ダイヤモンド量子センサを用いた大規模並列ナノスケール磁力計測

Cheng, K.-H., Kazi, Z., Rovny, J., Zhang, B., Nassar, L. S., Thompson, J. D., de Leon, N. P. “Massively Multiplexed Nanoscale Magnetometry with Diamond Quantum Sensors.” Physical Review X 15, 031014 (2025). https://doi.org/10.1103/t8fz-3tzs

背景

 ダイヤモンド中の窒素空孔(NV)中心は、広い温度範囲で長いスピンコヒーレンス時間を持ち、光学的なスピン初期化と読み出しが可能であることから、磁場・電場・温度などのナノスケール計測に広く応用されている。NV中心は、バルクダイヤモンド中の単一センサ、走査プローブ、または高密度アンサンブルとして用いられる。個別に分解可能なNV中心はナノメートル級の空間分解能と高感度を実現でき、適切な表面処理により表面近傍数ナノメートルに位置するNV中心でも優れた性能を発揮する。一方、NV中心アンサンブルは多数のセンサからの信号を平均化することで高速かつ高精度な測定を可能にする。

従来の問題点

 しかし、従来の手法では共焦点顕微鏡を用いて個々のNV中心を逐次的に測定するため、測定速度が制限され、また複数地点間の磁場相関のような非局所的物性の同時測定が困難であった。さらに、NV中心のスピン状態読み出しには高いノイズが伴い、相関測定に必要な信号対雑音比の達成には長時間を要するという問題があった。

解決方法と結果

 そこで本研究では、低ノイズの電子増倍CCD(EMCCD)カメラと空間光変調器(SLM)を組み合わせた並列NV計測基盤を構築することで、数百個の単一NV中心を同時に操作・読み出しすることに成功した。連続波光検出磁気共鳴では中央値24 μT Hz⁻¹/²の直流磁場感度を達成し、70個以上のNV中心のスピン緩和時間を並列測定した。さらに、SLMを用いたスピン電荷変換読み出しにより88%の電荷状態識別精度と約12の読み出しノイズを実現し、5個のNV中心から10個の二点磁場相関を同時測定する共分散磁力計測を実証した。電流を流したワイヤからの空間的磁場相関の定量的再構成にも成功した。なお、Cobolt社製594 nmレーザー(Mambo)はNV中心のイオン化および電荷状態読み出しに、520 nmレーザー(06-MLD)は特定のNV中心の選択的スピン再初期化に使用された。

※本要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。

論文で使用されたCoboltのレーザー

594nmレーザー
594nmレーザー
520nmレーザー
520nmレーザー

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