Kohei Otomo et al., “descSPIM: an affordable and easy-to-build light-sheet microscope optimized for tissue clearing techniques.” Nature Communications 2024, 15, 4941. https://doi.org/10.1038/s41467-024-49131-1
背景
ライトシート蛍光顕微鏡(LSFM)は、近年、組織透明化技術と組み合わせることで、組織、臓器、さらには全身の三次元(3D)イメージングにおいて急速に研究が進められている。特に、選択面照明顕微鏡(SPIM)やデジタルスキャニングライトシート顕微鏡(DSLM)は、組織透明化技術が普及する以前から、小型で透明な標本の3Dおよび4Dイメージングに使用されてきた。これらの技術は、ガウシアンビームを集光して励起ライトシートを生成し、軸方向の空間分解能と有効視野(eFOV)のトレードオフを引き起こすが、タイルリングLSFMや軸方向スイーピング方式によって、軸方向の空間分解能を維持しつつeFOVを拡大することに成功している。さらに、BesselビームやAiryビーム、光格子ベースのライトシートなど、非回折ライトシートを利用する最新のアプローチも報告されている。これにより、LSFMは迅速でボリュームのあるクリアな組織イメージングに最適化されている。
従来の問題点
しかし、LSFMシステムの限られたアクセス性は、多くの組織透明化技術のエンドユーザーにとって大きな障害となっている。市販システムは使いやすさを提供する一方で、個々の研究グループにとっては高額であるため、導入が困難である。また、最先端のカスタムビルド顕微鏡は、高度な光学知識を必要とし、構築が難しい。さらに、多くのLSFMは励起および検出対物レンズの直交配置を採用しており、標本のサイズや取り付けに物理的な制約がある。従来の標本ホルダーである培養皿やウェルプレートは、顕微鏡に容易に収容することができないため、操作性に課題がある。
解決方法と実験結果
そこで、本研究では、descSPIM(デスクトップ装備のSPIM:cleared標本用)を提案する。descSPIMは低コスト(20,000~50,000ドル)、低専門知識(非専門家による1日での設置可能)でありながら、実用的なDIYライトシート顕微鏡である。このシステムは、基本的なSPIM構成を採用し、単一ベンダー(Thorlabs)から購入可能な約90の部品で構成されており、ユーザーの利便性を考慮している。シングルモードファイバーガイドのレーザー光をコリメートし、円筒レンズを用いてシート照明を形成する。ユーザーは実験目的に応じてカラーバリエーションを選択可能で、マルチチャネルイメージングに対応している。さらに、基本構成を用いても、3.45×3.45×7-25 µm³のボクセル解像度で効率的な3Dイメージングが可能であり、迅速な3Dイメージングを実現する。

※この要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。
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