フォトニクス最新ニュース
世界の光技術に関する最新動向を、信頼できる情報源から厳選してお届けします。レーザー顕微鏡、レーザー分光、量子光学をはじめ、幅広いフォトニクス領域の研究開発・産業動向をわかりやすく解説します。
有機ELの色を狭いまま、斜めから見ても変えない——TADF分子でポラリトン発光(独ケルン大・英セントアンドリュース大)
次世代のディスプレイには、鮮やかな色を出すために発光の波長幅が狭いことが求められます。有機EL(OLED)を微小共振器ではさむと、定在波ができて発光スペクトルを狭くできますが、こんどは見る角度によって色が変わってしまうという欠点が出ます。ケルン大学とセントアンドリュース大学のチームは、光と物質が強く結合したときに現れるポラリトンを使ってこの問題に取り組みました。ポラリトンのもとになる励起子は角度によるずれがほとんど無いため、うまく調整できれば線幅をさらに細くしながら角度依存性を抑えられます。ただし発光効率の高い熱活性化遅延蛍光(TADF)分子は振動子強度が小さく、光と強く結合させること自体が難しいという壁がありました。本研究はその条件を満たす素子構造を示し、狭帯域・角度安定・高効率を同時に満たすポラリトンOLEDを実現しています。Light: Science & Applications誌掲載。
1/4波長板のわずかな製造ムラが、レーザーの迷光除去を1万倍に高める(独ダルムシュタット工科大ほか)
2枚の偏光子を直交させて強いレーザー光を遮る配置は、単一の量子エミッタのようなごく弱い光を見る精密実験に欠かせません。TUダルムシュタットを中心とする国際チームは、その間に1/4波長板を1枚入れたところ、通り抜けたわずかな光が丸い点ではなく中央の暗い二葉(ダンベル)状になることを見つけました。波長板を回すと模様も一緒に回ります。この形は検出器とほとんど重ならないため、迷光の抑圧は偏光子だけの約10万倍から、石英の波長板で約1000万倍、ポリマーの波長板では10億倍超まで改善しました。ビーム径を広げるほど模様が強くなったことから、原因は波長板表面の微視的な製造ムラだと結論づけています。実際の部品では偏光とビームの空間形状が結びつくことを示した結果で、微弱発光の検出や精密光学部品の欠陥評価への応用が見込まれます。Nature Communications誌掲載。
水を溶媒とする光配向材料で、四分の一波長板と偏光格子を重ねた多層の液晶光学素子をつくる研究です。
髪の毛の200分の1の光ファイバで原子を運ぶ——GPSが使えない場所の量子慣性センサーへ(米サンディア国立研究所)
米サンディア国立研究所のJongmin Lee氏らは、極細の光ナノファイバの周りにできる光の「かさ」で原子を導き、揺さぶられても取りこぼさない原子干渉計を目指しています。直径420nmのファイバ上にセシウム原子をわずか5mWの光パワーで捕捉し、150nWの光でも原子干渉に相当する測定ができることを示しました。従来手法の4分の1から6分の1の消費電力にあたります。冷却原子を自由落下させる方式は強い振動でレーザーが原子を見失いますが、導波路で導く方式なら常に視野に留められます。あわせて、両端をシリコンの細い柱で留めて放熱させる耐熱メンブレン導波路を提案し、真空中の発熱と原子の装填効率がどちらも立つ設計に道筋をつけました。フォトニック集積回路に載るチップサイズの量子慣性センサーが目標です。AVS Quantum Science誌掲載。
赤外線を可視光に変える「スクリーン」を1000倍明るく——メタサーフェスと希土類ナノ粒子を重ねる(豪メルボルン大ほか)
赤外線が運ぶ情報を見るには、ふつう大がかりな光電子システムが要ります。イッテルビウムとエルビウムを含む希土類ナノ粒子は、弱い赤外光を足し合わせて可視光に変える(アップコンバージョン)ことができるため小型化の有力な候補ですが、赤外を「見る」のに必要な弱い励起強度では発光が足りないことが課題でした。メルボルン大学とオーストラリア国立大学(TMOS)、米ローレンス・バークレー国立研究所のチームは、この粒子を共振する誘電体メタサーフェスと一体化しました。粒子の励起帯に共振を合わせることで発光は3桁以上強まり、しかもこの共振の角度分散が平坦なため、斜めから入る光に対しても増強の効果が一様に得られます。赤外イメージングを薄いスクリーン1枚で行う方向につながる成果です。Light: Science & Applications誌掲載。
