同位体標識細菌のラマン活性化対話型選別

Razi, S., Tarcea, N., Henkel, T., Ravikumar, R., Pistiki, A., Wagenhaus, A., Girnus, S., Taubert, M., Küsel, K., Rösch, P., Popp, J. “Raman-Activated, Interactive Sorting of Isotope-Labeled Bacteria.” Sensors 2024, 24, 4503. https://doi.org/10.3390/s24144503

背景

 土壌や帯水層などの環境中に生息する細菌や古細菌は、実験室条件下での単離や培養が困難であることから、微生物群集の代謝活性を非破壊的に検出・評価する手法の開発が求められている。分子の振動状態を利用して物質の化学組成を分析する手法であるラマン分光法は、顕微鏡と組み合わせることで単一細菌の細胞内成分を非破壊的に測定できる。重水素(D)や¹³Cなどの安定同位体で細菌を標識する安定同位体探査法(SIP)を用いると、同位体の取り込みに伴うラマンバンドの低波数側への移動から、個々の細胞の代謝活性状態を識別できる。近年、ラマン分光法と光ピンセット技術および微小流体素子を組み合わせた単一細胞選別手法が、微生物学において有力な解析手段として発展してきた。

従来の問題点

 しかし、従来の静的なラマン測定では、測定時点の細胞状態の解析にとどまり、目的の細胞を分取して後段のさらなる解析に供することができないという問題があった。また、既存の微小流体選別系は選別出口が一つに限られることが多く、二種類以上の代謝状態を持つ細胞を同時に分取することが困難であった。さらに、注射筒型送液装置による微小流量の精密制御にも課題があり、試料流路と選別出口間の相互汚染の抑制が十分でなかった。

解決方法と結果

 そこで、本研究では補助流体による層流共流を利用した新規微小流体選別素子を開発し、試料流路と二つの選別出口間の相互汚染を抑制しつつ、同位体標識状態の異なる二群の細菌を同時に分取することに成功した。Cobolt社製532 nm連続波半導体励起固体レーザー(Cobolt Samba™ 150)を、光ピンセットによる細胞の捕捉・輸送とラマン散乱の励起という二つの目的に使用した。微小流体素子内での判別精度は99.8%に達し、選別実験における均衡精度は最大95.8%であった。毎時最大120個の細胞を選別可能であり、選別後の細菌は培地上で増殖可能であることも確認された。

安定同位体探査法(SIP): 重水素(D)や¹³Cなどの放射性を持たない安定同位体を含む培地で微生物を培養し、同位体の細胞内への取り込みから代謝活性を評価する手法。

※この要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいております。

ラマン分光に使用された532 nmレーザー

532nmレーザー
532nmレーザー

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