高感度な三次元単一分子イメージング法の開発

Wang, L.-M., Kim, J., Han, K.Y. “Highly sensitive volumetric single-molecule imaging.” Nanophotonics 2024, 13(20), 3805–3814. https://doi.org/10.1515/nanoph-2024-0152

背景

 細胞や組織の内部で起こる複雑な現象を解明するためには、三次元的な空間情報を迅速に取得する体積イメージングが極めて重要である 。この技術は、高い空間分解能を維持しながら時間軸に沿った情報を保存できるため、細胞内の微細構造や動態を効果的に調査することを可能にする 。その中でも、特定の深さの体積情報を一層の平面に投影して単一露光で取得する「2.5次元顕微鏡」は、極めて高い撮影速度と光検出効率を両立する革新的な手法として注目されている 。この顕微鏡は「レイヤーケーキ」と呼ばれる多層ガラスを用いた受動的な光学素子を利用しており、光の波面を非干渉的に分割することで、九十五パーセント以上の高い透過率を実現する 。これにより、従来の空間光変調器を用いる手法に比べて光の損失が少なく、低光量での撮影が可能なため、細胞への光毒性や蛍光色素の退色を最小限に抑えた長期間の生細胞観察を実現できる優れた特性を有している 。また、ナノメートル規模の精度で分子の位置を特定する単一分子局在化顕微鏡や、個々の分子の動きを追跡する単一粒子追跡法は、生命科学における定量的な解析において不可欠な役割を担っている 。

従来技術の問題点

 しかし、従来の体積イメージングは、重い対物レンズや試料台を垂直方向に物理的に動かす走査方式に依存しており、撮影速度が装置の移動速度に制限されるという課題がある 。また、多焦点面を同時に撮影する手法では、光の利用効率が著しく低下したり、信号対雑音比が悪化したりする問題が指摘されている 。2.5次元顕微鏡においても、投影時に広範囲の焦点外背景光が像に混入することで、特に信号が微弱な単一分子の検出精度が低下し、粒子追跡において焦点外へ逃げる分子を捉え続けられないという欠点があった 。

解決方法と結果

 そこで、本研究では高傾斜層状光シート照明(HILO照明)を導入することで、焦点外の背景光を約二分の一に低減し、高感度かつ高解像度な体積イメージングを実現した 。光源には多色蛍光標識された微小管の励起や、単一分子の精密な局在化および活性化を目的として、Cobolt社製のレーザー(波長488, 561, 638, 640, 405 nm)が使用された 。その結果、垂直走査を行うことなく三から四マイクロメートルの深さを一括で投影撮影することに成功し、生細胞内における単一粒子の追跡時間を約四倍に延長できることを実証した 。

※この要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。

論文で使用されたCoboltのレーザー

488nmレーザー
488nmレーザー
561nmレーザー
561nmレーザー
638nmレーザー
638nmレーザー
640nmレーザー
640nmレーザー Bolero

本研究において使用されたCobolt社製のレーザーは、488 nm、561 nm、638 nm、および高出力の640 nmレーザーであり、単一分子観察や多色蛍光イメージングのために用いられた。特に、640 nmレーザー(Cobolt Bolero)はSMLMにおける強励起用として利用された。また、405 nmの活性化用レーザーもCobolt社製であり、単一分子のスパースな活性化を制御するためにファンクションジェネレータと組み合わせて使用された。

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