16波長のLEDで土の層を見分ける——発掘現場で5分の多波長イメージング(デンマーク・オーフス大ほか)
考古学の発掘では、次にスコップを入れる前に土の層が変わったかを判断しなければならず、見誤ると証拠が失われます。オーフス大とモースゴー博物館は、近赤外と近紫外を遮るフィルタを外した市販カメラの周囲に、365〜940nmの狭帯域LED15個と白色LED1個を並べた低コストなマルチスペクトルイメージング装置LEDMSIを開発しました。反射と蛍光を撮影し、主成分分析と独立成分分析で成分を分けると、木灰・焼けた粘土・骨が肉眼では見えない差として浮かび上がります。撮影から結果まで約5分で、現場でほぼその場で使えます。バルト海ボーンホルム島の遺跡での実証では、埋め土の中に肉眼では見えなかった層の変化が確認できたとしています。J. Archaeol. Sci.誌掲載。
波長ごとに分けた蛍光の像を深層学習で復元し、ごく弱い光で生きた魚をそのまま撮る顕微鏡の研究です。
内視鏡の先端に照明と結像を一体で「印刷」する——直径0.5mmの光学系(独シュツットガルト大学)
内視鏡で明視野観察を行うには、照明用と結像用の光路を別々に用意するのが一般的です。ただし先端を1mm以下まで細くすると微小な部品の取り回しと組み付けが難しく、それが小型化の壁になっていました。シュツットガルト大学応用光学研究所(ITO)とSCoPE研究センターを中心とするチームは、多光子リソグラフィによる光造形で、照明と結像を1つにまとめた光学系をファイババンドル内視鏡の先端に直接造形しました。前端の結像光学系と後端の回折光学素子を一体で作り込み、リング状の照明とマイクロスケール分解能の観察を約0.5mmの中に収めています。結像側は気密封止されているため、空気中だけでなく生体液中でも観察できます。造形プロセスは再現性が高く将来の量産にも向くとしており、細い管腔や小さな臓器への低侵襲な観察につながると期待されます。Light: Advanced Manufacturing誌掲載。
1回の露光だけで超解像に——偏光のゆらぎで生きた細胞を追う(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)
超解像顕微鏡の多くは、数百〜数千枚の画像を時間方向に積み上げて分解能を稼ぎます。この方法は化学固定した標本には有効ですが、動き続ける生きた細胞では像がぼやけてしまいます。EPFLナノスケール生物学研究室のWei Guo氏らは、蛍光分子が向きに応じて偏った光を出す性質に着目し、時間ではなく空間の情報を使うSPIFFIという手法を開発しました。蛍光を4つの偏光チャンネルに分けて同時に撮り、チャンネル間を比較することで、1回の露光から分解能を最大2倍に高め、160〜170nm程度の構造を1枚で解像します。既存の時間ゆらぎ法と組み合わせた後処理では約80nmに達したとしています。ミトコンドリアや微小管の動き、細胞の融合や分裂といった、多数枚法では捉えにくい現象を超解像の動画として記録できました。既存の蛍光顕微鏡に光学系を追加して使えるとしています。Nature Methods誌掲載。
多焦点と定在波の光パターンを組み合わせ、生きた細胞を45〜65nmの分解能で長時間観察する超解像顕微鏡の研究です。
シリコンナノ球を1層並べるだけで、色あせない「つやのある色」を曲面に塗る(神戸大学)
