2次元共役金属有機構造体合成における原位置品質管理のためのラマンマーカーバンド

Reichmayr, F., Wolf, D., Zhang, G., Wang, M., Herzog, M., Dong, R., Feng, X., Lubk, A., Weidinger, I. M. “Raman Marker Bands for In Situ Quality Control During Synthesis of 2D Conjugated Metal–Organic Frameworks.” Adv. Mater. Interfaces 2025, 12, e00686. https://doi.org/10.1002/admi.202500686

背景

 金属有機構造体(MOF)とは、金属イオンと有機配位子が配位結合によって連結された、高多孔質の結晶性固体材料である。その構造を設計することで気体貯蔵・分離、センシング、電気化学触媒など多岐にわたる応用が期待され、近年急速に研究が進められている。なかでも2次元共役MOF(2D c-MOF)は、面内方向のπ電子非局在化および積層方向のπ-π相互作用により、従来のMOFが抱える低導電性の問題を克服できる点で電気化学触媒への応用において特に注目されている。2D c-MOFの電気化学特性は結晶ドメイン径に強く依存することから、合成中の結晶成長を制御・把握することが材料設計の高度化において重要である。こうした合成過程の理解には、反応をリアルタイムで追跡できる原位置計測手法が有効であり、原位置ラマン分光法はMOFが形成される以前の段階から化学反応を直接観察できる点で特に優れた手法である。

従来の問題点

 しかし、これまでに報告されている原位置計測手法(X線回折、核磁気共鳴、原子間力顕微鏡など)はいずれも3次元MOFの合成を対象としたものであり、2D c-MOF結晶の品質を合成中にリアルタイムで予測できる簡便な手法は存在していなかった。また、見かけ上同一の合成条件下であっても、得られるMOF結晶の構造的特性にばらつきが生じ、性能の不均一性という問題があった。

解決方法と結果

 そこで、本研究では気液界面で合成されるCu₂[ZnPc-O₈] MOFを対象に、原位置共鳴ラマン分光法を用いて合成過程をリアルタイムで追跡することにより、この問題を解決した。励起波長594 nm(Cobolt社製Mamboレーザー)を用いることで、凝集体・非凝集体の両配位子種を同時かつ選択的に検出できる条件を設定し、非凝集配位子に対応するマーカーバンド(ν̃lin、1500 cm⁻¹)、凝集配位子のバンド(ν̃a.lin、1520 cm⁻¹)、およびMOF生成に対応するバンド(ν̃MOF、1570 cm⁻¹)の3つを同定した。原位置測定の結果、MOF形成には非凝集配位子のみが関与し、凝集配位子は反応に寄与しないことが明らかとなった。さらに、透過型電子顕微鏡観察との比較から、配位子の凝集度が高いほどMOFの結晶ドメイン径の分布が広くなり、高度凝集時には平均径も低下することが示された。これらマーカーバンドの強度比を追跡することで、合成中にMOFの収率と結晶ドメイン径分布を非侵襲的かつ簡便にリアルタイム評価できることが実証された。

※この要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。

ラマン分光に使用された594nmレーザー

594nmレーザー
594nmレーザー

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