532 nmおよび633 nmレーザー励起波長における現代アクリル絵具のラマン分光データベース

Barba Castagnaro, I.; Nucera, A.; Castriota, M.; Barberi, R.C.; Striova, J.; Fontana, R. “Spectral Raman Database of Modern Acrylic Paints at 532 nm and 633 nm Laser Excitation Wavelengths.” Appl. Sci. 2025, 15, 5908. https://doi.org/10.3390/app15115908

背景

 アクリル絵具は1950年代初頭から芸術分野で使用され始め、塗布の容易さ、様々な支持体への直接接着性、速乾性といった特性から、現代においても広く使用されている。単色光を物質に照射した際の非弾性散乱を利用するラマン分光法は、高い感度と特異性を有する振動分光法であり、文化財研究において非侵襲・非破壊でサブマイクロメートルスケールの材料特性評価を可能にする強力な手法として認められている。19世紀初頭まで使用可能な顔料は鉱物由来のものに限られていたが、1900年以降の合成顔料の導入により利用可能な色の範囲が大幅に拡大した。

従来の問題点

 しかし、現代・現代美術作品に使用される顔料は有機・無機化合物の複雑な混合物で構成されており、その多様性ゆえに同定が困難である。また、ラマン分光法の文化財保存への最初の応用は1990年代後半に遡るが、参照用ラマンスペクトルデータベースの不足が大きな課題であった。

解決方法と結果

 そこで、本研究ではMaimeri社製の18種類の現代アクリル顔料を木材およびガラス基板上に塗布し、実際の芸術作品を模擬した試料を作製して顕微ラマン分光法により系統的に特性評価を行った。分析にはCobolt社製532 nmレーザーおよび633 nm He-Neレーザー(メーカー名は不明)を励起光源として使用し、各顔料の主要なラマンバンドを同定した。その結果、基板の種類はほぼ全ての顔料のラマンスペクトルに影響を与えないことが確認された。フタロシアニン系顔料では励起波長によりスペクトルパターンが異なったが、これは共鳴ラマン効果によるものである。本研究により、現代アクリル顔料の包括的なスペクトルライブラリが構築され、文化財の保存・修復研究のための貴重な参照資源が提供された。

※この要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。

ラマン分光に使用されたCoboltのレーザー

532nmレーザー
532nmレーザー

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