孔雀の羽のように色素を使わず微細な構造で色を出す構造色は、光で退色しないという利点があります。ただし見る角度で色が変わり、保護膜を重ねると色味が崩れ、光沢も出にくいという課題がありました。神戸大学工学研究科の杉本泰氏らは、直径0.25µmほどのシリコンナノ球をシリカの殻で包み、間隔をそろえて1層だけ並べる手法を開発しました。殻が粒子を守ると同時に自己組織化を助けるため、拡散反射が減ってつやが生まれ、見る角度によらない色を大きな3次元の曲面にも塗れます。保護膜を重ねても色相はほとんど変わりませんでした。1層で十分な隠蔽力と明るさが得られるので塗膜は非常に軽く、大型旅客機なら数百kgある塗装が数百g程度になりうると試算しています。材料はシリコンとシリカで、研究チームはセンシングや光触媒など色以外の機能を重ねることも視野に入れています。Small Structures誌掲載。
肌の色でレーザーの安全しきい値は約28%変わる——より公平な基準づくりへ(米ジョンズ・ホプキンス大)
皮膚のメラニンは光をよく吸収するため、同じレーザーを当てても肌の色によって生じる熱の量が変わります。ところが公開されている安全基準はこの違いをほとんど考慮しておらず、パルスオキシメーターのような光を使う計測にも偏りが生じることが指摘されてきました。米ジョンズ・ホプキンス大学のチームは、肌の色が明るいものから暗いものまで異なる3頭のミニブタに、波長750nmのナノ秒パルスを1発ずつ照射しました。照射前の肌の色を色彩計で測り、照射後の紅斑(赤み)を炎症の指標として記録して、半数の部位に目に見える傷害が生じるエネルギー(ED50)を求めたところ、色の濃い個体では324mJ/cm²、明るい個体では448mJ/cm²と、27.7%低い値になりました。許容照射量が信号強度や到達深さを左右する光音響イメージングのような手法では、この差が装置の設計や評価に直結します。Journal of Biomedical Optics誌掲載。
チップ上の光コムを48時間以上止めずに回す——3つのパラメータを同時に固定(中国国防科技大学)
微小共振器の中に光のソリトンを閉じ込めてつくる「マイクロコム」は、繰り返し周波数を電子回路で直接測れる26.5GHz以下まで下げられると、持ち運べる精密計測の光源になります。ただし共振器内部の雑音や温度・振動といった外乱に弱く、ソリトンがすぐ崩れてしまうことが実用化の壁でした。国防科技大学のチームは、励起レーザーの周波数・共振器の共振点・繰り返し周波数という3つの基本パラメータを同時に能動制御する「マルチモーダル・ロッキング」を提案し、理論と実験の両方で確かめました。FSR 24.96GHzの窒化シリコン微小共振器に実装したところ、48時間を超えて崩れずに動作し、環境の変動に対しても高い耐性を示しています。周波数コムを実験室の外へ持ち出す計測に近づく成果です。Light: Science & Applications誌掲載。
ナノ粒子を「周波数ミキサー」にして、励起光の漏れを消した蛍光イメージング(スウェーデン王立工科大学KTHほか)
希土類を含むアップコンバージョンナノ粒子は励起光より短い波長で光るため、生体の自家蛍光に邪魔されにくいという利点があります。一方で発光そのものが弱く、励起光の残りが背景として残る問題がありました。スウェーデン王立工科大学(KTH)と中国・華南師範大学などのチームは、この粒子が強度を変調した励起光に対して「周波数ミキサー」のように振る舞うことを見いだしました。複数の基本周波数で励起光を変調すると、発光にはそれらの差にあたる「うなり周波数」の成分が新たに現れます。この成分は一般的なカメラのフレームレートでも読み取れ、室内光や励起光の漏れには含まれないため、そこだけを取り出せば背景のない画像が得られます。粒子の設計によって現れる成分を調整することもでき、生体イメージングやバイオセンシングでの信号対背景比を大きく改善できるとしています。Light: Science & Applications誌掲載。
785nmのレーザーで励起した色素とアップコンバージョンナノ粒子のあいだで、エネルギーがどう受け渡されるかを調べた研究です。
多重量子井戸とメタサーフェスを一体設計し、光の波長変換を約1000倍に(米ハーバード大ほか)
