Li, R., Wu, S., Li, K., An, Z., Ben, Y., Li, G., Kumar, S., McGinty, J., Hasan, T., Fu, S., Zhang, M., Chen, L. “Deep-Learning-Driven High-Fidelity In Vivo Hyperspectral Fluorescence Imaging Under Extreme Photon-Limited Conditions.” Advanced Science 2026, e76802. https://doi.org/10.1002/advs.76802
蛍光顕微鏡は、生体の構造と機能を可視化できることから、生命現象の解明に欠かせない手法である。複数の蛍光標識を同時に追う場合、発光波長域が数 nm しか離れていない色どうしは、特定の波長帯だけを通して色を分ける従来の方式では分離できず、組織自身が出す自家蛍光も広い波長域で重なる。これに対し、各画素で連続した発光スペクトルを取得するハイパースペクトル蛍光撮像では、測ったスペクトルを各成分のスペクトルの重ね合わせとみなして係数を解くことで、重なった蛍光体と自家蛍光の寄与を成分ごとの量として取り出せる。ゼブラフィッシュのような中規模のモデル生物では、細胞の動態と個体全体の応答を同時に追える点で、この手法の価値が高い。
しかし、生体内でのこの撮像は光子が足りないという問題がある。動きのある試料では露光時間を短くせざるを得ず、生体への負担を抑えるため励起強度も下げる必要があるうえ、わずかな蛍光光子を数百の波長帯に分割するため、1 帯域あたりの光子数が極端に少なくなる。その結果、散乱・散弾雑音・熱雑音が信号と深く結びつき、既存の深層学習による雑音除去は見た目を整えても本来のスペクトル構造を平滑化して壊してしまい、後段の成分分解が破綻する。教師データの作成自体が難しいという制約もある。
そこで、本研究では光学系と演算処理を同時に開発することによって、解決した。共焦点の線走査方式によるハイパースペクトル・ライトシート蛍光顕微鏡を自作し、照明の線走査と検出側の逆走査を同期させて分光器へ導くことで、散乱と光毒性を抑えつつ光切片性を得た。ここでは Cobolt 社の多波長光源 Skyra の 488 nm 出力を走査鏡で振り、視野に線状の励起光として照射する構成をとっており、横方向 2.77 µm・深さ方向 4.84 µm の分解能を得ている。演算側では、二経路の残差注意機構と非負値行列因子分解を結合した深層学習網(DsRAN-NMF)を提案した。既存手法に対しスペクトル角で約 26.8〜42.4 %、PSNR で 3.12〜4.7 dB 改善し、6〜13 組という少数の教師データでも性能を保った。生きたゼブラフィッシュを 35 µW・30 ms の低励起条件で撮像し、血管とナノプラスチックを分離したうえで、暴露後 36〜72 時間で体節間血管内の蓄積が約 5 倍に増えることを示した。
※本記事は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)を、独自の構成で再構成した日本語要約です。
【用語解説】
- スペクトル成分分解(アンミキシング):各画素で得た混合スペクトルを、既知または推定した成分スペクトルの重ね合わせとして解き、成分ごとの寄与量に分ける処理。
- ライトシート蛍光顕微鏡:試料を薄い板状の光で横から照らし、その面だけを直交方向から撮像する方式。面外を励起しないため退色と光毒性が小さい。
- 非負値行列因子分解(NMF):行列を、負の値を含まない二つの行列の積に近似分解する手法。強度が負にならない分光データの成分分離と相性がよい。

