均一な{100}配向をもつ3インチ自立ダイヤモンドウエハの合成

Zhang, J., Handschuh-Wang, S., Xing, Z., Wang, T. “Synthesis of Homogeneously {100}-Textured 3-Inch Free-Standing Diamond Wafer.” Materials 2026, 19, 2398. https://doi.org/10.3390/ma19112398

背景

 ダイヤモンドは熱・電気・機械的な特性に優れ、とくに単結晶ダイヤモンドは室温で約2200 W/(mK)という極めて高い熱伝導率をもち、発熱を素早く逃がす放熱材として理想的な材料である。大面積で高品質なダイヤモンド膜への要求が高まっている。多結晶ダイヤモンドは結晶粒の境界でフォノンが散乱して熱伝導率が下がるが、結晶粒の向きをそろえた配向膜であればこの低下を抑えられる。なかでも(100)面が基板面にそろった{100}配向ダイヤモンドの成長が有望視されている。

従来の問題点

 しかし、高品質で大面積の単結晶ダイヤモンドは、良質な種結晶の入手が難しく希少で高価なため作製が困難である。代替となる{100}配向ダイヤモンドの成長も、成長速度が1 μm/h以下と遅く、面積を広げると配向がくずれて均一性を保てない課題があった。

結果

 そこで本研究では、2段階のマイクロ波プラズマ化学気相成長(MPCVD)法を用いることでこれを解決した。第1段階で窒素を添加して(100)面の成長を優先させ、第2段階で窒素添加を止めて、進化的選択則にもとづき配向のそろった結晶だけを発達させた。これにより175 cm²を超える大面積の{100}配向厚膜を4.0〜5.5 μm/hの速さで成長させ、シリコン基板を酸で分離して3インチの自立ダイヤモンドウエハを実現した。水平方向の熱伝導率は1125 W/(mK)に達し、無配向の多結晶ダイヤモンド(854 W/(mK))を上回った。均一な成長の鍵となったのが種付けの工程であり、Adámas Nanotechnologies社製の5 nmナノダイヤモンド粒子(正のゼータ電位品)を用いた。負に帯電した基板へ静電的に自己組織化させ、10¹¹ cm⁻²を超える高密度の種を均一に付着させたことが、均質な結晶成長の起点となった。

※本記事は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)を、独自の構成(背景・従来の問題点・結果)で再構成した日本語要約です。

【用語解説】

  • {100}配向(テクスチャ):多結晶膜において、各結晶粒の(100)結晶面が基板面にそろって並んだ状態。粒界の乱れが抑えられ、熱伝導などの特性が向上する。
  • MPCVD(マイクロ波プラズマ化学気相成長):マイクロ波で原料ガスをプラズマ化し、炭素源から基板上にダイヤモンドを堆積させて合成する方法。
  • 種付け(シーディング):CVD成長の起点となる微小なダイヤモンド粒子を基板に高密度で付着させる工程。核生成の密度を高め、均一な膜成長を促す。