レーザーの色(波長)を別の色に変える非線形周波数変換は、通信や精密時計、量子技術に欠かせない働きですが、これまではニオブ酸リチウムやヒ化ガリウムといった結晶がもともと持つ性質にほぼ縛られてきました。米ハーバード大学SEASのCapasso教授らは、ヒ化ガリウムとヒ化アルミニウムガリウムを極薄で積み重ねた多重量子井戸と、その表面に並べたナノ柱(メタサーフェス)を、別々にではなく一体で設計しました。層の厚さで電子のエネルギー準位を作り込み、ナノ柱で電磁場の向きと集中度をそろえることで、加工していないウェハに比べて実効的な非線形変換を約1000倍に高め、光ファイバー通信で使う近赤外域でも従来の報告を上回りました。標準的な化合物半導体プロセスで作れるため、チップサイズの波長変換器や、もつれ光子対の光源への展開が見込まれます。米テキサス大オースティン校、カリフォルニア大アーバイン校との共同研究。Nature Nanotechnology誌掲載。
非線形結晶の角度を調整して、中赤外の波長を連続的に変えられる光子対をつくる研究です。
電圧で原子振動の「利き手」を反転させ、切っても保つ——強誘電体のカイラルフォノン(スイスPSIほか)
結晶の中で原子が集団で揺れる振動をフォノンと呼び、その揺れが回転する成分を持つと右回り・左回りという「利き手」が生まれます(カイラルフォノン)。スイスのパウル・シェラー研究所(PSI)のグループは、台湾の共同研究者が作製した厚さ40nmのチタン酸バリウム薄膜に微小な電極を付け、電気分極を反転させるとフォノンの利き手も一緒に反転することを示しました。切り替えは室温で3Vという低い電圧で起こり、しかも電界を取り去ったあとも状態が保たれます。利き手の読み出しには、欧州放射光施設ESRFの円偏光X線を用いた共鳴非弾性X線散乱を使い、光と格子のあいだで角運動量がやり取りされる様子から判定しました。フォノンが持つ角運動量を電気で制御できることになり、磁性状態の操作や、振動を使う情報技術への道が開けます。Nature Materials誌掲載。
紫外線を当てた面だけきれいに剥がせる接着剤——365nmで剥がし、254nmで貼り直す(大阪大学)
電子機器や自動車では接着が欠かせない一方で、しっかり接着したままだと修理やリサイクルのときに部材をきれいに分けられないという問題があります。大阪大学の高島義徳教授らのチームは、接着層そのものを壊すのではなく「界面だけ」を光で切り替える接着剤をつくりました。スチルベンとトリアセチル化β-シクロデキストリンのあいだにできる可逆的なホスト-ゲスト架橋を設計し、波長365nmの紫外線(UV-A)を当てるとスチルベンが光異性化して照射面近くの結合が弱まり、剥離強度が約45%下がって糊残りの見えない剥離ができます。254nm(UV-C)を当てると結合が戻り、加熱すれば貼り直せます。PETとガラス、炭素繊維強化プラスチック、ナイロン66、アルミの組み合わせでも同じ切り替えが働き、15回の剥離サイクルを通して性能を保ちました。Matter & Light誌掲載。
電圧で焦点を2つに切り替えるメタレンズ——眼の血管を深さ1.2mmまで撮る(韓国POSTECH)
光音響イメージングは、光を吸収した組織から出る超音波をとらえて立体的に撮る手法です。光学分解能を持たせると横方向は数µmまで見えますが、ピントの合う深さの範囲が狭いという弱点があり、ベッセルビームなどで広げるとサイドローブが増えて信号対雑音比が下がってしまいます。韓国・浦項工科大学校(POSTECH)などのチームは、窒化シリコンのナノ構造でできたメタレンズに電圧をかけ、可動部なしで2つの回折限界の焦点を切り替える顕微鏡を作りました。切り替え電圧は0.87Vと1.03V、応答時間は250msで、横分解能3.7µmを保ったまま深さ方向1.2mmをカバーします。角膜を薬品で傷つけたラットの眼で、新生血管が広がる様子を眼球の深さ全域にわたって追跡できました。Light: Science & Applications誌掲載。
1064nmのパルスレーザーを使い、血管など特定の生体構造だけを安価な装置で光音響撮像する研究です。
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