フェムト秒レーザーVALOを用いて30 THz帯域の超広帯域テラヘルツ波を発生しました

HÜBNER Photonics社は、コンパクトなフェムト秒レーザー「VALO Femtosecond Series」を用いて、最大30 THzに達する超広帯域テラヘルツ(THz)分光を実現したホワイトペーパーを公開しました。実用的な30 THz帯域の実現はTHz技術の進化における大きなマイルストーンであり、材料フィンガープリント分析、半導体検査、バッテリー分析、プロセスモニタリング、非破壊検査など、次世代の科学・産業アプリケーションへの道を拓くものです。

背景:数THzから30 THzへ

従来のTHz技術は、自動車産業における塗膜厚の非破壊測定など産業用途が中心で、市販システムの多くは数THzの帯域にとどまっていました。帯域を30 THz超へ拡張できれば、医薬品・バッテリー・半導体・先端材料などの組成・純度・構造を非接触で分析できるようになります。さらにこの膨大な帯域は、テラビット毎秒級のデータ伝送を視野に入れた将来の通信システムにとっても非常に興味深いものです。

テラヘルツ技術の応用分野(半導体・バッテリー・非破壊検査・無線通信など)

スピントロニクスTHzエミッタ×フェムト秒レーザーVALO

1〜30 THz超の広帯域かつギャップレスなTHzパルス発生には、パルス幅30 fs未満の超短パルスレーザーが不可欠です。本ホワイトペーパーでは、強磁性(F)/非磁性(N)薄膜スタックからなるスピントロニクスTHzエミッタ(TeraSpinTec GmbH製)を、VALO Femtosecond Series「Tidal-30-3」で励起し、広帯域THz放射分光を実証しています。

スピントロニクスTHzエミッタの動作原理

VALO Tidal-30-3は、パルス幅30 fs未満(実測28 fs)・平均出力3 W超を、受動空冷のコンパクトな筐体で実現。従来必要とされてきた大型で複雑な超高速レーザー設備なしに、次世代THzシステムに求められる超短パルス励起が可能です。

VALO Tidal-30-3のパルス特性(パルス幅28 fs)

実測結果:帯域27 THz・ダイナミックレンジ75 dB

パルス幅32 fsでの励起により、標準的な実験室環境でも帯域27 THz・ダイナミックレンジ75 dBを達成しました。一般的な150 fsパルスでは帯域が4.5 THzに制限されるのと対照的で、パルス幅の重要性が明確に示されています。スペクトルには、ZnTe検出器のフォノン(5 THz)、サファイア基板由来の特徴(12〜17 THz)、大気中CO2分子の振動モード(20 THz)など、材料固有のフィンガープリントが明瞭に観測されています。

スピントロニクスTHzエミッタのTHz放射信号とスペクトル(帯域27 THz・ダイナミックレンジ75 dB)

さらに、厚さ90 µmのGaSe結晶を用いた測定では帯域30 THzを実証。次世代のエミッタアーキテクチャと組み合わせることで、30 THzを超える帯域も達成可能としています。

GaSe結晶によるTHz放射スペクトル(帯域30 THz)

分光から「マテリアルインテリジェンス」へ

帯域が数THzから30 THzへ広がる意義は、単なる性能向上にとどまりません。固体・液体・気体を問わず材料から引き出せる情報量が飛躍的に増加し、半導体製造における内部構造検査、バッテリーの材料変化・劣化のモニタリング、医薬品のパッケージ非開封での組成同定など、THz技術は特定用途の測定技術から、幅広い材料センシングプラットフォームへと進化しつつあります。コンパクトなフェムト秒レーザー技術は、もはや制約要因ではなく、こうした進化を支えるイネーブリング技術となっています。

なお、本研究はベルリン自由大学物理学科との共同で実施されたものです。詳細は下記のホワイトペーパー(英語・PDF)をご覧ください。

ホワイトペーパー:New Era of Ultra-Broadband Terahertz Spectroscopy(PDF)
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