Öberg, R., Sil, T.B., Johansson, A.C., Malyshev, D., Landström, L., Johansson, S., Andersson, M., Andersson, P.O. “UV-Induced Spectral and Morphological Changes in Bacterial Spores for Inactivation Assessment.” J. Phys. Chem. B 2024, 128, 1638–1646. https://doi.org/10.1021/acs.jpcb.3c07062
背景
細菌が過酷な環境下で形成する細菌芽胞は、極限温度や化学物質に対して極めて高い耐性を持ち、数千年以上も生存可能である 。そのため、医療、産業、防衛の分野において、これら病原性の芽胞を確実に不活化(死滅させること)し、その成否を迅速に評価する手法の確立は極めて重要である 。紫外線(UV-C)照射は、表面や浮遊状態の芽胞を不活化する標準的な手法として広く普及している 。芽胞の内部には、DNAを保護する役割を担うジピコリン酸(DPA)と呼ばれる特殊な化合物が高濃度で含まれており、この物質や蛋白質の分光学的(光との相互作用を調べる)特性を観察することで、不活化の進行度を把握できる可能性がある。
従来の問題点
しかし、紫外線が芽胞の分光学的特性や微細な形態に与える詳細な影響についての理解は、いまだ限られている 。現在、芽胞の生存能力を判定する標準手法は寒天培地を用いた培養法であるが、結果を得るまでに最大48時間を要し、迅速な評価が困難である 。また、個別の分析手法だけでは、不活化過程で生じる複雑な化学的変化や構造的破壊の連続的な過程を明確に解明するには不十分である 。
解決方法と結果
そこで本研究では、吸光・蛍光分光法、ラマン分光法、および電子顕微鏡を組み合わせることで、紫外線照射による芽胞の変化を多角的に調査した 。個々の芽胞の化学組成の変化を非接触で詳細に分析するため、Cobolt社製の発振器(波長785 nm、出力120 mW)を光源としたレーザー捕捉ラマン分光装置が用いられた 。 分光分析の結果、紫外線照射に伴い、蛋白質を構成するアミノ酸(トリプトファンやチロシン)の信号が指数関数的に減衰する一方で、DPAが光反応を起こして二量体化(二つの分子が結合すること)し、その信号がロジスティック曲線に従って増加することが判明した 。ラマン分光分析によれば、照射開始10分から20分でDPAが急速に放出されるが、蛋白質の骨格であるアミドI帯は比較的高い紫外線耐性を示し、分解が緩やかに進行することが確認された 。電子顕微鏡観察では、芽胞の収縮、内部物質の漏出、および外層の蛋白質構造の崩壊が直接的に示された 。これらの知見は、不活化処理後の芽胞の生存能力を判定するための新たな分光学的指標として活用できるものである 。
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論文で使用されたCoboltのレーザー
※この要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。

