鋳型不要プロセスによる構造・サイズが制御された高分子微粒子の製造

Abdurashitov, A.S.; Proshin, P.I.; Sukhorukov, G.B. “Template-Free Manufacturing of Defined Structure and Size Polymeric Microparticles.” Nanomaterials 2023, 13, 2976. https://doi.org/10.3390/nano13222976

背景

 薬物を標的部位へ選択的に届ける標的型薬物送達システムは、がん治療や慢性疾患管理において副作用の低減と治療効果の向上を両立できることから、次世代医療の中核技術として急速に研究が進められている。その担体として注目されるのが、高分子微粒子(ポリマー微粒子)である。これは直径数マイクロメートル程度の高分子からなる粒子で、内部に薬物を封入し、外殻の透過性を制御することで放出速度を調節できる。特に数週間にわたる長期持続的な薬物放出は、短期投与向けのゲル系製剤では対応が難しく、粒子構造の精密な設計が不可欠である。高分子微粒子は医薬品・バイオ技術・材料科学など多分野にわたる応用が期待されており、均一なサイズ・形状・内部構造を持つ粒子を再現性よく大量に製造する技術が強く求められている。

従来の問題点

 しかし、従来の製造手法にはそれぞれ固有の課題がある。乳化溶媒蒸発法や噴霧乾燥法は操作が比較的簡便で量産性があるものの、粒子サイズ分布の制御精度が低く、バッチ間のばらつきが生じやすい。微細流路を利用したマイクロ流体デバイスは高精度な粒子形成が可能だが、装置の作製に専門的技術が必要で生産速度が著しく低い。鋳型を用いる手法は形状・サイズの制御性に優れる一方、微細加工された専用鋳型の作製が必要であり、鋳型除去の困難さや量産スケールへの展開に問題がある。すなわち、サイズ・形状・内部構造の精密制御、高い量産性、鋳型不要性、という要件を同時に満たす製造法が存在しないことが共通の問題点であった。

解決方法と結果

 そこで本研究では、表面エネルギーの低いフッ素化エチレンプロピレン(FEP)基板上に高分子薄膜を積層成膜し、Cobolt社製532nmパルスレーザー(Cobolt Tor XS、繰り返し周波数1 kHz)を用いて薄膜を所定サイズの矩形片に精密切断したのち、加熱処理によって表面張力を駆動力として半球状粒子へと変形させる鋳型不要の新製造法を開発し、上記の問題点を解決した。レーザーは薄膜を目的の寸法(25〜70 µm角)に高精度で切り出すために使用された。粒子サイズは切断寸法で一意に決定され、バッチ内の直径ばらつきはほぼゼロであった。さらに、不透過性ポリカプロラクトン(PCL)外殻を持つ核・殻構造粒子では薬物放出がほぼ完全に遮断され、PCLとポリビニルピロリドン(PVP)を混合した半透過性外殻では4日間にわたる持続的な放出が確認された。加えて、PCLとポリ乳酸(PLA)からなる二成分非対称(ヤヌス)粒子の作製にも成功し、本手法の汎用性が実証された。

※本要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。

使用された532nmパルスレーザー

532nmレーザー
532nmパルスレーザー

その他の論文要約はCobolt論文検索ページをご覧ください。