二次元鉛ハライドペロブスカイトにおける相固定化による側方ホモ接合の実現

Huilong Hong, Songhao Guo, Leyang Jin, et al.
“Two-dimensional lead halide perovskite lateral homojunctions enabled by phase pinning.” Nature Communications 15, 3164 (2024). https://doi.org/10.1038/s41467-024-47406-1

背景

 半導体ホモ接合は、同一材料内の異なる構造相またはドーパントによって形成される構造であり、次世代の電子・光電子デバイスにおいて有望視されている。特に二次元鉛ハライドペロブスカイト(2D LHP)は、層状構造により化学組成や構造相を広範に調整可能であり、光学特性やスピン軌道相互作用、誘電性に富んだ材料として注目されている。これらの2D LHPは、PbX₄²⁻(X = ハロゲン)八面体層と有機カチオン層(例:ブチルアンモニウム(BA)やペンチルアンモニウム(PA))から構成される量子井戸型超格子構造を持ち、温度や圧力の変化に伴って相転移を示す。この相転移は、カチオンの秩序・無秩序変化や無機層の歪みに起因し、バンドギャップや励起子結合エネルギーなどの光電子特性を制御できる点から、ホモ接合構造の形成に適している。

従来技術の問題点

 しかし、2D LHPにおける多くの相は、高温・高圧条件下でのみ安定であり、常圧・室温では不安定化する問題がある。そのため、温度や圧力によって誘起された構造相を用いたホモ接合の構築は実用性に欠けていた。また、3Dおよび異種2D材料間のヘテロ接合においては、イオン拡散による界面の不安定化や化学組成の勾配形成といった課題が存在し、安定で均質な界面の形成が難しかった。さらに、従来の方法では動的な光学特性制御や励起子輸送の方向性制御といった応用面での柔軟性に限界があった。

解決方法と結果

 そこで、本研究ではスペーサーカチオンドーピングによって構造相の固定化(phase pinning)を実現し、2Dペロブスカイト内に秩序相と無秩序相からなる側方ホモ接合を作製した。具体的には、(BA)₂PbI₄に少量のPAを、または(PA)₂PbI₄に少量のBAを導入することで、温度低下や圧力上昇に伴う秩序化転移を抑制し、無秩序相を広い熱力学条件下で安定化させた。この手法により、異なる相を持つ同一材料の側方エピタキシャル成長に成功し、構造整合性の高いホモ接合構造が形成された。得られたホモ接合では、圧力や温度に応じたバンドギャップの変化により、界面における光学特性を動的に調整できることが確認された。さらに、秩序相と無秩序相のバンドアラインメントはtype-Iに近く、界面での励起子輸送に方向性が現れた。PLイメージング解析により、無秩序相側で励起子拡散が速く、かつ秩序相から無秩序相への励起子移動が優位であることが観察された。このような構造は、ペロブスカイト層間のわずかな格子ミスマッチにも関わらず、連続的かつ一貫した層配列が維持されており、結晶成長過程における界面制御の有効性を示している。また、(PA)₂PbI₄–(BA₁₋ₓPAₓ)₂PbI₄のホモ接合では、常温下においてもバンドギャップが空間的に連続変化する勾配構造を実現しており、デバイスへの応用可能性をさらに高めている。
 なお、本研究では圧力依存性ラマン分光法にCobolt社製の633 nmレーザー発振器(型番08-01)を使用し、圧力による低周波振動モードの変化を高精度に解析している。これにより、相転移や結晶構造の動的変化を実証するための重要な手法として活用された。

※この要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。

その他の論文要約はCobolt論文検索ページをご覧ください。

論文で使用されたCoboltのレーザー

633nmレーザー
08シリーズ 633nmレーザー