明滅する単一光子源から明状態の発光を取り出す光子待ち時間解析

Koks, C., Huck, A., Wubs, M., Stenger, N. “Retrieving Bright-State Emission From Fast Blinking Quantum Emitters.” Adv. Quantum Technol. 2026, 9, e70467. https://doi.org/10.1002/qute.70467

背景

 光子を1個ずつ放出する単一光子源は、光を用いた量子計算や量子暗号の基盤素子であることから、近年急速に研究が進められている。放出された光が真に単一光子であるかは、光子の到来時間差を取る二次の強度相関関数を測り、時間差ゼロでの落ち込みを調べて判定する。落ち込みが深いほど純度が高く、量子計算の忠実度も上がる。一方、hBN(六方晶窒化ホウ素)中の発光中心やダイヤモンドのNV中心では、準安定状態への遷移で発光が明滅する現象が広く見られる。

従来の問題点

 しかし、励起レーザーの散乱光や試料周辺からの発光が背景光として重なるため、発光体自身の計数率を正しく切り分けられないという問題点がある。とくに明滅の速さが検出率と同程度の領域では、明状態1周期あたりの検出光子がおよそ1個しかなく、強度相関関数だけでは明状態と暗状態の計数率を分離できない。飽和曲線から求める最大検出率や準位の占有率にも誤差が入る。

結果

 そこで、本研究では連続して検出された2個の光子の待ち時間分布と強度相関関数を比較することによって、解決した。待ち時間分布は直後の1個のみを数えるため集光効率と発光率に依存し、すべての時間差を数える強度相関関数とは異なる振る舞いを示す。この差から発光体と背景光の計数率を分離し、励起強度依存性を個別に求めた。hBN 中の発光体では両者の差が明瞭に現れ、背景を補正した計数率は補正前より低い励起強度で飽和した。測定では Cobolt 社製の 532 nm 連続波レーザーを共焦点顕微鏡の励起光源に用い、550 nm 長波長透過フィルタで励起光を除いた蛍光を2台の単一光子検出器へ分配している。NV 中心では明滅が検出率より速く、手法の適用には更なる発展が必要であることも示された。

※本記事は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)を、独自の構成(背景・従来の問題点・結果)で再構成した日本語要約です。

【用語解説】

  • 二次の強度相関関数:ある時刻に検出した光子と、一定の時間差だけ離れて検出した光子の相関を表す量。単一光子源では時間差ゼロで値が下がる反相関を示す。
  • 待ち時間分布:ある光子を検出してから次の1個を検出するまでの時間間隔の分布。2個目以降を数えないため、集光効率や発光率の影響を受ける。
  • 準安定状態:発光に関わる基底状態・励起状態とは別にある、いったん入ると励起光を吸収できない寿命の長い状態。発光の明滅の原因となる。

単一光子源の励起に使用された532 nmレーザー

Cobolt 532nmレーザー
532nmレーザー