微小ゲル内に固定化されたシトクロムP450酵素のナノスケール可視化とその局所活性

Schubert, L., Nenninger, C., Nöth, M., Belthle, T., de Lange, R.D., Pich, A., Schwaneberg, U., Wöll, D. “Nanoscopic visualization of microgel-immobilized cytochrome P450 enzymes and their local activity.” Nanoscale, 2024, 16, 20194–20201. https://doi.org/10.1039/d4nr03435j

背景

 水で膨潤したコロイド状の架橋高分子網目構造である微小ゲルは、生体触媒を含む様々な応用において有望な材料として近年急速に研究が進められている。微小ゲルは多孔質構造と高い含水率により酵素の安定性を向上させ、活性を維持しながら効率的な再利用を可能にする。特にP450モノオキシゲナーゼ※は、脂肪酸の水酸化やエポキシ化など幅広い酸化反応を触媒する能力を持ち、バイオテクノロジー分野で高い価値を有する酵素群である。酵素を微小ゲル内に固定化することで、触媒効率の向上や回収・再利用の容易化が期待される。また、光の回折限界を超えた空間分解能を実現する超解像蛍光顕微鏡法は、軟質物質や高分子、特に微小ゲルの解析に有用な手法として発展してきた。

※P450は鉄を含むヘムタンパク質であり、一酸化炭素と結合した際に450 nmの波長で特徴的な吸収を示すことからこの名称がつけられた。主に酸化反応を触媒する酵素であり、酸素分子の一方の酸素原子を基質に導入し、もう一方を水に還元する「モノオキシゲナーゼ」として機能する。

従来の問題点

 しかし、従来の酵素担持量の測定は活性に基づく一括測定法に限られており、微小ゲル内での酵素の空間分布を把握することができなかった。そのため、触媒活性が微小ゲル内の位置に依存するかどうかを調べることは不可能であり、酵素が殻部・中心部・全体のいずれに偏在するかという情報も得られなかった。

解決方法と結果

 そこで本研究では、三種類の位置特定型超解像蛍光顕微鏡法を組み合わせることで、単一酵素の位置と局所活性の関係を解明した。ナイルレッドを用いたPAINT法で微小ゲルの高分子構造を可視化し、Alexa Fluor 647標識酵素のdSTORM法で酵素位置を特定し、NASCA法で局所触媒活性を測定した。PAINT法およびNASCA法における励起光源としてCobolt社製Samba 532 nmレーザーを、dSTORM法にはCobolt社製Rouge 640 nmレーザーを使用した。その結果、シトクロムP450 BM3酵素は微小ゲル全体に分布し、活性は概ね保持されるものの、周辺部において中心部より有意に高い触媒活性を示すことが明らかとなった。

※本要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。

超解像顕微鏡法dSTORMで使用された532nmと640nmレーザー

532nmレーザー
532nmレーザー
640nmレーザー
640nmレーザー

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