多波長チャネルを備えた回折ニューラルネットワークによる拡散ガラス越しのフルカラー結像

Hoshi, I., Wakunami, K., Ichihashi, Y., Oi, R. “Full-colour imaging behind a glass diffuser through a diffractive neural network with multi-wavelength channels.” npj Unconventional Computing 2026, 3, 51. https://doi.org/10.1038/s44335-026-00096-y

背景

 霧や濁った水、生体組織のように光を散乱させる媒質の向こう側にある物体を捉える技術は、自動運転や水中観測、生体イメージングなど広い分野で求められている。回折ニューラルネットワーク(DNN)は、機械学習で位相分布を訓練した回折層を光が通り抜ける過程そのものに演算を担わせる光学系であり、散乱された光から物体像を再構成計算なしで光速に結び直せる。訓練に含めない未知の拡散板にも適応でき、時間とともに変化する散乱媒質にも追随できるため、実時間の応用に向く。

従来の問題点

 しかし、従来のDNNは回折光学素子で構成されるため波長選択性を持たず、回折層が全波長に共通の位相分布しか持てないという問題点がある。散乱の強さは波長によって異なるため、波長ごとに独立した変調を与えられない構成では、フルカラーでの再構成性能が不足する。

結果

 そこで、本研究では体積型ホログラフィック光学素子(vHOE)を回折層に用いた波長多重DNN(WM-DNN)を構成することによって、解決した。vHOEは記録に用いた波長だけをブラッグ条件で回折するため、640 nm・532 nm・458 nm それぞれに独立な位相分布を重ねて記録でき、波長ごとの処理が完全に並列となる。2枚のvHOEを用いた光学系により、訓練に含めない220番・400番・600番の擦りガラス拡散板の背後の物体をフルカラーで再構成し、従来型DNNをピアソン相関係数・解像度の両面で上回った。解像度は約 0.5〜1 lp/mm、拡散板を毎秒 1 mm で動かした動的な条件でも 5 fps で実時間に再構成できている。Cobolt社製の連続波レーザーの 532 nmレーザー 光は、空間光変調器に表示した物体像を照らして緑チャネルの物体光を作る光源として使用され、458 nm・640 nm の光源と切り替えながら各波長の像が取得された。

※本記事は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)を、独自の構成で再構成した日本語要約です。

【用語解説】

  • 回折ニューラルネットワーク(DNN):位相分布を機械学習で訓練した回折層を何枚か並べ、光がそこを通り抜けて伝搬する過程そのものに演算を担わせる光学系。学習を終えた後は電子計算を介さず、光が通るだけで所定の変換が完了する。
  • 体積型ホログラフィック光学素子(vHOE):記録材料の厚み方向にまで屈折率の縞を刻み込んだ素子。ブラッグ条件を満たす特定の波長と入射角の光だけを強く回折し、それ以外は素通りさせるため、波長ごとに別の位相分布を1枚へ重ねて記録できる。
  • ピアソン相関係数(PCC):出力像と正解像の画素値がどれだけ同じ傾向で増減するかを表す指標。1に近いほど形と濃淡がよく一致していることを意味する。

フルカラー結像に使用された532 nmレーザー

Cobolt 532nmレーザー
532nmレーザー