多重光散乱を利用したレンズを用いない小型光学系による液中ナノ材料の超高感度検出

Kim, J., Kim, Y., Kook, J.-W., Choi, H.-N., Cho, K., Lee, I.-H., Hwang, J., Yu, S., Yoo, C.-Y., Yoon, J. “Development of a Lensless Compact Optical System for Ultrasensitive Nanomaterial Detection in Liquid Media via Exploiting Multiple Light Scattering.” Nanophotonics 2026, 15, e70193. https://doi.org/10.1002/nap2.70193

背景

 薬物送達やmRNAワクチン、診断、水質監視など、液中のナノ材料を扱う技術が広がり、粒径や濃度を正確に把握することが安全性と品質の保証に不可欠である。この用途では、粒子のブラウン運動に伴う散乱光の強度ゆらぎから粒径を求める動的光散乱法(DLS)が標準である。一方、可干渉性の高い光が散乱体を通ると無数の散乱光が干渉し、斑点状の模様が生じる。これがレーザースペックルであり、光と媒質の相互作用で決まるため再現性があり、時間変化から媒質内部の微細な動きを読み取れる。

従来の問題点

 しかし、DLSは単一散乱を前提に希薄で均一な分散を仮定するため、低濃度では散乱光が足りず感度が失われ、高濃度では多重散乱によって精度が落ちる問題点がある。さらに検出器を特定の角度へ置く必要があり、粒径への換算には温度や粘度、屈折率などの事前情報を要する。多重散乱下で使える拡散波分光法もあるが、試料形状や平均自由行程を別途決める必要があり、未知試料には向かない。

結果

 そこで、本研究では多重光散乱をあえて最大化するレンズを用いない光学系を構成することによって、解決した。内面で光を繰り返し反射させるアルミニウム製の試料保持具を自作し、位相のそろわない光で試料全体を照らした。Cobolt社製の532 nmレーザー(Cobolt Samba)は、保持具へ直接入射させて多重散乱による干渉場をつくる光源として使用された。射出窓には結像光学系のないCMOSカメラを置き、スペックルの時系列を二次元ピアソン相関で解析した。その結果、直径200 nmの粒子を10⁵個/mLまで識別でき、DLSの検出限界より3〜4桁低い濃度を捉えた。濃度固定の条件では、検量式により100〜200 nmの粒径を95%予測区間±7 nm以内で決定できた。

※本記事は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)を、独自の構成で再構成した日本語要約です。

【用語解説】

  • 動的光散乱法(DLS):液中の粒子がブラウン運動する際に生じる散乱光の強度ゆらぎを測り、その時間相関の減衰から拡散係数を求め、ストークス・アインシュタインの式で粒径に換算する手法。温度・粘度・屈折率の値を前もって与える必要がある。
  • レーザースペックル:可干渉性の高い光が粗面や散乱体で散乱されたとき、多数の散乱光が互いに干渉して生じる斑点状の明暗模様。媒質が動くと模様も時間とともに変化する。
  • 拡散波分光法(DWS):光が何度も散乱される濃い媒質に対し、光の伝わりを拡散として扱い、散乱光の時間相関から粒子の運動を解析する手法。試料形状や平均自由行程などの模型の値が必要となる。

レーザースペックル計測に使用された532 nmレーザー

Cobolt 532nmレーザー
532nmレーザー