Diguna, L. J., Kaffah, S., Mahyuddin, M. H., Arramel, Maddalena, F., Abu Bakar, S., Aminah, M., Onggo, D., Witkowski, M. E., Makowski, M., Drozdowski, W., Birowosuto, M. D. “Scintillation in (C₆H₅CH₂NH₃)₂SnBr₄: green-emitting lead-free perovskite halide materials.” RSC Advances, 2021, 11, 20635–20640. https://doi.org/10.1039/d1ra01123e
放射線が物質に入射した際に可視光を発する現象を利用した検出素子をシンチレータといい、医療用X線撮像や放射線計測など広範な分野で応用されている。近年、ハロゲン化鉛ペロブスカイト材料が新世代のシンチレータ候補として注目を集めている。ペロブスカイトとはABX₃型の結晶構造を持つ化合物群であり、有機陽イオンと無機骨格を組み合わせた有機無機複合型(HOIP)結晶は、低エネルギー放射線に対する高い検出性能を示すことが報告されている。特に臭化物系結晶はヨウ化物系と比較して安定性が高く、より大きな発光量を示すことから、X線撮像への応用が期待されている。
しかし、従来のハロゲン化鉛ペロブスカイト材料は、鉛陽イオン(Pb²⁺)の毒性という根本的な問題を抱えており、人体や環境への深刻な影響が懸念されている。また、臭化物系結晶の青色発光はX線撮像パネルに用いられる光電変換素子の量子効率が低い波長域に位置するため、検出効率の面でも不利である。さらに、鉛を代替する陽イオン(Sn、Mn、Cuなど)を用いた無鉛材料は、原子番号および原子量が鉛より低いため放射線吸収能が低下するという課題があり、シンチレーション効率の実測値による検証も十分ではなかった。
そこで、本研究では鉛をスズ(Sn²⁺)で置換した新規無鉛HOIPである(C₆H₅CH₂NH₃)₂SnBr₄結晶を溶液法で合成し、その光学的・シンチレーション特性を実験および密度汎関数理論計算によって詳細に解明した。その結果、バンドギャップ2.51 eV、498 nmの緑色発光、1.05 μsの発光寿命が確認され、20 keVにおける放射線吸収長は0.016 cmと良好な値を示した。241Am線源を用いた測定では室温での発光量は3600±600光子/MeVと低値にとどまり、温度依存放射線発光測定により活性化エネルギー61 meVおよび熱消光速度比129が得られ、室温での熱消光が発光量低下の主因であることが判明した。なお、光量子収率(PLQY)測定においてはCobolt社製320 nm連続波半導体レーザーが励起光源として使用された。以上より、(C₆H₅CH₂NH₃)₂SnBr₄は熱消光という課題を残しつつも、無鉛かつ緑色発光という特性を兼ね備えた新たなシンチレータ候補材料としての可能性を示した。
※本要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。
励起光源に使用された320nmレーザー

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