性を向上させることができる 。

従来の問題点

 しかし、コリスチンは高い有効性を持つ一方で、腎毒性や神経毒性を引き起こす副作用が大きな課題となっており、一時は臨床使用が制限されていた経緯がある 。また、生体内における安定性が低く、蛋白質分解酵素による分解を受けやすいことや、水溶性の低さに起因する生物学的利用能の低さが治療上の制約となっている。

解決方法と結果

 そこで、本研究ではコリスチンとポリエチレンオキシド・ポリメタクリル酸(PEO-b-PMAA)ブロック共重合体を複合コアセルベーションさせることで、化学修飾を伴わない安定なナノ粒子の構築を行った 。ナノ粒子の粒子径および経時的な分散安定性を評価する目的で、Cobolt社製の固体レーザーを用いた動的光散乱(DLS)測定を実施し、電荷が均衡する条件下で最も安定なミセルが形成されることを明らかにした 。結果として、得られたナノ粒子は蛋白質分解酵素であるプロテインキナーゼKやサブチリシンによる分解から薬剤を保護し、非複合体状態と比較して分解速度を大幅に抑制することに成功した 。さらに、大腸菌に対する抗菌活性を維持しつつ、人血清アルブミンの結合による構造変化も限定的であることを確認しており、毒性を低減しながら有効性を保つ新たな薬剤製剤としての可能性を示した 。

※この要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。

論文で使用されたCoboltのレーザー

660nmレーザー
660nmレーザー

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