マルチシート可逆飽和光蛍光遷移(RESOLFT)顕微鏡による超セクショニング

Bodén, A., Ollech, D., York, A. G., Millett-Sikking, A., & Ilaria Testa. “Super-sectioning with multi-sheet reversible saturable optical fluorescence transitions (RESOLFT) microscopy.” Nature Methods 2024, 21, 882-888. https://doi.org/10.1038/s41592-024-02196-8

背景

 光シート蛍光顕微鏡法(LSFM)は、標本に対して薄い光の面を照射し、その焦点面からのみ蛍光を検出する手法であり、多細胞系の四次元的な生体観察において極めて重要な役割を果たしている 。この技術は、高速な立体撮影が可能であると同時に、標本への光照射量を最小限に抑えられるため、生細胞の長時間観察に適している 。また、斜め平面顕微鏡法(OPM)は単一の対物レンズを用いて照明と検出を行う手法であり、従来の顕微鏡用スライドガラスや多ウェルプレートに置かれた標本への接近性に優れている 。回折限界を超える解像度を実現する超解像技術の一種である可逆飽和光蛍光遷移(RESOLFT)顕微鏡法は、特定の波長の光によって蛍光を発する「オン」状態と発しない「オフ」状態を切り替え可能な可逆光スイッチング蛍光タンパク質(RSFP)を利用する 。RSFPは、比較的低強度の光照射で状態遷移を誘起でき、その状態は外部からの刺激がない限り長時間安定して維持される特性を持つ 。これらの技術の融合は、細胞内の細かな構造を高い空間分解能で捉えるために非常に有効な手段である。

従来の問題点

 しかし、光の回折という物理的な性質により、高い開口数を持つ光学系を用いても、標本内を伝播する光シートの厚みを約一マイクロメートル以下に抑えることは困難である 。この厚みは1 µmから10 µm程度の細胞小器官を詳細に観察するには不十分であり、深部方向の分解能が制限される 。また、光シートを薄くしようとする従来の試みでは、光の検出効率の低下や標本への接近の難しさ、さらには過度な状態遷移の繰り返しによる撮影速度の低下や標本への悪影響といった課題が存在している 。

解決方法と結果

 そこで、本研究では複数の薄い光の面を同時に形成するマルチシートRESOLFT法を開発し、これらの課題を解決した 。この手法は、周期的な光の紋様を用いて標本内の蛍光タンパク質を立体的に並列処理し、回折限界を大幅に下回る100 nm以下の極めて薄い発光層を生成する 。撮影に必要な状態遷移の回数を10から20回程度に抑えることで、1 Hzを超える高速な立体撮影と光毒性の低減を両立させた 。装置にはCobolt社製のレーザー発振器を2種類導入し、488 nmの波長を蛍光の励起およびオフ状態への切り替えに、405nmをオン状態への切り替えに使用した 。これにより、微小管や細胞分裂の様子、ウイルス様粒子の動態を、従来の限界を超える鮮明さで捉えることに成功した 。

※この要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。

論文で使用されたCoboltのレーザー

488nmレーザー
488nmレーザー
405nmレーザー
405nmレーザー

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