グラフェン導入によるインクジェット印刷MAPbBr₃の薄膜形成制御と光検出性能の向上

Lobo, K., Bartolomé, J., Vila, M., Vescio, G., Sánchez-Alarcón, R.I., Khan, J., Marí Guaita, J., Palacio Bonet, F., Martínez-Pastor, J.P., Hernández, S., Garrido, B., Coya, C., Cirera, A. “Controlling Film Formation in Inkjet-printed MAPbBr3 Through Graphene Incorporation for Enhanced Photodetection.” Advanced Materials Technologies 2026, 0, e00007. https://doi.org/10.1002/admt.202600007

背景

 金属ハライドペロブスカイトは、高い光吸収係数や欠陥耐性、バンドギャップの可変性といった優れた光電子特性を持ち、溶液から成膜できるため、近年、光電変換素子の材料として急速に研究が進められている。中でもインクジェット印刷は、数十マイクロメートルの分解能で高速に薄膜を描画できる溶液成膜法であり、太陽電池や光検出器の作製に有望である。印刷に用いるインクの組成は薄膜形成を左右する重要な因子であり、添加物による結晶核形成・成長の制御が検討されてきた。単原子層の炭素材料であるグラフェンは、ペロブスカイトと良好なエネルギー準位整合を示し、高い導電性、光透過性、欠陥不活性化能、水分・酸素に対する遮蔽性を備える点で添加物として魅力的である。

従来の問題点

 しかし、印刷されたペロブスカイト層における薄膜形成機構の理解と制御は依然として難しく、核形成・成長時の局所環境のわずかな差異に敏感なため膜内に不均一性が生じ、素子性能を損なう。またグラフェンの利用は、これまで主に電極や中間層に限られていた。

解決方法と結果

 そこで本研究では、MAPbBr₃前駆体インクにグラフェンフレークを微量(5 µg/mL以下)添加し、薄膜形成を実時間で直接観察した。グラフェンはイオン拡散を妨げて核形成の開始を遅らせ核密度を低下させ、孤立した島状成長から樹枝状成長へと結晶化を変化させ、より大きな結晶粒と良好な連結性、低い表面粗さを与えた。光吸収・発光特性はほぼ不変だが、キャリア寿命の延長、金属Pbの抑制、仕事関数の低下が確認された。単一走査の印刷で作製した光検出器は、応答度3.54 A/W、検出能約10¹²ジョーンズ、85 ms未満の高速応答を達成した。なお、グラフェンフレークの評価には、Cobolt社の532 nm固体レーザーをマイクロラマン分光の励起光源として用いた。

※この要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいております。

ラマン分光に使用された532 nmレーザー

532nmレーザー

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