酸化グラフェン–ポリジメチルシロキサン二層と表面プラズモン共鳴による室温動作の高感度パワーセンサー

Margheri, G., del Rosso, T. "High-Sensitivity Room-Temperature Power Sensor Based on a Graphene Oxide–PDMS Bilayer and Surface Plasmon Resonance Suitable for the Detection of IR-THz Radiation." Sensors 2026, 26, 4263. https://doi.org/10.3390/s26134263

背景

 赤外からテラヘルツ帯の放射は、非破壊検査や医用診断、分光、次世代の無線通信を支えることから、その強度を正確に測る検出器の研究が急速に進められている。この帯域は電波と光波の中間にあり、発生も検出も難しい「テラヘルツギャップ」と呼ばれる。吸収した放射を熱に変えて測る熱型の検出器は、室温で動作し広い波長域に応答する。酸化グラフェンは可視域からテラヘルツ域まで広帯域に光を吸収し、塗布で成膜でき安価である。シリコーン樹脂の一種であるポリジメチルシロキサンは、高分子材料のなかでも温度による屈折率の変化(熱光学係数)が大きい。金属薄膜の表面で自由電子の集団振動を光で励起する表面プラズモン共鳴は、接する媒質のわずかな屈折率変化を鋭敏にとらえる。

従来の問題点

 しかし、光子を直接電気信号に変える光子型の検出器は熱雑音を抑えるために極低温の冷却を要し、熱型の検出器は熱の逃げや周囲の温度揺らぎで感度が制限され、真空封止や機械的な変調を要する問題点がある。

結果

 そこで、本研究では銀薄膜の上にポリジメチルシロキサンと酸化グラフェンを重ね、クレッチマン配置の表面プラズモン共鳴で読み出すことで解決した。酸化グラフェンが入射した放射を熱に変え、樹脂の屈折率が下がって共鳴角が低角側へ移動する。有限要素法で構造を最適化し、実験では 0.083 deg/mW の角度感度を得た。検出限界と分解能はいずれも 15 nW 程度で、屈折率変化にして 1.3×10⁻⁸ に相当する。Cobolt社製の 405 nm 連続発振レーザー(06-MLD、150 mW)は試料を加熱するポンプ光源として使用され、酸化グラフェン層の吸収率の測定、共鳴角の校正曲線の取得、矩形波で変調した微小電力の検出試験に用いられた。

※本記事は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)を、独自の構成で再構成した日本語要約です。

【用語解説】

  • テラヘルツギャップ:おおむね 0.1〜10 THz の周波数帯。電子回路による発振の上限と、半導体発光素子の下限のあいだにあたり、実用的な光源も検出器も乏しかったことからこう呼ばれる。
  • クレッチマン配置:プリズムの底面に金属薄膜を密着させ、全反射する光の染み出し(エバネッセント波)で表面プラズモンを励起する構成。共鳴の起こる入射角は金属に接する媒質の屈折率でわずかに変わるため、反射率の角度依存性から屈折率の微小変化を読み取れる。
  • 熱光学係数:温度が 1 K 変わったときの材料の屈折率の変化量(dn/dT)。ポリジメチルシロキサンでは −4.5×10⁻⁴ K⁻¹ と大きく、温度が上がると屈折率が下がる。

光熱変換の励起に使用された405 nmレーザー

Cobolt 405nmレーザー
405nmレーザー