pH調整による次亜塩素酸塩の殺菌力向上

Sil, T.B., Malyshev, D., Aspholm, M., Andersson, M. “Boosting hypochlorite’s disinfection power through pH modulation.” BMC Microbiology (2025) 25:101. https://doi.org/10.1186/s12866-025-03831-w

背景

 細菌芽胞による汚染は、食品産業および医療分野において深刻な課題である。特にBacillus cereus群による汚染は食中毒の発生原因となり、経済的損失も大きい。細菌芽胞は高温・低温、エタノール、アンモニウム系薬剤など多くの一般的な消毒法に対して高い耐性を示すため、効果的な除染方法の開発が求められている。次亜塩素酸ナトリウムは家庭用漂白剤や病院用消毒剤の有効成分として世界中で広く使用されており、塩素放出剤としてアミノ酸の塩素化を通じて細菌芽胞を含む生体物質を分解する。芽胞の不活化は、次亜塩素酸(HOCl)が芽胞内部に浸透し、内膜やDNAなどの細胞成分を直接攻撃することで起こると考えられている。

従来の問題点

 しかし、次亜塩素酸塩の芽胞に対する殺菌効果は文献によって大きく異なり、実験条件の違いから直接比較が困難であった。市販の次亜塩素酸ナトリウム溶液は安定性を保つためpH12以上のアルカリ性で供給されるが、この高pH条件では芽胞殺菌効果が著しく低下する。一方、中性付近のpHでは殺菌効果は向上するものの、溶液の安定性が損なわれ保存期間が短くなるという問題があった。

解決方法と結果

 そこで、本研究ではpH7.0から12.0の範囲で次亜塩素酸塩溶液のpHを系統的に調整し、病原性Bacillus cereus株に対する殺芽胞効率を調査した。その結果、pH11.0以上では芽胞生存率の低下がほとんど見られなかったが、pH11.0から9.5の間で4-log(99.99%)の芽胞減少が確認された。さらに、pH9.5では溶液の安定性も維持されることが明らかとなった。芽胞への作用機序を解明するため、Cobolt社製785nm波長のレーザー発振器を光源として用いたレーザーピンセット型ラマン分光装置により、処理後の芽胞の生化学的変化を分析した。その結果、低pH条件では芽胞の透過性が増加し、芽胞核心部からカルシウムジピコリン酸が放出されることが示された。

※本要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。

論文で使用されたラマン分光用785nmレーザー

785nmレーザー
785nmレーザー

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