Stuermer, P. A., Wirtitsch, D., Steidl, T., Wörnle, R., Körber, J., Schustereder, W., Zmoelnig, C., Urlesberger, P., Chiapolino, F., Meinardi, S., Edelmann, K., Kern, M., Anders, J., Krainer, S., Heiss, H., Trupke, M., Wrachtrup, J. “Quantum magnetometer chip based on industrially scalable 4H-SiC technology.” Physical Review Applied 2026. https://doi.org/10.1103/w49h-wfck
固体中の点欠陥のスピンを使う量子センシングは、室温で微弱な磁場を高感度に測れることから、近年急速に実用化が進められている。代表例はダイヤモンド中の窒素空孔中心である。一方、広いバンドギャップを持つ炭化ケイ素(SiC)は、ケイ素原子が1個欠けた場所に電子が捕獲されてできるシリコン空孔(V2中心)という安定なスピン欠陥を宿す。V2中心は 785 nm の光で非共鳴励起でき、916 nm のゼロフォノン線と 1100 nm まで広がるフォノン側波帯で発光する。SiCは既存の6インチウェハ量産工程をそのまま使えるため、量子センサを半導体製造の延長で大量生産できる材料として期待されている。
しかし、感度を上げるために欠陥密度を高めると結晶損傷が増え、共鳴線幅の増大と信号コントラストの低下を招く問題がある。密度を保って有効体積を広げる道もあるが、光導波路がなければ広い体積を励起するのに大きな光出力が要り消費電力が増え、発光が四方へ逃げて集光効率も落ちるという問題がある。
そこで、本研究では n++ 基板・真性コア・薄い SiO2 という屈折率差だけで導光する単一材料のSiC平面導波路を6インチ量産工程で作り、陽子注入の深さ(400 keV で約 3 µm)を導波モードの最大位置に合わせてV2中心を埋め込むことによって解決した。結晶軸を面に垂直にそろえたため、チップ全面にわたり均一なRF磁場を単純なマイクロストリップで加えられる。励起には Cobolt 06-01のピグテール付き 785 nm レーザー(CW、導波路内 36 mW)を用い、偏波保持単一モードファイバから導波路端面へ結合させて約 6.4×107 個のV2アンサンブルを一括励起し、反対側の対物レンズで取り出した 916 nm 帯の蛍光をアバランシェフォトダイオードで検出した。CW-ODMR、Rabi振動、Ramsey(T2* 約 230 ns)、Hahn-echo(T2 約 2.8 µs)のいずれも得られ、ショット雑音限界の感度はCWで 270 nT/√Hz 以下、パルスODMRで 30 nT/√Hz 以下と、共焦点法の約 40 µT/√Hz に対し2桁以上改善した。
※本記事は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)を、独自の構成(背景・従来の問題点・結果)で再構成した日本語要約です。
【用語解説】
- シリコン空孔(V2)中心:炭化ケイ素の結晶中でケイ素原子が1個抜けた空孔に電子が1個捕らわれた欠陥。室温でもスピンの向きを光で読み書きできるため、磁場センサの感応部として使える。
- ODMR(光検出磁気共鳴):スピンの共鳴周波数の電波を当てたときに蛍光の強さがわずかに変わる現象を使い、磁気共鳴を電波の検出ではなく光の明暗として読み取る手法。磁場の大きさは共鳴周波数のずれ(ゼーマン分裂)から求まる。
- ショット雑音限界の感度:検出する光子数のゆらぎだけが雑音源だと仮定したときに到達しうる感度の理論限界。単位は nT/√Hz で、値が小さいほど高感度である。
る原因となる。
V2色中心の光励起に使用された785 nmレーザー

その他の論文要約はCobolt論文検索ページをご覧ください。
